Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2005/09/07
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カテゴリ: BAR
 JR新橋駅近くの繁華街。初めてそのBARを訪れた時は、目指すビルを探すのに少し苦労した。ようやく見つけた雑居ビルの地下に、そのBARはあった。

 BARの扉を押すと、入り口から奥の方へ伸びた細長いカウンター。奥の方は少し三角形に突き出している。その前には数脚のスツールがあるが、基本は、英国のパブのようなスタンディング・スタイル。背中側はようやく1人がすれ違えるような狭いスペースの店内だった。Tony's Bar

 初めて訪ねた僕は、入り口近くに、1人立って、静かにウイスキーの水割りを飲んだ。「Tony’s Bar」( 写真左 )。その名の通り、マスターは愛称、トニーさん(本名は、「松下安東仁」と言ったらしい)。いつも、奥の方が定位置だった。

 トニーさんは、英国人将校の父と日本人女性の間に生まれた。10代前半から進駐軍のクラブで働き始め、1952年(昭和27年)に、東京・人形町に店を構えた。その後、東京五輪(1964年)と同時に、今の新橋に店を移した。

 トニーズ・バーの自慢は、バック・バーの棚に、ところ狭しと置かれた2千種類以上の豊富なお酒の品揃え。そしてトニーさん自身は、酒に関する博学ぶりで、いつも客をうならせてきた。184cmの長身。男が惚れ惚れするようなダンディズムと、酒やマナーについての頑固さを兼ね備えた人でもあった。Tony's Bar By Ittetsu Narita

 2人連れ以上の女性客は断った。「店内が騒々しくなるから…」と一言。お行儀の悪い客を叱る光景も少なくなかったという。常連ではない旅人で、たまにしか訪れない僕は、笑顔のなかにも少し鋭いまなざしをしたトニーさんを、いつもただ、遠くから見つめるだけだった。

 そして残念ながら、トニーさんは02年6月、病に倒れ、天国へ旅立ってしまった。そして店は、姉のベッティさんに引き継がれた( 写真右 =切り絵で描かれた「Tony’s Bar」。  (C )成田一徹

 新橋移転以来40年余。トニーズ・バーは今もBAR好きの男たちの安らぎの場として、愛され続けている。店は今、74歳のベッティさんと、最後の弟子だったSさんがしっかり守っている。

 僕はお邪魔するのは、東京BAR巡りの「スタートとして」が多い。トニーさんが亡くなっても、ここに来ればトニーさんに会えるような気がする。店の中央には、在りし日のトニーさんの写真が架かる。トニーさんに見つめられると、マナーよろしく飲むべしと気持ちが引き締まる。さぁ、襟を正して、今夜も「いざ、2軒目へ」。

【Tony’s Bar】 東京都港区新橋1-4-3 芝ビルB1F 電話03-3571-0990 JR新橋駅から徒歩2分 土日祝休み





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Last updated  2008/10/22 10:55:19 PM
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うらんかんろ

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Comments

kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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