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2006/02/25
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カテゴリ: 映画・TV・演劇
 スティーブン・スピルバーグ監督の話題作「ミュンヘン」( 写真左上 Munich1ミュンヘン五輪と言えば、男子バレーボールの金メダル、競泳平泳ぎの田口信教とバタフライの青木まゆみの金メダルが、僕にとっての鮮烈な思い出。

 もちろん、あの選手村での占拠事件やイスラエルの選手、コーチら11人が殺害されたことも記憶にあるけれど、事件の詳細やその後の報復等には今までほとんど無知だった。だから、この映画はまず史実を知るという意味でも、とてもいい材料になる。

 映画の冒頭で、まず、あの選手村占拠&選手・コーチ殺害事件が事実として、伝えられる(ただし、アナウンサーやレポーターの声だけで。実際の場面再現=空港での銃撃戦=は映画の最後に、「フラッシュバック」のように描かれる)。

 イスラエル政府は、モサド(機密情報機関)に命じて、事件を企てた黒幕らへの報復を決断する。秘密裏に5人からなる暗殺チームが組織され、そのリーダーに任命されたのが主人公のアヴナー(エリック・バナ)だ。Munich2

 アヴナーには身重の妻がいる。しかもこれまで人を殺したことなどない。だが、愛国心はある。悩んだ末に、今回の報復には「大義」があると信じて、彼はこの難しい任務を引き受ける( 写真右 =映画の1シーン。右が主演のエリック・バナ)。

 そして、他の4人のメンバーとともに報復のターゲットであるテロ指導部の11人を追って、ヨーロッパ各地や中東に赴く。ジュネーヴ、ロンドン、パリ、ローマ、アテネ、ベイルート…。さながらヨーロッパ旅行を体感しているような気分にもなるが、内容は重くて、暗い。

写真左 =アヴナーは娘が生まれ、国家より家族の大切さをより自覚していく)。Munich3

 アヴナーは日々自問自答しながら、任務を遂行し続けるが、テロリスト側もその都度、報復する。果てしない報復の連鎖。やがて自身も狙われるように。そして自分の行為に疑問を感じ始めたアヴナーは…。

 ユダヤ系のスピルバーグだから、おそらくはイスラエル寄りに作られている映画だろうと、観る前は想像していた。だが、「一方だけの正義なんてあり得ない。報復して抹殺しても、またそれを超えるテロリストが後釜に座るだけ」(主にアヴナーに語らせているが…)というメッセージに、僕の想像は見事に裏切られた。

 米政府はもちろんのこと、イスラエル支持者の多い米国民の間でも、スピルバーグ批判が起きているという。当のイスラエル政府も「親パレスチナの映画だ」と批判しているという。批判を覚悟でこの映画をつくったスピルバーグを素直に評価したいと思う。Munich4

 映画にはとくにオチも意外な結末もない。映画の演出として若干の設定変更はあったようだが、ほぼ事実に忠実につくられているという。3時間はやや長いのかもしれないが、場面転換のテンポがいいので、退屈することはない( 写真右 =報復には爆破という手段も用いられ、アヴナーらが望まなかった一般市民の巻き添えも出る)。

 サスペンス・アクションとしても、政治・軍事ドラマとしても、家族愛をめぐる人間ドラマとしても、見事に描ききったスピルバーグの手腕は、たださすがと言うほかない。「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」など歴史ドラマを作らせたら、かなう人はいないだろう。

 映画は、ニューヨークに移り住んだアヴナーが、中南米での新たなミッションを打診され、任務を断るシーンで終わる。そのバックに、当時はまだあった世界貿易センタービルがそびえ立っているのが、その後の世界の現実を暗示しているかのように…。

 スピルバーグが言いたかったのは、「結局のところ、復讐は復讐しか生まない」ということだろう。ユダヤ系であるスピルバーグがそんなメッセージを発信したことに、僕は大きな意味を見ている。

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Last updated  2006/02/25 12:25:38 AM コメント(6) | コメントを書く


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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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