Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2010/11/21
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カテゴリ: カクテルブック
さて、いよいよ「カクテル(混合酒調合法)」の本文です。24頁分の目次の後、本文ではアルファベット順に、125種類のカクテルが掲載されています。では、順番に紹介していきましょう。

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カクテル  --混合酒調合法--    宮内省大膳寮厨司長 秋山徳蔵編



アブサント・カクテル (Absinthe Cocktail) 
 小さい調合器 【注1】 に砕き氷を入れ、アンゴスチュラ・ビター一滴を落とし、オルジェート・シロップ 【注2】 一注(つぎ) 【注3】 とアブサント一ジガー 【注4】 を加え、充分にかき混ぜ合わせてカクテル・グラスに漉(こ)してうつし、レモンの皮一そぎを押しつまみ、浮かしてすすめます。

アブサント・フラッペ (Absinthe Frappe) 
 中位の調合器に砕き氷を四分の三位まで入れ、アブサント一ポニー 【注5】 を加え、充分に振蕩(しんとう) 【注6】 してカクテル・グラスに漉(こ)してうつし、凍りそうに冷たいところをすすめます。これは「アブサント・アメリカン・スタイル」とも呼ばれます。

アブサント・イタリアン・スタイル (Absinthe Italian Style) 
 調合器に砕き氷を入れ、アブサント一ポニー、マラスキーノ二注、及びアニゼット二分の一ポニーを加え、充分にかき混ぜ合わせてカクテル・グラスに漉しうつしてすすめます。

アブサント・ヴェイリューズ (Absinthe Veilleuse) 
 ソーダ水呑 【注7】 に角砂糖1個を入れ、水少しを加えて溶かし、氷水を四分の三位までつぎ入れ、アブサント一ポニーを加え、かき混ぜ合わせてすすめます。

アギナルド・パンチ (Aguinaldo Punch) 
 ソーダ水呑に砂糖大匙(さじ)で一杯を入れ、水又はソーダ水大匙で二杯を加えて溶かし、次にレモンジュース四注、フレンチ・ヴェルモット四注、ラム四注、及びウイスキー一ポニーを加え、充分にかき混ぜ合わせて、砕き氷を二分の一位まで加え、ソーダ水を八分目までつぎ入れ、季節の果実を浮かし、麦稈(むぎから) 【注8】 をさしてすすめます。

エール・サンガリー (Ale Sangaree) 
 ソーダ水呑に砂糖大匙で一杯を入れ、水大匙で二杯を加えて溶かし、別の壜(びん)のまま冷やしたエールを九分目までつぎ入れ、ナッツメグほんの少しをおろしかけてすすめます。このエールには、新しいものと、古いものとがありますから好みな方を用います。

アーフ・エンド・アーフ (Alf and Alf) 
 これは、英国風ではポーターとエールとを半々に合わせ、米国風では新しいエールと古いエールとを同じく半々に合わせてすすめます。したがって、いずれか好みの方を調合してすすめるのでありますが、いずれの場合でも、あらかじめ壜のまま冷やして置いて用います。

アップル・ブランデー(ホット) (Apple Brandy, Hot) 
 水呑に四分の三位まで熱湯をつぎ入れ、角砂糖一個を入れて溶かし、アップル・ブランデー一ジガーを加え、かき混ぜ合わせてすすめます。注意:普通、「ブランデー・ホット」或いは「ウイスキー・ホット」と言えば、大抵この方法で調合されますが、好みによりブランデーの量は増減します。

アップル・パンチ (Apple Punch) 
 林檎(りんご)とレモンを別々に薄切りにして鉢か甕(かめ)の中へ、砂糖をふりかけながら、段々に半分位まで入れて、赤葡萄酒を八分目までつぎ入れ、きれいな布巾(ふきん)をかぶせ、紐(ひも)でまき結(ゆわ)へて、およそ五六時間寝かして置きます。
 そして後、別の鉢か甕の中へ、きれいな漉し袋かまたは布巾で漉してうつし、大きい氷の塊一個を入れて充分につめたく冷やし、パンチ・グラスにつぎ分けてすすめます。

アラック・パンチ (Arrack Punch) 
 パンチ・グラスに小さい氷の塊一個を入れ、その中へバタヴィア・アラック 【注9】 を四分の三、ジャマイカ・ラムを四分の一の割合で入れて置き、別の調合器の中へ砂糖大匙一杯を入れて、ゼルツェル・ウォーター 【注10】 大匙で二杯を加えて溶かし、次にレモン一個の露を搾りこみ、充分にかき混ぜ合わせる。
 前に用意して置いたパンチ・グラスの混合酒をうつしかえ、更にシャンパン一注を加え、再び充分にかき混ぜ合わせてパンチ・グラスにつぎ分け、薄く扇の地紙形に切ったパインアップル一片ずつを浮かしてすすめます。

オートモビル・カクテル (Automobile Cocktail) 
 調合器に砕き氷を入れ、ガム・シロップ二注、オレンジ・ビター二注、イタリアン・ヴェルモット 【注11】 とスコッチ・ウイスキー、およびオールド・トム・ジン 【注12】 の三種を各一ジガーずつを加えてかき混ぜ合わせ、カクテル・グラスに漉してつぎ分け、オリヴかチェリー一個ずつを浮かしてすすめます。


【注1】 「調合器」とはこの連載の2回目でも紹介したが、シェーカーやミキシング・グラスのこと。

【注2】 「オルジェート(Orgeat)・シロップ」とはビター・アーモンド・シロップのこと。オルゲート・シロップとも呼ばれる。現在でも「MONIN(モナン)」社のシロップ・シリーズで入手可能。

【注3】 「一注(いちつぎ)」とは、現代における1Dash(約1ml)のことか。

【注4】 「一ジガー(Jigger)」とは、英国式の場合2オンス(約60ml、米国式だと45ml)のこと。秋山氏が用いている「ジガー」が英国式なのか米国式なのかは、現時点ではよく分からない。

【注5】 「一ポニー(Pony)」は、連載2回目でも紹介したように、1オンス(約30ml)に同じ。

【注6】 「振蕩」とは、シェイキングのこと。

【注7】 「ソーダ水呑」という表記は、連載2回目にも登場するが、秋山氏は「8オンス以上の大形の切立形グラス(脚付きでないもの)」と説明しており、10~12オンスくらいのタンブラーのようなグラスと推察される。

【注8】 「麦稈」とはストローのこと。

【注9】 「アラック(Arrack)」とは、中近東からアジアにかけて幅広く造られている蒸留酒。原料は米やサトウキビ、ナツメヤシ、ジャガイモ、ヤシの花穂など。バタヴィアとはオランダ植民地時代のジャカルタの呼び名。インドネシアでもアラック造りは盛んで、バタヴィア・アラックは現在でも流通している。

【注10】 「ゼルツェル(Seltzer)・ウォーター」とは、要するに炭酸水のこと。19世紀以降、ヨーロッパでは、「薬効がある」と信じされたこともあって富裕階級を中心に広く飲まれるようになった。

【注11】 この当時は、現在のスイート・ヴェルモットはイタリアン・ヴェルモットと呼ばれ、ドライ・ヴェルモットはフレンチ・ヴェルモットと呼ばれた。

【注12】 「オールド・トム・ジン」とは、ドライ・ジンに1~2%の糖分を加えた英国生まれの甘口ジンのこと。18世紀、ロンドンにあったジンの販売機は猫の形をしていて、ジンを買うと猫の足の部分からボトルが出てきた。俗語(スラング)で雄猫のことを「トム・キャット」と言うことににちなみ、新製品に「オールド・トム」という名前が付けたと伝わる。
 ちなみに20世紀前半までは、「トム・コリンズ」などジンを使うカクテルでは、オールド・トム・ジンでつくるのが多かったという。なお、最初に製造・販売した英国のボーズ社はその後、米国ミズーリ州セントルイスに拠点を移し、生産している。他にもカナダのメーカーでも製造・販売している。


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Last updated  2020/11/10 07:37:40 PM
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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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