Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2017/01/30
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 33.ジン・トニック(Gin and Tonic)

【現代の標準的なレシピ】 ジン(45)、トニック・ウォーター(適量)、氷、カット・ライムまたはライム・スライス 【スタイル】 ビルド

 19世紀初頭、インドに駐在していた英陸軍内でマラリア対策として生まれたと伝わります。熱帯地方のインドでは兵士をマラリアから守ることが重要な課題で、キナの樹皮からつくるキニーネにマラリアへの薬効があることは、17世紀半ばにはすでに知られていました。苦味のあるキニーネを飲みやすくするため、軍医がジンや水、砂糖、ライムを加えた飲み薬を処方したのが、後にジン・トニックの原型となったと言われています(出典:Wikipedia英語版ほか)。

 なお、欧米では「キニーネ」は食品添加物として認可されていますが、日本では「劇薬」指定で食品への使用は認められていません。従って、日本国内で販売されているトニック・ウォーターは、海外のブランドであっても、既存添加物として認可された「キナ抽出物」が代用品として使われてきました。

 しかし、2012年に入ってキナ成分(キニーネ)入りのトニック・ウォーターの輸入が許可になりました。製品名は「フィーバー・トゥリー(Fever-Tree)」(英国フィーバー・トゥリー社製、2005年発売)。この製品の中の「キナ抽出物」には、劇薬としての濃度規制未満のキニーネの成分が微量に含まれているとのことです。

 「ジン・トニック」は現代のバーでは、代表的な人気カクテルの一つで、バーテンダーによっては様々なレシピ(100人いれば100通りとも!)が存在します。きわめて知名度の高いカクテルですが、意外にも、欧米のカクテルブックでは(当たり前すぎるドリンクであるせいか)わざわざ紹介している例は少ないのです。

 欧米のカクテルブックで、初めて「ジン・トニック」(本の中では「Gin and Tonic」という表記ですが)という形で紹介されたのは、現時点で確認した限りでは、ともに1934年に出版された「The Artistry of Mixing Drinks; The Ritz, Paris」(Frank Meier著、フランスで出版)と「The Official Mixer's Manual」(Patrick G. Duffy著、米国で出版)が最初です。

 そのレシピは、前者が「ジン1グラス、レモン・スライス、氷、シュウェップス・トニックウォーター」、後者は「ドライ・ジン2ジガー、レモン・スライス、氷、トニック・ウォーター」となっていて、大きな違いはありません。参考までに、1947年刊の「Trader Vic's Bartender's Guide」(Victor Bergeron著)のレシピを見てみると、「ジン1.5オンス、ライム・ジュース2分の1個分、氷、トニック・ウォーター」となっていて、レモン・ジュースではなく、ライム・ジュースを使っています。

 なお、ご承知の方も多いかもしれませんが、欧米では「ジン アンド トニック(Gin and Tonic)」が正式な呼び方です(英国やアイルランドでは、略して「G and T」と言うこともあります)。

 「ジン・トニック」は、トニック・ウォーター自体が明治の開国直後から輸入されていたことからも、日本にも早い時代に伝わっていたことは間違いありませんが、カクテルブックに登場するのは、戦後の1950年代になってからです。

【確認できる日本初出資料】 「壽屋カクテルブック」(1955年)。レシピは「ジン45cc、レモン輪切り1片、砕氷、ジンと氷を8オンスタンブラーに入れ、キニーネ水(※トニック・ウォーターのこと)でいっぱいにし、レモンの輪切りを浮かべて提供する」となっています。

34.ジン・フィズ(Gin Fizz)

【現代の標準的なレシピ】 ジン(45)、レモン・ジュース(15)、シュガー・シロップ1tsp、氷、レモン・スライス、ソーダ(適量) 【スタイル】 ビルド(またはソーダ以外をシェイクしてからビルド)

 誕生の詳しい経緯等はよく分かっていませんが、1880年代のカクテルブックに登場していることからも、少なくとも1870年代までには生まれていたことは間違いありません。

 欧米のカクテルブックで「ジン・フィズ」が初めて紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、1884年に米国で出版された「Modern Bartender's Guide」(O. H. バイロン<Byron>著)です。レシピは、「オールドトム・ジン1ワイングラス、レモン・ジュース3~4dash、砂糖2分の1tsp、氷、炭酸水」となっています。

 ジン・フィズは、「カクテルの父」と呼ばれるジェリー・トーマス(Jerry Thomas)のカクテルブック「How To Mix Drinks」の1887年刊の第2版にも登場しています。トーマスのレシピは、「オランダ・ジン1ワイングラス、レモン・ジュース3dash、パウダー・シュガー1tsp、氷、炭酸水」となっています(バイロンのレシピと違って、ジンはオランダ・ジンを使っています)。

 いくつかの文献(Wikipedia日本語版も含む)では、「1888年に、ニュー・オーリンズのインペリアル・キャビネット・サロン(The Imperial Cabinet Saloon)のバーテンダー、ヘンリー・ラモス(Henry Ramos)が考案した」と紹介されていますが、トーマスの本の出版時期からしても、信憑性には疑問があります。

 なおヘンリー・ラモスは、1888年、通常のジン・フィズのレシピに卵白、生クリームなどを加えるレシピの「ラモス・ジン・フィズ」を考案したことで知られています。このフィズは、彼のバーの定番カクテルにもなりました。現代でもニュー・オーリンズを代表する人気カクテルです(出典:Wikipedia英語版)。ラモス氏を「ジン・フィズ」の考案者としている本は「ラモス・ジン・フィズ」と混同している可能性が大きいと思われます。

 「フィズ」とは炭酸のはじける音の擬音語です。炭酸の入るカクテルのことは、その後自然と、「***フィズ」と呼ばれるようになりました。今日では、スピリッツやリキュールにシロップ、レモン・ジュース、ソーダを加えてつくるカクテルを一般的に「***フィズ」と呼んでいます(カカオ・フィズ、バイオレット・フィズ等)。

 ジン・フィズは日本にも1920年代には伝わり、当時のカクテルブックにも紹介されています。トリスバーが全国に広がった1960年代のカクテルブックには、「ジン・フィズは、カカオ・フィズとともに、男性客が飲むカクテルの定番。女性客は、バイオレット・フィズ、スロージン・フィズの方がお好みだが」という記述も見られます。もちろん、現代では女性にも人気のカクテルの一つです。

【確認できる日本初出資料】 「カクテル(混合酒調合法)」(秋山徳蔵著、1924年刊)。掲載されているレシピは(少々長文ですが、興味深いのでそのまま紹介しますと)、「小さい調合器に砂糖中匙で一杯を入れ、水二匙を加えて溶かし、次にレモン一個分の搾り汁と、上等のジン一ジガー、および氷の塊三つ四つを入れ、充分にかき混ぜ合わせてハイボール・グラスか、またはパンチ・グラスに漉してうつします。サイフォン・ソーダを九分目までつぎ入れ、レモンの皮一そぎを押しつまんで浮かし、麦稈(から)をさしてすすめます」となっています。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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