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2017/09/16
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 66.オレンジ・ブロッサム(Orange Blossom)

【現代の標準的なレシピ1】
【同レシピ2】 ジン(40)、オレンジ・ジュース(60~80)、オレンジ・ビターズ1dash、氷(ロング・スタイル) ※甘味が足りない場合は、お好みでシュガー・シロップ(またはグレナディン・シロップ)少々を加える
【同レシピ3】 ジン(25)、コアントローまたはオレンジ・ジュース(25)、スイート・ベルモット(25)(ショート・スタイル) ※現在では主流ではないレシピですが、60年代までは普通につくられていました。
【スタイル】 シェイク 

 「オレンジ・ブロッサム」は1920年代初めに誕生したと伝わる古典的なカクテルの一つで、1920~50年代の欧米のカクテルブックにほぼ例外なく収録されています。ただし、誕生の経緯や命名の由来等は不明な点が多いカクテルです。

 禁酒法時代(1920~33)の1920年代、米ピッツバーク市のバーテンダー、ビリー・マロイ(Billy Malloy)氏が考案した(出典:欧米の複数のWeb専門サイト)と紹介されることも多いのですが、それを裏付ける資料は確認されておらず、信憑性はよく分かりません。1920年代初めのカクテルブックにすでに登場していることから、「(禁酒法以前の)1910年代末には誕生していた」という専門家もいます。

 オレンジ・ブロッサムはとくに、禁酒法時代=1920~33=の米国内の「もぐり酒場」で人気だったことでも有名です。考案の動機については、(1)禁酒法時代、ジュースを飲んでいるように見せかけ、隠れて酒を飲めるように考えた (2)禁酒法時代のジンに粗悪品が多かったため、その匂いをごまかすため、ジュースを混ぜた--の2説が伝わっていますが、その両方が理由とも考えられています。

 1920年代の当時の文献には、もぐり酒場や家庭でこのカクテルが飲まれていたエピソードや著名人が愛飲してた話が散見されます。しかし、ジンにオレンジ・ジュース混ぜるというシンプルな飲物であるがゆえ、禁酒法時代は粗悪なジンによる健康被害も後を絶たず、1934年の「エスクワイア・マガジン(Esquire magazine)」は、オレンジ・ブロッサムを「過去10年の最悪のドリンク」とも評しています。

 欧米のカクテルブックで「オレンジ・ブロッサム」が初めて登場するのは、現時点で確認できた限りでは、1919年に英国で出版された古典的な名著「ABC of Mixing Cocktails」(ハリー・マッケルホーン<Harry MacElhone>著)です。そのレシピは、「ジン(ゴードン)1Glass(約60ml)、オレンジ・ジュース1個分(シェイク)」となっています。

 さて、ご参考までに、1920~50年代の欧米のカクテルブックで「オレンジ・ブロッサム」がどのように紹介されてきたのかをざっと見てみましょう。

・「Cocktails: How To Mix Them」(Robert Vermeier著、1922年刊)英
 ジン4分の1ジル 【注ご参照】 (約35ml)、オレンジ・ジュース4分の1ジル、オレンジ・ビターズ数dash(シェイク)。もし甘味がさらに必要であればグレナディン・シロップ1dashを加える。
【注】 ジル(gill)は英米の液量単位=このレシピの場合は英国gillで、1gillは約140ml。米国の1gillは120ml。

・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英。2種類の「オレンジ・ブロッサム」が収録されています。
 (1)ドライ・ジン2分の1、コアントロー4分の1、スイート・ベルモット4分の1、飾り=チェリー(シェイク)
 (2)ドライ・ジン2分の1、オレンジ・ジュース2分の1(シェイク) 

・「The Artistry of Mixing Drinks」(Frank Meier著、1934年刊)仏
 ジン2分の1、オレンジ・ジュース2分の1、お好みでグレナディン・シロップを加える(シェイク)

・「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著、1934年刊)米。3種類が紹介されています(いずれもシェイク)。
 (1)ジン2分の1、コアントロー4分の1、スイート・ベルモット4分の1、オレンジ・ピール
 (2)ジン2分の1、オレンジ・ジュース2分の1、ナツメグ・パウダー(最後に上に振る)
 (3)ジン3分の2、オレンジ・ジュース3分の1、オレンジ・ビターズ1dash、グレナディン・シロップ1dash 

・「The Waldolf-Astoria Bar Book」(A.S. Crockett著、1935年刊)米
 ジン、オレンジ・ジュース、スイート・ベルモット各3分の1ずつ(シェイク) ※出版の前年の1934年、ウォルドルフ・アストリア・ホテルに宿泊したアイルランドの詩人に捧げられたものと伝わっています(出典:Irvin S. Cobb’s Own Recipe Book)。

・「Café Royal Cocktail Book」(W.J. Tarling著、1937年刊)英
 プリマス・ジン2分の1、オレンジ・ジュース2分の1(シェイク)

・「Trader Vic's Bartender's Guide」(Victor Bergeron著、1947年刊)米。3種類が紹介されています(いずれもシェイク)。
 (1)ジン1オンス、オレンジ・ジュース1.5オンス
 (2)ジン1.5オンス、オレンジ・ジュース半個分
 (3)オールドトム・ジン、オレンジ・ジュース、スイート・ベルモット各3分の1ずつ

・「The Official Mixer's Manual」(Patrick G. Duffy著、1948年刊)米
 ドライ・ジン2~3ジガー、オレンジ・ジュース1ジガー、お好みでパウダー・シュガーまたはシュガー・シロップを加える(ステア)

・「Esquire Drink Book」(Frederic Birmingham編、1956年刊)米。2種類が紹介されています(いずれもステア)
 (1)オールドトム・ジン、オレンジ・ジュース、スイート・ベルモット各3分の1ずつ
 (2)ドライジン2~3ジガー、オレンジ・ジュース1ジガー(お好みでパウダー・シュガーまたはシュガー・シロップを加える)

 オレンジ・ブロッサムのベースのジンは現代では、ドライ・ジンが一般的です。しかし、初期の頃は上記のように、プリマス・ジンやオールドトム・ジン(時にはジュネヴァーも!)など古典的なジンが使われることも少なくありませんでした。

 「オレンジ・ブロッサム」は、日本にも比較的早く伝わっており、1920年代のカクテルブックですでに登場しています。ジンとオレンジ・ジュースという極めてシンプルなカクテルであるため、近年のバーではあまり注目されることはありません。

 しかし、近年誕生した新種のオレンジを使ったり、新銘柄のオレンジ・ビターズを加えるなど、ひと工夫をしてソフィスティケートすれば、21世紀に進化した新しい「オレンジ・ブロッサム」が生まれてくる可能性もありますし、現代でも、上記のような(コアントローやスイート・ベルモットを使う)「オールド・スタイル」は、意外と新鮮な感じがして面白いのではないかと私は考えていますが、いかがでしょうか。

【確認できる日本初出資料】 「コクテール」(前田米吉著、1924年刊)。レシピは、「ジン2分の1、オレンジ・ジュース2分の1、オレンジ・ビターズ1dash、グレナディン・シロップ少々(シェイク)」となっていて、明らかに上記で紹介したRobert Vermeirの著書(1922年刊)のレシピを参考にしていることが伺えます。



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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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