Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2025/06/01
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WEBマガジン「リカル(LIQUL)」連載
【カクテル・ヒストリア第32回】
 「聖地」ハリーズ・ニューヨークバーは今

 フランス・パリにある「ハリーズ・ニューヨークバー(Harry's New York Bar)」は、カクテルの歴史を体現した「聖地」のような酒場である。1911年の創業。当初の店名は「ニューヨーク・バー」で、オーナーは元騎手の米国人だった。
 しかし1923年、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone、1890~1958)という英国人がこの店を買い取り、店名を現在のものに変えたことから、その素晴らしい歴史が始まった。

◆数多くの「スタンダード」誕生・発展に関わる
マッケルホーンは、カクテルの歴史を語るうえで欠かせない人物である。バーテンダーの先駆者であり、サイドカーやホワイトレディ(末尾【注】ご参照)」、ブラッディ・メアリー、フレンチ75など、今日でも不動の人気を誇るスタンダード・カクテルの誕生・発展に関わったほか、1919年には、世界で初めての実用的カクテルブックとして歴史に残る「ABC of Mixing Cocktails」も著した( 写真右 =ハリーズ・バーを代表するカクテル。左からフレンチ75、ブラッディ・メアリー、サイドカー)。

店は第二次世界大戦中、ドイツ軍のパリ占領で閉店を余儀なくされ一家はロンドンへ避難。大戦終結2年後の1947年、ハリーは次男アンドリュー(Andrew)とともにパリに戻り、営業を再開した。そして、1950年代半ばには、店の経営を徐々にアンドリューに任せるようになった。

創業者のハリーは1958年、68歳で激動の生涯を終えたが、店の歴史と経営は、アンドリューからその長男のダンカン(Duncan)へ、そしてダンカンの妻イザベル(Isabelle)に継承され、さらに2020年代以降は、ダンカンの長男フランツ・アーサー(Franz-Arthur 2025年現在37歳)へと、「マッケルホーン・ファミリー」4世代でバトンが受け継がれている。

◆何が変わって、何が変わっていないのか
一つのバーが100年続くというのは、稀有なこと。それがカクテル史に名を残すバーであればなおさらだ。カクテル史を追究してきた筆者が一番興味を抱くのは、この100年間で「ハリーズ・ニューヨークバー」はどう変わったのか、何が変わって、何が変わっていないのか、である。現在のドリンク・メニューはどうなっているのかも、とても気になっていた。

そこで、筆者の親しい友人で、ここ数年、パリで年間3~4カ月は暮らしているという方(Usukura氏)に先般、滞在中この酒場へ何度も足を運んでもらい、写真も含めた定期的なレポートをお願いした。具体的には、有名なカクテルの数々を実際に味わい、写真を撮ってきてもらうこと、そして「可能であれば、店のドリンク・メニューを一部もらってきてほしい」と頼んだ。

友人は、そんな私のややこしい依頼を快く引き受けてくれた。店に通い詰めて、Dさんというバーテンダーとも親しくなってくれた(笑)。私のバーや私の顔写真を友人から見せられたDさんは、「そんなに興味もってくれる人なら、ぜひ差し上げて」と快く、店のメニューの実物をくれた( 写真右 =店内のボトル棚には響、山崎、白州、イチローズ・モルトなど日本のウイスキーも)。

メニューはA4横長サイズで4頁。1頁目は店の歴史を、創業者ハリーの写真とともに簡単に紹介。2~3頁目で、店の「レジェンド・カクテル」やウオッカベース、シャンパンベースのカクテルなどを紹介。4頁目では、ジンやラム、テキーラ、ウイスキーをベースした店の最近のオリジナルらしきカクテルを載せている。

◆現在のメニューにみる「レジェンド・カクテル」は?
ちなみに店が「レジェンド・カクテル」としているのは、ブラッディ・メアリー、フレンチ75、ブールヴァルディア、サイドカー、コロネーション、ジェームズ・ボンド、アポテーケ・カクテルの7つ。なぜかホワイトレディは入っていない(ちなみに、お値段は1杯15~16.5ユーロ)。

このうち、「ジェームズ・ボンド」というカクテルのレシピは、007映画で有名な「ヴェスパー(ボンド・マティーニ)」とはまったく違い、「ビターズを振りかけた角砂糖をシャンパン・グラスの底に置き、ウオッカを注ぎ、シャンパンで満たす。最後にレモンピールを」というもの。「フレンチ75のウオッカ版」という感じだろうか。

また、ドイツ語で「薬局」という意味を持つ「アポテーケ・カクテル」は、「フェルネット・ブランカ、スイート・ベルモット、ホワイトミント・リキュール」というレシピで、かなりハーブ系の薬っぽい味わいのカクテルなのだろうが、私は正直、初めて聞く名前だった。

友人には、「とりあえず、最低限、サイドカー、ホワイトレディ、ブラッディ・メアリーは飲んできてくれ」と頼んだ。友人の感想は、「味は普通に美味しかったが、グラスが大き過ぎて(分量が約200ccも!)、1杯だけで酔ってしまいそうだった」というものだった。

◆100周年を記念して豪華な写真集
 店は、2011年に創業100年を迎えた。それを祝って同年、「Harry’s Bar:The Original」という豪華な写真集= 写真右 =もつくった。この本の中では、1920~30年代にハリーズ・バーで働いていて、「ブラッディ・メアリー」の考案者とも伝わる、ピート・プティオ(Pete Petiot)氏の誕生秘話(1967年のインタビュー内容)も収録されていて、とても興味深い。

欧米のパブには、200年~300年続く店は少なくない。しかし店は長く続いていても経営者はその時代、時代で代わってゆく例が多い。そんな中、「ハリーズ・ニューヨークバー」がファミリー経営を維持しながら、100年以上、その歴史と伝統とバー文化を守ってくれている。

個人的には、世界中のカクテル・ファン、バー・ファンに愛されているこの酒場が末永く続き、カクテル史に新たな足跡を残してくれることを心から願っている。

【注】 ホワイトレディは、当初マッケルホーンが1919年に考案した際はミント・リキュールがベースだったが、10年後、現在の「スタンダード」であるジン・ベースに変更された。一方、サヴォイ・ホテルの名バーテンダー、ハリー・クラドックが同時期に考案したという説もあるが、現在では両者とも考案者とみる見方が主流だ。


【追記】掲載写真のうち、店内外やカクテルの写真はKohsuke Usukura氏撮影(写真の著作権も同氏)。 【以下は、本文で使用できなかったUsukura氏撮影の写真】
























・WEBマガジン「リカル(LIQUL)」上での連載をご覧になりたい方は、 こちらへ

・連載「カクテル・ヒストリア」過去分は、 こちらへ







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うらんかんろ

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Comments

kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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