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June 23, 2015
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カテゴリ: 教授の読書日記
 前に大学院の演習で、院生と一緒にカナダのノーベル文学賞受賞者、アリス・マンローの短篇を翻訳していると書きましたが、ようやく一本、訳し終りそうなところまで来まして。

 読んでいたのは「The Eye」という短編。小学校に入るか入らないかという年齢の女の子とその母親との微妙な関係がベースにあって、それで母親に親しみが持てない分、お手伝いに来てくれていた年上のお姉さんに強い親近感を抱くものの、そのお姉さんが交通事故死してしまって・・・ってなことが描かれているのですけれども、母―娘―他人のお姉さんという三人の女性の関係が面白く、また小学校に入ったばかり、というような女の子が母親を批判的に眺めている様子を見ると、女性ってのは、こんなに小さい時から女性なんだ、っていうのがよく分かってとても面白い。

 だけど、アリス・マンローの英語って、なんだかこう、どこかぎこちないというのか、「これ、本当にネイティヴの英語?」的な、不思議な破格があるような気がします。まあ、そこがまた妙な面白さだったりするのですが。

 例えばねえ、次の英文って、文法的に正しいでしょうか?


 I was not surprised then and not in the least scared. Instantly, this sight fell into everything I knew about Sadie and somehow, as well, into whatever special experience was owing to myself.


これ、どういう場面かと言いますと、主人公の少女が親しみを抱いていたセイディーというお姉さんが自動車事故で死んで、今、葬儀が行われているのですけど、少女がセイディーの遺体を見つめていると、遺体の目がかすかに開いて、少女のことを見返した、というところ。だから、最初の文は、「(死んでいるはずのセイディーの目が開いたけれど)私は少しも驚きもしなければ、怖いとも思わなかった」ということなんですな。

 次の文の「this sight」というのは、死んだセイディーの目が開いた、その光景。それが「fell into everything I knew about Sadie」だった、というのは、「私がセイディーについて知っているすべてのこととすぐに符号した」ということ。つまり、セイディーだったら、たとえ死んだとしても目ぐらい開けるでしょう、私が知る限り、セイディーってそういう人だもん、ということですな。ここまでは分る。

 問題はその次です。

 「... and somehow, as well, into whatever special experience was owing to myself.」って・・・。これ、どう解釈すればいいの?



 で、あまり分らないので、この文章全体をキーワードにしてネット検索してみたら、出るわ出るわ、色々なコメントが出てきた。

 要するに、ネイティヴですら、この文章の文法構造が分らないわけ。それで、あーじゃないか、こーじゃないかと論じ合っているんですな。単語やら何やらを補ったりしながら。

 これは甚だしい例ですけれども、アリス・マンローの文章って、しばしばこんな感じの文法的破綻、あるいは破綻スレスレのものがあって、そこが難しくもあり、また面白くもあるって感じかな。

 ま、そんなところも含めて、アリス・マンロー、楽しんでおります。







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Last updated  June 23, 2015 10:43:34 PM
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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