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March 23, 2024
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カテゴリ: 教授の読書日記
春休みになって多少なりとも気が抜けたこともあり、今は仕事以外の本をよく読んでおります。で、最近読んだ本の一冊がコレ。ディアナ・レイバーン著『暗殺者たちに口紅を』。小学校以来の親友Tから勧められたもので。

 本作の主要登場人物は、4人の女性、それも60歳・還暦を迎えた妙齢の女性たちでありまして、その彼女たちが、勤め先から定年祝いとして招待された豪華客船ツアーで久々に顔をそろえるというところから小説は始まります。

 で、それだけだと、なんだ、定年を迎えた社員に豪華クルーズをプレゼントするなんて豪勢な会社だなと思いますが、実は彼女たちの勤め先というのは「美術館」という秘密組織、それも暗殺組織なのね。これは元々はナチス・ドイツの残党を成敗し、彼らが不当に略奪した美術品などを回収して元の持主に返却するために組織された独立組織だったんですけど、ナチスの残党が少なくなってからは、テロ首謀者とか、児童誘拐組織とか、そういう悪い連中を超法規的に抹殺することをもっぱら行ってきた。で、今回集まったビリー、ヘレン、メアリー、ナタリーの4人も長年この組織で暗殺者を務めてきて、60歳を期に引退とあいなった。まあ、暗殺ですから、年齢的なものからくる体力の減退とかありますからね。この辺が潮時だろうと。

 で、今までの暗殺者としての仕事から解放される喜びと、一抹の寂しさを抱えながら、とにかく今はバカンスを楽しもうとしていた4人ですが、このクルーズ船の中に「美術館」の暗殺者がクルーとして紛れ込んでいることを発見してしまうと。

 ということは、組織がこの船の中で誰かを暗殺しようとしていることは明白ですが、では誰を殺そうとしているのか、と探っていったところ、どうやら標的は自分たち4人であることが判明。定年祝いの豪華クルーズをプレゼント、などと言い条、実は組織は口実をつけて4人を集め、まとめて殺そうとしていたんですな。

 もちろん、そんな罠にひっかかるタマではない4人は、暗殺者を逆襲し、客船に乗り合わせた他の一般人を避難させた上で船を爆破、一応、4人は死んだものと思わせる細工をして逃走します。

 が、組織がその程度の小細工をうのみにするはずがない。すぐに次の刺客を送ってくることが予想されるわけです。そこでビリーたち4人の女性暗殺者集団は、組織がなぜ自分たちの命を狙ったのかを探ったところ、彼女たちは組織内の理事の誰かから罠にはめられ、冤罪を背負わされたことがわかった。

 もうこうなったら、逆襲するしかない! 4人は、老骨に鞭うって、暗殺組織のトップの連中を片端から始末することを決意。さて、組織対還暦レディーたちの暗殺合戦、どちらに軍配が上がるか??!!

 ・・・というお話。まあ、コテコテとはいえ、そこそこ面白い話ではありました。



 ↓

暗殺者たちに口紅を (創元推理文庫) [ ディアナ・レイバーン ]


 ところで、先日、小説の書き方本として非常に面白い『物語のつくり方』という本を読んだばかりなので、私としては当然、「物語のつくり方」目線でこの小説を読んでしまったわけですよ。

 『物語のつくり方』によれば、シナリオとか小説っちゅーのは、要するに主人公に困難な状況を与えて、主人公がそれを克服するのを描けばいいんだと。

 それを『暗殺者たちに口紅を』に当てはめれば、確かに4人の暗殺者レディーが、自分たちへの暗殺指令に直面するという困難な状況が与えられ、その状況を克服できるかどうかに自分たちの命が掛かっている状態なのですから、この条件をクリアしていることが分かる。

 またシナリオ・小説にはすべて「○○は、××だ」と一言で表現できるテーマがあるべきだそうですが、そう考えるとこの小説のテーマは、「女性同士の友情は、大切だ」かな。そしてこのテーマを表現するモチーフは、「暗殺者の世界」かな。

 次、「素材」は天(時代)・地(場所)・人で考えるのだけど、それはそれぞれ「現代」「イギリス」「暗殺者組織に狙われているベテラン暗殺者4人」ですね。

 で、物語の構成、すなわち「起承転結」ですが、「転」がテーマそのもの、すなわち「女性同士の友情は、大切だ」なんだから、「起」はその逆、すなわち「女性同士はうまく行かない」になっていればいい。つまり、同僚とはいえそれほど仲良しではない4人がバラバラに登場し、その性格や生活ぶりの違いを強調すればいい。で、その性格も生活も違う4人が、その違いを克服しながら協力しあって困難を克服する様を描くのが「承」の役目と。実際、そうなっているし。

 さて、その上で、本作の構成上の問題点を指摘するとすると、多分、「主人公が多すぎる」ということだと思います。だって4人もいるんだもん。確かに、小説の語り手はビリーで、その意味では主人公は一人と言ってもいいのだけど、それでも4人の暗殺者が登場しちゃいますから、それぞれを個性的に描かなければならないところはある。そうなると、「公生活・私生活」の両方が描かれる「ラウンド・キャラクター」が4人もいることになるので、これはちょっと混乱してしまう。

 実際、本作の弱みは、そこにあると思います。




これこれ!
 ↓

プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方 [ 新井 一樹 ]


 というわけで、『暗殺者たちに口紅を』を、『物語のつくり方』を参考にしながら読むという、面白い読み方が出来て、結構、楽しめたのでした。





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Last updated  March 23, 2024 01:21:20 PM
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