『福島の歴史物語」

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2008.02.17
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寂滅

(三春町州伝寺にある松下石見守重綱の墓。法名が削り取られて判読が出来ない)

      あ と が き

 私は約三十年も以前、初代・三春歴史民俗資料館長で今は亡き松本登先生に「三春町斉藤字里山の山林に隠れ切支丹の墓がある」と教えられていた。しかし地方史に余り興味のなかった当時、私はこのことをすっかり忘れてしまっていた。そしてつい先年、三春町史に次の文章を見たとき、この隠れ切支丹の墓を思い出したのである。

  キリシタン
  (前略・三春城の引き渡しが)このように大げさになったのは、
 『会津藩家世実記』によるところでは、「城地受取の節に、自然の
 警固として近国の大名たちが次第に下向した」ことを、三春の家臣
 たちが聞きつけて、「われわれは、切支丹でもないのに、理由もな
 く御誅伐されるよりは、籠城して自分らの心底を訴え、聞き届けら
 れない時は、城を枕にして討死にしようと決議し、にわかに城中に
 たてこもった。」という情報が伝わったことによったのである。
  城引き渡しが済むと、末子松千代は江戸へ護送され、山内忠義へ
 預けられた。この長綱の乱心の核心の問題である「切支丹」の件に
 ついては、あながち、長綱の妄想とばかりはいえなかった。重長帰
 府の翌日、『大猷院殿御実記』は、「松下石見守長綱家士二人邪宗を
 尊奉する聞こえにより、府に召て責問せらる」の記事を載せている。   
  (後略)
  乱心の病理
  もう一つ、長綱の乱心は、病理的にどう判断されるであろうかと
 いう問題がある。加藤明成兄弟の行状に関する記事を並べ、「長綱
 幼稚たれば」、「発狂しければ」を重ねていくと、そこに生来の病理
 的要因があったのではないかとの疑念をいだかせられる。
  (中略)
  とまれ、嫡子に先立たれ、異郷に幽囚の晩年を送った長綱は、法
 号の削り取られた父・州伝寺殿の石碑とともに、悲劇的存在ではあ
 った。
  (後略)

 この記述を見て考えたことは、『隠れ』ている『切支丹』が、藩主に知られるような行動をとるだろうか? しかしそうはしないと考えれば、藩主自体が切支丹であったと考えざるを得ない、ということである。

 私はこの小説を書く前に、墓のあるという現地へ行ってみた。しかし見つけることはできなかった。そしてこの小説がはからずも第三十回歴史文学賞の第三次選考通過を知ったとき、今度こそ徹底的に探してみようと再び現地を訪れた。しかし判明したのは、土地の所有者がブルを使って畑に整地したとき、行方不明になってしまったということであった。
 ところが折りよく二代・三春歴史民俗資料館長の原宏氏と会う機会があり、このことを尋ねたところ、彼が昭和三十年代に調査したときのメモを頂くことができたのである。これをここに掲載する。
 なお、なぜ法号が削られたかを訊いたところ、
「精神病とその予防のため、町の人たちが石碑を削った粉を飲んだ」との答えであった。
「しかし精神病を患った長綱の墓ではなく、病気とは関係のない父の重綱の墓ではおかしいのではないか?」という私の質問に、
「長綱が重綱と勘違いされたのではないか」とのことであった。しかし私は、そうではないと考えた。
 三春町史にある「長綱幼稚たれば」、「発狂しければ」という言葉から、藩主・長綱を快く思わないグループ、つまり長綱が隠れえキリシタンであると知っていたグループが、浪人とならざるを得なかったことに対しての恨みと考える。とは言っても旧藩主の石碑である。そうするにはそうする言い訳が必要であった。その言い訳こそが精神病であったのではあるまいか。実際に石を削って粉にして飲むということは、考えにくいのである。

2008-02-15 11:01:37

        (原宏氏の書かれた「隠れ切支丹の墓」の図面)



    第三十回歴史文学賞の経緯(寂滅)

 第三十回歴史文学賞第一次選考発表
          (歴史読本 二〇〇五年十一月号より)
 ●九十三篇が第一次選考を通過!
 第三十回歴史文学賞第一次選考の結果、応募総数三百五十二篇のうち、次の九十三篇が第二次選考に残りました(順不同)。第二次選考の結果は本誌十二月号で発表します。

 第三十回歴史文学賞第二次選考・三十三編・発表
          (歴史読本 二〇〇五年十二月号より)
 ■新人物往来社が主催する第三十回歴史文学賞に数多くのご応募ありがとうございます。
 先頃おこなわれました第二次選考におきまして、次の三十三篇の作品が通過いたしました(順不同)。最終候補作品の発表は、本誌「歴史読本」一月号の誌上にておこないます。

 第三十回歴史文学賞最終候補作品発表
          (歴史読本 二〇〇六年一月号より)
 ●最終候補作は六篇! 受賞作は本誌来月号誌上で発表!
 【第三次選考通過作品 十六篇】
  「土蔵の中の道伯」        森 祐太郎 (東京都)
  「道寸の海」           石井 竜生 (神奈川県)
  「阿修羅記」           万城目 学 (東京都)
  「遠き歌霊ム晩年の紀貫之」    赤巖 隆  (三重県)
  「貞享暦事始」          小山 鎮男 (神奈川県)
  「渡河」             白川 悠紀 (福島県)
  「雨、土塊を破らず」       竹野内 京山(愛知県)
  「招かざる象ム享保の象の真相」  矢元 竜  (東京都)
  「かねと殊法」          大友 一一 (新潟県)
  「備中高松城和議談判・安国寺恵瓊の賭け」研田聡介(東京都)
  「以蔵の焚書」          牧 秀彦  (東京都)
  「美弥の留記」          班田 個太郎(大阪府)
  「来る者は拒まず」        浅川 遊  (東京都)
  「寂滅」             橋本 捨五郎(福島県)
  「三別抄耽羅戦記」        金 重 明 (東京都)
  「坊門のやんちゃ姫」       宮崎 空夫 (群馬県)

 【最終候補作六篇】
  「阿修羅記」           万城目 学 (東京都)
  「渡河」             白川 悠紀 (福島県)
  「招かざる象ム享保の象の真相」  矢元 竜  (東京都)
  「備中高松城和議談判・安国寺恵瓊の賭け」研田聡介(東京都)
  「三別抄耽羅戦記」        金 重 明 (東京都)
  「坊門のやんちゃ姫」       宮崎 空夫 (群馬県)

* 選考委員(伊藤桂一・早乙女貢・津本陽)による選考結果、および受賞作品は、『歴史読本』二〇〇六年新春二月号誌上で発表いたします。候補作の六篇はいずれ劣らぬ力作ぞろいです。歴史文学の新しい星の誕生にご期待ください。
               〈新人物往来社歴史文学賞係〉

     ◇     ◇     ◇

       参 考 文 献
  一九八四 三春町史                  三春町   凸版印刷
  一九九四 復元・江戸情報地図    天羽直之 朝日新聞社
  圓明寺案内             圓明寺 愛媛県松山市

       お世話になった方々   (敬称略)
          三春町歴史民俗資料館    福島県三春町
          故・松 本 登       福島県三春町
          原     宏       福島県三春町
          山 口 篤 二       茨城県古河市






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最終更新日  2012.04.15 21:36:32
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