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マルクスの「ヘーゲル弁証法」批判(その3)
前回は、エンゲルスの『フォイエルバッハ論』が、マルクスの「ヘーゲル弁証法」批判を読み解いていく上での一つの道になると、私などの基本を紹介しました。
しかし、大きな山に登る上では、さまざまな道があるとおもうし、ひとそれぞれに、これまでにもいろいろな努力があったと思います。
今回の紹介は、マルクス自身による自分のあゆみについての自己紹介です。
『経済学批判』の「序言」(1859年1月)ですが。
日本では、『大君の都』のオールコックが駐日領事としてやってきた、幕末の時点です。
『経済学批判』「序言」は、マルクスが唯物史観を一般的に定式化したものとして紹介されます。
「私の研究にとって、導きの糸として役だった一般的結論は、簡単にいえば次のように定式化することができる。人間は、彼らの生活の社会的生産において、一定の、必然的な、彼らの意志から独立した諸関係に、すなわち彼らの物質的生産諸力の一定の発展段階に対応する生産諸関係にはいる。・・・」
マルクスといえば唯物史観、唯物史観といえばこの基本的な定式が紹介されるといった有名な部分です。たしかに唯物史観を、簡潔にして包括的にまとめられていますから、その説明には必ずといってよいくらいに、くり返しこの箇所が取り上げられてきました。
私などが「序言」を注目する点ですが
しかし、私などがこの「序言」を注目するのは、その唯物史観の内容紹介をしている点もさることながら、同時にマルクスがここで、どのような経過から、どの様な問題とぶつかるなかで、そうした理論が探究課題となったのか、その全体的なながれ、その考察の筋道を自己紹介している点に注目しているんです。
マルクス自身の自己紹介です。
「1842年から1843年にかけて、『ライン新聞』の編集者として、はじめて私は、いわゆる物質的利害関係に口だしせざるをえないという困った破目におちいった。・・・・」「私を悩ました疑問の解決のために企てた最初の仕事は、ヘーゲルの法哲学の批判的検討であって、その仕事の序説は、1844年にパリで発行された『独仏年誌』に掲載された。私の研究の到達した結果は次のことだった」と。
私などの今回の主題-「マルクスはどのように『ヘーゲル弁証法』を批判したのか」ですが、この唯物弁証法の問題ですが、ここでの自己紹介の中に、確かに含まれているとおもいます。
ただこの「序言」は、歴史観として多くの人に注目され紹介されるわりには、その哲学的な側面については、あまり紹介されることがないと思うんですが、どうでしょうか。
大事にしたい真下信一氏の講演
最近、認識を新たにしたラジオ講演があります。
『真下信一著作集1 学問と人生』(青木書店 1979年刊行)の中の、「カール・マルクス その人と思想」なんですが。NHKラジオで、1977年3月に3回にわたって講演されたものとのこと。
真下信一氏(1906-1985)は、図書館くらいでしか見ることは出来ないと思いますが。
マルクスが、『共産党宣言』(1848年)にいたるまでの、若いころのあゆみを、哲学者の立場から、生き生きと紹介してくれています。
その講演の第二回目ですが、パリ時代の『独仏年誌』からブリュッセルでの『ドイツ・イデォロギー』のころの生きた活動を紹介してくれています。この中で、唯物弁証法にいついて述べています。基本的なことですが、哲学として唯物論とは何か、についても述べられています。
この講演の終わりの部分ですが、
「私じしんについての懐古」として、次のような点を紹介しています。
「ここでひとこと断っておかなければならないことがあります。それはマルクス自身は自分の哲学をとくに体系立てて述べているわけではないということです。多少ともまとまっているのは、いま取り上げているごく簡単な『フォイエルバッハ・テーゼ』くらいのものでしょうか。彼の哲学を、哲学として体系立てて精密化したのは、エンゲルスと、彼の後をついだレーニンでした。そういう次第ですから、マルクス主義の哲学を深く知るには、どうしても少なくともエンゲルスの『空想から科学へ』とか、『フォイエルバッハ論』とかの論文、また『反デューリング論』および『自然の弁証法』、それから、レーニンの『唯物論と経験批判論』および『哲学ノート』を勉強する必要があると思います。・・・』(P242)
このアドバイスですが、忙しい現代人にとっては簡単ではない宿題かとおもいます。しかし私などおもうに、現代をひらくためには、その学習がやはり必要だと思うんですよ。
私などは、今回は、マルクスが「ヘーゲル弁証法」をどのように批判したのか、を課題として立てているわけですが、マルクス自身が開拓してきた事柄ですし、故真下信一氏も提起している課題でもあること。このことを確認しつつ、さらに前にすすみたいと思います。
マルクス『経済学哲学手稿』「ヘーゲル弁… 2024年09月20日
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