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『ある日本共産党地区委員長の日記』(鈴木謙次著)
を紹介します
これまで日本共産党に関する本というのは、だいたい自己の変節をかくしての共産党論か、共産党の外部の知識人から共産党を注目したもの、ないし圧倒的には共産党自身の立場から書かれたものだったんじゃないでしょうか。
そうした中、今回紹介するのは、
『ある日本共産党地区委員長の日記』(鈴木謙次著 あけび書房 2024年5月1日刊行 2420円)です。
これは、れっきとした共産党の役職をつとめてきた人が、もちろんこの本もそうしたポリシーに立って書かれているものです。
一つの時代を地区委員長として活動されて、そこで直面した出来事や見解のさまざまな事柄ですが、記録されています。もちろん私などには、そこにある個々の問題の是非を判断できるような自分の存在ではないんですが。しかし、一つの時期を苦闘努力されてきた、その生の記録であることは、私も同時代を生きてきたものとして、客観的な時代性が重なるので、そのことだけはわかるんですね。
これは、私などは、日本共産党版の「ルソーの『告白』」といったもののように感じます。
これって、難しいんですよね。
渦中の中にいる人が、それを記録に残すなんてことは、よほど自己意識がないと、忙しさに振り回されてそれどころじゃないじゃないですか。
ましてや組織のなかで活動してきた人が、自己の個人を自覚して、その個人の立場から組織の客観性に対する認識を活字にして書くということは。「内部問題は、組織のなかで議論するのはOKだけど、外に対しては統一性をはかるために出してはならない」との規約ルールがあるじゃないですか。これはこれで、討論クラブに陥らせないための当然のルールですね。したがって、現役の立場では出来ないことですね。
しかし、現役を退職した人が、政治路線と節度を守りつつ、みずからの体験したことを、みずからの責任で、その客観性をふりかえってみる。これは、専制国家だった革命前のロシアや、戦前の治安維持法下の日本では、そもそもありえない自由です。しかし、民主主義的な社会条件の下では、戦後の日本国憲法のもとでは、一定の節度を守ってのことですが、それは個人の権利として、ありうる権利であり、人権だと思います。
たとえて言えば、国家公務員にも秘守義務がありますが、ある期間の後には時効というか、情報・記録の公開ということもあるじゃないですか。
これもそうした問題に属すると思います。
まぁ、素人の私には、問題の法律的な理解や解釈というのは、いたって妖しいものですが。
そうした問題をもちつつ、刊行されたこの本ですが、これは、発達した資本主義国の、共産党の民主主義的な組織人のありかたということに一石を投じているものとして、新たな領域をひらく試みとしてうけとめました。またその内容としては『善意による労作』として読まさせていただきました。ここには現役人にとっても、生かすべき問題がいっぱいあるし、国民にとっても一つの自己成長の記録をしめす。今日の民主主義的社会において、新たな共産党のあり方を提起しているものとして、読ませていただきました。
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