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図書館で借りてきました。
原作者ジョン・フォード版『ロミオとジュリエット』
というべき『 あわれ彼女は娼婦 』。
イタリアのパルマを舞台に近親婚の禁忌を犯した兄妹の純愛と悲劇
なのですが、
小田島雄志先生の名訳で、とても読みやすかったです。
なんでもあり
にみえる21世紀現在でも数少ない恋愛のタブー、
ましてや17世紀の発表当時はセンセーショナルだったと思われますが、
主人公たちをとりまく周囲のドロドロ感が半端なく
逆に愛し合う兄妹が純粋で清らかに浮かび上がってくる不思議。
求婚者たちのあらそい、恨み多きソランゾ卿
とまちがえて罪もないヴァーゲット
を殺害したグリマルディ
は貴族で枢機卿の縁故であるがゆえに
罪の裁きもうけず
ローマに送還されただけにとどまり、
コキュにされた復讐のために、恋敵をおびきよせてだまし討ちするべく
ソランゾが催した宴の席は血で血を洗う死闘の修羅場となり
結果ソランゾもジョバンニも討たれ
(愛する妹のアナベラは饗宴の直前にジョバンニに心臓を一突きされて
永遠の眠りについているので事実上の心中?)、
それぞれの財宝は枢機卿が没収して
ローマ教皇庁に寄進することを宣言して幕。
なんとも無残な悲劇の結末ですが、
これは腐敗した?カトリックの本拠地ローマ教皇庁に
対するあてこすり
および英国国教会に媚びへつらっているのでは
とかんぐってしまいます
(エリザベス女王の父・ヘンリ―8世がお妃を次々とりかえるために
離婚を許さないカトリックから離脱して設立したのが英国国教会😅😅)。
兄妹間の熱烈な禁断の愛と妊娠
をカモフラージュする当て馬として
アナベラが結婚を了承したソランゾ卿は
この点ではまったく被害者なのですが、
あろうことか婚礼の席で
かつて自分がもてあそんで捨てた人妻に旧悪をばらされる
失態あり、
みずからの不行跡はたなにあげて
コキュにされたことに怒り狂い
新妻を責めさいなむモラハラ夫
で、あまり同情できない不遜な人物に描かれている
のは劇として上手い、
その従者でスペイン人のヴァスケスは非常に有能で忠実な召使としてキャラが立っており
人妻と相通じるとみせかけて主人を毒殺から救ったり
アナベラの乳母を篭絡して
お腹の子の父親を探り出したりと大活躍。
これは舞台観劇したくなる、
憎らしい悪党か、
主人に誠をつくす忠臣か、
その両方か、
ヴァスケスを演じる俳優さんの表現によって
ずいぶん印象が変わりそうです。
1961年にあのルキノ・ヴィスコンティ演出でパリで上演されたときの主役は
当時婚約中だった
若き日のアラン・ドロンとロミー・シュナイダー。
文字通り花も色褪せるほどに、美しい御二方だったことでしょう。
1971年にはシャーロット・ランプリング主演で
『 さらば美しき人 』の邦題で映画化されています。
残念ながら今のところネット配信はないようですが
ソフト化されていて DVD は手に入りやすそうです。
いつかみたいのですが・・・
きっと映画版は悲恋に重点がおかれて、
ソランゾ卿の従者ごとき脇役は登場しないかもしれませんね😅。
堀絢子さん。 2024.11.25
名訳『マザー・グースのうた』。 2024.11.20
二十億光年の孤独。 2024.11.19