草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2019年05月09日
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第 四百三十一 回 目

  ババもの「 理想の 教育者 」  ―― 台本候補の試作として

 時代:現代

 人物:若い女性たち ババ その他

 場所:或る女子学校

   教室の中

 年頃の娘たちが今テストを受けている。監督しているのは謹厳な表情をしたババである。

 生徒の一「先生、質問です」と手を上げた。

 ババ「何ですか、質問と言うのは?」



 ババ「一寸、待って下さい。順番に対応しますので」と、生徒の一の所に歩み寄った。

 生徒の一「この漢字ですが授業で習っていません。意味を教えてください」

 ババ「(ムッとしている)今はテストの時間です、とにかく今現在の自分の力で回答しなさい」と

次に手を上げた生徒の二の所に向かった。不満そうな表情の生徒の一。

 ババ「質問は何ですか?」

 生徒の二「この質問ですが、よく意味がわかりません。分かるように説明して下さい」

 ババ「いいですか、今はテストの時間です。質問は授業の時にして下さい」と生徒を無視して行って

しまう。生徒の二はムッとしている。

 生徒の三、四と次々に「先生、質問です」と手を上げた。

  期間経過。元の教室でババが話をしている。

 ババ「分かりましたか。テストは皆さんの現在の実力を試すもので、質問をする時間ではありませ



 生徒の一「でも、漢字が、意味の分からない漢字が出てきたのでは、実力の出し様がありません」

 生徒の二「そうです、それに問題の意味が分からなくては、答えの出し様がありません」

 その他の生徒たちも一様に「そうです」、「同感です」などと不満そうな声を発している。

 ババ「分かりました。皆さんの勉強に対する姿勢そのものが問題なのです。テストがどうのこうのと

いう事ではない事が、よく分かりました。吾が教師の資格もないのに、この学校に呼ばれた意味がここ



 生徒たちは皆が一様に緊張している。

 ババ「吾は話が上手ではないので、皆さんと一緒に話合って行きたい。それで協力をお願いしている

のですから、難しい事は少しもありませんよ。吾は勉強とは自分を自分で大きくする事だと考えて

いますが、皆さんはどう考えるのでしょうか」

 生徒の一「私は、学校に来て先生から教えてもらうのが勉強だと思います」

 ババ「学校に来なくても、先生から教えてもらわなくても、勉強は出来ますよ」

 生徒の二「分からない事だらけなので、自分一人では出来ません」

 ババ「教科書に易しく、丁寧に説明されている。それをよく読めばよいのですから、一人でできます

が」

 生徒の三「でも、教科書を読むのが面倒なのです。難しい事なのです」

 生徒の四「一人では難しいので、学校に来て、先生に教えてもらいたいのです」

 ババ「先生ではなく、教えてくれるのは教科書だと考えみたらどうでしょう。教科書は学校に来なくて

も読めますね」

 生徒たちは口々に「それが難しい」、「面倒だ」、「大変だ」などと呟いている。ババはそんな生徒達

を見渡して、

 ババ「実は、吾もみんなの気持ちがよく分かる。あなた方と同じくらいの年頃の頃には、吾も勉強が

大嫌いだったから」

 「うわっー、話がわかる」、「イカしてる」、「ナイス」などと声を発している。

 ババ「いいですか、皆さん。問題はここからなのです。勉強が大切だと言う事は変わらない。一体、

どうしたらよいでしょう、一緒に考えてみましょう」

 生徒の四「教科書をよく読む、繰り返し」

 生徒の五「分からない言葉が出てきたら辞書で調べる」

 生徒の一「自分で勉強する時間を少しずつ増やす」

 生徒の二「予習や復習を進んでする」

 ババ「そうです、その通りです。それが出来たらもう後は、何も言う事はありません」

 生徒達は全員が唖然としている。

 ババ「但し、言葉だけではダメですね。言ったことを確実に実行すること」

 生徒の四「本当にそんな簡単なことだったの」

 生徒の五「つまり、簡単じゃないってことでしょ、私たちが実際に勉強をするかどうかって事は」

 ババ「正しいと思ったら、直ちに実行する。それが本当に思うってことなのですよ」


       翌日の同じ教室

 ババが生徒の一と席を入れ替わって生徒の席に腰を掛け、生徒の一が教師役を務めている。

 生徒の一「今日は昨日の話し合いの結果を踏まえて、私が議長として授業の進行役を務めます。御

協力をお願い致します」

 ババ「吾は、この時間は生徒として発言しますので、そのつもりでお願いします」

 生徒の一「はい、分かりました。私、今日はなれない役割を振られていますので、ひどく緊張していま

す。不手際がありました手助けをお願いします。本題に入ります、何故私たち女性は自分自身を教育し、

社会の為に役立つ人間にしなければならないのか。結論から言いますと、自分自身の為になることだから

だと思います」

 生徒の二「特に女性は男性より成人として認められる年齢が早くきます。つまり結婚ですね。つまり

結婚と言う事になれば、子供を持つか持たないかの選択に迫られる。子供の親になればより多くの責任

が生ずるし、そうでなくともパートナーとの生活で責任ある社会人としての自覚を持たなければいけない

し…」

 生徒の一「素晴らしいご意見だと、感心しました」

 生徒の二「今現在の立場でも、勉強して自分の考えや生き方を、しっかりと見極めておかないと、後輩

からも馬鹿にされてしまうかも」

 生徒の三「これは私の祖父から聞いた話なのですが、私たちが生まれる前の日本では、学校に通いたく

ても通えない子供達が大勢いたそうです。特に女の子は男の子より低く見られていたので、それ程度が

ひどかったようです。今でも、世界中を見渡せば、そう言った子供たちがびっくりするほど大勢いること

が、ニュースなどの報道で分かります」

 生徒の二「そいう立場にある人々の事を考える時に、こうして好き勝手が許される私達は、随分と恵ま

れていることがよく理解できます、本当にね」

 生徒の四「私達の事を大切に考えているからこそ、私達が嫌がる勉強を 無理に押し付けて くれる。

それに気づかない方がどうかしていたのだと、痛感させられますよ」

 生徒の五「本当だわ、私たちはもうそれなりに大人なのだし、大人としての自覚を強く、強く持たなく

てはいけない。親や、先生から言われなくとも、今現在の自分が大切にされ、尊重されている事を思って

感謝の気持ちを持って、責任ある行動をとらなければいけない」

 ババは満足げな表情で生徒達の意見に耳を傾けている。


   教員室

 教頭と話をしているババがいる。

 教頭「短期間でしたが非常な成果を上げることが出来、生徒達の評判も上々でした。先ほど校長にも

報告しておいたのですが、大層喜んで居りまして宜しくとのことでした」

 ババ「吾は正直、お引き受けして良いのかどうか、大いに迷ったのですが、結果吾自身もとても勉強

になる貴重な経験でした。心からお礼を申し上げます」

 教頭「御承知の如くに学校という所はお金のないところでして、大したお礼も出来ないのが大変に心苦

しいのですが、そのように仰って頂くと気持ちが楽になります。今後共に宜しくお願い申し上げます」

 ババ「こちらこそ、今後とも宜しくお願い致します」と丁寧にお辞儀をした。


     町の公園

 ジジとババが仲良く話をしている。

 ジジ「所で、例の女学校での授業の件だけれども、とても評判が良かったみたいだね」

 ババ「ああ、吾、うっかりしておめえにお礼を言うのをすっかり忘れてしまっていた」

 ジジ「お礼を言わなくてはいけないのは俺の方でしょうが。嫌がっていたのを、俺の独断で知り合いの

教頭先生に推薦したのは俺だからね」

 ババ「いいや、世間知らずで頭の悪い吾に、あんなに貴重な経験をさせてくれたのは、みんな優しい

おめえのお蔭だよ。吾、とっても為になったよ」

 ジジ「そう言ってもらえて、俺も余計な口出しをした甲斐があった。所で、若い娘たちとの遣り取りは

どんな風だったの」

 ババ「それがね、吾がとっくの昔に忘れてしまっていた青春を、全くありありと思い出させてくれた。

吾はこんなに歳を取ったしわくちゃ婆さんになってしまったが、心だけは、気持ちだけは少しも若い人

達に引けをとらない。そう強がっていたけれども、でも本当に若い生き生きした青春ていいもんだって、

ほんの数日だけど、感動したよ」

 ジジ「そうか、そうか、それを聞くと俺までが嬉しくて、心がはずむよ。お蔭さまでね」

 ババ「教育なんて吾の柄ではなかったけれど、若い人は兎に角素晴らしい。何も教えなくとも、自分で

進んで、積極的に何かを学び取ろう、自分自身を大きくしようって、とても意欲的になってくれる。よく

親はなくとも子は育つと、昔の人は言ったものだが、良くしたものだね」

 ジジ「そういう事かも知れないが、今度の事は、やはりあんたさんが素晴らしい教育者の素質を持って

いた、何よりの証拠だと思うよ、俺は」

 ババ「お言葉ですが、それは誤解です」

 ジジ「どうして?」

 ババ「それが分からないおめえは、世界一の間抜けなのじゃないかと、思うよ」

 ジジ「あんたがそう言うのなら、俺は世界一の間抜けなのだろうよ」

 ババ「アホらしい、まるで話が通じないね」

 ババ「本に、本に、おめえって人は仏様の様に無欲で、性格の良い人だね」

 ジジ「吾はあんたから色々とお世話になっているから、学校の先生にはない、円熟した女性の魅力を

十分に発揮して、若者にもきっとよい影響を与えるに違いないと、踏んだのさ。図星だったのだ、良かっ

た、良かった、本当に良かったよ」

 ババ「吾の人生の師匠はおめえだと、つくずく感じたよ。どうもいつも有難う」と歩き出した。ジジも

慌てた様にババの後を追った。幸せそのものの二人である。


                             《  完  》





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最終更新日  2019年05月09日 18時25分31秒
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