草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2021年08月24日
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10           [ 第三幕 第一場 ]

   荒野

   雷、稲妻の中をケントと紳士が出て来て相遭う。

ケント  誰だ、この凄まじい空の下を?

紳士  その空模様と同じく、心休まらぬ男。

ケント  その顔なら覚えている。王はどこにおいでか?

紳士  荒れ狂う風雨と揉み合い、風に向かって叫んでおいでです。

ケント  しかし、誰かお供は?

紳士  阿呆が一人付いているだけ。



アルバニー、コーンウォール両公爵は互いに相手を陥れようと企んでいる。ところが家中の者

で、見せかけは如何にも忠僕だが、実はフランス王の間者というのがいて、それが我がブリテン

の情勢を一々彼の地に報告しているという有様。いずれにせよ確かなことはフランス軍がこの乱

れた王国に乗っ込みつつある事だ。そこで頼みがある、直ちにドーヴァーの港にお急ぎ頂きた

い。そこには喜んで迎えてくださる方がおいでのはず。その方に、王のお苦しみが只事でないこ

とをお伝え願いたいのだ。

紳士  なお色々とお話をお伺いしたいのですが。

ケント  いや、その余裕はない。ただ、この財布を預けよう。コーディリア姫にお会いの節

は、大丈夫、そうなる、この指輪を差し上げていただきたい。それをくれた男が誰か、姫が教え

て下さろう。

紳士  ほかに何か?



が大声で相手に知らせる事にしよう。(ケントと紳士別れる)

               11             [ 第三幕 第二場 ]

   荒野、他の箇所

   ますます募る嵐の中を、被り物のないリアが道化と共に出て来る。

リア  風よ、吹け、うぬが頬を吹き破れ! いくらでも猛り狂うがいい! 雨よ、降れ、滝と



槲(かしわ)を突っ裂く雷の先触れとなり、この白髪頭を焼き焦がしてしまえ! おお、天地を揺る

がす激しい雷、この丸い大地の球を叩き潰し、板のように平たくしてしまってくれ。生命の根源

たる自然の鋳型を毀(こぼ)ち、恩知らずの人間共を造出す種を一粒残らず打砕いてしまうのだ!

道化  おお、おっさん、幾ら潤いが無くても家は家だ。なあ、家の中に入ろうよ。

リア  そうして轟轟(ごうごう)と腹を鳴らしていろ! 火を吐け! 水を落とせ! 雨、風、

雷、稲妻、いずれも俺にとっては娘ではない。お前自然を情知らずと恨みはせぬ、お前らに国を

与えたこともなし、我が子と呼んだ覚えもない。いくらでも恐ろしい悪戯をしたらよい、この

通り、俺はお前らの奴隷だ、哀れなたわいのない、誰からも蔑まれている、弱い年寄りに過ぎな

い。

道化  頭を突っ込む家を持つためには、まずその前に、頭を持つことだ。

   ケント登場。

リア  いや、俺は見事、堪えてみせる。

ケント  誰かいるのか、そこに?

道化  いるよ、お上とお下とが、詰まり利口と(リアを指さして)阿呆とがさ。

ケント  おお、ここに? この大地を蔽う稲妻、不気味な雷鳴、のたうち呻く雨風は、物心つ

いてからこの方、聞いたこともない激しさ。

リア  天空をあれ荒ぶ神々が、一刻も早くその敵を見出されん事を。上辺は尤もらしく見せか

けながら、陰では秘かに人の命を狙う奴輩。そのひた隠しに隠して来た罪業を、今こそ洗いざら

いぶちまけて、この天の恐るべき呼び出しに慈悲を乞うがよい。

ケント  おお、被り物もお召にならず? お聴き下さいまし、この近くに掘っ立て小屋が御座

います。どうやら風を凌ぐだけの役には立ちましょう、そこでお休みくださいまし。

リア  気が狂いそうだ。おい、小僧。どうした、寒いのか? 俺も寒い、これ、阿呆よ、俺は

な、どこかで貴様が不憫に思えて来たぞ。

道化  (歌う) 知恵のない奴は、狂わぬうちに――

リア  お前の言う通りだ、小僧。さ、掘っ立て小屋へ連れて行ってくれ! (三人退場)

               12              [ 第三幕 第三場 ]

   グロスター居城の一室

 グロスターとエドマンドが燈(あか)りを持って登場。

グロスター  何ということだ、エドマンド。こういう人情の自然に悖(もと)る仕打ちは俺の性に

合わぬ。俺が王の今のご境遇からなんとかお救いしようと思うて、お二人のご承認を願い出たと

ころ、逆にこの城を召し上げられてしもうた。

エドマンド  乱暴にも程がある。

グロスター  まあ、よい。もう、何も言うな。両公爵の間には溝がある。実は今夜さるところ

から書面を受け取った。王の今のお苦しみが完膚なきまでに復讐される日が来ようぞ。我らは王

にお味方せねばならぬ。俺はこれから御在所を尋ね、陰ながらお助けする積もりだ。もし何か尋

ねられたら、俺は病気で寝ている事にな。(退場)

エドマンド  そんな忠義立ては、お前さんに禁ぜられている筈。直ぐにも公爵に知らせてやろ

う。そうだ、手紙のことも。(退場)

              13             [ 第三幕 第四場 ]

   荒野、掘っ立て小屋の前

   嵐が続いている。リア、ケント、道化が登場。

ケント  ここで御座います。どうぞ、中へ。この荒野にこの嵐。人のよく耐えうる所ではござ

いませぬ。

リア  放っておいてくれ。

ケント  一先ず中へおはいりを。

リア  お前には大事のように思えるらしいな。だが、大病に襲われ、不治と極まれる身には、

小病はさして苦にならぬものだ。

ケント  さあ、中へおはいりを。

リア  それより、ウガこそ入るがよい。だが、俺も入ろう。(道化に)小僧、先に入るが良い。俺

は祈りたいのだ。(道化中に入る) 着る物もない、惨めな貧乏人共、どこにいようと構わぬ、今こ

の無慈悲な嵐に叩きのめされ、じっと堪えているお前たちに俺は尋ねたいのだ、この蔽う物無き

頭、満たされぬ腹を抱え、綴り合わせた穴だらけのぼろを纏うて、このような日はどうして凌い

でゆくのか?

エドガー  (奥で) わあ、難破だ、浅瀬だ、こちらは哀れなトムでござい! (道化が小屋から

飛び出して来る)

道化  入ってはいけない、おっさん。お化けがいる。

ケント  さ、手をよこせ。誰だ、そこにいるのは?

道化  お化けだ、お化けだよ!

ケント  何者だ、藁の中でぶつくさ言っているのは? ここへ出て来い!

   気違いを装ったエドガーが小屋の中から出て来る。

エドガー  あっちへ行け! 悪い鬼めが俺を掴まえて離さないのだよ!

リア  貴様も娘どもに何もかもくれてしまったのか? その成れの果てがこの様か?

エドガー  誰だね、この哀れなトムに何かくれるというのは? あの鬼め、本当に悪い奴だ

よ。

リア  そうか、娘どもがこのような目に遭わせたのか?

エドガー  悪い鬼には気をつけるのだよ。

リア  お前は何をしていたのだ?

エドガー  騎士さ!

リア  人間はただこれだけのものなのか、外から付けた物を剥がしてしまえば、皆、貴様と同

じ哀れな二足獣に過ぎぬ。脱げ、脱いでしまえ。お前の着ている借物を。おい、このボタンを外

してくれ。(着ている物を脱ぎ捨てようと藻掻く)

道化  おっさん、落ち着いておくれよ、泳ぎには今夜はちとまずい。

   グロスターが松明を手に近づいて来る。

道化  見な、それ、あそこに火が歩いて来る。

エドガー  あれは悪魔だ!

リア  あれは何者か?

ケント  誰だ、そこにいるのは?

グロスター  何たる事か、さ、御一緒に城へ。臣下として、お子様方の酷(むご)いお指図に従う

のは、もう耐えがとうなりました。

リア  その前に、この学者と話があるのだ。

ケント  それはさておき、この男の申し出をお受け遊ばすよう、城にお戻り下さいまし。

リア  ほんの一言、このテーベの碩学(せきがく)と話がしたいのだ。

エドガー  トムは寒いとさ。

リア  さ、皆、中に入ろう。

ケント  いえ、あちらへどうぞ。

リア  この男の側がよい!

ケント  この上は、お言葉に逆らいませぬよう、この男を御一緒にお供させましょう。

グロスター  では、連れて来るがよい。

リア  さ、行こう、アテネの学者殿。(一同退場)





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最終更新日  2021年08月24日 20時20分34秒
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