草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2021年09月25日
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いつもの ジョギング・コース (早朝)

   雨の中を、一人黙々と走る一太郎。 厳しいが、決して暗くはない、固い決意の憶いが一

太郎の表情に浮かんでいる。

   J M C 前の廊下

女社長  日本さん、一寸。 (大きな声である)

   と、出勤して来た一太郎を呼び止めた。叱られるのかと、ぎくりとする一太郎。

社長  H 社の専務さんにお会いした時、日本さんの事が話題になったのです。

一太郎  ハイ… (蚊の鳴くような弱々しい声)

社長  色々と大変な事が多いでしょうが、頑張って下さいね。



いたが、固まっていた表情が自然と崩れ、笑顔になった。

   会社の オフィス

   一太郎が自分のデスクで外出の準備をしている。

課長  日本君、部長がお呼びだ。

   と後から声を掛けた。一太郎は弾かれたように席を立つと、部長のデスクに向かう。

一太郎  部長、お呼びでしょうか?

部長  社長がね、どういうわけか君に甘くてね、もう少し時間を与えてやれと、仰るんだが。

私としては我慢の限界なんだよ。君の働きでは、つまり給料の半分にも足りないのだよ。分かっ

てるね、根性を入れ直して頑張ってくれたまえ。

一太郎  申し訳も御座いません。 ( 深々と頭を下げるしか仕方がないのだ )

   商店街



イ類を眺めている一太郎に、玩具店の店主が声を掛けて来た。

店主  まあ、こちらにお入りなさい…、今、お茶でも差し上げましょう。

一太郎  あッ、これはどうも…、恐縮です。

店主  昨今じゃ、ご覧の通り、この界隈もすっかり寂れてしまいました。

一太郎  本当に、我々庶民には暮らしにくい世の中になりました。



か。本当に淋しい限りです。

一太郎  (近くのオモチャを手に取って)子供の時分には、夢で胸が膨らむ思いがしたもんです。

たとえお腹を空かしている場合でも、です。

店主  夢だけでは誰も生活して行くことは出来ないってね、うちの親父はよく、子供には夢や

希望がコメの飯以上に必要なんだ、って、そう口癖の様に言ってましたが。

一太郎  夢と希望、ですか。あっ、これはとんだお邪魔を致しました。お蔭で疲れが吹き飛び

ました。 ( さっきとは別人のように元気な足取りで、店を出る )

   ホテルの ラウンジ・コーナー (別の日)

   急ぎ足でやって来た一太郎。  目で誰かを探していたが、隅の席に向かい合って座って

いたひと組の男女に視線を止めた。つかつかとその隅の席に近づき、

一太郎  好子さん、遅れて済みません。

   と、中年の女性の隣りに腰を下ろした。吃驚する二人。

一太郎  好子さん、この封筒はハンドバッグに戻して下さい。

   とテーブルの上に出されたばかりの分厚い封筒を手に取り、女性の両手に握らせた。

男  君、失礼にも程があるじゃないか! (怒りで、全身を震わせている)

   周囲の視線が、一斉に三人に向けられている。

一太郎  (相手を威圧するような落ち着き払った態度で、しかも低声で) 静かに、大きな声を出

すと、貴君の為になりませんよ。今、所轄のお巡りさん達が此処に向かっている途中です。早く

この場を立ち去らないと、どんな事になるかは、貴君自身がよく御承知の事柄ですネ。

男  失敬な! 北大路さん、改めてご連絡します……。

   顔色を変えた男が、ほうほうの体で、退散して行った。

北大路好子  日本さん、御親切にどうも有難う。でも、どうして分ったの、私達が此処の場所

にいるって事が。

一太郎  以前にも、此処であの男と会われているのを、数回お見掛けしていましたので。さっ

き御社に伺いました折に、後輩の方から気になる事を耳にしましたので、こんな事ではなかろう

かと……。

好子  じゃあ、さっきの警察の話は ――

一太郎  ええ、嘘です。口からでまかせです。私なりに一生懸命でしたから。

   急に、大粒の涙を流す好子。

好子  私だって、男の人から「綺麗だ」って、一生に一度でいいから言われてみたかった。夢

よ、憧れよ、乙女チックで、いえいえ、子供じみた感情だわ。自分でも、そう思うのだけれ

ど…。

一太郎  ――

好子  私、知ってたよ。全部が全部ウソだって、結婚詐欺だってこと。でも私バカだから、そ

れでもいいと思ったの。お金なんか、いくら貯金してたって、私の為に、何もしてくれはしない

もの……。

一太郎  (言葉もなく頷く) ……。

   大衆演劇の劇場・場内 (別の日)

   赤や青などの原色のスポットライトが点滅する場内では、劇団の花形・早乙女誠也の華麗

な日舞が演じられており、独特な熱気に包まれている。その舞台に近い席に、お得意先の女性副

社長を招待した一太郎がいる。

一太郎  如何ですか、お気に召しましたでしょうか? (隣の席に居る副社長の耳元に囁いた)

副社長  予想外に楽しいです。

   少女のように上気し、興奮している。

一太郎  良かった……。(満足げである)

   同 ・ 表

   公演を終えた座員達が総出で観客を見送っている。副社長も先客を見習って、花形に握手

を求め、子供の様にはしゃいでいる。

副社長  日本さん、是非もう一度ここへ連れて来てくださいね。

一太郎  はい、畏まりました。

   満面の笑顔である。

   町の 食堂 (夕方)

   一人で少し早めの食事をしている一太郎に、店員が声を掛けた。

店員  お客さん、今日は何か嬉しいことがあったみたいですね。

一太郎  うん、でも、どうして分ったの。

店員  うちみたいなちっぽけな店でも、商売は商売ですから、お客さんの事っていつも気にな

るのです。たとえ一回限りの一見(いちげん)さんでもです。

一太郎  そういうものですか。

店員  況(ま)してお客さんの場合は常連さんですから特別に。

一太郎  有難う、気が向いた時にしか来ないのに…。

   カウンターの中のマスターを気遣いながら、

店員  俺ですね、早く料理の腕を磨いて、値段は安いけれど、飛び切り味がよいと言われるよ

うな、自分の店を持つのが目標なんです。

一太郎  成程、大きな夢が有るんだ。

店員  ちっぽけな、だけど俺にとっては大切な、人生の目標なんですよ。

   その時、新しい客が入って来た。鬼田幸三である。

鬼田  何だ、日本君、随分としけた所で、実にささやかな夕食ですね。

   店員が露骨に嫌な顔をするのにも、全く意に介さない、横柄な態度である。

鬼田  ビールを呉れ。

   と、一太郎の隣の席にどかりと腰を下ろした。

一太郎  お疲れ様です。

   涼しい顔をしていると、ムカッとした口調で鬼田はなおも絡んで来た。

鬼田  大体、あんたの女房が気に喰わないね、貞女ズラして…。少しぐらい別嬪だからって、

鼻にかけやがって…。

一太郎  妻の悪口は止めて下さい。

   静かだが強い口調に、一瞬ギクリとするが、更に絡んで来る鬼田、

鬼田  第一、亭主のあんたがだらしがないよな。おい、ビールを呉れ。

   と催促して、出されたビールを一気に呷った後で、

鬼田  どう、一杯、僕が奢るからさ。

一太郎  まだこの後で営業の仕事なので、遠慮します。

鬼田  ちぇっ! バカじゃないの、あんた。亭主が謹厳実直に、模範社員を絵に描いたように

仕事している隙に、自慢の美人の奥さんが、他の男と浮気してるってね。

一太郎  止せって言った筈だ。

   キッと向き直った一太郎の迫力に、タジタジとなる鬼田だが、余程虫の居所が悪いのか、

鬼田  暴力はよせよ、暴力は。僕の言いたかったのは、男には甲斐性というものが必要だと言

う事。ただ、君のように馬車馬の如くに仕事、仕事って働くだけが能じゃないだろうって言いた

いの。時には女遊びや浮気の一つも出来ないようじゃ、肝心の営業の成績だって、伸びやしない

って事を言いたの。

一太郎  御忠告有難う。

   勘定を済ませて出て行く。呆然と見送っていた鬼田が、突然大声を挙げて泣き出した。

鬼田  畜生! 夫婦で、この俺様をコケにしやがって…。 (と、地団駄を踏んでいる)

   日本家・リビング (深夜)

   一太郎が玄関から入って来て灯りを点けると、桜子が一人でテーブルの前に座っていた。

一太郎  なんだ、まだ寝ていないのか。

桜子  …… (浮かない表情である)

一太郎  何か心配事でも?

桜子  いえ、特別のことではないのだけれど―

一太郎  さっきの電話で話した件なの。

桜子  男同士の付き合いに口を挟むなと、貴男は仰るけれど、鬼田さんだけは…。

一太郎  口は確かに悪いが、根っからの善人なのだ、あの人。

桜子  そうかしら。

一太郎  そうかしらって、君は僕の言うことが信じられないのかい。

桜子  そうじゃありません。唯、鬼田さんの件だけは考えを変えて頂きたいの。

一太郎  諄(くど)いよ(珍しく、イライラしている)、君はそうして、僕のことを一から十まで全

部支配しようとすのだ。結構、腹黒いんだから。

桜子  まあ、腹黒いですって。あんまりだわ。(涙ぐんでいる)

   一太郎は一旦置いたカバンを手に持つと、

一太郎  二、三日は会社の方で寝泊りするから…。

   と、再び家を出て行った。

一太郎のモノローグ「自称ライバルの鬼田幸三が妻の桜子にスオーカー行為を繰り返し、挙句に

桜子から手酷い肘鉄砲を喰らった経緯を知ったのは、大分時間が経ってからの事だった」





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最終更新日  2021年09月25日 11時09分54秒
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