草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2021年09月21日
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郊外にある私鉄の駅 夜 (一太郎の回想 続き)

   改札の近くで、棒の如く硬直して立つ一太郎の姿がある。勤め帰りの桜子(野暮なメガネを

掛け、地味な服装である)が大勢の乗客達に混じってやって来る。一太郎、ピクリとする。声を掛

けようと焦るが、声が出ない。一太郎には気付かずに通り過ぎて行く桜子。

一太郎のモノローグ「数日前に偶然、最寄りの駅で幼馴染の桜子の姿を見掛けた……」

   夜の道 (回想続き)

   急ぎ足で桜子の後を追って来る一太郎。体中が極度の緊張状態である。「あの、失礼です

が―」と声を掛けた。恐る恐る後ろを振り返り、

桜子  貴方は……。



   夜の公園 (回想 続き)

   ベンチの両端にぎこちなく座る一太郎と桜子の二人。

桜子  あの、折り入ってのお話と言うのは……。

一太郎  (殆ど固まっている) はい。

   頻りに腕時計に目を遣っていた桜子が、遂に痺れを切らした様に立ち上がり、軽く会釈し

ながら立ち去ろうとした。その後ろ姿に、それまで後ろ手にしていたバラの花一輪をぎこちなく

前に突き出して、

一太郎  僕と、ボクと結婚して下さい。

   ゆっくりと立ち止まった桜子は無言である。

一太郎  貴女を幸せにします。いえ、嘘です、正直に言います。貴女と結婚して、ボク自身が

幸福になりたいのです。



桜子  あの……、待って下さい。

   元の 料理研究家の家・リビング

   姉と弟が楽しげに談笑し、一太郎も幸福感に包まれている。

弟  このシャツもズボンも、まるで誂えたように僕にピッタリなんだけど。

姉  当然でしょ、遊ちゃんの為に私が前々から買い置きしていたんですもの。



   アパートの一室 (一太郎の 回想)

   老朽化した狭い一 D K の部屋。過労で寝込んでしまった一太郎を徹夜で甲斐甲斐しく看病

する桜子。桜子の方も疲れでかなり窶れている。

一太郎のモノローグ「プロポーズを O K して貰ったのはラッキーそのものでしたが、新婚時代か

ら妻には苦労のかけっぱなしで、貧乏生活の連続。我ながら不甲斐ない有様でした」

   ドアをノックする音。桜子が戸を開けると、アパートの大家さんが両腕に野菜や米などを

一杯に抱えている。

大家  これ、うちの田舎から送って来たので、よかったら使ってくださいな。

桜子  お家賃の方、何ヶ月分も滞納していますのに……。

大家  困っている時にはお互い様です。一太郎さんには随分と以前から親切にして貰い、子供

達もお世話になっています。一太郎さん、底抜けのお人好しで、この近所では評判なんですよ、

奥さん。

   その一太郎も布団から半身を起こして、頭を下げている。大家さんは、「その儘、その

儘」と手で制した後で、最後に、「これ、家内の着古しで恐縮なのですが」と、衣類を包んだ風

呂敷包を置いて行った。

   料理研究家の家 の玄関

一太郎  とんだ御馳走にあずかりまして…。

姉  滅相も御座いません。こちらこそ大変な御恩を被りまして、お礼の申しようも御座いませ

ん。今後共に宜しくお願い申し上げます。遊ちゃん――。(と、弟を見返り促す)

遊太郎  今日の事は一生恩に着ます。心を入れ替えて、また一から出直す積りです。「と、一

太郎の手を固く握った)

一太郎  お互いに頑張りましょう!

   川沿いの道 (夕方)

   やって来た一太郎、ふと立ち止まり、草の上に腰を下ろす。

一太郎  自分にセールス・ナンバーワンになる才能があるのだろうか…… (自信なさげに呟い

た)

   J M C の会議室 (面接シーン の 回想)

   社長(女性)、部長、課長の三人が一太郎を相手に入社面接をしている。進行役の課長が一太

郎の履歴書の写しを社長と部長に渡す。

課長  随分と転職されているようですが。

一太郎  はい……。

部長  理由は! こんなに何度も職を変えているワケは、一体何なの、君。

一太郎  色々な理由があります。まあ、ケース・バイ・ケースです。

課長  それにしても、多過ぎはしませんか。

一太郎  はい…… (顔を伏せ、しかし上目遣いに無言の女社長の様子を窺う)

社長  …… (静かに一太郎を凝視している)

   日本家のダイニング・キッチン

   桜子が夕方の買い物から帰って来る。テーブルの上に置かれた一通の手紙。何気なく開い

て中を読む桜子。 手紙「お母さん、御心配をおかけしますが、自分なりに熟慮に熟慮を重ねた

結果ですので、お許し下さい」

   郊外を走る列車

   その窓際の席で、窓の外にぼんやりと視線を向けている娘の美雪の姿がある。

美雪の声「何の原因も見当たらないのですが、一種のスランプだと考えました。知り合いの実家

が果樹園農家を営んでいて、人手不足で困っているそうです……」

   元の D K

   手紙を読んでいた桜子。突然、電話のコール・サインが鳴る。電話に出た桜子の表情が暗

く曇った。

桜子  はい、相済みません…、はい、直ぐに参ります。

   日本家の表

   慌てて外出する桜子の姿を、二階の自室のカーテンの隙間から覗いている、引き篭り中の

長男健太。

   書店の事務室

   本を万引きして店主に取り押さえられた二男の正次が、首うなだれて店主の前に立ってい

る。

桜子  (かなり取り乱して) まァ、あなたって子は ――

   「ワッ」と泣き出した正次に掴み掛る桜子を、「まあ、まあ」と宥めるようにして、

店主  お母さん、本人もかなり反省していますので、今回は警察や学校の方には通報しないこ

とにします。御家庭での厳重な注意をお願いします。

   桜子は唯々、頭を下げるばかりである。

   オフィスビル (夕方)

   その前に立ち、上の階を見上げる一太郎。大きく一つ深呼吸をして、自分自身を鼓舞する

ようにしてから、入口に向かう。

   同・ビルの中の エビス商事・受付

   受付嬢に案内を請う一太郎。

受付嬢  はい、確かに承って居ります。 (と、一太郎を応接室に案内する)

   同 ・ 応接室

   緊張して待つ一太郎である。と、軽快な身のこなしで入って来た若い重役、

重役  お待たせして、申し訳ありません。前の商談が長引きまして。

   やたらと腰が低く、丁寧な口調である。  意気込んでセールス・トークを開始する一太

郎に対して、相手は調子を合わせるように大きく頷き、「なるほど、成程」、「それは素晴らし

い」、「はい、はい」などと応じているが、一向に O K の返答が無いのであった。次第に一太郎

の表情に焦りの色が浮かんでいる。

   先輩老人の 会社 (夜)

   入口で、いつものように秘書に取り入り、拝み倒すように頼む一太郎。 と、「入れ!」

と一喝するような大きな声がした。

   同 ・社長室

   先輩の老社長に対面している一太郎。この老社長、如何にも頑固、無口、無愛想、終始不

機嫌そうにしているのだが、一太郎を心底嫌っているのではないらしい。

社長  それで…。

一太郎  どうぞ、弊社の経営ジャーナル誌を半年ほど、いや、二、三か月でも結構ですので、

どうかその、御購読頂きたいのです。

社長  嫌だね。

一太郎  何か御不満でも?

社長  別に、不満はない。

一太郎  はあ……

社長  ……

一太郎  私の説明に足りないところが御座いましたでしょうか?

社長  別に。

一太郎  それでは、是非とも一度――

社長  嫌だネ。

   一太郎、土下座して「一生のお願いです」と哀願する。

社長  止めろ! (と、遂に後ろを向いてしまう) 帰れ!

   一太郎にはもう打つ手が無いのである。

社長  一度話を聴いてくれとしつこく言うから聞いたのだ、もう帰れ。

   日本家・リビング(夜)

桜子  お仕事で疲れていらっしゃるのに、こんな嫌なお話ばかりで、気が引けて…、本当に

申し訳ないと思うのですが。

一太郎  いやいや、君には苦労と心配ばかり掛けて、僕の方こそ済まないと…。

桜子  貴方を責める気持ちなど、これっぽっちもありません。私は、自分自身の至らなさが、

もどかしくて…、もっともっとしっかりしなくては。

   気が付くと、一太郎の手が優しく桜子の手を握り締めている。

一太郎  済まない、本当に済まない。

桜子  ……





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最終更新日  2021年09月21日 19時07分57秒
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