草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2025年06月04日
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諂いのあまり明日は親王を請待(しょうだい)してお茶を差し上げますとて、料理献立、畳の表替え、その

用意の真っ最中と見て候。

 これ究境(きゅうきょう、最上、絶好)の時節たり、我々が秘法を以て毒気を吹き込み、親王の執権・検

非違使勝舟(かつふね)は百嶋太夫(ももしまだいぶ)と不和をなし、同士戦を致させたならば、親王は一本

立ち誰一人かしづく者もなく、討とうとも縛ろうとも籠の中の鳥で候。と、語りけるこそ不思議である。

 王子は忽ちに色を直して、おお、大慶、大慶、真野の長者の玉世の姫は音に聞いている美人である。な

お端的(たんてき、覿面・てきめん)の法を以って帝位に上り、かの姫を後宮に立てるのはどうであろうか

と有りければ、それは危ぶむ所にあらず、我がまた一つの秘法を以て彼等に障礙(しょうげ)をなし申さん

と天に向かえば不思議やな、益良の右の眼がまたもや抜け出でて、棚引いた。



いて自分の姿を吹き現したと言う仙人)の再来かと奇異の思いをなしたのだ。

 本懐時を移すべからず、先ず悦びの一献と青海波と名付けたる一吸(きゅう)九盃の大鮑(あわび)を濵床

(はまゆか、帳台の下に置く方形の床)に飾らせて既に酒宴ぞ始まりける。

 鄙人と誰が言い始めたのか、国の名も心の花の豊後梅、真野の長者の秘蔵子の玉世姫は偶々の上方住ま

いを習おうよりは慣れて、所の風に染みたる髪形、少し残っているのは国の訛り、それも言葉の品(味わ

い)である。

 今度、花人親王御執奏(取り次いで奏上すること)に任せ、町人の受領勅許なりと伝え聞き、我が国元の

諸職人受領望みの輩(ともがら)を御取次ぎ申さんとその人々を絵に描かせ、宮を請じ参らせる。華やかな

りし御もてなし。心詞も及ばない。

 かくて親王屋形に入らせ給えば、姫は中門に出で向い、及ばぬ雲の上人を賤が伏せ屋の御設け恐れ多し

とばかりにて、俯きさまに御顔をじろりと見たる上瞼、これ恋知りの目癖ぞや、親王も早御心に思い入れ



の手業にて、ことよせつ又、かこつけつ、互いの心を語られた。


              職人 づくし

 これぞこの大内の縣(あがた)召し(正月十一日から三日間、諸国の国守を任ずる公事)かや諸人(もろび

と)に司をたびてそれそれに国名を付けた烏帽子子(えぼし、成人の式をして烏帽子を付けてもらう子。同

時に烏帽子を貰う。ここは国守の名を貰う職人達を言う)の始めにかけた絵は烏帽子屋で、その烏帽子屋



烏帽子(うちかけえぼし、後ろの針だけで留めてかぶった折烏帽子)、十二(冠位十二階)のかふり(か

むり、と読む)式法の中に人目の隙に折々恋に心を動かして額風、折烏帽子(立て烏帽子の先を筋違いに

折り曲げた物)、折々は恋に心を揉むそれではないが、揉み烏帽子(揉みやわらげた烏帽子)、平禮(へいら

い、頂を折って使う烏帽子)小結(こゆい烏帽子、侍烏帽子の一つで小結の結び余りを左右に長く出した

もの)梨打ち(揉み烏帽子の一種)など、烏帽子屋であるから是をと言って先ず頭に置いたのだ。

 次には琴屋が爪をたてて、家職(かしょく)に骨を折るそれではないが、琴の調べに君を待つ、松風や、

じっと二人(親王と姫)がねじめ良き、恋しい君を待ち迎えて、じっと二人が抱き合って寝る間に、嬉しい

契りを交わしましょう。つぎ三味線(継ぎ竿の三味線)は場を取らぬ、寝屋には嬉しい細工(さいく)人、こ

こに見えたのは筆ゆい(筆を作る職人)のちとせの昔千里(ちさと)の海、隔てし中の通い路も、物言い交わ

す中立は仮名書き筆のかな文に眞書き筆(楷書用の細筆)に真実の法(のり)の教えも学ばせて、人の心に花

咲けば実もなる、奈良油煙、手合わせに朽ちぬ宝や、握り墨(型に入れずに握り固めた墨)、澄むも濁るも

世の習い、人のふり見てわが振袖の姿を直せば心のうちも、月は真澄の鏡屋の、鏡は神の御影ぞとて伊勢

の守とも召されるでしょう。

 さて、その次はふいご吹く鍛冶屋のてこの衆(梃子を手にして働く人々)てっからり、ころり、てんてん

からりの相槌も、打ちにうちもの、もとは焼き刃の焼き物であるから、備前焼に因んで備前の守とや名付

けようか。桜の色に花塗り(上塗り)の吉野うるしの塗師(ぬし、塗物師、漆塗職)屋、まきえ屋、ひはだ屋(

檜の皮で屋根を葺く職人)に、軒の御簾屋の玉すだれ、伊予の守とでも召されようか。

 我が通い路を塗りこめて風を通さぬ壁塗りはかくと知らず、白地(しらぢ)の扇屋の折さえあれば折を得

て互いに見まく欲しい、星冑(かぶとの鉢に鋲を打ったもの)、具足屋(甲冑を作る職人)、弓屋、武士(もの

のふ)も親子妹背は情(なさけ)知る、野辺の雉(きじ)ではないが、木地屋(塗ってない木地のままの

器類を作る職人)のろくろ引き(ろくろで丸い器を作る職人)、引くや夕べ毎の梳き櫛、乱れ便櫛、人はよ

も見ない、水櫛と思ったが、誰の見たのか、三つ櫛(歯の荒いのと、普通のと、細かいのと三種類の梳き

櫛)に名を立てて、包んだがよそに錐(きり)は通すが霧は通さない桐の箱、さし物屋(指し物師、桐・桧・

杉等を以て万の箱を作る職人)から檜物屋(ひものや、わげ物細工屋、桧や杉の薄板を円形に曲げ、樺

皮・桜皮で綴じた容器を曲物を作る職人)が、曲がらない木竹を捻じ曲げて締めて、底ひを作るように、

樋の底に月の光が澄むように、桶屋の妻の寝心もよい、よしや濡らしてきぬぎぬに干してまだひぬ、唐傘

屋、さして降らぬに紅葉葉も時雨の雲に染物屋、染めて上絵屋(いわえや、染物の上に絵具で筆を加える職

人)縫い物屋、糸もて通すみすや針(京都三條通り河原町のみす屋で売った名物の針)、ほころび易い浮き

名をも繋ぐ数珠屋の百八の思い寄る名を我が思い、如何は晴らし給わると御衣(ぎょい)の袂をお引きなさ

れば、親王もまた御心が緩んで解ける、赤がね屋(銅などの金物を商う者)、二人の恋路一對の鈴ならぬ錫

屋(錫や鉛などを商う者)瓦屋、変わるなとしとと(軽く打つ音の形容)背中を叩いて伸ばすそれではない

が、薬鑵屋(やかんや)に、詞の花や、飾屋(かざりや、金具の装飾を作る職人)の飾らないで思う仲である

ならば、いざ屏風屋の木陰にて君と我とは寝る、それではないが、練り物屋(絹を練る職人)、こちの寝巻

の帯を解いて、とんとそなたに着せかけたや、煙管屋の仲良し、よしず屋となり給う縁(えにし)の程こそ

不思議であるよ。

 ここに親王の執権検非違使勝舟は御留守に残ったのだが思えば四方に王子方、気づかわしと馳せ来たり

奥の體(てい)をば伺えば酒宴乱舞の真っ最中、ええ、まだ盃は取れまいと、心気を燃やしている所に百嶋

太夫(ももしまだゆう)が金の銚子に土器を添えて廊下を通過かするのを、これ、大夫殿、やあ、勝舟殿

か、まずもって今日は冥加に叶ったお成り(お出で、お出まし)であり姫の恐悦、我々までも有難さ、さ

て、職人の悦びいづれも冥加のためと申し、勝手に相詰め罷りある。さてこれは、長者の家の名酒で国元

から到来した。これを差し上げて千秋楽に致さんと存じたが、親王様がただ今御まどろみにて候えばそな

たがお迎えの旨は後程に披露申すべし。

 まずはお酒をひとつと言いければ、勝舟が聞いて、残るかたない御馳走、さぞ御勝手でも御くたびれに

て候べしと、挨拶も時が移って既に夜半の兼ねてより益良(ますら)が行う魔法の形が天井にあらわれて、

二人に邪気を吹きかけたのだが、更に人目には見えないのだが、銚子が自然に跳び上がって勝舟の額の正

面にざんぶとばかり酒が懸かったのだ。

 吹き込む毒気五躰に沁み、ただ熱湯の如くではあったが、外道の業と知らないので、身じまいして百嶋

の膝元につっと寄り、やい、ここな運命尽きの業人(ごうにん、罵語で悪業の為に悪い果報を受ける人間

の意)め、山彦の王子には威勢が怖いか、ただしは利欲で頼まれたのか。どうでもおのれ一分(いちぶ

ん、個人の恨み)の意趣が有るべき様の覚えはない。世に出生して三十余年人に指でも指されない男だ。

沸き返ったる酒をかけて隙間を見て討とうとするのか。我を討って我が君を害せんとの企みであるか。さ

あ、おのれの首は獄門道具高札に書くためであれば、まっすぐに白状せよ。

 百嶋はぎょっと仰天して、いやこれ、勝舟殿、銚子に手をもかければこそあれ、ことに冷や酒、熱から

ん様もなし、むむ、聞こえた聞こえた、御用心の折柄なれば脅して心を試さん為であるか。それにはちっ

と御麁相ではないか、と言えば、いや、黙れ、検非違使の勝舟が麁相とは舌長し(過言だ)。

 こうして争う内に、異形は手を伸べて百嶋の眉間(まゆあい)を割れてのけとはったと打つ。百嶋は太刀

を押っ取って、やい、公家侍、およそ薩摩二歳(薩摩生まれ)とて九州者は端喧嘩(はげんか、つまらぬ喧

嘩、小さな諍い)はしない。武士と武士との口論に面(つら)を張るとは何事だ。堪える程は堪えもする

が堪忍蔵の戸が開いた(堪忍袋の緒が切れた)ぞ、ま一度指を指してみよ、腕骨を切って切り下げん。さ

あ、腕を出してみよ。と、鍔元くつろぎかかったのだ。

 やい、ここな狼狽え者、おのれに何で遠慮をして腕先でするものぞ。九州者の首を取る公家侍の手並み

を見よと、切らんとかかった勝舟の真向(まっこう)をはたと打つ。異形の者の行為である。

 やあ、おのれこそ卑怯者めと突っ立ち上れば、あなたを打ち、こなたを打ち付け叩きつけて、双方が

一度に抜き合わせて、やあ、物狂いめ、余さじと切り結んでは切りほどき、大庭(建物の間の広場)に飛ん

で降り、弓手(ゆんで)におっこみ、馬手(めて)に斬り込み、散々に撃ち乱れて裏門を指して切り出したの

だ。外道の所為(しょい)こそは怪しいものである。

 かくとや物が告げたのであろう、山彦の王子がただ今これへ駆けつけた。御門の外に突っ立ち候と御用

心あるべしと門番の者共が口々に注進した。

 女房達はおぢ恐れ、大夫殿はおられぬか、百嶋殿、大夫殿と呼びまわるのだが音もしない。若侍は酔い

伏してしまっている。勝手に詰めていた諸職人は立ち騒ぐのだが丸腰であり、震えまわって埒があかな

い。度を失っていた折に、桶結いの久馬平と言って小兵ではあるが大力である。

 人々が立ち寄り、こりゃ、久馬平、この度の御用である、武士(もののふ)と偽り、王子を早くぼっかい

せい(追い返せ)、如何に如何にと言いければ、なう、勿体なや、鬼のようなる悪王子、殊に刃物は槍鉋(や

りがんな)より他は太刀と言い、刀と言い手に取ったること無し。真っ平御免と逃げ出すのを左(さ)言っ

ては事が済まないぞと無理無体に衣装をさせて、太刀よ袴よ、直垂(ひたたれ)よと既に用意をしたのだっ

た。

 早、その隙に山彦は衣冠も着せずにただ一人、駒を飛ばして乗り入れたのは欲天の阿修羅王(闘争の絶え

ない阿修羅道の長で、梵天・帝釈と戦う鬼神」、龍馬(りゅうめ、駿馬)に駕したのもかくやらんと、馬上

ながらに大音上げて、丸が心をかけた女、今宵、花人親王に忍びあうと聞いたので、仲人の為に来たって

有る。見参やっと喚く声、深山も裂けて法螺貝が海に入ったかと恐ろしい。

 怒れる声でかっらかっらと、笑い、是は仲人要らずの新枕ごさんなれ、互いの初恋おもはゆからん、い

でいで、王子が挨拶せんと馬を乗り離してつっと入り、白書院黒書院、納戸帳台、化粧の間、渡殿・細

殿・贄殿(にえどの、魚鳥などを置き、調理する所)まで、妻戸・障子を蹴破って、御簾も几帳もひっ切り

ひっ切り駆け入り駆け出で、尋ね廻って南無三宝、二人しっぽと伏し給う。

 台子(だいす、茶の湯の道具を置く棚)の間の高遣戸(丈の高い引き戸)をさっと開ければ衣を引き被き

生きた心地もないのであった。





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最終更新日  2025年06月04日 19時55分32秒
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