第2話 お客さんは乗る前に実力を知らない
新人は、秋雄が運転するワゴン車を見ながら言った。
「僕も地理を覚えたら、予約を任せてもらえますかね?」
「それは会社に聞かないと分からないな」
「じゃあ、接客を磨けばいいんですか?」
「それも大事だよ」
「やっぱり、選ばれる運転手になるには、いろいろ必要なんですね」
秋雄は、ワゴン車の窓を拭きながら聞いた。
「お客さんは、乗る前にお前の実力を知ってるか?」
「知りません」
「道を知ってるかどうかは?」
「分かりません」
「運転がうまいかどうかは?」
「それも、乗ってみないと分かりません」
「じゃあ、お客さんは何を見て、この車なら大丈夫そうだと判断する?」
新人は、しばらく考えた。
「車ですか?」
「そうだな」
「ほかには……運転手の見た目?」
「車が汚れていないか。
変な臭いがしないか。
ドアが開いた時に、ちゃんと挨拶するか」
秋雄は、拭き終えた窓を外から確認した。
「表情や声の調子も見られてる」
「そんな短い時間でですか?」
「短い時間だからこそだよ」
「でも、本当の実力とは関係ないですよね?」
「関係ないようで、関係ある」
秋雄は布を畳んだ。
「実力は、乗ってからじゃないと分からない。
でも、感じの悪さは、乗る前に伝わることがある」
新人は、自分の車の方を振り返った。
「乗ってもらってからが接客だと思ってました」
「ドアが開く前から始まってるよ」
「最初の数秒で、大丈夫そうか見られてるんですね」
「そういうこと」
秋雄は、もう一度ワゴン車を眺めた。
「お客さんは、運転手の経歴書を読んで乗るわけじゃない。
目の前にある車と、最初の挨拶で判断するしかないんだよ」
明日10:00に
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