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先週の土曜日、ひとさんが通う児童センターで「南極教室」が開かれました。約14000キロ離れた南極の昭和基地と児童センターを衛星回線で結び、昭和基地の様子やクイズなどを楽しむイベントです。ひとさんは、そのイベントで南極観測隊の方に直接質問できる5人に選ばれました。ところがひとさんは「いやだ」と言います。出席者は普段一緒に遊んでいるお友達ばかりだし、言う質問も決まっています。それでも、「恥ずかしいからやりたくない」とだんだんべそをかき始めました。それで仕方なく、「じゃあ断ろうね」ということになりました。次の日、学校に行く車の中で「いいなぁ、南極観測隊と直接話せる機会なんてきっと、一生ないだろうなぁ。ひとさん、おかあさんと代わってよ」というと、はじめは黙っていましたが、そのうち「うちがやる!」と言い出しました。しめしめ。さて、当日。最初に国立局地研究所(いろんな研究所があるもんです)の方が南極の気候やペンギンの生態について話をしてくれました。続いての、南極の氷に触れるコーナーは大人気。子どもたちは「冷たい!」といいながら我先に触っていました。この氷は、数億年前の氷だそうで、空気の泡がたくさん入っていて白くにごって見えます。水に入れると、ぷちぷちと小さな音がします。みんなでかけらを食べてみました。本当に純粋な水が凍ったんだなぁという味がしました。さて、いよいよ昭和基地と衛星回線がつながります。日本との時差は6時間。快晴で、でもマイナス18度だそうです。モニターには2人の方が映り、基地の中を案内したり、外に撒いた熱湯が一瞬のうちに白い煙になる様子を見せてくれました。それから○×クイズをしたり、オーロラの色あてをしたりして、質問コーナーの時間です。この日は、近隣の親子連れ約150人が集まり、会場は熱気であふれています。ひとさんは5番目、最後に質問します。3年生の男の子、5年生の男の子、保育園生の男の子が2人、ちょっと緊張したのか、質問がなかなか思い出せない子もいました。とうとうひとさんの番になりました。前に出て、マイクを持ってカメラに向かいます。とてもまじめな顔つきです。心なしか顔も青いようです。学校名と名前を言ったあと、「どうして、南極観測隊員になったのですか?」マイクを通してもやっと聞こえるほどの大きさで質問しました。14000キロ離れた南極で、隊員さんが答えてくれます。返事を聞き終わると、ひとさんは「ありがとうございました」と言って自分の席に戻ろうとしました。ところが、他の質問には2人の隊員さんが交互に答えていたのですがひとさんの質問だけは、2人とも答える手はずになっていたようです。係りの人がひとさんを押しとどめ、もう一度カメラの前に立たせました。2人目の隊員さんが「おじさんにも答えさせてね」。会場は笑いに包まれました。ひとさんはわけがわからず、とうとうその場に座り込んでしまいました。2人目の隊員さんが話し終わると、ひとさんはもう一度「ありがとうございました」と言うやいなやマイクを係りの人に投げるように渡し、小走りに戻ってきました。それからしばらく私のひざに突っ伏して顔を上げようとしませんでした。次に顔を上げたとき、両目に涙が光っていました。みんなの前に出て、恥ずかしかったんだそうです。緊張していておじさんの返事を聞くどころではなかったし、がんばったのにみんなに笑われて、悲しくなってしまったのでした。みんな、ひとさんのことを笑ったのではないよ、2人とも答えるなんて知らなかったもんね。南極にいる人と話ができてすてきじゃない。ひとさんはよくがんばったよ、すごい、すごい。いくら言葉をかけても、ひとさんにはちょっと悲しい出来事だったようです。それでも、翌日、小さく新聞に載った記事をうれしそうにながめていたひとさんでした。
2007年10月01日
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