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2009年03月22日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 「見せて」
 と、横並びの座席の左隣から右手を伸ばして手のひらを広げた。
 「え、何を?」
 「デジカメ」
 「ああ、デジカメね」
 わたしはバッグをまさぐって、それを彼女の手のひらに乗せた。
 長女は、しばらく無言で撮りためていた画像を見ていた。
 「これはどこ?」

 「たまに立ち寄っているバーだよ」
 「これは?」
 「ああ、先日行った鎌倉、東慶寺」
 「へぇー」
 「何?」
 「なんでもないけど、ちょっと安心した」
 「何を?」
 「うん。適当にさ、愉しんでいるんだなぁーって」
 「そう?」

 きっとわたしのことが気がかりなのだろうけれど、青春真っ只中の長女は、忙しくて仕方がないのだ。
 先ほどまで四、五人でにぎやかにしゃべっていた中年女性グループが降りて、わたし達はその後に坐ったばかりだった。

 と、そのグループに眉をひそめていた。
 「ご心配なく。一人遊びができるんだよ、母さんは」
 わたしは笑いながら答えたが、長女はわたしがつるむ事が嫌いなことを誰よりも知っていながらの忠告だった。
 「だから安心した。こうして愉しんでいるんだなぁって」
 長女は笑った。


 もちろんわたしは、時として大勢といるときも楽しいし、どのようにも対応できるファジーな人間なのだけれど、一人の方が圧倒的に多かった
 だから傍から見ると、かなり孤独で寂しそうに映るのかもしれない。

 時折、娘たちと小さな旅をする。
 そんなとき、わたしは幸せを噛み締める。
 大人に成長した彼女らを眺めるのも嬉しいし、厳しく躾けた成果を垣間見る機会でもあった。
 「今度はWちゃと一緒に旅がしたいね」
 と、長女。
 次女とは勤務のシフトの関係で、なかなか一緒に行動が取れないでいた。
 「そうね。一緒だともっと楽しいよね」

 小さな旅でいい。
 小さな旅がいい。
 そこで得る会話は、宝石のようにまばゆいから。
 次はいつになるのかなぁ。
 足元の光は車窓から入り、影や日向を繰り返しては出ていった。

 こんなささやかな瞬間が、わたしの幸せなのだった。

画像 026.jpg









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最終更新日  2009年03月22日 10時29分27秒 コメント(4) | コメントを書く
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