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2011/02/06
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『CRONOUS』~眠らない大陸の物語~



ワドリーテの命で部屋に通されたアイナではあったが
落ち着く気分にはなれなかった
しかたなく広い部屋の片隅に座ってワドリーテが来るのを待った

豪華な装飾品や家具
天蓋のついた大きなベット
独りでは持て余すほど広い部屋

「広いなぁ私は寂しくてこんなとこやだなぁ…でも、いい匂い…香水かなぁ?」


思わず香りの元を探す
香りはすぐ近くにあるドレッサーから漂ってきている
アイナはドレッサーに膝をついたまま歩み寄る
さすがは女性といったところだろうかドレッサーの上には数々の化粧品類が並んでいる
その時、化粧品に紛れて伏せられた小さな額のような物が目に入る
勝手に触ったらダメだと思いつつも思わず手に取ってしまった
写真には長身で長い銀髪の男性とその男性に寄り添って微笑むワドリーテが写っていた

「ライル・ク・ベルダ・ゲブランド…ゲブランド帝国の皇帝よ」

背後でワドリーテの声がして振り返った

「ご、ゴメンなさい…いい匂いがしてそれが何か探してたら」

「いいのよ…それを捨てられずいつまでも持っていたのは私だから」


アイナはワドリーテに写真を返しながら

「ゲブランド帝国?」

と首をかしげて聞いた
ワドリーテは受け取った写真をチラッと見て、またドレッサーに伏せて置いた

「そういえば…この世界の情勢をまだ話してなかったわね」



「つまり5つの国で戦争してるって事ですか?」

「そう…お互いの最前線となるエスセティア大陸は常に乱戦状態で日々刻々と状況は変わってるの」

ワドリーテはアイナから視線を外して窓の外を見た

「1つ聞いてもいいですか?」

「ライルの事かしら?」

ワドリーテはそう言って微笑んだ
アイナは黙ってうなずく

「ライルとは…昔、ちょっとね」

ワドリーテは苦笑いでそう言うとそこで言葉を止めた

「ゴメンなさい」

「もう過ぎた日の事…でも、アレを捨てられずにいるって事は…過ぎた日じゃないのかな」

ワドリーテはドレッサーの上の写真たてを見つめてそう言った
アイナが言葉に詰まってるのを見たワドリーテは

「子供って事は結婚してるって事?」

ワドリーテはアイナにそう聞いた
アイナは視線を天井に移して首を横に振った
ワドリーテは訝しげに顔をしかめる首を傾げる

「私が愛した人は…死んだの…クロノス大陸を守るために」

アイナの口から出た言葉を聞いたワドリーテは愕然とした
しばらく重苦しい空気が流れる

「ねぇ…これからどうするの?」

ワドリーテはアイナにそう質問した
アイナはしばらく考えたのち

「何でこの世界に来ちゃったかわからないけど…とりあえず焔を見つけないと」

「焔っていうの?子供」

「うん、私が愛した人と同じ名前」

アイナは微笑んでそう答えた

「なら、焔ちゃんが見つかるまで…ううん、この世界にいる間…私の侍女にならない?」

「侍女?」

「まぁいわゆる私に仕える人って事だけど…ダメかな?」

「この世界ではどこに行く当てもないから、それはありがたいですけど…いいんですか?私なんかで」

「いいわよ♪」

こうしてアイナはこの世界にいる間ワドリーテに使える事になった
とはいえ…これは2人で決めた事
翌日、ワドリーテが大臣に話すと猛反対をくらってしまった

「よいですかな姫様…侍女という者はですな、あなた様の身辺の世話をする者でして氏素性の判らぬ輩を置くなど言語道断!」

大臣のお小言が延々と続く…ワドリーテは頬杖をついてむくれていた

「アルベルト…貴公もそう思うであろう?」

大臣はすぐ近くにいた金髪の男に同意を求める

「確かに侍女となれば誰でも…というわけにはいけませんなぁ」

アルベルトと呼ばれた男がそう言うとワドリーテは頬杖をついたままうつむいた

「しかし以前より私は姫の『人を見る目』には驚かされています」

「貴公まで何を申すか!」

大臣がこめかみに血管を浮かせてアルベルトを怒鳴るとアルベルトは大臣に何かを耳打ちした
すると大臣は不敵な笑みを浮かべて何度もうなずく

「姫様…私は姫の『人を見る目』を試してみたいのです」

アルベルトはワドリーテの前に片膝をつくとそう言って頭を下げる

「試す?」

ワドリーテはアルベルトの言葉の真意が解らず聞き返す

「はい…その者が姫に仕えるに値するか…オライオンと勝負するのです」

「そ、そんな無茶な!オライオンは我が国の近衛騎士団を束ねる男ぞ!」

アルベルトの言葉を聞いたワドリーテはそう叫ぶとイスから立ち上がりアルベルトの元に駆け寄る
アルベルトはすかさずワドリーテに近づくと

「姫…無理は承知…オライオンには打診します…こうでもしないと大臣は首を縦には振りませんぞ」

大臣に気付かれないようにそう耳打ちをした
ワドリーテはしばらく親指の爪を噛みながら考えたのち

「いいわ…その代わり彼女が私に仕えるに値すると証明できたあかつきには文句を言わせないから」

ワドリーテは大臣を睨んでそう言うとアイナの元に歩み寄る

「ゴメンね…という事であなたの腕前を見せる事になっちゃった」

ワドリーテは手を合わせながら苦笑いでアイナにそう告げる
それを聞いたアイナは呆然とする
そんなアイナを見たワドリーテは小声で

「アルベルトはあなたを侍女にする事には協力的なのオライオンには打診をしてくれるって」

アイナの耳元で告げるとウインクした
アイナはただ苦笑いを浮かべる

その後…城の訓練所に移動しアイナは近衛騎士団長のオライオンと対峙した

アルベルトはオライオンの元に駆け寄るとなにやら耳打ちをする

「姫のわがままにも困りますなぁ…まぁ元よりあんな小娘相手に本気を出す気は無いが…立場上負けるわけには」

オライオンがそう返答すると

「負ける必要はない…ただ、いい勝負になるように振舞ってくれればいい」

「難儀だな…まぁ出来る範囲でやるよ」

オライオンはアルベルトにそう告げると木刀をアイナに投げ渡す
アイナは受け取った木刀を構える

「剣を持った経験は?」

オライオンにそう聞かれたアイナは首を横に振る

「だろうな…持ち手が逆だ…それでは剣は振れん」

オライオンはそうアイナに言うとため息をついた
アイナは慌てて剣を持ち直す

(「どうしよう…こんなの持って戦った事ないよ騎士団長さんでしょ勝てるわけないし」)

「準備はいいか?」

(「とりあえず教わった事を思い出して…」)

「準備はいいのか?」

(「相手をよく見る…ギリギリまで引き寄せる…」)

「準備はいいのか?と聞いているんだが」

オライオンは半ばイライラしながらアイナにそう言い放つ

「あ!ゴメンなさい大丈夫です」
(「相手を見る…呼吸を感じ取る…リズムを合わせる」)

アイナは頭を下げて答えた

「ならば…参る!」

オライオンはそう言うと木刀を下段に構えてアイナに突っ込んだ
そして切先がギリギリ届くベストな間合いで振り上げた
アイナはギリギリまで相手の動きを見て最小限の動きで切先を避ける
相手の腕が解らないのでアイナは少し後退した

(「避けたか…偶然か否か」)

オライオンは剣を水平に構え一気に間合いをつめて剣を振りぬく
アイナは数歩下がって切先を避ける…目の前で空気が斬れる音がする
剣をかわされたオライオンはすかさず剣を返して1歩踏み出して振りぬく
アイナはまたもその切先を数歩下がって避ける
次は剣を振り上げて一気に振り下ろす
アイナは数歩横に移動して剣をかわす
オライオンは避けられるのが計算に入っていたのか

「もらった!」

そう言うと振り下ろした剣を瞬時に引き上げて水平に振り抜く
アイナはそれをしゃがんで避けるとオライオンの足を払う
オライオンはバランスを崩すも転倒は堪えアイナの反撃に備える
しかしアイナは反撃せずにまた後退して間合いを取った

(「我が太刀筋が読まれている…まさかな」)

「小娘相手と加減をしたが茶番はここまでだ!」

オライオンはそう叫ぶとまた下段に木刀を構えアイナを見据えてにじり寄る

「ゴホン!アルベルトどういう事かな?」

オライオンの言葉を聞いた大臣は咳払いをしてアルベルトを見る

「いや…相手は小娘、故にほどほどにしろよ…と助言しただけです」

アルベルトの言葉を聞いた大臣は黙ってうなずいた

(「やっぱり手加減してくれてたんだ」)

アイナは苦笑いを浮かべると一瞬目を閉じて集中する

「う…なんか寒気が」

ワドリーテは一瞬感じた寒気に身震いする

「ぬはははは…勝負は見えましたからな」

ワドリーテのつぶやきを弱気の証と思った大臣が笑う
ワドリーテは大臣を見る事なく口を尖らした
そしてオライオンがまたも打って出る
先程とは比べ物にならない様な剣捌きで連続に切っ先をアイナに撃ち込む
アイナはその剣を木刀で受ける事なく全て最小の動きでリズミカルに避ける

(「なるほど…まぐれなどではない様だな」)

オライオンは攻撃を繰り出しながらアイナの視線が確実に自分の動きを捉えている事を察知する
そしてさらに攻撃のスピードを上げて徐々にアイナを追い詰める
アイナはリズムを崩してついに木刀でオライオンの攻撃を受け止める
しかし使った事がない武器ゆえか…その衝撃を受け流せずに弾き飛ばされる
バランスを崩しつつもアイナは着地と同時に全力で一気に後退して間合いを取り直す
オライオンは手ごたえを感じたのかあえて追撃はせずにまた木刀を下段に構えて待機する

(「使いにくいなぁせめて包丁くらいの長さなら…そうか!」)

アイナは突然オライオンに手を突き出して『待った』を要求した
そして切っ先を左足で押さえ木刀の中ほどに右足を置くと渾身の力で木刀をへし折る
一同はアイナの行動に唖然とする
アイナは折れた木刀をそれぞれ両手に持って数回振ると満足気にうなずく

「ほぉ…そう来たか…しかしそれでは我が間合いに入り込まねば何も出来ぬぞ」

オライオンは木刀を構えなおしてそうアイナに言った
アイナは両手に持った木刀を数回振り、身構えると目を閉じて重心を落とす
辺りの気温が一気に下がる
そしてアイナが目を見開くと今度はアイナから仕掛けた
オライオンへの距離を詰める度に1人、2人…4人と分身をかける
それを見た大臣とワドリーテ、アルベルトは驚きの表情をする
四方からオライオンに連続で攻撃を仕掛けるもオライオンは巧みな剣捌きで応戦する
その攻防は数分続き…途中何度かアイナは距離を取りその都度分身の数が増える
最終的に6人まで増えてオライオンを追い詰める
さすがのオライオンも防戦に徹する他なく攻撃に転じる事ができずにいた
攻防が10分を超えた頃…一瞬アイナの攻撃のペースが落ちる
オライオンはその期を見逃さず体当たりでアイナを弾き飛ばす
アイナは転倒を踏み止まりはしたがその場に両膝をついて座り込んだ
握力も限界で両手から木刀が転がり落ちる
オライオンはアイナに歩み寄ると

「勝負あったな…」

そう言って木刀をアイナの頭に乗せた
大臣が満面の笑みでワドリーテの顔を覗き込む
ワドリーテは悔しそうに下唇を噛む
その時、オライオンは

「先程はそなたの事を『小娘』などと罵った非礼を心からお詫びします」

そう言ってアイナに頭を下げると今度は大臣とワドリーテの元に駆け寄り片膝をつく

「近衛騎士団長オライオン…彼女を姫様の侍女として値すると判断し推挙いたします」

「な、何を申すか!お前は勝負に勝ったのだぞ!」

大臣はオライオンを怒鳴りつける

「確かに勝ちはしました…しかし私が知る限り彼女をおいて姫様に仕える者などこの国にはおりますまい」

オライオンは大臣をまっすぐ見てそう答えた
その真っ直ぐな目に大臣は言葉を失った



…『To Be Continued?』





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Last updated  2011/02/06 10:38:40 AM
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