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浩美が夏休みのバイト先に選んだのは居心地のいい石垣島。だが、慣れた頃にオーナーの依頼で那覇のホテルに移ることになった。そこはオーナー代理を筆頭に、マイペースで一風変わった人たちがいる宿。宿泊客たちの抱える事情も様々で、浩美は正義感からついつい深入りしてしまう・・・ サキが歯科医でバイトする『シンデレラ・ティース』の姉妹編。サキが選んだのが歯科医なら、浩美はリゾートホテルだったということ。 正義感、責任感が強く、しっかり者というのが浩美のキャラクター。正直、「そこまで深入りする必要があるのか」と言いたくなるほど宿泊客たちの事情に踏み込んでいきます。その宿泊客のためになるときもあれば、そうとも言えないときも。なぜなら、それは自分が持っている枠を人に押しつけるような行為だから。 沖縄という地で、マイペースでアバウトという正反対な人たちに囲まれて、浩美がどのように自分が持っている枠を打ち破るか。ミステリとしては薄いので、そこが読みどころだと思っていました。しかし、失敗したりうまくいかなかったりすることはあっても、自分の枠を打ち破るとまではいかなかったようで残念。 物語は様々なタイプの客の事情がおもしろく、中には沖縄ならではの話もあって興味深いものでした。 坂木さんの作品は、男性よりも女性が主人公の方がいきいきしているように思います。きっと他の作品とリンクして、浩美もまたどこかでちょっとだけ登場するのではないか、そんな気がします。収録作:「ホテルジューシー」「越境者」「等価交換」「嵐の中の旅人たち」「トモダチ・プライス」「≠(同じじゃない)」「微風」関連作:『シンデレラ・ティース』 2007年10月28日読了
2007.10.30
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大学に姿を見せなくなった江神。どうやら行き先は新興宗教の本拠地、神倉らしく、身を案じたアリスたち英都大学推理小説研究会の後輩4人は神倉へ向かう。江神の安否を確認し、手間はかかったものの合流したアリスたち。だが、滞在していた人類協会の総本部で惨劇が起きた・・・ 江神シリーズ15年ぶりの第4作。前作『双頭の悪魔』は文庫化時に読んでいるので、このシリーズを読むのは8年ぶりです。それだけに、大きな期待に応えてくれるか不安もあったのですが、全く不要でした。 このシリーズは毎回クローズド・サークルを舞台に事件と推理が繰り広げられます。今回もその設定が秀逸。事件そのものの謎とは別に、もうひとつの謎を最後までずっと引っ張り続けます。しかも最終的に明かされたとき、2つの謎が融合する姿がとても美しいのです。 もちろん、事件の謎も「読者への挑戦」の後に、論理的かつ美しく、しかも挑戦的に解明され、堪能という言葉が相応しい読み応えでした。 中盤、いくらか不要とも思われるペダントリーが見受けられたのですが、登場人物や舞台の特殊性を考慮すれば仕方ないことかもしれません。むしろ、それ以外のところに綿密に伏線が引かれていることの方が重要で、高く評価するべきでしょう。振り返ると、その伏線に圧倒されてしまいます。 また、クローズド・サークルに付き物となってしまった携帯電話の処理方法が、前作から時代設定を継続する(=バブル期のまま)ことによって難なく処理されているのは興味深いものでした。21世紀を舞台にしたクローズド・サークルものは携帯電話の処理が難しいと言わざるを得ません。 個人的には望月・織田のコンビが活躍したのが嬉しかったですね。「邪魔しやあすな!」と。 「あと○作で完結」などと言わず、書き続けてほしいシリーズ。多くの人に読んでほしい傑作です。2007年10月24日読了
2007.10.26
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とあるシンポジウムのため、出張しました。久しぶりの新幹線です。 そんなに遠くへ行くのではありませんが、新幹線に乗ると考えることがあります。今日もそうでした。 このまま東京まで行ってしまおうか。 久しぶりに神保町にも行きたいし、新宿とかの大型書店にも行ってみたい・・・ そう、田舎者なんです。 ちなみに神田古本まつりは10/26から、神保町ブックフェスティバルは10/27、28です。
2007.10.19
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大手出版社に勤めるOLの高遠寧々は、エリートぞろいの社内でコネ入社であることを後ろめたく感じていた。もうすぐ三十路、けれど彼氏もいないし見た目もイマイチ。気の合う同僚はいるけれど、肩身の狭い思いをしながら経理部で働く寧々に、会社での悩みだけでなく、社内のちょっとした事件が降りかかってくる! コネ入社のOLが奮闘するワーキングガール・ストーリー。とすれば当然でしょうか、『ワーキングガール・ウォーズ』ともつながっているようです。 おそらく、どんな企業でもある程度の規模になれば従業員の間に階層のようなものができてくるでしょう。それは、学歴によるものだったり、役職によるものだったり、血筋や縁故によるものだったり。 しかし、それぞれの立場によって物事の見方は異なり、コネ入社のOLだからこそ見えてくるものもあるはずです。取り上げられるのは、そういった社内のパワハラだったり不倫だったり。決してコネ入社のOLが、突然出世したり、玉の輿に乗ったり、社内クーデターを水際で阻止したりするような話ではありません。 寧々は非常に地味で平凡なキャラクター。物語を進めていくのに向いていないのではないかと懸念もしました。しかし、それでも読ませてしまうのが柴田さんの巧さですね。いつものことながら読みやすい文章もうれしいです。 ユーモラスで、そしてちょっと切ない物語。ただし、ミステリ成分はかなり薄めですので、そちらは期待しない方がよいでしょう。収録作:「やってられない月曜日」「誰にもないしょの火曜日」「とびきりさびしい水曜日」「甘くてしょっぱい木曜日」「それでもうれしい金曜日」「命かけます、週末です。」「またまた、やってられない月曜日~エピローグ」2007年10月10日読了
2007.10.16
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先ほど、作家の打海文三さんの訃報を知りました。9日早朝に、心筋梗塞とのこと。驚きました。 打海さんの作品は読んだことがないけれど、いろいろな方の書評や感想を拝見し、スケールの大きな作品を書かれる方だと思っていました。いつか読みたい、そう思わせる作家さんでした。残念。 ご冥福をお祈りいたします。
2007.10.12
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桜の花びらが舞う季節。打ち合わせで月刊EYES編集部を訪れたフリーライターの柚木草平は石田に代わる担当編集者として小高直海を紹介された。同時に依頼されたのは渋谷のラブホテルで起きた女子高生殺人事件の特集記事。請け負ったものの、柚木にとって食指が動かない事件だった。 あなたは、あなたの家族がどんなことをしているか、知っていますか。 あなたの家族は、あなたがどんなことをしているか、知っていますか。 子どもたちがそれぞれに個室を持つ家庭が増え、携帯電話を使うようになったのは最近のことではないけれど、それにつれて年々家族間の交流がなくなる傾向にある気がします。 今回柚木が追う事件もまたそんな家庭が出てきます。「うちの子に限って」「兄弟と言えども他人」「父親なんて」というような家庭です。 いかにも現代らしい舞台での、現代らしい事件。現代らしいアイテムも使って巧みに時代性を出しています。ただしそのアイテムはナイキのエアマックス96。そう、これは今から10年ほど以前の作品なのです。 本作は『彼女はたぶん魔法を使う』から始まる柚木草平シリーズの第4弾。このシリーズの最大の魅力は、なんと言っても柚木の気障な台詞、一人語りだったりします。今作でもそれは健在。しかも、洒落た台詞を決めておきながら、予期せぬ切り返しに思わず言葉に詰まったりしています。この辺が柚木の弱みであり、同時に作品としての強みでしょうか。 ミステリとしては比較的早い時点で犯人にあたりをつけることもできるでしょうし、必ずしも謎解きに重点が置かれていないとも思われる作品です。とは言っても、やはり謎解きにも力が入っている方がより魅力的でしょう。それに、創元推理文庫はともかく、旧版元の頃の帯でのネタバレは読み手の興味を削いでしまいそうです。講談社文庫版の帯を確認して唖然としてしまいました。 創元推理文庫でよみがえった柚木草平シリーズ。まとめ読みするなら今でしょうか。 ところで、解説で話題になっている「なぜ『誰もわたしを愛さない』は後回しになったのか?」という謎ですが、来月刊行予定の短編集『不良少女』や、現在「ミステリーズ!」誌に連載中の『捨て猫という名前の猫』と小高直海ものを続けたかったということではないでしょうか。関連作:『刺青白書』『夢の終わりとそのつづき』2007年10月7日読了
2007.10.10
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「小説新潮」誌に掲載された掌編を中心に23作集めた作品集。 ちょっと怖い話、くすっと笑わせてくれる話、心があたたかくなる話など23も作品があると様々なのですが、どれも北村印の判が打たれているかのようで、静かで淡々と語られる中に味わいや深みが感じられます。取り上げられたエピソードへの目のつけどころが北村さんらしいかもしれません。 ギャップがユーモラスでおもしろい「百合子姫・怪奇毒吐き女」やシンプルでかわいらしい「雪が降って来ました」なども印象に残りましたが、やはり読み応えがあったのは後半のちょっと長めな作品たちでした。 表題作である「1950年のバックトス」は孫の少年野球の試合を観に行った祖母の話。祖母が語りだしたのは思いもかけなかった過去の職業のこと。当時のことが目の前の出来事のようにいきいきと描かれています。想像できる結末でしたが、あたたかな気持ちにしてくれます。 また、最後の「ほたてステーキと鰻」は『ひたがた流し』の後日談。あの人たちはこうして生きているのだなと安心させてくれるます。思い入れのある登場人物たちと再会させてくれるというのはうれしいものです。収録作:「百物語」「万華鏡」「雁の便り」「包丁」「真夜中のダッフルコート」「昔町」「恐怖映画」「洒落小町」「凱旋」「眼」「秋」「手を冷やす」「かるかや」「雪が降って来ました」「百合子姫・怪奇毒吐き女」「ふっくらと」「大きなチョコレート」「石段・大きな木の下で」「アモンチラードの指輪」「小正月」「1950年のバックトス」「林檎の香」「ほたてステーキと鰻」関連作:『ひとがた流し』『七つの黒い夢』(「百物語」収録)2007年10月4日読了
2007.10.05
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すべての荷物が運び出された部屋。この部屋で過ごすのも今夜が最後。だから、確かめなければいけない。高橋千浩と藤本千秋、二人は互いに疑っていたのだ。一年前のあの日、あの男を殺したのは、目の前のこの人に違いないと・・・ たった一晩の二人のやりとり。最後だからとお互いに胸の奥にしまっていたものを吐き出したかのような濃密な会話。まるで二人芝居を見ているかのような展開で、緊迫感がありおもしろかったです。 随所に恩田さんらしい巧さが見られます。特にこの二人だけのやりとりの中に最近のこと、一年前のこと、そして幼い頃のことと時を越えていろいろなエピソードを組み込み1つの物語として仕上げるあたりは本当に巧い。 ただ、最初から最後まで読んでいる間中もやもやとした感覚があり、それが晴れることはありませんでした。真相として解き明かされたものには裏付けがなく、いくら登場人物たちが確信を持ったとしても、読み手までが納得するようなものではなかったように思います。このストーリーを二人芝居にする限界なのでしょうか。謎解きとして読むのが間違いなのでしょうか。まあ、僕にはちょっと合わなかったということで。2007年9月28日読了
2007.10.03
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求人雑誌に載っていたバイトは破格の条件だった。誤植じゃないのか。訝しがっていた結城理久彦だったが、車を買いたい一身で参加してしまう。時給1120百円のバイトは暗鬼館という地下の館で7日間、12人でモニターとして生活するというもの。だがそれは、殺し合いを誘発する危険なルールを持っていた。 主に日常の謎青春ミステリで活躍してきた米澤さんが、満を持して放つクローズド・サークルものミステリ。それだけにかなり丁寧に作りこまれていて、隙がありません。本格ミステリのガジェットもふんだんに盛り込まれ、次はいつ、誰が、どこで、どんな風に殺されるのかというスリルがずっと持続し続け、とてもおもしろく読みました。 12人にそれぞれ1つずつ与えられた12の凶器。それぞれ異なる殺害方法もいいのですが、それに添えられたメモランダムがまたいいのです。ついついニヤニヤしてしまいそうです。 ただ、ミステリのゲーム性を重要視したのでしょうか、あの人の背景にあるものがはっきりとは書かれていなかったことが残念。 米澤さんの本格愛が具現化されたような作品。本格ミステリが好きな人なら、きっと楽しめる作品でしょう。 もっとも、今までの青春ミステリを期待していると、裏切られたような何かしらの違和感を覚えるかもしれませんね。2007年9月26日読了
2007.10.02
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