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糺ノ森に住む下鴨家は狸である。狸の頭領・偽右衛門だった父の死後、その威光が薄れゆく中で偽右衛門の座を争う長兄矢一郎と叔父夷川早雲。「阿呆であることがすべて」な矢三郎は、往年の力を失った師匠・天狗の赤玉先生や半天狗の弁天に翻弄される日々。おまけに狸鍋を食さんとする金曜倶楽部の魔の手が迫る。果たして、金曜倶楽部から逃げ切れるのか。そして、夷川一族との対決の行方や如何に・・・ モリミーワールド全開のファンタジックタヌキストーリー。 読み出した当初はこの物語の設定にひどく違和感を覚え、なかなか読み進めにくく感じました。それは、今まで読んできた森見作品があくまで人間を主人公にした阿呆な物語であったのに比べ、『有頂天家族』が狸を擬人化にしたようなファンタジーであったことを受け入れがたかったのでしょう。もともとあまりファンタジー寄りの物語は読まないので。 まあ、読み慣れてくれば作者の思うツボ。狸に化かされたようなおもしろさでした。 毎度毎度の「クタバレ!」「おまえらひとり残らず身の程を知れ!」 なんてセリフもさることながら、狸に天狗そして人間が入り混じった乱痴気騒ぎのおもしろさが最高。達磨のような小さいものだけでなく、偽蕎麦屋や偽叡山電車なんてものにまで化けてハチャメチャな展開なのです。『夜は短し歩けよ乙女』の時にも思ったのですが、やはり『うる星やつら』のような物語が好きな方なら十分に楽しめることでしょう。 また、かわいらしい毛玉たちが何匹も出てきますが、中でも矢三郎の元許婚・海星のツンデレ(?)ぶりは随一のかわいらしさ。 人間が主人公でない分、今までの作品よりも一般受けするかもしれませんね。早くも第二部が楽しみ。 とにかく「面白きことは良きことなり!」という言葉で、この阿呆な文章も終わりにします。2007年11月22日読了
2007.11.24
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子どもの頃に誰もが遊ぶ・・・といっては大げさでしょうが、今も昔も人気のプラレール。先週だったでしょうか、娘たちが遊ぶには僕が子どもの頃のものは動かないということで新しく買ってきました。 まあ、すごいですね。ライトが光るものから音が出るものまで。子どもの頃にはちょっと比較になりません 娘は赤い電車がよかったようですが適当なものがなく、買ったのはこれ(プラレール『S-47 サウンド江ノ電1000形』)。 もし、長く遊べそうならいろいろ買い足してもいいかなと思っています。 赤いだけでいいならこれとかこれとかこれでもよかったかも。
2007.11.21
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ギャルソンの高築が勤めるフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」は、従業員4人と規模は小さいが、フレンチ好きの常連が多く、味は確かな素敵な店だ。三舟シェフは無口だけれど、客が持つ悩みやちょっとした事件を、厨房にいながら名推理でたちまちに解いてしまうのだった・・・ 「ビストロ・パ・マル」を舞台とした7編による短編集。●「タルト・タタンの夢」 結婚を間近に控えた常連の西田さんは、婚約者の手料理を食べて体調を崩した。同じものを食べているはずなのに・・・なるほど、さっそくフレンチをうまく絡めた話ですね。この方面には全く知識がないのでわかりませんでしたが、つかみにはよかったのでは。●「ロニョン・ド・ヴォーの決意」 忌避すべき客、粕谷さん。彼は偏食が激しく、食べられるものの方が少ない。彼が連れてきた女性は、彼の妻は料理の下ごしらえが足りず、愛情に欠けていると言い放つ・・・夫婦の真髄を見せつけられたとでもいう感じ。そのとき、その一瞬が良ければそれでいいというものではないですから。●「ガレット・デ・ロワの秘密」 志村シェフの奥さんはシャンソン歌手。パ・マルでのクリスマスコンサートのあと、彼女はガレット・デ・ロワを前にフランス時代の不思議な出来事を語りだした・・・フランスの文化と人間の感情をうまく組み合わせた作品。ご馳走さまと言いたくなる話だけれど、そこに行き着くまでの心理がおもしろいです。●「オッソ・イラティをめぐる不和」 連日、一人でやって来るようになった脇田さん。実は奥さんに家を出て行かれたという。原因には心あたりがないと言うが・・・これは恐ろしい話。心あたりがある人はかなりいると思うのですが。●「理不尽な酔っぱらい」 萩野屋の主人は高校時代に甲子園を目指していたが、合宿中に後輩が飲酒による暴力事件を起こして予選を辞退せざる得なくなったという。だが、合宿所には一滴も酒がなかった・・・ほかにあやしいところはないので、どこに仕掛けたかは明らかなのですが、思いもよらぬ仕掛けだったのでびっくり。不祥事の話のなのでちょっと重苦しく感じたのですが、オチがきれいに流してくれました。●「ぬけがらのカスレ」 かつてフランスに滞在していたエッセイストが予約時にリクエストしたのは鵞鳥のカスレ。エッセイを読む限り、彼女にとっては嫌な思い出の残る料理のはずだが・・・「ガレット・デ・ロワの秘密」同様、きれいな組み合わせ。タイトルがうまいですね。●「割り切れないチョコレート」 パ・マルのボンボン・オ・ショコラを非難した客は、最近評判のチョコレート専門店のショコラティエ。試しにその店のチョコレートを買ってみると、その詰め合わせはすべて素数だった・・・それが真相かどうか定かではないけれど、心温まる話。ただ、素数でなくても奇数でいいと思うのですが。 全体的に温かく、そしてやさしい作品が揃った作品集。日常の謎だから決して大きな謎ではなく、尺も短いのですが、粒ぞろいではずれがありません。どの作品にも別々のフレンチを絡めているのもポイント。 探偵役の三舟さんは無口ということだったけれど、なんだかそんな風に感じられなくて、むしろシーンによっては饒舌な印象も。たちどころに解決してしまうように見えるので、もっと逡巡するようなところがあってもよかった気がします。 近藤さんは長編を得意としているイメージが強かったのですが、短編集もなかなかいいですね。「錆びないスキレット」「憂さばらしのピストゥ 」「ブーランジュリーのメロンパン」「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」といったところも早く一冊にまとめてほしいところです。収録作:「タルト・タタンの夢」「ロニョン・ド・ヴォーの決意」「ガレット・デ・ロワの秘密」「オッソ・イラティをめぐる不和」「理不尽な酔っぱらい」「ぬけがらのカスレ」「割り切れないチョコレート」2007年11月17日読了
2007.11.19
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突然校長を誹謗中傷する放送が流され、鍵のかけられた放送室では愁也が倒れていた。回復した愁也は警察から事情聴取を受けるが、襲われたときのことを憶えていない。果たして愁也を襲ったのは誰なのか。そして、どうして校長を中傷するのか・・・ 普通の学園小説と思いきや、ジェットコースターのような驚愕の展開で一気にミステリー色を前面に打ち出したのが前巻でした。 で、『導かれた解答』というタイトルから、事件解決二巻完結を予想したのですが。 ・・・全然そんなことない。 全く、と言っていいほど事件は進展しない驚愕の展開。進んだ、と言っても全然ミステリじゃない。解答は導かれるどころか解きだす前に選択肢が増えたり取り替えられたりした模様。 タイトルによる先入観がなければそれなりに楽しめるかもしれませんが、先入観を持ってしまったがために完全な肩透かしでした。この先ミステリらしくなるのかもしれないけれど、その期待は薄いのかな。 なちる以外の4人が各章ごとに交代する一人称。視点や感情にそれぞれの特色がよく出ていて、この使い方はよかったです。でも、せっかく多人数のメンバー構成なんだから、探偵団してほしいところ。関連作:『カレン坂高校可憐放送部』2007年11月17日読了
2007.11.19
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読書の秋、みなさんいかがお過ごしでしょうか。 今年の秋は暖かいというか暑く、この冬は暖冬傾向かと思っていたのですが、さすがに11月になって寒くなってきました。特に一昨日髪を切ったので余計に寒いです。首筋が寒く、背中を丸め気味。 寒い冬はキライです。寒くないのも冬らしくなくてどうかと思うのですが。 子どもの頃に比べると、やはり冬は暖かくなった気がしますし、紅葉も遅くなったのではないでしょうか。紅葉や楓の葉が色づいたらすぐクリスマスというのも味気ない気がします。 そういえば、去年の冬はわが家ではついにコタツを出さなかったように記憶しています。今年はどうでしょうか。
2007.11.12
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新任美術教師の岡里菜は、赴任先の生徒、五十嵐薫の声に耳を疑った。彼の声は、二年前に何者かに殺害された恋人の伸の声そのものだったのだ。三年生で受験を控えていた薫だったが、里奈が顧問を勤める美術部に入部を希望する。そのことが、薫の従妹の珠緒にはおもしろくなかった。 理論社から刊行されている「ミステリーYA!」の1冊。新津さんの長編を読むのは初めてです。 新津さんに限らず、この「ミステリーYA!」の執筆者の方々の中には、当然ながらヤングアダルト向けの作品を書いた経験の少ない方も多いことでしょう。新津さんもそうなのでしょうか。 全体としていろいろなものを詰め込もうとして、その分中途半端になってしまったような印象を受けました。大筋はものすごくシンプルなものなのです。 いろいろ詰め込んだ要素が、作品全体の雰囲気作りに影響を与えていることはもちろん理解できます。しかし、どうしても伏線を探すような読み方をしてしまうために、雰囲気作り以上のものを期待してしまい、結果として物足りなさを感じました。 どうにも読み方をまちがえた気がして、もったいなかったかもしれません。爽やかな青春ミステリです。決して悪くはない作品だと思うのですが。2007年11月11日読了
2007.11.12
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文科系のクラブが集まった芸術棟。ここに夜になるとフルートを吹く幽霊が出るという。この噂によって練習ができなくなってしまった吹奏楽部は、美術部のアトリエで創作活動に励んでいた葉山を巻き込んで、その真相を確かめようとする。幽霊なんているわけないと夜の芸術棟に乗り込んだ葉山たちだったが・・・ 第16回鮎川哲也賞佳作入選作。受賞から1年を経ての刊行だけに相当の改稿があったであろうことは想像に難くないのですが、その甲斐あってか、予想以上におもしろい作品でした。 もともとこういった学園もののミステリは好きなので、あらすじを一読しただけで期待はしていました。それだけに、全く異なるプロローグには少々驚かされました。 幽霊が出るといっても、ミステリである以上そこには当然何かしらの仕掛けがあるわけですが、その物理トリック自体は決して快哉を叫ぶようなものではありません。 しかしながら、この作品の見どころはそこ、つまりはハウダニットではなく、この幽霊事件全体のホワイダニットを中心にすえた構成と、この葉山をはじめとするユーモラスかつシニカルな登場人物たちにあります。 幽霊事件の謎を追うということでこの作品の芯は貫かれており、事件はHow→Who→Whyの順で解き明かされていきます。ですが、そのままでは終わらずに、Whyの上になんとも言えず苦いと言うべきか黒いとも表現できるようなエピソードを乗せてメリハリをつけるあたり、大いに評価したいところです。 また、表紙からも想像できるでしょうが、ライトノベル的なアプローチが試みられています。それは外側だけでなく内側もまたしかり。軽妙な語り口と適度なユーモア、そしてシニカルな眼差しというような設定の主人公をはじめとした人物設定はおそらくライトノベルを意識したのではないかと思われ、たいへん読みやすく感じました。しかもそういった描写をほどほどに抑え、ミステリとして突き進んだ点に好感が持てます。 とにかく今後を期待したくなる作家であることは確か。せっかくなのでこの登場人物たちでシリーズ化をしたらよいのではないかと。先物買いな方にはぜひともおすすめ。2007年11月5日読了
2007.11.08
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かつて旅行会社に勤務しツアーのプランを立てていた八駒敬典は、「歩く百科事典」「電源のいらない検索サイト」などとも呼ばれる博学だったが、今は「家主」と称する専業主夫。中学生になる娘のつばめとともに知識を駆使し、身のまわりに起こる謎を解いていく・・・ 「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー作『天才たちの値段』で高い評価を得た門井慶喜さんの第2作。 博学で知られる人物を主人公に据えているだけに、ウィットがあり、蘊蓄で満ち溢れた雑学事典のような作品集です。 しかしながら、一言で表現すれば衒学的。すなわち、はじめに蘊蓄ありきと思われてならないのです。 例えば、主人公の八駒敬典は以前旅行会社に勤務していたわけですが、その設定が活かされていると思われるのは表題作「人形の部屋」でのフランス人形に関する蘊蓄ぐらい。「外泊1 銀座のビスマルク」で披露される蘊蓄も、彼自身の出身地に絡められ、せっかくのチャンスを逃してしまっている印象。別に観光地を巡るようなトラベルミステリーにしろというわけではありませんが、せっかくの設定なのですからもう少し活かしようがあったのではないかと思うことしきり。「博学」という部分ばかりが強調され「元旅行会社勤務」という部分が忘れ去られたまま蘊蓄を披露し続けるため、結果として鼻につくこともしばしば。 また、本作は5つの短編で構成された短編集ですが、中心になるのはそのうち長めの3作。この3作がおもしろくないというわけではないのですが、いずれも冗長に感じられ、やや切れ味を失っているのが残念。むしろ幕間のような短めの2作のほうが切れ味を感じることができます。決して現実的とは思えないのですが、2作とも万年筆や奈良筆を買い求めようというところで見知らぬ男に相談を持ちかけられます。「外泊1 銀座のビスマルク」は特に蘊蓄と謎解きがきれいに組み合わされた例ではないかと。 決して派手ではありませんが、主人公同様静かで落ち着いた雰囲気の作品集です。収録作:「人形の部屋」「外泊1 銀座のビスマルク」「お花当番」「外泊2 夢みる人の奈良」「お子様ランチで晩酌を」2007年11月5日読了
2007.11.06
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陸上競技で将来を嘱望されていた白石誓は、高校時代に恋人と別れたトラウマからサイクルロードレースに転向した。それは、エースの勝利のためならアシストは犠牲になることも厭わない競技。誓はチームのアシストとしてツール・ド・ジャポンに出場し、エースの石尾を超える活躍をしてしまうが・・・ ミステリと最近の流行のように思われる青春スポーツ小説を組み合わせた感のある作品。前半はツール・ド・ジャポンを舞台に、サイクルロードレースの楽しさ、厳しさと、誓の成長を描くストーリー。しかし、後半に入って一転、ミステリの様相を呈していきます。 サイクルロードレースは日本ではマイナーな部類に入る競技。それだけに前半はやや説明的にツール・ド・ジャポンでの誓の活躍が描かれています。しかし、これが全く長いとは感じないのです。それどころか競技の魅力が満載。紳士のスポーツであり、世界一過酷なスポーツであり、そして、エースのために働くアシストの存在の上に成り立つスポーツ。アタックをかけるタイミングや位置取りによる駆け引きのおもしろさなど、本当に興味深いものです。また、誓だけでなくエースの石尾、若手の有望株伊庭など、登場人物がいずれもいきいきと描かれています。この作品がミステリであることを忘れてしまうくらい。 200ページあまりの長さ、しかも後半中心ということもあり、ミステリとしては決して複雑とは言い難い構造。ですが、人間くさい物語の中で、徐々に明らかになり、そのたびに二転三転し世界を変えていく真相は、まさにこの作品のために用意されたかのようなもの。多くは語れませんが、その不可分な組み合わせに大満足なのです。 ミステリが好きな人、サイクルロードレースが好きな人はもちろんのこと、どちらにも当てはまらなくても読んでほしい作品です。おすすめ。2007年10月30日読了
2007.11.01
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