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2019.09.29
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香蜜沉沉烬如霜  Ashes of Love
第52話「旭鳳の追放」



魔界で復活を果たした旭鳳(キョクホウ)、しかし両親がすでに亡くなったと知った。
孤独に苛まれた旭鳳は密かに天宮へ位牌を拝みに来たが、いくら探しても母の位牌が見つからない。
「旭鳳…もう探すな」
その声は天帝となった兄・潤玉(ジュンギョク)だった。

潤玉は荼姚(タヨウ)に先賢(センゲン)殿に祭られる資格などないと言い放った。
やむなく先帝の位牌は安置したが、それも不本意だという。
父と荼姚は世を欺き、2人のせいで六界は殺戮が絶えなかった。

すると潤玉は、両親の権力に守られながら時代の寵児として生きて来た旭鳳には現実が見えていないのだろうと揶揄した。
「考えてみたことがあるか?先の水神が錦覓(ジンミー)の相手に私を選んだ理由を
 そしてなぜ私が乱臣賊子(ランシンゾクシ)となり謀反を起こし、簡単に帝位を得られたのか?
 お前の母の死について誰ひとり追求しようとしない理由をな
 私が策を巡らせたのではない、あの2人が悪行を重ねてきたからだ!」
潤玉は今や天界が安定し、錦覓も幸せに暮らしていると言った。
「お前は必要ないのになぜ戻った?」
「黙れ!ジンミーの話はするな…」
「なぜ恥を忍んでまで命を取り戻した?往生際の悪いヤツめ…まあよい
 私とジンミーとでお前を一度、殺したのだ、また殺せば良い」
「今日の言葉を覚えておけ…いつか後悔させてやる」

2人はついに決別し、同時に剣を突きつけた。

騒ぎに気付いた天兵たちが駆けつけた。
そこにはかつて旭鳳が重用していた破軍(ハグン)星君の姿もある。
潤玉は侵入者を捕らえろと命じ、天兵たちは旭鳳を包囲した。
しかしその時、錦覓が駆けつけ、旭鳳をかばう。

旭鳳は自分を守る錦覓の姿に驚いたが、それが誤解だと気付いた。
「私があなたを殺した…その恨みは他の者ではなく私に…」
「(はぁ~)水神、命を差し出すほど天帝に深い情があるのか~
 だが天帝も同じように水神を想っているだろうか?」
錦覓はとにかく早く逃げろとささやいたが、旭鳳はまた不可解な行動をする錦覓に呆れてしまう。
「天帝を守りながら私の味方もするとは…今日の演目は何だ?」
「お願いだから早く逃げて!」
そこで旭鳳は錦覓を人質に取り、じりじりと後退した。
「私たちの木は枯れたのだ…」
旭鳳は最後にそう言い残し、錦覓を解放してひとりで出て行ってしまう。


潤玉はすぐ天兵たちを差し向け、後を追うことにした。
すると錦覓が自分の胸を刺し、旭鳳を見逃すよう潤玉を脅す。
「近づいたら命を絶つわ!」
その頃、旭鳳はゆっくり天宮を歩いていた。
実はかつての家臣たちは皆、旭鳳に恩があり、そのまま黙って旭鳳を見送ることにする。
旭鳳は共に戦った臣下たちに感謝し、ただこれからは進む道が異なると言った。
そこで裳裾を切り裂き、今日を限りに袂を分かつと宣言する。
「戦場で会っても手心は加えるな」

天兵たちは旭鳳をあっさり逃した。
しかし潤玉は破軍星君たちの忠義心に免じ、罪には問わないと告げる。
ただしこれを最後にするよう釘を刺しておいた。

錦覓は七政(シチセイ)殿の前でひざまずき、旭鳳を見逃すよう嘆願した。
しかし潤玉は錦覓に会おうとしない。
「旭鳳は私が最も欲しいものを手に入れている…」
誰にも制止されず先賢殿に出入りできた旭鳳、それを御前将軍の破軍星君ですら見逃した。
そして錦覓の瞳に映るのは今も旭鳳だけ、心の中には旭鳳しかいない。
「ミーアー、私は君のためなら何でも犠牲にする
 命の半分をも差し出すが、私はその目に映らぬのか
 皆が私を裏切り、旭鳳のために尽くす…だったらもう容赦はせぬ」
(TㅅT)しくしく…

一方、旭鳳は日没の地に戻り、臨淵台(リンエンダイ)で拾った霊火珠(レイカシュ)を母と見なして埋葬した。
暮辞(ボジ)は一緒に弔ってくれたが、恐らくその目にも母は悪辣非道に映っていたのだろう。
両親の庇護の下で育ち、天界で最も尊い2人の言葉が全て正しいと思って育った旭鳳、今になって思えば両親の過ちを止められなかった自分にも責任があるのかもしれない。
再会した潤玉は理路整然とし、その言葉に反駁(ハンバク)する術もなく、両親の尊厳も守れなかった。
「天界は見知らぬ土地で私の故郷ではなくなっていた…鳳凰の木もだ…
 そなたと同じく、もう帰る家がない…」
すると暮辞は違うと否定し、かつて先の水神を監視していた時に聞いた水神の心の声を教えた。
「″心休まるのは我が里のみ″と…」
暮辞は両親と一族をなくし、故郷も失った。
当時の心の支えは恨みだったが、やがて両親と一族が唯一の生き残りとして自分に恨みを持つことなく生きることを望んでいると分かったという。
「今、私を支えているのは″希望″です」

穂禾(スイカ)が旭鳳の隠れ家に薬を届け、帰って行った。
未だに穂禾を信じられない卞(ベン)城公主・鎏英(リュウエイ)だったが、旭鳳は穂禾が自分を傷つけることはないと安心させる。
穂禾が金丹を飲ませてくれたと信じている旭鳳は穂禾に深い恩があり、借りがあると言った。
鎏英はともかく旭鳳の身体の調子を心配し、霊力を高められるように朱雀の卵を渡す。
「天后を訪ねた時に殿下が朱雀をくれたのよ」
旭鳳はかつて水系の錦覓が過って朱雀の卵を食べてしまった時のこと@3話を思い出し、何とも複雑な心境になった。
すると急に苦しくなって咳き込んでしまう。
暮辞は驚いて旭鳳を脈診したが大事ではなく、回復したばかりなので修練を急がないよう助言した。

旭鳳の隠れ家からの帰り道、鎏英は暮辞の髪に白髪があることに気づいた。
卞城王府に戻って鏡を見た暮辞は衝撃を受け、不安に駆られる。
近い将来、力を失って老いと病に苦しみ、鎏英を忘れてしまう…。
「そうなっても私が好きか?」
「蝉も蜻蛉(カゲロウ)も命は短いけど幸せに生きている、10年も一緒に過ごせるのは幸せよ」
鎏英は何があろうと一緒に立ち向かおうと励ました。

潤玉が七政殿を出ると、まだ錦覓がひざまずいていた。
錦覓は黙って通り過ぎようとした潤玉を引き止め、旭鳳を許して欲しいと嘆願する。
「必死なのだな…分かった、約束する」
潤玉は錦覓を立たせたが、錦覓は急に気を失ってしまう。


翌朝、元気になった錦覓は寝殿から出ようとした。
しかし結界にぶつかり、弾き返されてしまう。
ちょうど通りかかった鄺露を呼び止めて聞いてみたが、結界は潤玉の意向だった。
「陛下にも苦しい決断なのです」
鄺露はそう言って去ってしまう。

錦覓は仕方なく水術で彦祐(ゲンユウ)を召喚した。
しかし彦祐にもこんな強固な結界は破れないという。
錦覓は落胆してその場に座り込むと、玄祐も回廊に座り込んだ。
「火神が生き返ったらしいが君の仕業?」
「…うん」
「だから陛下が六界に命を出したのか~火神の神籍を剥奪し、天界を追放した」
「許すと言ってたけど、ひどい仕打ちだわ…」
錦覓は失望したが、彦祐は以前の穏やかな夜神ではないと教える。
生母が天后に惨殺されるのを見て、その怒りの矛先が火神に向いたのだ。
すると錦覓はふと初めて天界に来た頃の無邪気だった自分を思い出した。
あの頃はまだ両親の敵や愛憎など知らず、ぶどうの精霊として誇りを持っていたという。
そして旭鳳もまた自身に満ちて、活力のある鳳凰だった。
潤玉は優しく、とても善良だったのに…。
「あの幸せな日々はもう戻ってこない…それに鳳凰の木も枯れたわ…」
思えば全ては隕丹から始まった。
旭鳳との日々に後悔などないが、ただ旭鳳に申し訳ないという。
「聞きたくない!昔のことは聞きたくないんだ!」
彦祐は急に立ち上がり、結界を破れる者を探してくると言った。

一方、魔界にいる旭鳳は修練に勤しんでいた。
しかし焦り過ぎたのか、急に身体が冷気にむしばまれてしまう。
そこへちょうど穂禾がやって来た。
穂禾は旭鳳の身体を心配しながら、実は旭鳳が神籍を剥奪され、天界を追放されたと教えた。

その頃、天界では月下仙人が璇璣(センキ)宮に押しかけていた。
門衛は中に入れてくれなかったが、ちょうど潤玉が現れる。
「なぜ旭鳳の神籍を?!天帝になったのだ、旭鳳を追い詰めるな!
 そなたの弟で一度、死んだのだぞ?」
月下仙人は旭鳳にとって命を奪うより残酷だと訴えた。
すると鄺露は旭鳳が天帝に剣を向けたと話し、錦覓が止めねば殺されていたと教える。
まさか錦覓が潤玉に加勢するとは…。
困惑する月下仙人に潤玉は、錦覓と旭鳳が結ばれることはないと断言して行ってしまう。

つづく


(^ꇴ^)♪蚯蚓だ〜って螻蛄だ〜って飴坊だ〜って〜
って、鎏英ったら慰めにもなっていないような…w





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最終更新日  2019.09.29 15:32:58
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