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2020.11.09

第３話「偶然の出会い」

砂丘で待ち合わせしていた曲小楓(ｷｮｸｼｮｳﾌｳ)はようやく師匠らしき人影を見た。
喜んで走り出した小楓、しかし駆けつけてみると見知らぬ青年が大怪我をして倒れている。
小楓はともかく応急手当てして青年をどこかに避難させることにした。

豊朝(ﾚｲﾁｮｳ)第五皇子・李承鄞(ﾘｼｮｳｷﾞﾝ)がふと目を覚ますと、見知らぬ娘が自分をどこかへ連れて行く途中だった。
承鄞は朦朧とした意識の中、てっきり敵に捕まったと勘違い、赤い衣の娘にいきなり襲いかかってしまう。
「私を殺しに来たのか？！」
「殺すって…あなたを助けて傷の手当てもしたのよ？！」

「何者だ？！」
「こっちが聞きたいわ！その傷はどうしたの？独りなの？」
しかし承鄞は再び気を失ってしまう。

将軍・裴照(ﾊｲｼｮｳ)は皇太子の亡骸を安護(ｱﾝｺﾞ)府に連れ帰った。
西域の間者が入り乱れる国境の町、どうやら豊朝で何か事件があったらしいと嗅ぎつける。
安護府の上官・高顕(ｺｳｹﾝ)は皇太子の亡骸を確認し、早馬で都に知らせるよう命じた。
裴照は早馬をすでに出し、第五皇子を捜索していると報告する。
「…さすが裴将軍だな？」
「恐縮です」
裴照は高顕の嫌味を受け流し、現場に落ちていた丹蚩(ﾀﾝｼ)人の剣を見せた。
実はちょうど国境の海州(ｶｲｼｭｳ)城が丹蚩人の強奪に遭ったばかり、皇太子の暗殺との関連を調べているという。

その頃、病床の明遠(ﾒｲｴﾝ)も柴牧(ｻｲﾎﾞｸ)から第五皇子が行方不明だと聞いていた。
すると明遠が急にむせたかと思うと喀血してしまう。
肺病に侵された明遠は自分の命が長くないと分かっていた。
本来なら豊朝皇太子と小楓の婚礼を見届けたかったが、まさか皇太子があの若さで亡くなるとは…。
明遠はともかく何としてでも第五皇子を見つけて欲しいと柴牧に訴えた。

小楓の姿はなかったが、中原の馬が倒れているのを見つける。
一方、小楓は青年がまた暴れないよう、眠っているうちに木に縛り付けておいた。
やがて目を覚ました承鄞は解放して欲しいと訴えたが、小楓はその代わり恩人である自分の願いを３つ叶えて欲しいと条件を出す。
「はお、言ってくれ」
「そうね～」
小楓は自分で言い出しておきながら何も思いつかず、結局、そのまま朝を迎えた。

しびれを切らした承鄞は大事な任務があるので縄をほどくよう頼んだ。
すると小楓が任務とはこれかと国書を差し出す。
焦った承鄞は返せと声を荒げたが、幸いなことに小楓は漢族の字を読めなかった。
「…私は西州に向かっていた豊朝の商人なんだ
　旅の途中で盗賊に襲われ、荷を奪われた、仲間も行方不明だ
　それは通行手形で、それがなければ商売ができない」
「やだ、早く言ってよ～」

素直な小楓は青年を解放し、自分が敵をとって荷物を取り返してやると言った。
「師父ならできる、天下で一番すごい人よ！」
小楓は馬の元へ行くと、鳴り矢で師匠を呼ぶことにしたが、なぜか見当たらない。
実は小楓は鳴り矢を砂丘で落としていた。

承鄞は誰かが来たと小楓に知らせた。
そこで二人は一緒に丘の下に走る山道を見下ろしてみる。
すると丹蚩人が中原から強奪した荷物や誘拐した農民を連れて休憩していた。
承鄞は兄を殺した憎き丹蚩人だと恨みを募らせたが、そこへ安護府の将軍がやって来る。
しかし将軍は農民たちを助ける様子もなく、″正式な交易″以外で最近、取り引きしたことはないか確認した。
実は将軍は丹蚩人が１年に３回ほど辺境の集落を襲うのを黙認、その度に安護府が制圧したことにして定期的に軍功を上げている。
疑われたイモイェンは憤慨した。
「丹蚩人は信義を重んじる、それに取り決めに背いて得などない！」
「はお、信じよう、だが国境は不安定だ、集落に部下を近づけるなよ？」
イモイェンは豊朝で何か大変なことが起こったのかと探りを入れたが、将軍は知らない方が良い事もあると言って引き返して行った。
その時、丘の上から馬のいななきが聞こえる。
「そこにいるのは誰だ？！」

承鄞は丹蚩人に気づかれたと慌て、娘に逃げるよう促した。
しかし娘は大丈夫だと安心させ、一人で飛び出して行ってしまう。
「表哥！私よ！」
「シャオフォン？！また逃げ出したのか？」
「もしや私を捕まえろと頼まれたとか？」
「俺はそれほど暇じゃないぞ？はは～」
イモイェンは城まで送って行くと言ったが、小楓は丘の向こうに護衛がいると嘘をついてごまかした。
「おとなしく帰るんだぞ？！」
「哥哥、またね～！(＾ꇴ＾)ﾉ″」
小楓は従兄と別れて丘に戻ったが、すでに青年の姿はなかった。
すると木の枝に白い布が縛ってある。
「″三″…″日″……″見″…？？？」

一方、承鄞は川沿いを歩きながら安護府を目指していた。
すると馬を駆けてきた柴牧が追いつき、二人は再会を果たす。
実は柴牧は承鄞に″五珠連環箭(ｺﾞｼｭﾚﾝｶﾝｾﾝ)″を授けた後、急に姿を消していた。
「なぜここに？」
「明遠公主にお仕えしています」
柴牧は明遠公主が第五皇子の身を案じて自分に捜索を命じたと説明した。
安護府までの道中は敵味方が入り乱れて危険なため、ここで着替えてから送って行くという。

小楓は再び砂丘へ向かっていたが、その途中で顧剣と合流した。
「３日と言ったのに！遅すぎるわ！」
「すまない…許してくれ、砂丘で矢を拾ったよ、心配していたが無事でよかった」
ともかく二人は急いで逃げることにしたが、西州(ｾｲｼｭｳ)王が放った兵士たちに見つかり、囲まれてしまう。

兵士たちは九公主を連れて帰らねば国王に殺されると訴え、どうしても逃げるならここで自分たちを殺すよう迫った。
追い詰められた小楓と顧剣、その時、小楓は師匠の苦渋の表情に気づく。
すると小楓は駆け落ちを断念し、おとなしく帰ると言った。

その頃、豊朝にも李承稷(ﾘｼｮｳｼｮｸ)暗殺の知らせが届いていた。
愕然となった皇帝はひとしきり物に当たり散らす。
皇后は皇帝に怪しまれないよう皇太子の死に驚きながら、実は第五皇子の身だけを案じていた。

一方、五弟が逃げ延びたと知った第二皇子・李承鄴(ﾘｼｮｳｷﾞｮｳ)は激怒していた。
「役立たずめ！全員、殺せと命じたはずだぞ？！」
丹蚩人に扮した刺客を放ったのは李承鄴だった。
「五皇子は窮地に陥っている、必ず安護府を目指すはずだ、姿を現したらすぐに斬れ！」
…五弟、私を責めるなよ？お前がでしゃばるからだ、生きていてもらっては困る

柴牧は安護府まで第五皇子を見送り、門の前で別れた。
しかし身分を示すことができず、門衛に止められてしまう。
周りには民に扮した間者が承鄞を狙っていた。
その時、運良く裴照将軍が帰って来る。
「阿照！」
こうして承鄞は無事に安護府へ入った。

高顕は急いで第五皇子に謁見、父の高右相と皇后が心配していると伝えた。
しかし承鄞は高顕の顔を見て驚く。
高顕こそ山道でイモイェンと裏取引の話をしていた将軍だった。

朝議は皇太子を暗殺した丹蚩人の裏切りに紛糾した。
すると第二皇子が御前に立ち、自ら丹蚩人を追い払い、兄の敵を討つと申し出る。
一方、承鄞は裴照と二人で李承稷の遺体と対面した。
かつて幼い自分たちと一緒に遊んでくれた優しい兄、しかし太子になってからは口数が減り、笑顔も少なくなってしまう。
「そして私たちを待っていたのが…永遠の別れとは」
「兄弟の絆を断てはしない…皇兄、チョンインが必ず敵を討ちます！(๑•̀ㅂ•́)و✧ｶﾞｼｯ」

つづく

( ￣꒳￣)西域の人はなぜカタカナにしたのかな？
小楓→シァォフォン
李承鄞→チョンイン、LCY

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