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2020.11.17

第18話「密会の疑惑」

王座を狙う応王・宋玄応(ｿｳｹﾞﾝｵｳ)は楚宛(ｿｴﾝ)の口封じに刺客を放った。
しかし深夜、牢に押し入った刺客が剣を振り下ろした瞬間、楚宛がこつ然と消えてしまう。
翌朝、報告を聞いた宋玄応はしくじった刺客を始末した。
ともかく人手を増やして捜索するよう命じたが、何とも奇妙な話だと首をかしげる。
一方、宛婕妤(ｼｮｳﾖ)が消えたと知った承虞(ｼｮｳｸﾞ)国王・宋玄仁(ｿｳｹﾞﾝｼﾞﾝ)は激怒した。
大内官・楊順(ﾖｳｼﾞｭﾝ)は月華宮に駆けつけ、九夫人・白小九(ﾊｸｼｮｳｷｭｳ)に助けを求める。
「どうか大王をなだめてください、侍衛たちが皆殺しにされてしまいます」

宋玄仁が禁衛軍に八つ当たりしていると、小九がやって来た。
小九は人払いを頼み、葉青緹(ﾖｳｾｲﾃｲ)たち禁衛軍を解放する。
「宛婕妤の脈を診た太医の言葉をご記憶ですか？」
太医は毒の作用が疑われるものの、苦しむ様子がないことを理由に否定していた。
小九はすでにあの時、不審に思っていたと話し、もしや楚宛は人間ではないかもしれないという。
「誰にも言えぬ訳があってこの世に来たものの、全てやり終えたので去ったのかと…」
楚宛が大王に疎まれた途端に姿を消したところをみると、恐らく宋玄仁のために来たのだ。
しかし宋玄仁は霊璧石(ﾚｲﾍｷｾｷ)を盗むためかと訝しむ。
驚いた小九は楚宛が大王に情を持っていたとかばったが、宋玄仁は侍衛たちを守るための小九の弁明だったと気づいた。
「もう良い、宛婕妤が去り、霊璧石は幸い守られた」

魔界、青玄(ｾﾝｹﾞﾝ)殿。

しかし姫蘅は楚宛と名乗り、ここがどこかも分からず、燕池悟のことも覚えていないという。
「君は魔族の姫蘅だろう？覚えていないのか？！」
姫蘅と聞いた楚宛は、九夫人も自分をそう呼んでいたこと思い出した。
「私をご存知なの？」
驚いた燕池悟は喣暘(ｸﾖｳ)や丹泠宮(ﾀﾝﾚｲｷｭｳ)、東華(ﾄｳｶ)のことも忘れたのかと聞いてみたが、楚宛はやはり分からないという。

「聶初寅？…聶先生なら命の恩人です」
「何言っているんだよ～あいつは悪党だ！毛皮をだまし取る野郎なんだ、記憶だって奪いかねない」
楚宛は誤解だと訴え、高所から落ちて死にかけていた時に聶初寅に助けられたと話した。
すると燕池悟は喣暘から姫蘅が崖から落ちたと聞いたことを思い出し、それで記憶を失くしたのだと合点が行く。
姫蘅が崖にいなかったため魔界中を探し回ったが、やがて人間界にいると手がかかりをつかんだ。
そこで急いで人間界へ行ってみると、姫蘅が牢で殺されかけていたという。
ともかく燕池悟は仙術で姫蘅の記憶が戻らないか試そうと決め、慌てて出て行った。

中庭でひとり月見酒の小九、すると沐芸(ﾓｸｳﾝ)が国王から賜った外套を肩に掛けた。
「月の満ちる夜は恋しき者と集いたい…もう長い時が過ぎた、いつそんな日が来るのやら…」
主が急に詩を詠み、沐芸はかなり酔っていると気づく。
そこへ急に宋玄仁が現れた。
小九は慌てて拝礼しようとしたが、足がもつれて宋玄仁の胸に飛び込んでしまう。
「また酒か？」
「…ほんの少しです」
すると宋玄仁は外套を羽織った小九を見て満足し、飾りが足りないようだと言ってかんざしを取り出した。
「特別に作らせた金線細工の鳳凰のかんざしだ」
小九は拝跪しようとしてふらつくと、宋玄仁は咄嗟に小九の腕をつかんで引き寄せた。

宋玄仁は小九を抱き上げ、寝台に運んだ。
「さっき言っていたな、恋しいのは誰だ？そなたの心に住んでいたのは一体、何者だ？
　何者でも構わぬ、今後は余だけを住まわせよ…今夜はここに泊めてくれ」
すると宋玄仁は小九に口づけした。
しかしふと気がつくと小九が酔いつぶれて眠っている。
宋玄仁はあきらめて帰ることにしたが、戸を閉める前にもう一度、確認した。
寝台から見える小九の可愛い足、やはりピクリとも動かない。

翌朝、小九は目を覚ましたが、昨夜のことを覚えていなかった。
そこで慌てて沐芸を呼び、国王が泊まったか確認してみる。
沐芸の話では、国王がやっとの思いで寝所へ入ったが、九夫人が酔って寝てしまったせいで、すぐ出て来てしまったという。
結局、昨夜は沐芸が付き添って介抱していた。
…よかった～何もなかったのね？天の助けだわ～
…大王、あなたの想いはもちろん分かってる
…だけど今世ではあなたが私の思いを知ることはないわ

沐芸は九夫人の身支度を手伝い、国王から賜ったかんざしを挿した。
すると急に皇太后がやって来る。
小九はあわてて正殿へ駆けつけ拝跪すると、皇太后は鳳凰のかんざしに気づいて抜いてしまう。
「これは見事なかんざしね～」
皇太后は素性も知れない身分の低い小九が寵愛されたとあっては、皆が快く思っていないと言った。
「もう昔の山猿ではなく、承虞国の夫人なのよ？
　常日頃から慎み深く振る舞い、従順であるよう努めなさい
　寵愛を得るため、手練手管を弄さぬように…いいわね？」

一方、応王府には崇安(ｽｳｱﾝ)国の国師・聶初寅が訪ねていた。
聶初寅は自分が注いだお茶を仙術で応王の前に置いて驚かせ、実は手助けに来たと告げる。
「楚宛を殺そうとした時、何があったか忘れたか？」
自分の力を誇示した聶初寅は、自分と手を組めば国王の座を手に入れられると持ちかけた。
その代わり霊璧石を渡して欲しいという。
「霊璧石は王陵の地下に置いてある、応王、大事なのは石ころか？または国王の座か？」
宋玄応は仕方なく宋玄仁の書斎に王陵の地図があると教えた。
そこで何とか書斎に潜入してみると約束し、もし成功したら自分に２度と関わるなと釘を刺す。
すると聶初寅は話が外に漏れるようなことがあれば、自身の身がどうなるか忘れるなと脅した。

葉青緹は国王に王陵の兵を増やして守りを強化するよう上奏した。
宋玄仁も賛成して任せることにしたが、ふと葉青緹の顔の傷が消えていることに気づく。
「あ、近頃、良い塗り薬を得たのです…」
葉青緹からほのかに香る芙蓉の花の匂い、宋玄仁は自分の指に小九が塗ってくれた木芙蓉花軟膏(ﾓｸﾌﾖｳｶｺｳ)だと気づいた。

その夜、白鳳九の悩める姿を見た司命星君(ｼﾒｲｾｲｸﾝ)が月華宮に現れた。
すると講談書を読み漁っていた鳳九は、恋物語の裏には苦しみあると分かったという。
「辛いの…もうやめたい」
司命は確かに長引けば厄介なことになると警告し、さっさと傷つけなければ情劫が終わらないと助言した。

翌日、小九は仕事が終わった葉青緹を待ち伏せし、遠乗りに誘った。
そこで葉青緹は特別な場所に案内し、山からの絶景を見せる。
…美しいわ、人間界の景色って平凡だけど、九天にも負けない場所があるのね
「落ち込む時はここで夕日を見て風の音を聞く、悩みを忘れることができるんだ」

葉青緹は父に従って戦に出た時、無茶をしてひどく責められたことがあった。
馬を飛ばして偶然ここにたどり着いたが、その時の気持ちは今の小九と同じだろう。
「静かに考えたかった…」
「ふふ、あ、顔の傷がほぼ消えたのね？」
「あの薬のおかげだ…小九？その～大王と何か？」
「…大王はお優しいわ、王宮が息苦しいだけ」
すると葉青緹はいつか小九に贈りたいと思っていた腕輪を出した。
「きれいね！」
「そっそうか！」
葉青緹は王宮の品と比べればゴミ同然かと思い、渡せずにいた。
しかし小九は喜んで早速、はめてくれる。
「小九、もしもいつか耐え難くなったら…私を頼れ」
小九は何も言わなかったが、このまま星を見ていきたいと言った。

宋玄仁は政務を終え、今夜は月華宮へ行くと告げて出て行った。
すると宋玄応が書斎に忍び込み、ついに地下宮殿の地図を発見する。
一方、月華宮では国王の前で侍女たちがひざまずいていた。
「九夫人はどこへ行ったのだ？」
沐芸は口を滑らせそうになった宮女をにらみつけ、決して葉将軍と一緒だと漏らさない。
やがて小九は王宮に戻った。
月華宮まで見送った葉青緹は別れ際、何か会った時は必ず自分を頼るよう念を押す。
小九は笑顔で帰ったが、寝所に入ると宋玄仁が待っていた。

小九は気分転換にひとりで遊びに出かけたと嘘をついた。
講談を聞いていたが、夢中になり過ぎて時を忘れてしまったという。
「王と美姫の話で聞き入ってしまいました～」
すると宋玄仁は小九の手をつかみ、腕輪も買ったのかと聞いた。
小九は通りかかった店で買ったとごまかしたが、宋玄仁は装飾品が嫌いなのではなく、自分からもらうのが嫌だったのかと嫌味をいう。
「大王…」
「もうよい、余は帰る」

つづく

|ω･｀)色々とあれだけど…心なしか大王の出番が少ない？w

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