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第22話「二重間者」

朱晋(シュシン)の書斎に黒装束の花琉璃(カリィウリ)が現れた。
「あなたは10年前の″雲倉嶺(ウンソウレイ)の役″で軍糧の輸送を担当していたでしょう?
 当時は連岳(レンガク)という名前だった」
朱晋は否定したが、琉璃が証拠があると鎌をかけると観念した。
「黒幕は一体、誰なの?!」
すると朱晋は馬鹿げた質問に高笑いしながら変装用のヒゲを外した。
「私が主の正体を教えると思うか?明かせば殺されてしまう」

 忘れないで、5歳の娘がいるでしょう?」
その時、書卓の下で遊んでいた娘が帷からひょっこり顔を出した。
「喧嘩しないで、かくれんぼしよう」




朱御史が何者かに殺された。
幼い娘が花郡主の名を口にしたことから裴済懐(ハイセイカイ)は大理寺の権限で朱府を封鎖、すぐ皇太子に報告する。
姫元溯(キゲンソ)は慌てて現場に駆けつけたが、朱御史の胸の傷跡は軟剣で刺されたものだった。
…琉璃の仕業なのか?なぜ何の相談もなく勝手な真似をしたのだ…

翌朝、極秘の扱いだった朱御史の事件が都中に広まった。
どうやら誰かが知玉京(チギョクケイ)府に花郡主が犯人だと訴え出たらしい。
衛明月(エイメイゲツ)は娘が何か隠していると勘づき、琉璃を追及した。
すると琉璃が左手を負傷していると気づく。

「殺したかった、でも殺していないわ」
琉璃は母に昨夜の経緯を説明した。

…朱御史は可愛い娘のため、琉璃に全てを明かすことにした
『これまで主の言いなりだったが…いいだろう、話そう』
その時、書斎に刺客が飛び込んできた

しかし驚いた娘が机の下から飛び出し、朱御史は娘をかばって刺されてしまう…

琉璃は朱御史こそ10年前の軍糧官・連岳だと教えた。
「あの人が輸送を遅らせたせいで母親(ムーチン)たちは死にかけた
 大勢の兵士たちが死んだのよ?この恨みは絶対に晴らす!」

姫元溯は民衆の憶測を封じるため、花府を兵士に包囲させた。
琉璃は皇太子に合わせる顔がなかったが、元溯は優しく琉璃を抱きしめ、無実を信じているという。
「黒幕が誰か突き止めたかったの、まさか自分が利用されるなんて…」
「朱御史が怪しいと気づいたのなら、なぜ教えてくれなかった?」
「怒らないで、実は殿下に見せたいものが…」
琉璃は朱御史の娘が机の下で遊んでいた焼けかけの文を持っていた。
「ふふふ~(自慢)」
「もういい、今後のことは将軍と相談する、それより考えてみてくれぬか?共に人生を歩みたい」
「うん」



その夜、軟禁で退屈した琉璃は鳶尾(エンビ)と2人で秘密の通路から出かけることにした。
すると驚いたことに田嘉敏(デンカビン)が抜け穴から入ってくる。
琉璃は嘉敏が本当の親友だと喜び、実は皇太子が花家を軟禁したのは敵を油断させるための策だと明かした。
「なるほどね、敵はこれが策だと知らずにほくそ笑んでいる
 しかも陛下と杜(ト)太師が療養中…確かに今が絶好の機会ね!」
「反乱を阻止したいの、英(エイ)王殿下が太子殿下を助けるよう仕向けたい、分かる?」
「おう!」
しかしその頃、すでに杜太師に魔の手が迫っていた。
杜太師は長年、密かに謀反の一味の残党を調べ、悪を排除することで縉(シン)国の平和を保ち続けて来たが、まさか弟子に裏切られるとは思いもよらなかっただろう。
「先生、弟子が旅立ちを見送りましょう…私には大業が控えています」

杜太師の突然の訃報に玉京は悲しみに包まれた。
気丈にも杜琇瑩(トシュウエイ)は献花に訪れた弔問客の前に姿を現し、祖父の遺言通り葬儀は簡素に行うと断る。
その様子を雲寒(ユンハン)が遠目から見つめていた。

雲寒は密かに杜太師の書斎に忍び込んだ。
いくら高齢とは言え突然、死ぬのはおかしい。
すると書卓で″謝″という書物の切り抜きを発見した。
…太師が残した手がかりか?でもなぜ?…
その頃、謝臨州(シャリンシュウ)はようやく楽陽(ラクヨウ)長公主と謝瑶(シャヨウ)の監禁を解いた。
実は屋敷にまた間者が潜んでいると分かり、妻子を守るためにやむを得なかったという。
「危険はなくなったゆえもう閉じ込める必要はない
 数日後には太平宴が催される、存分に楽しむが良い」
楽陽は安堵の涙を流しながら夫にしなだれかかったが、謝瑶はそんな父と母の姿を冷ややかに見ていた。

杜琇瑩は呼び笛に気づいて雲寒が来たと分かった。
そこで侍女を下げて独り祖父を弔っていると、雲寒が現れる。
雲寒は杜太師に線香を手向け、杜琇瑩がこれからの人生を幸せに生きられるよう守って欲しいと願った。
「やりきれない時は私を呼んでください、玉京であればこの笛で私を呼べます」
「ありがとうございます、公子」

雲寒は雲中居に戻った。
…あの方は太師を恨んでいないはず、もしや大義を成すために動いたと?…
そこへ裴済懐が現れた。
「私だ!なんだ、くつろいでるな、こっちは大変だったぞ?」
裴済懐はいつもの調子でそれとなく鎌をかけた。
「太子殿下から太師府を調べろと命じられただろう?結果は?」
「…まだ何もない」
「構わない、明日も引き続き調べろ」
…やはり裏切り者だったか…
すると裴済懐はこっそり茶碗に薬を塗って雲寒に勧めた。

雲寒が目を覚ますと大理寺の地下牢ではりつけにされていた。
「見抜いたのか?」
「ああ、″私たち″が見抜いた、実は殿下が私より先に気づいたんだ」
裴済懐は皇太子が己の選択が正しかったと信じていたため、これまで見逃してきたという。
「殿下はお前を生かすために青楽(セイガク)を殺したのだぞ?
 都の間者を殺されても、お前に同情していた」
しかし雲寒はわざと皇太子が民を侮辱して抑え付けていると非難、裴済懐を怒らせた。
「裏切り者を生かしておくのか?!ひと思いに殺せ!」
すると雲寒は急に吐血してしまう。
裴済懐は雲寒が毒で操られていると知っていた。
「なぜ言ってくれなかった?私さえ仲間ではないと?」
「私はお前たちが探している謀反一味の残党だ、だから殺せ、それが最良の選択だ」

裴済懐は雲寒を殺せず、結局、縄を切って解放した。
そこへ皇太子が現れる。
実は雲寒はかつて姫元溯の命を救った恩人だった。
「これで恩は返した、余が今までに失望した相手はお前だけだ」
元溯は雲寒に小さな荷物と薬を渡し、本物の主に仕えればいいという。
すると雲寒は裴済懐が投げ捨てていった剣を拾い、自害しようとした。
しかし元溯が咄嗟に雲寒の手を止める。
「苦しかったであろう、利用され、板挟みとなり、何度も死を考えたはずだ
 だが余はお前に死んでほしくない、いずれ自由にしてやるつもりだった
 主が誰か知りたくもない、見当はついている
 死ぬのは簡単だ、だがお前はしかと生きねばならぬ」




裴済懐が門前で待っていると皇太子が独りで出て来た。
雲寒の裏切りに深く傷つく裴済懐、しかし姫元溯は肩を叩いて励ました。
「まだ大仕事が残っているぞ」

つづく


( ゚ェ゚)え?で結局、黒幕は駙馬なの?





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最終更新日  2024.03.24 21:37:28
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