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2024.07.28
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第28話

両親に背いても愛する伴侶と生きることを選択した初空(チュコン)。
しかし長兄の昊軒(コウケン)に説得され、麒麟(キリン)族の面目を保つために摩羅(マラ)族の女帝と謁見することになった。
あわよくば自分が婚姻しようと企む昊軒だったが、思わぬ事実を突きつけられてしまう。
…小棠(シャオタン)は摩羅族の女帝だったのか…




小棠の正体は摩羅族の滄海(ソウカイ)帝君だった。
一杯食わされた初空は帝君と許嫁がそっくりだとチクリ、しかし滄海は悪びれる様子もない。
「ものすごいご縁だこと、それならゆっくり滞在なさって」

「そう、なら無理にお引き止めしません」
「ピキッ!フン!」
初空は意地を張って帰ることにしたが、昊軒が止めた。
「弟はまだ若く、礼を失したことはお許しを…」

滄海は護法・錦城(キンセイ)に昊軒のもてなしを任せて人払いした。
小棠が身分を隠していたと知り、すっかりへそを曲げてしまった初空。
しかし滄海は自分が誰であっても好きだと言ったはずだと迫る。
「もう心変わり?」
「心変わりはそっちだろう?!摩羅族は各部族の子息を招いて婿選びしているくせに
 あの修茗(シゥミン)だって帝休(テイキュウ)族の皇子じゃないか!」
すると滄海は失笑した。

 それに修茗のことは本当に弟だと思ってる
 だからこうして自分でちゃんと小麒麟を捕まえたわ!」
こうして初空と滄海はようやく本来の身分で顔を合わせ、互いに愛する気持ちに変わりないことを確かめ合った。

昊軒はこのまま初空が摩羅族と婚姻すれば族長の座は確実だと憤った。
…そうはさせるものか…

「破談にしたいのなら麒麟族は従います」
「まさか!二殿下は文武に秀で、帝君に釣り合う高貴さ、何より2人は気が合います
 まさに天が授けた良縁です」
笑顔を見せながらその裏で悔しさを滲ませる昊軒、その時、一瞬だが海の方から鋭い風切り音がした。
…しまった!公主が成人して最初の満月だ、力を抑えきれないのか?…
錦城が動揺していると、昊軒は何かの霊力だと気づいて付近を見渡した。
「護法大人(ダーレン)、今のは一体?」
「近頃は星の動きが激しく、そのせいでしょう」
錦城は適当にはぐらかし、昊軒を客殿へと促した。

その頃、初空は修茗と再会していた。
修茗は滄海を好きだと認め、滄海だけが自分を蔑まず、真心で接してくれたという。
「永遠に彼女を守ると誓ったのだ」
初空は小棠を譲れないと釘を刺したが、修茗も簡単には負けないと宣戦布告した。

錦城は昊軒を送り届けてから慌てて庭園に戻り、ある岩から結界の中へ入った。
実は海底には滄海とうり二つの公主が封印されている。
錦城は激しい霊力を放出している公主の姿に呆然、慌てて自らの力を使って鎮めたが、元神を傷つけて喀血してしまう。
すると公主が我に返った。
「(はっ!)なぜかしら?自分が抑えられない…」
「公主、成人すると力が強くなります、抑えるすべを学ばなければいけません」
「やってみる」
公主のやるせない表情を見ながら、錦城は亡き帝君との約束を思い出していた。

『帝君…公主は手はずどおりに…』
『公主ではない、摩羅族の公主はただ一人、皇后のそばにいる』
『…はい、摩羅族の公主は滄海公主のみ』

修茗は政務で忙しい滄海に霊芝(レイシ)の汁物を差し入れることにした。
しかし道すがら偶然、侍女たちの噂話を耳にする。
「修茗殿下が帝君の夫になると思っていたら麒麟族の二殿下が現れたわ」
「修茗殿下は優しいけれどひ弱よ、二殿下のような強い方の方がお似合いよね」

実は昊軒はすでに摩羅族を探らせていた。
摩羅族の元侍従に接触した密偵の報告では、摩羅族の王家は代々双子が生まれるという。
異性の双子の場合は問題ないが、同性の場合は1人だけ残すとか。
しかし滄海帝君だけは例外的に独りで生まれていた。

政務に追われ、なかなか初空と過ごす暇がない滄海。
ようやく時間を見つけて初空の顔を見に行ったが、実は初空もある問題を抱えていた。
「…つまり金の麒麟であるあなたに族長を継がせたいのね」
「族長の座を兄長と争う気はないんだ、長子が後を継ぐべきだから」
しかしこのまま滄海と婚姻すれば誰もが初空を次の族長だと目するのは必至、兄の顔を潰してしまうという。
「天下に婚姻を告げたら面倒なことになる、相手が麒麟族の皇子ではだめだ」
「じゃあ私が一目惚れした名もなき英雄ならいいのね?ふふふ」
すると初空は滄海の手を握りしめた。
「生涯、離れない、共に星空を見上げ、どこまでも旅をし、白髪になってもそばにいるよ」
「いつまでも私の心は変わらないわ」



初空は早速、兄に報告した。
昊軒は身分を捨てるという初空の決断に驚きを隠せず、何より父が初空と女帝との婚姻を切望しているという。
しかし初空の決意は固く、両親の説得を兄に頼んだ。
「私が政を嫌いなのはご存知でしょう?族長なんてなりたくない、どうか力を貸してください」
「仕方がない、私が話してみよう」

その夜、滄海は夕餉の席で婚姻に協力してくれる昊軒に心から感謝した。
初空はふと修茗の姿を見ていないと気づいたが、錦城の話では独りでどこかへ出かけたという。
「誰もついてくるなとおっしゃって…」
その時、修茗皇子が大変だと報告がきた。

修茗は密かに鍛錬して倒れていた。
「百草の力を取り込もうとして反噬を受けたのね…」
滄海は霊力で助けようとしたが失敗、すると初空が自分の元神を使って癒してくれた。
おかげで修茗は無事に意識が戻ったが、助けてくれたのが初空だと気づいて複雑な心境になる。
「…お前は金の麒麟、元神で傷を癒せる、だがそのために元神を消耗するのだろう?」
その時、それまで修茗を心配していた滄海が慌てて初空に駆け寄った。
「大丈夫なの?!」
「それほど弱くない、休めば元に戻るよ」

夕餉が途中でお開きとなり、錦城は昊軒を見送ることにした。
昊軒は道すがら錦城の双子の子供の話を聞いたと切り出し、たまたま入手した霊薬があるので使ってはどうかと勧める。
錦城は感謝したが、実はこれまで色々な霊薬を試しても無駄だったと明かした。
「どうかお持ち帰りください」
「試すだけでも…もしかすると効くかも知れません」
錦城の子供たちは生まれつき元神が弱かった。
遊ぶことも術を学ぶこともできず、ただ屋敷にこもって静かに暮らすしかない錦蓮(キンレン)と錦蘿(キンラ)。
しかしその夜、昊軒からもらった霊薬を試しに飲ませてみると、驚いたことに2人は身体に力がみなぎり、飛んだり跳ねたりできるようになった。

翌日、錦城は朝議に出てもどこか上の空だった。
滄海は散会後に錦城だけ呼び止め、子供たちのことが心配なのかと尋ねる。
しかし錦城は昊軒からもらった薬のことは明かさなかった。
「それより修茗殿下の具合は?」
「百草の力を取り込もうとして元神を損なったの、でも事なきを得たわ」
「殿下がそのようになったのは恐らく帝君のためかと…」

つづく


( ゚ェ゚)なるほどね、パパは掟を破って2人とも助けたのね
残り10話、展開が気になる!





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最終更新日  2024.08.10 16:04:05
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