藤原歌劇団ナヴァラの娘&道化師

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2018年01月27日

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藤原歌劇団公演「ナヴァラの娘」「道化師」新制作
Day 1

2018年1月27日（土）14:00開演
東京文化会館大ホール

指揮：柴田真郁
演出：マルコ・ガンディーニ

【ナヴァラの娘】(日本初演）
アニタ：小林厚子
アラキル：小山陽二郎

ガリード：田中大揮
ラモン：松岡幸太
ブスタメンテ：安東玄人
他

【道化師】
カニオ：笛田博昭
ネッダ：砂川涼子
トニオ：牧野正人
ベッペ：所谷直生
シルヴィオ：森口賢二
他

管弦楽：東京フィルハーモニー交響楽団（東京公演）

合唱指揮：須藤桂司
美術：イタロ・グラッシ
衣裳：シモーナ・モッレージ
照明：奥畑康夫

副指揮：諸遊耕史、鬼原良尚
演出助手：堀岡佐知子

＊＊＊

日本初演のナヴァラの娘と道化師のダブルビル。この組み合わせはとてもうまいと思う。

道化師すごかった！

演出が双方ともにすばらしい！
さすがという感じだった。

多分あのでかいカメラは 8Kなのかも。だとしたら放送はかなり遅くなりますね。4台あった。センターに二台と両サイド1台ずつ。
迫力のドアップが見られますね。

相当綺麗だろうなあ。

演出は時代設定以外は読み替えなしの正当なスタイル。
とにかく粋で
1960年代なのか。

2つの作品の年代を合わせていた。

カニオ登場シーン革のボンバージャケット
老け作りなしで
笛田さんの若々しい魅力が堪能できました。

もうこのレベルは、日本人の演じるオペラということを忘れるぐらいすばらしかった！

変貌していくカニオの怒りが怖いというより哀しみを感じた。
こんなに愛してしまったゆえの悲劇。

トニオの牧野さんが不気味ですごかった。
悪い奴だった。すごく悪役になりきっていた。

道化師出演者皆すごい声だった。
まじ名演！

一方ナヴァラの娘は、アニタの小林厚子さんが圧巻だった。
美しい声でパワフル。

ガリードの田中大揮さんがすばらしかった！ビロードのような美声で声量もすごい。うっとり聞き惚れる声。演技もうまく、でかいので司令官という役にぴったりだった。

＊＊＊
おまけ
笛田さんの初CDをゲット！
しかしパソコンにCDスロットないんで
どうやって聴くかな～
どうやってiPodに取り込むのか。
まじで困ってる。

＊＊＊
ねたばれしないように書きます

ナヴァラの娘

このセットはもちろん2公演使いまわしなのだが秀逸ですよ～
変化していく
美しくセンスがあってすばらしい！
まずこのバリケードに驚きだ！
何でできていると思いますか？
そしてあの円盤なんなの？
あれは大砲なのか
弾除けなのか
新しい兵器なのか
あれは意味不明だった
舞台は戦場だ。
だからこのオペラが幻のオペラだったのがわかる
戦争の再体験追体験をしているようでちょっと苦しくなる。
戦場のとりでで遊ぶ子供たち
効いてるね！
これが演出というものだ。
日本の子役は今や最強レベルにうまい。

司令官のガリード
戦況は厳しい。

ヒロインのアニタが登場。
長い縮れた黒髪、赤い唇。さっそうとしたズボン姿。

アニタは戦場から兵士が帰ってくるのを待っている
アニタはラモンに聞く。しかしわからない。
ラモンは今回藤原歌劇団本公演デビューの松岡幸太さん。
美しいリリコ・レッジェーロの美声を響かせます。
デビューというのは事前の解説で折江さんがお話してくれたのでわかりました。折江さんのお話もあとでご紹介させていただきます。

傷ついた兵士たちが列をなして帰還してくるが彼の姿はない。
アニタ、絶望しかけたところで
背後から抱きしめられる
アラキルが帰ってきた！

アラキルは高い声を得意とするテノールの小山陽二郎さん。
アラキルはもともとの設定がどういう声質のテノールの役かは判然としませんが
アラーニャが歌っていたのでリリコもしくはリリコ・スピントの役なのでしょうか？
どっちにしろ強い声が要求されているようです。
マスネのこの作品は音楽がとても強く、
強迫的です。
思いっきり救いのない悲劇を味わってからの、またまた悲劇の道化師。
ヴェリズモワールド、というわけですね。

二人は愛を歌う。

アラキルの父親が現れる
バリトンの坂本伸司さんです。
立派な声です。

父親は富農なのでどこの馬の骨ともわからない娘が息子と恋人なのが許せない。
もう2年もつきあっているのに。
2人は知り合ったいきさつを語る。
しかし父親は結婚したいのなら金を持ってこいと言う

そんな。
身寄りのない流れ者であるアニタには頼れる親も親戚もない。

アラキルは舞台の上官の死ぬ間際の命令で指揮を執った。
その功績で、アラキルはガリードによって中尉に任ぜられる

ガリードは敵将の男を討ち取りたい。
彼を討ち取ったものに報奨金を出すという。
アラキルと結婚するためにお金がほしいアニタはガリードと秘密の約束をする。
ガリードは止めるがあっという間にアニタは敵陣に向かってしまう。

アラキルはアニタを探すがいない。
アニタが敵陣に敵将に会いに行ったと聞かされ後を追うアラキル。

砦の兵士たちが酒盛りで盛り上がっている。

やがて世が明ける
（この美術がすばらしいです）
兵士たちは酔っ払って熟睡している
子供が一人歩いてくる
女の子でおもちゃで遊んでいる

アニタが帰ってくる。
茫然としている。
さきほどの子供はアニタの知り合いのようだ。
アニタは子供を送り出す

弔鐘

ガリードに迫るアニタ
殺してきたわ
最初ガリードは信じないが
鐘の音で信じる
けがしてるのか？
アニタにお金を与えるがこれはいまわの際の告解まで秘密にするという
アニタにも口止めする。
敵将を蜂の一刺しで殺すというのは
軍の幹部にとっても恥だったのだろう
アニタは二重の意味で報われない

傷ついたアラキルが運び込まれる
アラキルは敵陣に向かったアニタをつけたのだ。
アラキルはアニタがスパイだったと信じている
お金をどうやって得たのか
敵将に体を売ったのかと邪推している。

弔いの鐘が響き
アラキルは死ぬ
アニタは走りよる
ナイフは？
自分のナイフは敵陣に置いて来てしまった
すべてが崩れ去ったのがわかった瞬間
アニタの精神も崩壊する

父親も後じさりする
アニタの笑い声が虚しく響く

幕

＊＊＊

休憩後

いよいよ名作・道化師だ。

幕前
序曲

Si può?

トニオの口上はどこで行われるか

幕が開く

やはり軍隊の兵士たちがいるのでさきほどの続きのように感じる
平和がやってきたのだ
町の人は旅一座を楽しみにしている
スーパースター・パリアッチョを待っている
美貌のネッダも。

最初ベッペが現れる
ベッペは軽業師のような動きを要求されているので相当大変だったと思います。

本物の軽業師もいて、これがまじスゴイです。

カニオとネッダが肩を組んで登場する。

カニオはちらしにサインして人々に配っている

トニオがどんどん太鼓を叩き続ける。
そのバチを奪うカニオ。
ばちを返す。

ネッダは写真撮影に応じている。

ネッダにひっつくトニオを突き飛ばすカニオ

子供たちがはやす

村人が酒に誘う
村人の軽口に気色ばみ、怒りを噴出させるカニオ

笛田さん、すばらしい～！美しい声のカニオだ。
パワフルで巨大な声なのに美声というのはまさにイタリアオペラの大スター的な声なんだ。
思ってたよりはるかに美しく歌う。
さすがだ。

あたし、どうしたらいいの…

そんなカニオの怒りを目の当たりにして
ネッダは独白する

カニオがネッダの肩を抱き寄せる

オレは女房を愛してるんです

ネッダは抱きしめられると顔を背けしらけた表情をする
砂川さんの芝居がうますぎる！
まるで女優だ。

芸能人仮面夫婦を演じている。

A ventitré ore!
すばらしい！

バグパイプが2台登場！
本物だ

人々が去り、一人になったネッダ。
ネッダは衣裳ケースの上に寝転ぶ。
起き上がって
空を飛ぶ鳥たちを見て歌う

Stridono lassù, liberamente

Vanno laggiù verso un paese strano

e van!

すばらしい！！！

大拍手。

しかし背後で見ていたトニオ
ぱち・ぱち・ぱち

喪黒福造のようだ
怖い。
不気味すぎる。
背中にこぶを入れている

ふん！！
トニオを無視しネッダは衣裳ケースの上に
腰掛ける

トニオはネッダに近づく。
ネッダが開けていた箱の蓋を思いっきり閉じトニオは悲鳴を上げる

勝気なネッダはトニオを思いっきりバカにする

笑うなよ

行っちまいな！

トニオ
So ben che difforme

m'ha vinto l'amor!

舞台の上で今夜言えばいいじゃない！

言わせてくれ、オレのものに。

キスさせてくれ

フザケンナ、このできそこないの気持ち悪い怪物め！

ムチを鳴らす

逃げていくトニオ

ネッダ…

恋人シルヴィオが近づく

Decidi il mio destin

情熱的に口説くシルヴィオ

Nedda, Nedda, rispondimi

もううっとりです！

シルヴィオはネッダに駆け落ちを迫る

ネッダはそこまで考えてなかった

しかしついにその気になる。

Tutto scordiam!

愛しあう二人

トニオが見ていて、親方を呼びに行く。

傷ついた様子のカニオを見ているだけで心が苦しくなる。

あすの夜は私はあなたのものよ…

おい！！

思わず大声を出してしまうカニオ。

脱兎のようにシルヴィオが逃げる

追って走るカニオ

やってくれたわね、トニオ

こんなもんじゃないぞ。

行こうとするネッダの前にカニオが立ちはだかる

名前を言うんだ

誰が？

おまえだ

愛人の名前を言うんだ

嫌だわ

io vo' il suo nome!... Parla!!

ネッダにつかみかかり、首に手をかけるカニオ

見ていたベッペが人々を呼んでくる

ネッダに暴力を振るっているカニオを引き剥がす。

トニオも！

トニオは親方に囁く

愛人は戻ってきます…

ベッペはカニオにピエロの衣裳とおしろいを渡します。

カニオ一人

こんな気持ちで、舞台に立てって言うのか…

Eppur è d'uopo... sforzati!
Bah! sei tu forse un uom?
男だろ
しっかりするんだ

ハッハッ…！

Tu se' Pagliaccio!

いよいよだ

Vesti la giubba

劇場中が固唾を呑んで聞き入っている

おしろいを顔に塗りたくる

Ridi, Pagliaccio, sul tuo amore in franto!
Ridi del duol t'avvelena il cor!

トニオは衣裳を羽織る。
そして奥に行こうとして
振り返ってじっと客席方向を見る
幕

すばらしい～～～～！
飛び交うブラヴォー
嵐のような拍手と大喝采

場面転換の間（これも事前に折江さんの解説で折り込み済みです(笑）
こみあげる感動をおさえきれない。
こんな喜びを味わえるとは…！
なんて幸せなのだ！

間奏曲
ここに演出がついてるんです。
トニオです
トニオが本当はどういう気持ちだったのかここで表現されます
演出家はさすがです。

第2幕

同じセットなのに劇場になっています
この劇場がまたなかなかオリジナルで可愛いのですよ
センス感じるな。

人々は今か今かと芝居が始まるのを待っています。

一座はみんなドーランで別人に変身しています

このへん徹底しています
コンメディア・デッラルテ風の
扮装です。

砂川さんがこんなに白塗りするなんてある意味事件だ！
美しいお顔が完全にコロンビーナなの白塗りに隠されている。

ここからの展開は本当にすごいです。この作品はヴェリズモ・オペラの頂点に位置する大傑作だという認識を新たにします。本当にヒッチコックの恐怖映画のような展開なんです。

本当にすごかった！

喜劇の中に恐怖劇が織り交ざってくるというすごい演劇的なサスペンスがあります。

彼の顔の化粧
そして
帽子を脱ぎ捨てた瞬間
目を見開いた瞬間
ネッダをおっかけて走っていく瞬間

すべてが目に焼きついている
いやほんとすごかった！

この作品が映像に記録されているということが誠に僥倖であります。

絶対また見てみたいです。

騒ぎの中、さりげなく入ってくるシルヴィオ。舞台のかみてを回って舞台上のかみて側の客席に座る。

群集の熱狂がおさまり芝居が始まる。

O Colombina, il tenero fido Arlecchin è a te vicin!

アルレッキーナも強靭なリリコ・スピント気味の所谷さん。
本来はリリコ・レッジェーロが歌うことが多い役です。
彼もすばらしいテノールです。
なにしろ今回全員パワフル声なんで彼ぐらいのパワーがないと成立しないです。
アルレッキーノは舞台のしもてで歌い、いったん奥に行き中央の出口から出てかみてにはける。

トニオは客席側に立っているか腰掛けている
ぶつぶつ言ってる

コロンビーナ：おつかいは行ってくれたの？鶏肉は？

タッデーオ（トニオ）は画用紙に描かれた鶏肉の絵を見せる。舞台上の客は笑う。
あきれるコロンビーナ。

sei pura e casta al par di neve!

タッデーオは皮肉たっぷりにコロンビーナの純潔を讃える。

そこにアルレッキーノが到着する。

二人は可愛らしく食事を始める
ここは美術が要注目。

さあいったいいつカニオが登場するのか。
ひたすら見守ります
動悸が早くなります

いた！
カニオが白いピエロの姿で、お化粧した姿でピエロの帽子をかぶり、立っています。
舞台の一番かみての端に立っています。
恐怖映画のワンシーンの始まりです。
彼には怒りというよりも哀しみを感じます。
お声が美しいのもその思いを強くさせます。
呆然と立つカニオは舞台上の美しいネッダを見ています。

眠り薬で眠らせるんだ

あしたからあたしは永遠にあんたのものよ…

その台詞にカニオの中の何かが吹き飛びます

「あの時と同じ台詞だ」

さあ行くぞ…

カニオは舞台に上がります

早かったのね

男がいたな？

酔ってるの？

小一時間ばかしな。
(実際さきほどの騒動からの実時間です）

なんで席が二つあるんだ？

タッデーオは
Credetela!
信じてやってくださいよ！とつっかえながら繰り返し、笑いをとる。

男の名前を言うんだ

コロンビーナは芝居を続ける

パリアッチョったら！

違う！！
オレはパリアッチョじゃない！！！

カニオは帽子を脱ぎ捨てます。

No, Pagliaccio non son!

Sperai, tanto il delirio accecato m'aveva

e fidente credeva

o meretrice abbietta
高音もすべて完璧

すばらしい歌唱！笛田さんの歌唱は本当に美しい！
これぞオペラだ！

かぶせるように絶叫するネッダ

じゃ追い出せばいいじゃないの

行かせるものか！お前とはずっといっしょだ。

すくみながら、まだ芝居を続けるネッダ

言ってちょうだい、タッデーオ
いっしょにいたのはアルレッキーノだったって…

なんだと！
男の名前を言うんだ
死にたいのか？

ネッダの絶叫
地に戻って言う。

ふざけないで
絶対に言わないわ
見くびらないで

シルヴィオが耐え切れずに立ち上がるが群集で前に進めない。

絶対に言わないわ。

この時にトニオが、にやにやしながら持っていたナイフを親方に渡す。
トニオは悪魔だ！
カニオはナイフを握り締める

ネッダは舞台を下りて客席に逃げている。かなりの距離があるが、カニオは走って追いかける。
あっという間にカニオはしもてにいるネッダに追いつき刺し殺す。

助けて！シルヴィオ…

シルヴィオがネッダを助けようと向かってくる
カニオはそちらに走って行き、体ごとぶつかり刺す。
ここがものすごかった。
二人はもつれあって倒れこむ。けがしなかったかと気になる。
カニオはすぐに起き上がり、膝立ちの姿勢になる。
そして自分の髪に手をやりかきあげる。

La commedia è finita!
芝居は終わりました！

舞台上ではトニオが笑いながら芝居口上を述べている。
片手を上げている。
トニオの復讐は果たされたのだ。まさに完全犯罪だ。

はっとしたように手のナイフを見るカニオ。
カニオはネッダが倒れている方を見る。
凍りつく。

全幕了。

あまりの迫力の展開に言葉もない。
大喝采が続いた。

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