2023年05月07日
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カテゴリ: OPERA

Photo Album
Photo:©Shevaibra, courtesy of the artist

三河市民オペラ2023年公演
ウンベルト・ジョルダーノ作曲『アンドレア・シェニエ』
全4幕・原語上演
DAY2

2023年5月7日(日)
アイプラザ豊橋

指揮 園田隆一郎
演出 髙岸未朝


カルロ・ジェラール(Br)今井 俊輔
マッダレーナ・ディ・コワニー(Sop)小林 厚子
ベルシ(Mez)加藤 のぞみ
コワニー伯爵夫人(Mez)谷口 睦美
マデロン(Mez)相可 佐代子
ルシェ(B)池内 響
マテュー(Br)杉尾 真吾
密偵(Ten)中井 亮一
フレヴィル(B)仲田 尋一
修道院長(Ten)加護 翔大
フキエ・タンヴィル(B)近藤 雅彦

シュミット(B)大澤 恒夫
家令(B)中原 憲
父(黙役)晴 雅彦

管弦楽 セントラル愛知交響楽団

合唱 三河市民オペラ合唱団


音楽スタッフ
合唱指揮 近藤惠子
合唱原語指導 岡田尚之
副指揮 佐藤光 柴田慎平
コレペティ 小埜寺美樹 山本敦子 重左恵里
稽古ピアノ(合唱) 平尾裕子

舞台スタッフ
舞台監督 村田健輔(ザ・スタッフ)
美術 松生紘子
照明 喜多村貴
映像デザイン 栗山聡之(マグナックス)
衣裳 半田悦子
***

三河市民オペラ「アンドレア・シェニエ」day 2

熱量が半端なかった
どんだけ〜ってぐらい全てが燃えていた
会場整理員からして全力投球
歌手もオケも合唱も美術も大道具も命かけてた
三河市民オペラ 侮れない!
一大スペクタクルイベントを目の当たりにした。

今日の公演は主役クラスが10人近く出演しているというありえない豪華キャスト!
藤原と二期会のトップの共演見応えあった。

特に題名役シェニエの笛田さん
各幕に聞きどころ満載という大変な役だが圧巻でした。
ブリリアントで豊潤に甘く美しく、まさにシェニエが詩に描いたように宇宙的に壮大な響きです。
歌唱は全て極めて高い集中力で演奏しすべての高音が完璧。まさに絶唱でした。
またシェニエで新たな金字塔を打ち立てました。
カーテンコールでは感極まっていらっしゃいました。

相手役マッダレーナにはこの人しかないという圧倒的なパワフルソプラノ 美声のリリコスピント 小林厚子さん

そしてカルロ・ジェラールの複雑な感情を演じきってあまりあるワイルド系イケメンの男の魅力ダダ漏れの今井俊輔さん!涙!オペラにジェラールの苦しみがリアリティを与えていました。

密偵に中井亮一さんという日本を代表するベルカントのテノーレを配するなんて贅沢過ぎです!
通常はキャラクターテノールの役どころです。中井亮一さんすばらしかったです!よく通る美声で舞台上での所作がもう舞台人、舞台で生きている人という余裕を感じさせました。

また今回、ルシェにも池内響さんという東京音楽コンクールを征したばかりの超美声カヴァリエバリトンを配すというビックリのキャスティング。本当に美しくビロードのような声で、タッパもあるのでシェニエと並んでも遜色なくスタイリッシュでした。

ベルシのメゾ、加藤のぞみさんも横浜でカルメンの題名役を演じた逸材。ヴィヴィッドでよく通るガラスのような美声で魅了しました。すばらしかったです。姿も美しく魅力的でした。

コワニー伯爵夫人のメゾ、谷口睦美さんはおなじみのパワフルドラマチックメゾです。貴族の高飛車な雰囲気をうまく出していました。

マテューの杉尾 真吾さんが大活躍でした。持ち前の演技力で舞台上では水を得た魚のように泳ぎ回っていました。さすが俳優です。大声量な上に明るいキャラも魅力で、役をきちんと分析していて、独自に構築したマテューキャラを強く印象付けました。終演後すぐにNYに向かったということです。お疲れ様です。

それ以外の役では、修道院長の加護 翔大さん(テノール)がすごかったです。大声量でくっきりクリアーに届く声。テノールとは驚きの声の分厚さ!すばらしい若手です。

終盤登場した牢番のシュミットを演じたバス大澤 恒夫さんもすごくキャラが立っていて印象的でした。足を引きずりながら移動するという演技が徹底していてカーテンコールまでやっていました!

初日のキャストも含めて今回こんなにすごい歌手が集まったのはやはりマエストロ園田さんの人徳によるものでしょう!今回はプロオケなのでさらにすばらしい音楽で見事でした。バンダまでバルコニーにいました。チェロのソロも美しく、涙を誘いました。

今回演出が市民オペラとは思えないほどお金もかかっており、すばらしかったです。幕ごとに転換があり大道具があるなんて(しかも可動式)東京でもなかなか見れないです。衣装もコールドに至るまで個々にしつらえてあって豪華で美しいです。保存版にしたいぐらいの舞台美術でした。
伝統版にのっとり、読み替えはないのですがさまざまな工夫があり前回のトロヴァトーレよりもさらに演出が主張していました。さすがです!詳細後述します。

シェニエの実演拝見は、大きな公演では、 ボローニャ歌劇場の引っ越し公演(2006年) でデルモナコの息子の演出で見たのと新国立劇場のアルロー演出(2005年11~12月)で見ただけですが、今回の演出は最後に希望がもたらされているという後味のそう悪くないものでさすがでした。どうもギロチンのオンパレードだったアルロー演出を見て以来トラウマになってしまい、この作品を見たくなくなっていたので…今回は良かったです。詳細後述します。

***
Andrea Chénier by Umberto Giordano Libretto : Luigi Illica
Fach
Andrea Chénier tenor Fach : spinto
Maddalena di Coigny Fach : lyric soprano
Charles Gérard  Fach : dramatic baritone
The Incredible tenor
Madelon Voice Part : mezzo-soprano
La comtesse di Coigny Mezzo-Soprano
Pietro Fléville Bass
Mathieu Bass or Baritone
The Abbé Tenor
Roucher bass or baritone
Schmidt bass or baritone
Fouquier Tinville bass or baritone
Dumas bass

***
Aria

Act I

Compiacente a' colloqui del cicisbeo . . . Son sessant'anni
 Charles Gérard

Un dì, all'azzurro spazio
 Andrea Chénier

Act II
Credi al destino?
Andrea Chénier

Act III

Son la vecchia Madelon
 Madelon

Nemico della Patria
 Charles Gérard

La mamma morta
 Maddalena di Coigny

Sì fui soldato
 Andrea Chénier, a poet

Act IV
Come un bel dì di maggio
 Andrea Chénier

***
《オペラ》
『アンドレア・シェニエ』(Andrea Chénier)
ウンベルト・ジョルダーノ作曲 全4幕
台本:ルイージ・イッリカ
初演:1896年3月28日、ミラノ・スカラ座
18世紀末、フランス革命時の実在の詩人アンドレ・シェニエの半生を描いたヴェリズモ・オペラの傑作

《歴史的事実》
詩人、アンドレ・シェニエ(André Chénier 1762~1794)は、官能的で情感豊かな詩作によって、ロマン主義文学運動の先駆者のひとりとされる。恐怖政治が終わるわずか3日前にギロチンで処刑された。
1762年、シェニエはイスタンブールで、外交官の三男として生まれる。
1783年にストラスブールのフランス連隊の士官候補生名簿に登載される。
1783年、長編詩を創作。宇宙における人間の立場について触れているもので、始めは孤立した状態として、そして次に社会的な状態として扱っている
1790年、ロンドンからパリに戻る。穏健な牧歌を捨て「フランス人民の間で」「球戯場の誓い」を書いた。
1792年8月10日、フイヤン派が粛清され、シェニエはノルマンディに逃げた。
1794年3月7日、公安委員会の密偵に見つかり、パッシーで逮捕された。
シェニエはサン・ラザール監獄に140日幽閉された。
ロベスピエールは、彼を風刺する詩をシェニエが書いたことを覚えていてた。
1794年7月25日、シェニエは処刑された。
その三日後、ロベスピエールはテルミドール反動で処刑された。
(以上参照:Wikipedia)
***

幕が開く前に幕ごとに緞帳に映し出される年代の表示
1789年
バスティーユ監獄の襲撃の数日後
コワニー伯爵邸の広間

何人もの従僕が作業している
広間を囲む、斜めに傾いたドーリア式の柱が不安を掻き立てる
(実際の大道具)
背後にはプロジェクションマッピングが投影される
時の支配者、ルイ16世の巨大な肖像

ジェラールはソファを運んでくるが赤い服の家令とすれ違い会釈する。ジェラールらはブルーのお仕着せ。白いかつら。

Compiacente a' colloqui del cicisbeo
ジェラール

ジェラールはソファの上のブルーのクッションに悪態をついている
よろよろと歩くこともままならない父親が仕事しているのを見る

Son sessant'anni, o vecchio, che tu servi!
ジェラール

自分に召使を「世襲」させた父親
ジェラールの嘆き

奴隷を作るために俺を生んだんだ

T'odio, casa dorata!
この家が憎い

ti grido: È l'ora della morte!
おまえらに死の時が来たんだ

マッダレーナがまだ部屋着(寝間着)姿で出てくる

伯爵夫人はジェラールに準備万端か確認する

ベルシとマッダレーナは無邪気に戯れている

その戯れに無邪気にジェラールを引き込んでからかう。ジェラールは秘かにマッダレーナに恋しているというのに。

マッダレーナが着替えに行く。

次々と貴族たちが到着する。
衣裳が豪華。
壮観です!

着替えてきたマッダレーナはシェニエと鉢合わせする
見つめ合う二人(スポット)

フレヴィルが音楽家と詩人、シェニエを伯爵夫人に紹介する。

シェニエは夫人の手を取ろうとするが無視される。

修道院長がパリから戻ってきて様子を伝える。

修道院長すばらしいです。

第三階級の台頭

パリではバスティーユの事件に端を発し革命が始まっていた

怖いわ…

他人事のように宴会を始める貴族たち

フレヴィル

羊飼いと羊たちの夢のように可愛らしいバレエ

合唱:
O Pastorelle, addio, addio, addio!

シェニエと伯爵夫人の会話

コンテッサはシェニエに詩を読ませようとするがあえなく断られる

マッダレーナが言う

私、賭けをしたの

あなたが「愛」について語るかどうかよ

皆にちやほさされる娘マッダレーナの無邪気なからかいの対象になったシェニエ
彼のプライドが許さなかった。

Un dì all'azzurro spazio
シェニエ

笛田さんのアリアは今まで聴いたどんな歌手よりもすばらしいです!
カレーラスのような…
デルモナコのような…
どこまでもリリックでリリコスピントなのに清澄で濁りがなく美しい
空気が輝いて震えるような優しい響きと
そして炎のように噴き出すような怒りと

e a lei serviva di scrigno il firmamento

シェニエの歌はすべて「詩」になっているのです。

背景には宇宙の星たちが投影され、シェニエの世界観を表す。

Udite! Non conoscete amor

amor, divino dono, non lo schernir,

amor,で最高音

del mondo anima e vita è l'Amor!

大拍手

心打たれ謝罪するマッダレーナ

シェニエはきびすを返し、立ちさる

シェニエを非難し、謝った娘に不満げな母親。

民衆の合唱が不気味に聴こえてくる

屋敷に飢えた民衆が乱入し、ご馳走にパクつく

ジェラールが中に入れたのだ。

コンテッサはジェラールをクビにする

ジェラールはお仕着せの上着を脱ぐ

土下座してコンテッサにすがる父親を立たせて連れて行くジェラール

また踊りを始めるコンテッサ

背後のルイ16世の大きな肖像に血のような染みが現れ始め、増殖していく。

踊っている貴族の上に柱が崩れて崩壊していく。

第1幕了

第2幕

幕前に投影される字幕にて、ロベスピエールやマラーの説明。

***
《歴史的事実》
1793年~1794年、恐怖政治の時代。
1793年1月、ルイ16世はギロチンで処刑された。
革命的急進派、ジャコバン派とジロンド派の血で血を洗う対立で次々と反革命分子が粛清されていった。
1793年6月、ジロンド派は追放されロベスピエール率いるジャコバン党が独裁的権力をふるった。
1793年7月に暗殺されたジャコバン派のマラーは革命の象徴となった。
1794年7月25日、詩人、アンドレ・シェニエは「国家反逆罪」を宣告されてギロチンにかけられた。
1794年7月27日、ロベスピエールはテルミドールのクーデターで逮捕されギロチンで処刑された

***

1794年6月 パリ
死んだマラーを讃える祭壇が中央奥にある。
(ロベスピエールはまだ生きている)
1幕で倒れた円柱がいくつか完全に倒れた状態でセットしてある
(秀逸です!)

マテューが仕切っている

密偵が橋のたもとで観察している

商売女たちがたむろしている

橋のしもて側にはシェニエが座って誰かを待っている風だがしばらくするといなくなる。

マテュー
Per l'ex inferno!

マラーの像のメンテをしている
マテューはユーモラスなキャラクターで新聞売りの少年にはめられたと騒いでいる

ベルシと密偵の会話

ベルシ:
Temer? Perchè?
Perchè temer dovrò?

すばらしいです!

e la carretta di Sanson che passa!

密偵はしかしベルシを監視している。

密偵:
Osservarlo!

シェニエの友人、ルーシェがシェニエに会う。
ルーシェは、逮捕が迫るシェニエが出国できるようパスポートを手配した。

ルーシェ:
parti!

しかしシェニエは気にかかていることがあった。

シェニエ
Credi al destino?

Tu sarai poeta

la donna che il destin fa mia;
bella, ideale, divina come la poesia

dirmi: Credi all'amor;
Chénier, tu sei amato!

シェニエに生きる力を与えたある女性からの手紙
シェニエはその手紙の主に会うためにパリを去ることができないのだ
ルシェはその手紙を見て、「サロン」の女性からのものだと看破する
しかしシェニエの勘はそれを信じさせない。

ルシェ:
Chénier, io non m'inganno, lo giuro,
esce da un salottino
troppo noto all'amor

池内さんすばらしいお声です

シェニエ:
Una meravigliosa

重唱になる。

革命裁判所に入っていく重鎮らの登場を市民は待っている

シェニエ:
Ah! mio bel sogno addio, addio bel sogno!

市民の歓声の中ジェラールが登場する。

密偵はジェラールが探している女についての情報を聞く。

ジェラール:
Dammi codesta creatura vaga!
Ti dissi: Cerca! Indaga!

Mi salva tu da questa angoscia
e tutto avrai!

密偵は確約する。

ベルシとルーシェの会話

密偵とベルシ

密偵をまいてきたベルシ

シェニエにある人物が来ると告げる

ルシェは罠ではないかと心配する

夜になる

マテュー:
La-la la-la la-la

密偵が見張っている

マッダレーナが現れる

シェニエとマッダレーナの再会

シェニエは彼女が誰なのか最初思い出せない

マッダレーナ:
Non conoscete amor!

シェニエ:
あなたは…マッダレーナ!

密偵はすぐにジェラールに知らせに行く。

シェニエ:
私に手紙をくれましたね。

マッダレーナ:
Udite! Son sola!
Son sola e minacciata!
Son sola al mondo!

シェニエ:
Ora soave, sublime ora d'amore!

二人:
Fino alla morte insieme!
最期まで一緒です!

insieme!
二人の高音も見事です!

ジェラールが駆け付ける。
シェニエはマッダレーナをルシェに預け、ジェラールと相対する。
ちゃんばら
ジェラールは刺され倒れる

ジェラール:
(シェニエに)Fuggi!
逃げるんだ。お前はもう(逮捕の)リストに載せられたぞ
マッダレーナを守ってくれ

どこまでいい人なんですか、ジェラール

革命の英雄ジェラールを暗殺しようとした輩に人民は怒り狂う

誰がやったんだ?

ジェラール:
ignoto!
知らないやつだった!…

市民:
ジロンド派を殺せ!

第2幕了

第3幕
革命裁判所

大きなドーリア式の柱は消え、普通の柱になっている。

真ん中のテーブルにバケツがあり
マテューが革命政府の窮状を訴え、寄付を募っている

マテューが人々の方をスゴイ勢いで振り向くたびに市民が脅え顔を伏せる
さすがマテュー、うまいです。

ジェラールが現れる

ジェラール:
もう傷は治りました

マテューは演説の席をジェラールに明け渡す

ジェラール:
寄附してください
o voi, madri francesi!

市民が寄付を始める

マデロンが来る

少年に支えられて。

マデロン:
Son la vecchia Madelon

息子もその長男も死にました
もう残っているのはこの子しかいません
下の孫です

Prendetelo!
Non dite che è un fanciullo.
È forte…Può combattere
e morire!

ジェラールは不憫な…と彼女に同情しているが
しだいに感動し見つめる
ジェラールはこの高貴な婦人の心の重さを受け止めたのだ

名前は?

アルベルト

マテューが名簿に名前を書く

ジェラール:(優しく少年に言う)
今夜出発だよ

密偵が知らせをもたらす
パッシーでシェニエが捕まったと

密偵はマッダレーナがその知らせを聞き、ここに現れると予想している。

密偵:
Incredibile, ma vero!

密偵はシェニエの告発状を書くように勧める

いよいよです!

ジェラール:
Nemico della Patria?!
♪祖国の敵

Nemico della Patria?
 「祖国の敵」?

È vecchia fiaba che beatamente
 使い古されとるが
ancor la beve il popolo.
 大衆に受けそうな言葉だ!

Nato a Costantinopoli? Straniero!
 よそ者だな!
Studiò a Saint Cyr? Soldato!
 そして「軍人」だな!
Traditore! Di Dumouriez un complice!
 デュムリエの仲間だな!
E poeta? Sovvertitor di cuori e di costumi!
 詩人だって?人心を堕落させる野郎だ。

Un dì m'era di gioia
 俺にも楽しい時はあった。
passar fra gli odi e le vendette,
 (革命初期は)粛清の嵐の中でさえ
puro, innocente e forte.
 純粋で強い心があり
Gigante mi credea…
 自分の強大な権力を実感していた。
Son sempre un servo!
 ところが俺はしょせん(以前と同様)召使に過ぎなかった。
Ho mutato padrone.
 ご主人を取り換えただけさ。
Un servo obbediente di violenta passione!
 今のご主人は血に飢えたご主人様さ。
Ah, peggio!
 最悪だ。
Uccido e tremo,
 人殺しをして怖がっている
e mentre uccido io piango!
 殺しながら内心は泣いているのだ!

   -顔が泣きそうに歪む

Io della Redentrice figlio,
 私は救世主の息子となって
pel primo ho udito il grido suo pel mondo
 最初に私は世論の叫びを聞いた
ed ho al suo il mio grido unito
 そしてそれを私の叫びとしたのだ。
Or smarrita ho la fede nel sognato destino?
 ところが今俺は、夢見た理想の世界への信念を失い、迷走している。
Com'era irradiato di gloria il mio cammino!
 俺の歩んだ道は栄光に輝いていたのに!

    -ここから聴かせどころ

La coscienza nei cuor
ridestar delle genti
 (革命家として扇動し)人々を覚醒させ
raccogliere le lagrime dei vinti e sofferenti,
 虐げられていた人々は立ち上がったのだ
fare del mondo un Pantheon
 この世界を神々の神殿にして
gli uomini in dii mutare
 人間を神に変えるのだ
e in un sol bacio
e in un sol bacio e abbraccio
tutte le genti amor!
(繰り返し)
 そこはキスと抱擁で人々が愛し合える世界なのだ!

大拍手

このアリアは今井俊輔さんの十八番と言ってよいアリア。
このバリトンの至高のアリアを全幕の中で演じ歌えるとは、彼もこの日を夢見ていたことだろう。夢がかなった瞬間だ。その感動はファンにとっても同様だ。
おめでとうございます。

ジェラール:
俺の新しい主人は「肉欲」だ

マッダレーナが現れる。
密偵は出ていく。

名前を名乗る。
ジェラールは背を向けて出ていこうとする

マッダレーナ:
お待ちになって!
お願いがあるんです

ジェラールは振り向く

私は…あなたをここに来させるためにあなたの恋人を捕まえたのです

マッダレーナ:
あなたの復讐なのね

ジェラール:
そうではありません

マッダレーナ:
じゃどうして?

ジェラール:
あなたが欲しいからです

あなたと一緒に育った
ある日あなたは言った
「これがおまえの制服よ!」
あなたが踊っている間、私はカーテンを開け閉めしていた

Io pur, io pur, io pur voglio
affondare le mie mani nel mare
dei tuoi capelli biondi!

一時でいい、あなたの金髪に指を絡ませて沈めたい

ジェラールは欲望をあらわにしてマッダレーナの肩や胸をつかみ愛撫する

マッダレーナ:
(抵抗するが、突然思いつく)
Se della vita sua tu fai prezzo
il mio corpo, ebbene, prendimi!
あの人の命の代償としてなら…
身を差し出します

ジェラールはマッダレーナから離れる

あいつをそれほどまでに愛しているのか…

チェロ独奏

マッダレーナ:
La mamma morta

名アリアです。

母は死にました。私の命を救うために
家が燃えていました
ベルシは私のために身を売りました。
私は愛する人に不幸をもたらす女なのです

マッダレーナの独白を聞きながらジェラールはどんどん自分を恥じていく。そして…

dice:
"Vivi ancora! Io son la vita!
Ne' miei occhi è il tuo cielo!
Tu non sei sola!

Io son l'amore, io son l'amor, l'amor "

Prendilo dunque.
Io son già morta cosa!

マッダレーナの絶唱、すばらしい!
大拍手

ジェラールは感動して涙し、そして覚醒していく。
この変化が見事です。今井さん!

ジェラールはマッダレーナのためにシェニエを救おうと決意する

裁判のリストに彼の名前を発見するジェラール

ジェラール
Io l'ho perduto, difenderlo saprò!

裁判を見物するために市民が入ってくる
騒がしくしている
こういうところも演技も音楽も本当に見事でよくぞと感心します。

裁判員たちが入ってくる

ジェラールとマッダレーナは傍聴している

シェニエが入ってくる

残酷極まりない裁判が始まる

市民に罵倒され、嘲笑される被告たち

ついにシェニエの番だ。

シェニエ:
Si, fui soldato

ここでもシェニエは詩で語っているのだ!

Non sono un traditore.
Uccidi? Ma lasciami l'onor!
私は裏切り者ではないが
殺すというなら
名誉だけは守ってくれ

証言者が証言しようとするとジェラールが乱入する

ジェラールは自分の告発は虚偽だと告白する

しかしフーキエ=タンヴィルは取り合わない。

判決は

死刑!

第3幕了

第4幕

サン・ラザール監獄の中庭

詩を書いているシェニエと見守っているルーシェ

牢番のシュミットが足を引きずりながら近づく

もう遅いのでそろそろ…

ルーシェは彼に何かを渡して懇願する

もう少し頼むよ!

シェニエはペンを止める

読んでくれ

シェニエ
Come un bel dì di maggio

シェニエ絶唱のアリア。

Sia! Strofe, ultima Dea!
ancor dona al tuo poeta
la sfolgorante idea,
la fiamma consueta

darò per rima il gelido
spiro d'un uom che muore

gelidoで最高音

大拍手

ルーシェは出ていく。

ラ・マルセイエーズを歌うマテューの声

ジェラールがマッダレーナを連れてくる

マッダレーナはシュミットに自分をイディア・ルグレーの代わりに処刑するよう頼む。
シュミットは驚くが、大量の金貨を見て承諾する。

ジェラールの悲嘆。

ジェラールは彼らを救うべくロベスピエールの元へ向かう。

ジェラールの努力は虚しかった。下記の言葉を得ただけだった。

ロベスピエールの言葉「プラトンも詩人を共和国から追放した」

この言葉は幕開けの前の黒幕に表示される。

シェニエとマッダレーナ

シェニエ:
Vicino a te s'acqueta

マッダレーナ:
estrema dalle labbra
raccoglie, è Lui, l'Amor!

二人:
Il nostro è amore d'anime!

シェニエ:
È il mondo! È il mondo!

マッダレーナ:
Amante! Amante!

二人:
Viva la morte insiem

死刑執行のための護送車が近づく
車に乗る
といった直接的表現はなく

二人は一緒に階段を上っていき
満点の宇宙の星空に呑み込まれていく
という演出です

彼の詩の「宇宙」から着想し、映像表現に美しく昇華された演出家に敬意を捧げます
素敵な終わり方です。
高岸さんにも直接そう申し上げました!
陰惨なイメージで終わる印象を与えることがなく、よかったです。
ありがとうございました。

全幕了

大大大拍手
無数のブラヴォーが飛び交う大喝采
感動があふれていました
劇場でももうコロナが終わってました
ありがとうございました。
お疲れ様でした。

***

Related links

ちなみに新国立劇場ではアルロー演出の「アンドレア・シェニエ」を
2005年11~12月 ※新制作(カール・タナー、ゲオルギーナ・ルカーチ、セルゲイ・レイフェルクス)
2010年11月(ミハイル・アガフォノフ、ノルマ・ファンティーニ、アルベルト・ガザーレ)
2016年4月(カルロ・ヴェントレ、マリア・ホセ・シーリ、ヴィットリオ・ヴィテッリ)
に上演している

2006年6月
ボローニャ歌劇場来日公演「アンドレア・シェニエ」
 ホセ・クーラ、マリア・グレギーナ、カルロ・グエルフィ
Prt 1 Prt 2



詳細続く。





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最終更新日  2023年05月10日 20時33分29秒


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