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みなさんは健康ですか?健康というものは病気になって初めてその重要性がわかるというもの。また時間が空いたときにいろいろ健康について考察していきますね。ではまた。
2009.12.06
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2006.04.03
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2006.03.27
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2006.03.27
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花粉症が増えていることは、花粉が飛ぶシーズンになると通勤電車などでマスクを掛けているサラリーマンの姿をよく見掛けることからも実感できます。スギ花粉症の患者数は、ここ20年で3~5倍に増えたともいわれます。しかし、より深刻なのは子どものアレルギーです。環境庁(当時)が全国66,000人の3歳児を対象に行った平成9年度の調査報告によると、喘鳴を起こすこどもが15.06%(前年は13.86%)、喘息が3.41%(同1.83%)と、たった1年間で喘息の子どもが急増している様子が分かりました。また、平成10年に宮城県や所沢市で小学5年生対象に行われた健康調査では、医師がアレルギー疾患と診断したケースがそれぞれ56%、62%もあったそうです。増加するアレルギーの背景には、時代とともに急激に変化している衣食住という環境の中で、人間が動物として、その変化にうまく適応できなくなっていることを示しているのです。ここに、衣食住という面から自分の生活を見直していくことの大切さがあるのです。アレルギーは抗原抗体反応の一種 体の外から花粉やダニの死がい、病原体などの異物(抗原)が侵入すると、白血球の仲間である顆粒球とマクロファージが異物をその内部に取り込んで殺そうとします。マクロファージは取り込んだその異物の情報をリンパ球のT細胞やB細胞に提示し、提示を受けたB細胞は分裂、増殖してその異物を攻撃する抗体を作ります。これで、次回に再び同じ異物が体内に侵入した時の異物を攻撃する態勢が整ったことになります。あたかも、容疑者の顔写真が全国の警察に配られて指名手配となり、どこかで犯人が見つかったら一斉に取り押さえるのと似ています。このようにして、人間の体は異物の攻撃から身を守るシステムを作っており、これを免疫反応といいます。このシステムはまた、抗原抗体反応ともいいます。 アレルギー反応は、本来自分の体を外敵から守るために働くはずの抗原抗体反応が、自分の体にとって逆にマイナスに働く場合のことをいいます。このアレルギー反応に深くかかわっているのが、抗体の中でもIgE抗体と呼ばれる物質です。IgE抗体はもとは寄生虫が体の中に入ってきた時にできる抗体です。ところが、日本人の生活が清潔になって体の中から寄生虫が激減し、このためIgE抗体の活躍の場がなくなったことがアレルギーの増加と関係しているのではないか、と指摘する研究者もいます。 まず花粉などのアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が体内に入ると、そのアレルゲンに対応したIgE抗体ができ、それが体内の肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球などと結合します。この状態を感作といいます。この状態で、そのアレルゲンが再度体内に侵入してIgE抗体と結合すると、肥満細胞や好塩基球細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が排出されて、皮膚や呼吸器、消化器などにさまざまなアレルギー症状を引き起こします。何でもアレルゲンになる 自分の体にない物質なら何でもアレルゲンになる可能性を持っていますが、多くは異質のタンパク質です。金属や化学繊維などもアレルゲンになることがあります。また、アレルゲンはある一定量以上ないとアレルギー反応を起こさないことも重要なポイントです。 アレルゲンは進入経路で分類すると理解しやすいです。まず、空気とともに鼻から吸い込まれるものとしては、ほこり、ダニ、カビ、花粉、動物の毛やふけなどです。なかでもダニはもっとも重要です。布団やじゅうたんなどにあるダニの死がいが、ほこりとともに空中に浮遊する時期が喘息患者が増える時期と重なります。カビの胞子も空中を浮遊してアレルゲンとなります。花粉で起きる花粉症では、スギ花粉症が有名ですが、ほかにもヒノキ、シラカバ、ナラ、ブタクサ、ヨモギ、オオバコ、イネなどの花粉もアレルゲンになります。次に食べ物として口から入るアレルゲンがあります。卵、牛乳、大豆は日本の3大アレルゲンといわれています。卵では白身がアレルゲンとなりやすく、黄身にはほとんどアレルゲン性はありません。当然、この3食品を材料にしたお菓子などの加工食品製品もアレルゲンになります。しかし、大豆食品の豆腐やみそ、しょうゆなどはあまりアレルゲンにはならないようです。そのほか、エビ、カニ、イカ、貝類、ホウレンソウ、ジャガイモ、バナナ、イチゴなどもアレルゲンとなることがあります。 皮膚や粘膜に触れることでアレルギー反応を起こすことがあります。よく「○○にかぶれた」という言い方をします。有名なものとしては、ウルシによるアレルギー性の接触皮膚炎があります。ほかにも、衣類、合成樹脂、せっけん、化粧品、ぎんなん、塗料などがあります。スズメバチやミツバチの毒素のようにアナフィラキシーショックという急激なショックを起こすものもあります。死ぬこともあるので要注意です。4つ目は薬剤で、ペニシリンなどの抗生物質、サルファ剤、アスピリンなどのサルチル酸製剤、ホルモン剤などがあります。治療中に思わぬアレルギー症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。まず自分のアレルゲンを知る 予防、治療には自分にとって何が問題のアレルゲンなのかを知ることが大切です。それにはまず、自分の日常生活をじっくり振り返ってみることです。発症2、3日前から、一体何を食べたのか、何を触ったのか、どんな空気を吸ったのか、などを思い出して原因を推定します。血液中のIgEを検査する血清IgE抗体検査という方法もあります。皮膚にさまざまなアレルゲン液を少量たらしてひっかいたり、刺したりして、そこが赤くはれたり、かゆくなったりするかどうかを見る皮膚テストという方法もあります。食物アレルゲンなどでは、その食品を一切断って症状の変化を見る除去試験という方法が行われます。 アレルギーには、アレルゲンを含む物質を触ったり、吸ったり、食べたりして数十分で症状が現れる即時型と、かなり時間が経過してから症状が現れる遅延型があります。即時型の場合は、何かを食べたりした直後なのでアレルゲンの特定は比較的容易ですが、遅延型の場合は数日後になってやっと発熱や喘息が出たりする、などということがあるのでアレルゲンの特定は難しくなります。多様なアレルギー疾患 アレルギー疾患の定義はなかなか難しいのですが、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、アトピー性皮膚炎、じんま疹、接触性皮膚炎、気管支喘息などが挙げられます。これらは症状から見た分類ですが、アレルゲンの面から分類すると、食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、花粉症、ダニアレルギーなどという言い方ができます。アレルギー体質の人は、子どものころにその疾患が年齢とともに変化することがよくあります。アトピー性皮膚炎から始まり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎といった具合で、アレルギーマーチといいます。 食物アレルギー対策では、アレルゲンとなる食品を除いた食事「除去食」という食事療法があります。普段あまり食べない食材なら難しくありませんが、卵や牛乳、大豆などという、あらゆる食品に利用されている素材の場合はたいへんです。また、除去食は栄養の面でバランスを崩す可能性があるので、医師と相談しながら行うことが大切です。 吸入性アレルギー対策としては、ダニの死がいやカビなどを部屋や寝具から取り除くため、細かいほこりまで取れるフィルターつき掃除機で、まめに部屋や枕、布団などに掃除機をかけることが重要です。布団などは天日干しして乾燥させますが、干した後も掃除機をかけることを忘れないようにします。ダニが増えないよう除湿器で部屋を乾燥させたり、じゅうたんやカーペットをやめて畳やフローリングにすることも効果があります。長期間しまってあった寝具や服は、保管中にダニやカビなどが増えているので、洗濯してから使います。ぬいぐるみやソファもダニの温床となりやすいので掃除機をかけます。できることなら室内で犬やネコを飼わないことも必要です。湿気がこもらないようまめに換気することも大切です。 花粉症の場合は特に、花粉が飛び散るシーズンの布団干しや、窓を開けての換気は花粉が部屋に入り込むので慎重にします。また、外出時には眼鏡や花粉症用のマスクをする、外出から帰ったときは頭髪や衣服から花粉をふるい落とすことなども必要となります。 生理的・心理的要因も忘れてはならないポイントで、過労や寝不足、精神的に不安定な時は、アレルギーがひどくなることがあります。また、思春期などでホルモンバランスが崩れている時や、インフルエンザなどの感染症にかかっている時も要注意です。アトピー性皮膚炎を例に アレルギー疾患の発症には遺伝的な体質が関係しているので、短期間で治すことが難しいのです。このため、その治療には他の病気と多少違うアプローチが必要です。何かと話題になっているアトピー性皮膚炎を例に考えてみます。 アトピー性皮膚炎はアレルギーや非アレルギー的な環境要因で症状が起こるので、良くなったり、悪くなったりを繰り返し、患者は「私はこのまま一生薬を塗り続けなくてはいけないのか」と不安になります。でも、アトピー性皮膚炎に詳しい竹原和彦金沢大学医学部教授は「確かに、アトピー性皮膚炎は短期間で治る病気ではありません。でも、乳幼児期に症状が出現してもほとんどが小学生の高学年や中学生までに症状がなくなってしまいます。また、お年寄りのアトピー性皮膚炎の方は見たことがないでしょう。ですからアトピー性皮膚炎は必ず治る病気なのです」と、じっくり取り組めば必ず治ると励まします。 なかなか治らない患者の不安を利用して最近、非科学的な治療法が社会問題化しています。「アトピー性皮膚炎が治る」という触れ込みで、特殊なお茶やキノコ、化粧品、入浴剤、石けん、シャンプー、水などが高額な価格で販売されていることがあります。ほかにも、アトピー治療をうたっているエステや宗教団体もあるそうです。日本皮膚科学会が1998年10月から1年間、国内11の大学の皮膚科で、アトピー性皮膚炎が重症化して入院した319例を調査しました。その結果、140例が先に挙げたような不適切な治療を受けていたそうです。この140人は、それぞれ退学したり、職を失ったり、白内障などの合併症を引き起こしたり、アトピー商品購入で大金を失ったりなどの被害を受けていました。竹原教授は、このような危険なアトピービジネスを見分けるポイントとして、次の6つのことを行う所は要注意だと紹介しています。1、「どんな病気にも効く」という。2、「ある一定期間で必ず治る」という。3、医師でもないのに診察まがいのことをする。(とくに「あなたはステロイド外用薬で副作用を起こしている」というケース)。4、「これは保険ではまだ認められていないが」といって高価な薬などを売りつける。5、多額の宣伝費をかけている治療法で高額な費用を要求する。6、アトピー性皮膚炎の原因について断定的な言い方をする。 これらのことはアトピー性皮膚炎に限らず、多かれ少なかれ他のアレルギー疾患にもあてはまることです。日常生活でストレスをためないよう、規則正しい快適な生活をし、アレルゲンやその他の悪化因子を避け、医師と相談しながらステロイドなどの薬を上手に使い、病気とうまくつき合って、少しずつ自然寛解に持っていく姿勢が大切なようです。まるで素肌!あなたの肌も10代のナマ肌に!? 感動のジェルタイプファンデーションプチュレ Agジ...
2006.02.11
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胃がんは、日本人のがんによる死因の第1位の座を長い間占めていましたが、男性では平成5年にこれを肺がんに明け渡しました。しかし、死因としては低下しても、患者発症数としては相変らず王座を占めています。胃がんの検査としては、レントゲンによる胃透視検査が、全国胃集団検診として古くより全国的な規模で実施されています。これによって多数の早期胃がんや、進行胃がんが発見され、多くの人々が救命されました。胃がんには、進展がきわめて急激なものと、緩徐なものとがあります。前者すなわち、急激なものは、診断可能な段階から進行して手遅れの段階に到るまでの期間が数カ月で、このタイプの胃がんは、なかなか救命が難しく、若い人や女性に多いという傾向があります。幸いなことに、頻度が断然高い胃がんは進展が緩徐な方で、進行して手遅れの段階に到るまでには数年を要します。 胃がんの多くは、健康診断として定期的に検査を受けるようにしてさえいれば、早期発見がきわめて容易ながんということになります。健康診断としての胃の検査には、発泡錠というガスを発生させる錠剤を服用した直後に、バリウムを飲んでレントゲンで撮影する二重造影法による直接あるいは間接撮影法の胃透視検査、ファイバースコープを口から胃へと挿入肉眼的に観察する内視鏡検査、血液を採血して調べるペプシノーゲン検査などがあります。バリウムと空気のコントラストを利用して、胃の微細な変化までを診断できる二重造影法は、日本が世界に冠たるものとして誇れる検査法です。内視鏡検査は、一般的には二次精密検査法としておこなわれますが、近年は電子スコープの登場によりさらに診断能力が増し、さらに細胞診のための生検もおこなわれます。ペプシノーゲンは、胃がんを直接診断するものではなく、原因となる萎縮性胃炎を診断するものですが、血液検査だけで簡単に受けられますので、若い方特に妊娠の可能性がある女性や企業健診などでは好都合な検査と考えられます。 健康診断では、検査を選択する場合には、感度や特異度ばかりでなく、安全性および侵襲度、検査時間、費用などを総合して決定することになります。感度とは、被検者全員が胃がんだとして、その検査で何%診断できるかという指標で、がんの進行度や検者の能力によって大きく左右されます。このため健康診断では「がんがあっても8割強程度しか発見されないと思っていた方が安全ですよ、自覚症状が現れたら、あらためて医者にかかるようにして下さい」といった、過信を予防するための健康教育も必要ではないかと考えられます。 特異度とは、がんのない被検者を何%まで正しく診断できるかという指標で、特異度が低いために、二次精密検査を受ける度に「がんの疑いは晴れました」というような判定を多発するようでは、精検受診率が落ちてしまい、肝心な時に二次精密検査受診を逸することになりかねません。健康診断では、一度見逃すと次回受診は早くて一年後ですから、感度と特異度が高いことはきわめて重要であり、診断能力の高い専門医が判定を担当することが必要です。
2006.02.07
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ハイキングは、本格的な登山のように、高い山の頂上を目指すのではなく、自然に親しみながら山の麓を歩く気軽な運動です。 ハイキングは、他の運動やスポーツとは異なり、急激なダッシュやジャンプを必要としないかわりに長時間の行動となります。そこで、ハイキングを楽しむための最も重要なポイントは、ペース配分と言うことになります。歩き始めから急いで歩くよりも、まわりの景色や野に咲く花などを楽しみながら、ゆっくりと歩くことが長時間歩き続けるコツといえるでしょう。その目安として、心拍数を計りながら1分間に100~120拍前後になるように、また、主観的強度が「楽である」ないし「ややきつい」と感じられる程度で歩き続けると良いでしょう。この強度であれば、筋肉で生成される疲労物質である乳酸が、血中に蓄積されないので疲労感を伴わずに長時間運動することが出来るからです。それよりも早いペースで歩くと、血中乳酸濃度が上昇し、休みながらでないと歩き続けることが出来なくなります。 ついでにエネルギー消費量の簡易な推定法も知っておきましょう。どのような登り方をするにせよ、垂直方向に150m登ればおよそ体重当たり1.3kcalのエネルギーを消費することが分かっています。例えば、体重70kg(荷物の重さも含めて)の人が1000m(垂直)を登り降りすると、約900kcal余分にエネルギーを消費したことになります。これは、13km走ったときと同等のエネルギー消費量です。 また、山登りなどの翌日に筋肉痛になったと言う経験を持たれる方も多いと思います。これは、主に下り坂を歩いたときに引き起こされると言われています。なぜならば、登りでは自ら発揮する以上の力は筋肉で起こりませんが、降りではそれ以外の重力や慣性力といった外力に対抗して自分の体重を支えるための力が必要となるからです。このように、外的な力の方が上回って筋肉が引き延ばされながら収縮する筋肉の収縮様式を伸張性収縮といい、他の収縮様式(短縮性収縮・等尺性収縮)よりも筋肉の損傷が起こりやすいことが分かっています。したがって、下り坂では勢いにのって駆け降りるのではなく、ゆっくりと慎重に降りる必要があります。 ハイキングとはいっても、野山の中に一歩足を踏み入れれば、そこはもう都会とは明らかに異なる世界になります。したがって、ハイキングにもそれなりの準備が必要になります。足首までしっかりと覆われた底の厚い靴、虫や日差しから身体を守るための長袖、長ズボンに帽子、水分補給のための水筒、おむすび、弁当、サンドイッチおやつなどを持ち歩くようにすれば良いでしょう。
2006.01.02
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ごはんを食べればゴミが出る。仕事をしてればゴミが出る。遊びに行けばゴミが出る。生きていればゴミが出る……。 今年の春先、最終処分場の不足に悩む東京都が都民にゴミ減量のための行動を求め、主要紙の3分の2面を費やして打った新聞広告のコピーの一部である。 言い得て妙というか、まさに人間は生きていればゴミを出す生物だ。日本の現状を見てみよう。 ゴミ問題に解決策はあるか 近年の日本では年間約18億トンの資源が消費され、およそ5億7千万トンの廃棄物が発生する。そのうち約2億2千万トンが排出までの過程で再資源化されるので、約3億5千万トンが処理・処分場に回されている。内訳は、製造業・建設業などの事業所から排出され、排出者の責任で処理される産業廃棄物が3億トン、家庭ゴミなど自治体が収集したり自治体の処理施設に持ち込まれる一般廃棄物(し尿を除く)が5千万トン。ちなみに一般廃棄物5千万トンという量は東京ドーム135杯分になる。 処理・処分場でもさらに一部が再資源化され、残りは減量のため可能なかぎり焼却・脱水など中間処理されて海面や山間の最終処分場に埋め立てられる。その量が年間約1億トン。埋立処分場のまた消耗される空間資源であって、日本ではすでに絶対的に不足している。瀬戸内海の豊島に大量の有害廃棄物が不法投棄された事件などはその反映だ。 この難題を解決しようとする試みは、リサイクルの徹底によるさらなる再資源化、ゴミ処理技術の高度化などいろいろある。最も壮大な構想は、国連大学が推進するゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)計画だろう。これは、ある産業の廃棄物をすべて他の産業の資源として利用しようというもの。いわば自然の物質循環をまねて、いったん自然から取り込んだ資源(物質)は文明社会の内部で完全に循環させようという発想である。 まことに壮大であるが必ずしも夢想ではない。すでに単独でゼロ・エミッションに向けて一歩を踏み出した企業もある。 たとえばあるビール会社は年内に工場から廃棄物を出さない生産システムを導入する。もともとビール製造業の最大の廃棄物は麦芽カスで、その大部分はこれまでにも飼料や肥料に利用され、余剰酵母も薬品用などに再利用されてきた。今度は王冠は屑鉄に、廃プラスチックは固形燃料として用い、焼却灰はセメント副原料とする。再資源化率100パーセントを実現するのだ。 とはいえ、産業全体でのゼロ・エミッションが達成されるまで20年かかるか50年かかるか、あるいは100年かけても無理なのか、いまのところ誰にもわからない。ゴミ問題の解決はそれほどにむずかしいのである。 そのむずかしさを象徴的に示すのが、当否はともかく、しばしば「人類が作った最強の毒物」と形容されるダイオキシン。減量や衛生のためにしろ熱エネルギーとしての再利用のためにしろ、ゴミ処理の過程で必要な焼却処理がこの毒物を発生させるからだ。 難題の象徴としてのダイオキシン ダイオキシンとは、ポリ塩化ベンゾパラダイオキシン(PCDD)という舌を噛みそうなフルネームをもつ化合物のことだ。図に示すように、俗に亀の甲と呼ぶベンゼン環--6個の炭素が六角形につながりそれぞれの炭素に水素がくっついている--が2個、酸素を介して結合し、水素のいくつかが塩素で置換されている。塩素の数、位置(1から9までの数字で示されるどの炭素と塩素が結合しているか)によって75種の異性体がある。 似たような構造をもつものにポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)があり、こちらには135種の異性体があって、この両者をあわせてダイオキシン類と呼ぶ。塩素ではなく臭素で置換されたものや、ポリ塩化ビフェニール(PCB)の一種であるコプラナPCBをもダイオキシン類に含めることがあるが、ここではPCDDとPCDF、合計210種の有機塩素系化合物をダイオキシン類としておく。 ダイオキシンの「正体」は ダイオキシン類は、悪名が高いわりに「正体」がよくわかっていない化学物質群だ。 まず、毒性が異性体によって大きく異なっている。最強のものが2・3・7・8-四塩化ダイオキシン、つまり2、3、7、8位の炭素に塩素が結合しているものだ。そこでダイオキシン類の毒性を評価するときは、平たく言うと2・3・7・8-四塩化ダイオキシンに「換算して」評価を行なう。 ところが、この物質は動物によって大きな感受性の差がある。たとえば急性毒性の指標である半数致死量(LD50)。化学物質を動物に投与して試験群の半数が死亡する量)が、モルモットでは体重1キログラム当たり1マイクログラム程度なのにマウスでは284マイクログラム。この数百倍の差が何に由来するかわからないので、どのデータを人間に当てはめてよいか、いまだにはっきりしない。 動物実験の結果などから、ダイオキシン類は催奇形性(奇形の発生をうながす性質)や発がん性をもつ物質だと考えられている。しかし、これについても人間ではどうなのか、はたして安全と危険を分ける閾値(いきち)があるのかどうか不詳なのだ。 つぎに、ダイオキシン類発生源の全容がまだわかっていない。都市ゴミ・廃油・医療系廃棄物・下水汚泥などの焼却施設のほか、金属精錬施設の排煙、製紙工場の塩素漂白工程あたりが主要なものと推定されているが、自動車の排ガスやタバコの煙にも含まれるし、生ゴミを堆肥にするエコロジカルなゴミ処理法であるはずのコンポスト容器から検出されたこともある。 どうやら「人間が作った」というのはあんまり正確でないようで、8千年も前に形成された大阪湾の海底の土層や、雲仙普賢岳の火山灰からの検出例もあった。生成の化学反応過程がくわしくは解明されていないので、自然が作った弱毒性のダイオキシンが強毒性のものに変わる可能性を全面的に否定することもできない。 警戒し、かつ恐怖にふるえず しかしながら、人間の活動から発するものが大きな部分を占め、北極圏のアザラシや南極圏のオットセイの皮下脂肪からも検出されるなど汚染が拡大しており、不確かではあってもリスク(いわば潜在的危険)は明らかに存在するから、WHO(世界保健機関)や先進諸国は一日摂取許容量の設定や発生量抑制対策に取り組んでいる。 日本でも厚生省の「廃棄物処理に係わるダイオキシン類発生防止等ガイドライン設定」(90年)や、環境庁が製紙業界などに出した塩素系漂白剤の使用削減などを求める通達(92年)がある。一日摂取許容量が決められていないことなどをさして、対応策の遅れを指摘する声もあるようだが、毒性の評価が確定していないのだから、対応の遅れと見るのが妥当かどうか。 手遅れにならないうちに、という声はあって当然だし、もちろん警戒は必要だが、いたずらに恐怖にふるえるような愚も避けねばならない。
2005.12.05
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心の健康は、生き生きと自分らしく生きるための重要な条件である。具体的には、自分の感情に気づいて表現できること(情緒的健康)、状況に応じて適切に考え、現実的な問題解決ができること(知的健康)、他人や社会と建設的でよい関係を築けること(社会的健康)を意味している。この他、人生の目的や意義を見い出し、主体的に人生を選択すること(人間的健康)も大切な要素である。 健康日本21ではこのように生活の質に大きく関係する心の健康づくりを、課題として取り上げている。 心の健康には、個人に備わっている資質や能力だけでなく、からだの病気、社会経済状況、人間関係など多くの要因が関係している。なかでも、からだの状況と、心の状況が強く関連していることは重要である。例えばストレスが強くかかっている状態では風邪にかかりやすくなることが証明されている。 心の健康を保つためには、多くの要素があり、適度な運動、バランスのとれた栄養・食生活は身体だけでなく心の健康においても重要な基礎となるものである。また、十分な睡眠や、ストレスと上手に付き合うことが重要であり、このように日常生活すべてが心の健康に関係する。 また、うつ病は心の病気のうち代表的なものであるが、程度の差はあるがかなり多くの人がかかる可能性を持っている精神疾患であり、適切な対応が重要である。基本的な考え方 健康そのものが総合的なものであることを考慮すると、身体的な健康と心の健康の両方を視野に入れた全人的な働きかけが有効である。そのためには、人間の生活全体を視野に入れて、行動や習慣がどのように成り立っているのか、などの背景を良く理解し、この知識に基づいて働きかけの方法を考えることが重要である。これは自分自身の健康を考えるのにも重要である。 もう一つは、うつ病などの心の病気への対応であるが、このような病気には有効な治療方法が確立しており、できるだけ早期に専門医と相談し、治療を始めることが重要である。心の不調は自覚していないことも多いので、周囲の人が早く気が付いて専門医療につなげることが重要となる。また、身体の不調を訴えて一般診療機関を受診することも多いので、医療における連携も重要である。休養 休養は、疲労やストレスと関連があり、二つの側面がある。一つは「休む」ということで、仕事や活動による疲労を回復し、元の活力ある状態に戻すという側面であり、もう一つは「養う」ということで、鋭気を養い、身体的、精神的、社会的な能力を高める、というものである。 休日をごろごろと休むだけでなく、趣味やスポーツ、ボランティア活動など積極的に取り組むことが求められる。ストレス さまざまな面で急速に変化している現代は、ストレスの多い時代である。この変化に対応するために起きる緊張状態がストレスに対する反応であり、誰にでも起きることだが、過度にストレスが続くと精神的な健康や身体的な健康が影響を受けることになる。「平成八年度健康に関する意識調査(財団法人健康・体力づくり事業財団)」によると「調査前一か月間にストレスを感じたか」という質問に当てはまると回答した人は、対象者の五四・六%に上っている。 ストレスへの対応としては、「一人ひとりがストレスに対応できる能力が向上すること」、「一人ひとりをとりまく周囲の人(家族、友人、同僚など)のサポートが充実すること」、「ストレスの量を工夫して軽減するような社会にすること」などがあげられる。 一人ひとりが取り組むことのできる具体的な方法としては 1 ストレスの正しい知識を得ること、 2 健康的な睡眠、運動、食習慣によって心身の健康を維持すること、 6 自分自身のストレスの状態を把握できるようになること、 4 リラックスできるような技術を身につけること、 5 ものごとを現実的で柔軟にとらえること、 6 自分の感情や考えを上手に表現できるようになること、 7時間を有効に使ってゆとりを持つことができるようになること、 8趣味や旅行などの気分転換を図る、などさまざまなものがある。これらは、どれも身近なものであり、少しずつでも取り組むことで効果が期待できるものである。 ところで、「ストレスを発散するために酒を飲む」、「過食する」、「たばこを吸う」など、ストレスが不健康な生活習慣の言いわけに使われることがある。実際に、生活習慣の改善を目指して取り組む際には、ストレスなど精神的・心理的な状況を視野に入れることが必要であると言われている。ここでも、身体的な健康と、心の健康を総合して考えなければいけないことが現れている。睡眠 睡眠が十分にとれないと、考えがなかなかまとまらず、感情も不安定になりがちになるなど、心の健康に大きく影響するため、重要な要素として取り上げている。 また、心の病気になった際の症状の一つであることも重要な点である。前述した「平成8年度健康に関する意識調査」によれば、23.1%の人が何らかの睡眠障害を訴えており、身近な課題であるといえる。 睡眠障害の原因としてはストレス、ストレスへの対応能力の不足、運動不足、睡眠に関する知識の不足などが指摘されている。最近発表された、睡眠障害を訴えている高齢者を対象とした研究では、「眠いときだけ床に入る」、「十分に眠れなくても毎朝同じ時間に起きる」といった生活指導を受けた人と、睡眠薬を投与した人では改善効果が変わらず、指導を中断しても効果が持続することが示されおり、日常生活における配慮だけでも大きな効果が期待できる。 心の病気 心の病には、精神分裂病、躁うつ病、人格障害、薬物依存、痴ほうなどさまざまなものがある。そのなかでも、現代のストレス社会ではうつ病が大きな問題となっている。世界の人口のうち三から五%がうつ病であるとの報告もあり、うつ病は一般に考えられている以上に広く認められる心の病である。 うつ病は感情、意欲、思考、身体のさまざまな面に症状が現れる病気であり、早期に発見されて適切な治療を受ければ、大部分が改善する。しかし、患者の多くは自分の状態をうつ病から生じている症状であるとは捉えることができず、うつ病の治療を受けていないのが現状である。従って、一般の人びとや医療関係者がうつ病の症状や治療についての正しい知識を持つことが重要である。また、うつ病患者が精神科以外の診療科を受診することが多いので、多くの医療関係者が精神疾患に関する知識を持ち、適切な治療を導入できるようになることが重要である。自殺 最近のわが国の自殺者は、年間24,000人から25,000人程度で推移していたが、1998年には一挙に3万人を越え、1999年もこの水準が続いている。この数は交通事故死者数の約3倍にも上るので、健康課題としても重要であると考えられる。 自殺を予防するための取り組みとしては、 1 自殺が生じる前に対策を講じて予防すること、 2 生じつつある自殺の危険に対して介入して、自殺をくい止めること、 6 不幸にして自殺が生じてしまった場合、残された人びとに対する影響を少なくすること、があげられる。 米国空軍が行った自殺予防対策の効果が発表され、他の陸海軍に比べ、自殺者の減少効果がみられている他、わが国でも地域における自殺予防プログラムの実践を通じて、予防活動の有効性が示されている。 おわりに 心の健康は、多くの人が関心ある課題となっている。身体の健康づくりと同様、身近に取り組める課題も多いので、多くの方にそれぞれの心の健康を考えていただきたい。
2005.12.04
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フィンランドでは伝統的に昔から用いられている浴法です。フィンランド民族は遊牧の生活を営み、中央アジアから西に移動し北欧の地に住み着きました。中央アジアに住んでいた当時の入浴習慣と、ロシア帝国の入浴習慣の影響を受け修正されたのが現在のサウナ浴とされています。したがって、この浴法は2000年の歴史があることになります。1 サウナ浴室の構造 木造の小屋で広さは家庭用の10~30から広いものまであります。密閉できる構造でその片隅には石が積まれ、これが熱せられて室が暖まるようになっています。本来は木を燃やして石を加熱したのですが、現代は一般的に電気による加熱方式をとっています。木を燃やして加熱する場合は、煙がこもるとCO中毒の危険があるので煙突を付けて煙を室外に排除します。 鉄板か、レンガで囲まれた、片隅に積まれた石の下部は加熱のために大きく、上層になるほど手拳大くらいに小さくなり、この部分に時々水を掛けて湿度を適当に保ちます。積まれた石の後側から新鮮な空気が導入され換気をよくするための通風口が設けられています。 積まれた石に対して、一段と高くなった台が作られそこに木製のベンチが置かれます。利用者はこれに横たわって全身浴をします。2 サウナ浴の実際 室内温度は一般に60~80℃、場合によって90℃が用いられます。入浴者は、通常三段になったベンチに腰かけるか横になって全身浴をします。下段は60℃、中断は70℃、上段は80℃でなれるにしたがって上の段を利用します。頭部には加熱を防ぐため乾いたタオルをかぶります。 浴時間は通常5~10分であり、汗が十分でるまで浴します。終りには湿度を得るために、水を石の上に注いで水蒸気をたてます。儀式的に葉のついた樺の小枝で身体を叩きます。その後、冷シャワーを浴びたり河川、プールで泳ぎます。 人それぞれにあるいは、地方の風習などで多少異なった方式や組み合せなどがあります。3 身体に対する影響 新陳代謝の高進,高血圧の降下,心拍出量の増加,血液の濃縮,発汗増大(Na,CI,Kの消失)4 適応症 フィンランド、ヨーロッパ諸国では主として保健的に利用されていますが、疾病治療にも広く用いられています。腰痛性疾患,外傷後遺症,肥満,自律神経失調症など。5 禁忌 急性炎症疾患,高度の高血圧症,高度の動脈硬化症,その他,安静を必要とする疾患,過労などの身体状況のとき。6 わが国のサウナ浴の利用 本来のサウナ浴は乾燥熱気浴であり、温度は一般に60~80℃、湿度3~15%ですが、わが国では濡れたからだで,水着着用のまま入るので湿度は100%近く、しかも温度が100℃に設定されている場合が多く、この環境では息苦しく息こらえのため心肺に不利な影響が与えられますし、快適感が得られません。また、浴後、冷水に飛び込むことも歴史のあさい日本人にとっては危険です。わが国のサウナ浴の利用は娯楽、慰安的色彩が強く健全な利用法とはいえないことがあります。
2005.12.03
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温泉は、その主成分によって次の九種類に分けられます。単純温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉(食塩泉)、硫酸塩泉、鉄泉、硫黄泉、酸性泉と放射能泉の九つです。これらの温泉成分は、温泉浴や飲泉によって皮膚や粘膜を通じて体内に吸収されます。 食塩泉浴では、塩類が皮膚表面のタンパクや脂肪と結びつき、入浴後に薄い皮膜をつくって体温の放散を防げて保温効果が長く続きます。また、強い末梢血管拡張作用や殺菌作用、傷の治りを早める作用もあります。 炭酸水素塩(重曹)泉は、皮膚表面の脂肪や分泌物を乳化し、柔らかくして肌を滑らかにします。また、体温の放散が促されて、浴後に爽快清涼感がします。飲むと、肝・膵の機能を高め、胆汁排出を促進するので、慢性胆のう炎や胆石症によいとされます。 ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの硫酸塩泉や炭酸水素塩泉は、抗炎症・抗アレルギー作用、末梢血管拡張作用、さらに鎮痛効果などがあり、アトピー性皮膚炎、筋肉や関節の痛み、運動器障害に効果的です。 二酸化炭素泉の炭酸ガスや、硫黄泉の硫化水素は、皮膚から速やかに吸収されて、強い末梢血管拡張や血流増加作用があります。そのため、末梢血行障害や軽い高血圧症、動脈硬化症などに適しています。 硫黄泉は皮膚の角化層を柔らかくし、皮膚角化症や慢性湿疹などに効果があります。 酸性泉は強い収れん作用があり、水虫に効果的です。しかし、刺激性が強く湯かぶれを起こしやすいので注意が必要です。 新鮮な温泉への入浴は、淡水浴に比べて筋肉や関節の鎮痛や弛緩作用、末梢血行増加作用が強くみられる場合が多いので、仕事やスポーツによる筋肉、関節痛や筋肉疲労の回復を早め、肩こり、腰痛、むくみなどに効果があります。 しかし、温泉にはいわゆる老化現象があり、時間がたつと薬効が低下したり失われてしまうものがあります。原則として、温泉水が地表に湧出(ゆうしゅつ)して温度や圧力が低下したり、日光や空気にさらされると、その物理的・化学的性質が変化します。炭酸ガスや硫化水素、ラジウムなどの気体成分は、湧出後、急速に蒸発して逃げてしまいます。温泉水中のカルシウムや硫黄などは沈殿します。鉄泉は、酸化鉄(さび)になって生物活性が失われます。一般に、十分な薬効が期待される期間は、湧出後三日間までとされています。
2005.10.21
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たばこの健康被害については知らない人がいないくらい、いろいろなところで叫ばれています。「たばこを吸うと肺がんになりやすい」とか「ぜんそくや気管支炎の原因になる」など、たばこを吸う本人についての有害性は子どもたちにも知られています。 ところが、たばこを吸わない人に対する被害については、とかく見過ごされがちです。しかし、たばこによる健康被害は、たばこを吸う本人よりも、むしろたばこを吸わない人たちの方が深刻になっています。たばこ会社は決して周囲の人の健康を考えたたばこは作ってくれません。 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科の浅野牧茂教授によると、喫煙には三種類あります。(1)自分が好きで吸う場合(能動喫煙)(2)自分では吸いたくないが、ほかの人の煙をいや応なしに吸わされる場合(受動喫煙)(3)妊娠中の女性が喫煙するか受動喫煙を余儀なくされて胎児が間接的に煙の影響を受ける場合(第三の喫煙)の三つです。 肺がんを初め、気管支炎、ぜんそくなど呼吸器系の病気につながる有害性について分かっていながら吸うというのであれば、これは、本人がすべて承知しているわけですから、どうすることもできません。 しかし、本人はたばこを吸いたくないのに煙を吸わされてしまったり、母親のおなかの中にいるときに害を被ってしまうというのは、なんとも迷惑な話です。それどころか、いま最も問題になっているのは、この第二、第三の喫煙による健康被害なのです。●いちばんの被害者は子どもたち 生きている以上、私たちは呼吸をしなければなりません。胸いっぱい吸い込みたいような大自然の澄み切った空気も、あるいは嫌なにおいでむせてしまうような濁った空気も、そこにいる限り同じように吸わなければならないのです。従って、どんなにたばこの煙が嫌いでも、近くにいる人がたばこを吸っていると、その煙を嫌々ながら吸ってしまうことになります。これが、第二の喫煙であり、第三の喫煙にもつながるのです。 喫煙者がたばこ自体を通して吸う煙が主流煙といわれるのに対して、たばこから立ち上る煙は副流煙といいます。非喫煙者はこの副流煙を吸わされてしまうわけですが、それと同時に喫煙者が鼻や口から吐き出した主流煙(呼出煙)もいや応なしに吸わされます。副流煙呼出煙とをあわせて環境たばこ煙(ETS)といいますが、この煙による被害は、現在とても深刻になっています。 環境たばこ煙による急性の影響としては、煙にさらされているために目が痛い、かゆい、涙が出るなどといった自覚的、主観的なものがあります。また心拍数が増えたり、血圧が上昇して心臓に負担がかかったりする客観的な影響があり、呼吸器系の疾患がある人が発作を起こすなどのほか、重大な病気につながる慢性の影響もあることが分かっています。 特に問題なのは、家庭内で煙を吸わされている赤ちゃんや子どもたちへの影響です。浅野教授によると、三歳児健診でぜんそく様の気管支炎が多く見つかったり、窓を閉め切っている冬場には肺炎や気管支炎を発病する子どもたちが増えることが分かっているそうです。また米国の調査では、子どもの気管支ぜんそくが悪化したときに両親が禁煙すると、九〇%の子どもの症状が軽快するのに対し、両親が禁煙しないと、軽快するのはわずか三〇%だったということです。 浅野教授は「居間、子どもの寝室、車の中ではたばこは絶対に吸わないこと。いちばんの被害者は、子どもたちなのです」と警告しています。●十分に換気を! 妊娠中の女性がたばこを吸ったり家庭内で夫が喫煙する場合には、胎盤を通じて胎児にも重大な影響を及ぼす恐れがあります。周産期死亡や不正出血、前置胎盤を起こしやすく、生後の身体的な成長や知的能力の発達が遅いなど、子どもたちの将来に暗い影を落とすのです。 第二、第三の喫煙が健康被害をもたらす場合の問題点としては、副流煙に主流煙の何倍もの有害物質が含まれていることが挙げられます。ニコチンやタールは約三倍、刺激の強いアンモニアは約四十倍、発がん性物質には百倍以上のものもあるのです。また、喫煙者のいる職場では、非喫煙者でも長い間には一日十本以上たばこを吸ったのと同じくらいの肺機能障害を起こすことが知られています。 このような環境の中で自分や子ども、胎児の健康を守るためには換気を頻繁に行うことです。「空気清浄器では空気が濁って見える原因となるタール分が取れるだけで、有害なガス成分はますます濃くなります。部屋の換気を十分に行って、きれいな空気を吸うように心がけてほしい」と、浅野教授は強調しています
2005.10.17
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たばこの健康への害が指摘されて久しいが、それでも日本では50%を超える男性がいまだにたばこを吸っており、これは先進国の中でもトップクラス。さらに問題なことは、若年層の喫煙者が増える傾向にあることだ。 日本禁煙推進医師歯科医師連盟会員で、JR東京総合病院で禁煙外来を開設している石井周一・内分泌内科担当部長に禁煙方法や最近の禁煙事情などについて聞いた。Q.まず、たばこの害について教えてくださいA.なぜ喫煙が問題なのかというと、がんや循環器疾患などさまざまな病気を引き起こすとともに、周囲にいるたばこを吸わない人にも害を与える「受動喫煙」の問題があるからです。たばこには約4000種類の物質が含まれており、うち200種類以上が有害物質。なかでも3大有害物質といわれているのが、タールと一酸化炭素とニコチン。タールは発がん性があるし、一酸化炭素は神経や血管の障害をもたらし、ニコチンは虚血性心疾患の原因となり依存性もあります。 喫煙によって、肺がんになる危険は非喫煙者の4.5倍となり、喉頭がんは32.5倍。また、喉頭がん患者の99%が喫煙者です。たばこを吸う本数が増えるに従って、肺がんや虚血性心疾患で死ぬ確率も高くなります。喫煙が原因で死亡している人は、WHOの推定では世界で年間300万人。うち日本は11万人。これは交通事故の年間死亡数の10倍の数です。300人の喫煙者のうち1年で1人が死ぬ計算です。これは少ない数字だと思うかもしれませんが、10年では10人、30年では10人に1人死ぬということです。 Q.禁煙できない人も多いですね?A.医師のたった一言のアドバイスで簡単にやめる人もいる一方で、ビュルガー病(閉塞性血栓血管炎ともいい、原因の1つにたばこが挙げられている)で片足を切断してもたばこをやめられず、ついに両足を切断する人もいます。 やめられない理由としては、習慣として喫煙する心理的依存とニコチンへの渇望としての身体的依存の2つがあります。ニコチンには依存性があり、喫煙は1種の薬物中毒です。ニコチンがなくなるとイライラしたり、集中できなくなったりするニコチン離脱症状が起こります。「たばこを吸うと気持ちが落ち着く」というのは、いわばニコチンを補って普通の状態に戻るだけのことなのです。Q.禁煙方法について説明してくださいA.方法としては、大きくニコチン置換療法と行動置換療法の2つがあります。身体的依存の場合、ニコチン離脱症状が辛いので、パッチ(貼付薬)やガムなどたばこ以外の方法でニコチンをからだに補給して離脱症状を緩和するニコチン置換療法で治療します。離脱症状は、禁煙してから1、2週間目がピークで、症状は約1カ月続くといわれています。離脱症状が緩和してくれば投与するニコチンの量を減らし、最後に投与を中止して禁煙が達成されるわけです。すべての人がそれだけでやめられるわけではなく、医師の適切なカウンセリングを伴って有効率が向上するのです。 吸いたい気持ちをコントロールする方法としては、たばこを吸いたくなったらお茶を飲む、ガムをかむ、深呼吸をする、それからコーヒーやアルコールを控えるなど日常の行動パターンを変えることも有効です。また、喫煙道具をすべて捨てる、たばこを吸いたくなる場所を避ける、など環境を変えることもいいでしょう。禁煙を継続させるコツは、たばこの害について自分なりのイメージを持つ、禁煙した理由やそのために払った努力や禁煙をしてよかったことなどを思い浮かべる、周囲に禁煙を勧める、などです。 Q.喫煙運動にもさまざまありますが?A.大きく、禁煙外来などのように医師などが個別に喫煙者を指導する方法と、禁煙教室のように集団的に指導していく方法があります。後者の形としては、禁煙マラソンが有名で、インターネットで多くの人に呼びかけて禁煙を目指す方法や、会社ごとに禁煙する方法、禁煙コンテストといって郵便で希望者を募り、禁煙のキットを配って呼びかける方法もあります。Q.先生の禁煙外来はどういうきっかけで始めたのですか?私はもともと糖尿病が専門です。糖尿病は網膜症、腎症、全身の神経障害という合併症が怖い病気です。いわば全身の細く小さい血管がおかされる病気です。ところが、たばこの中の一酸化炭素は細胞毒だし、赤血球と結び付いて酸素の運びを阻害して酸素欠乏にするし、ニコチンは血管を収縮させて血液の流れを悪くします。たばこが合併症に悪いということで、私は当時、患者さんに禁煙をアドバイスしていました。そんな時、禁煙のニコチンガムが日本で発売されたことを知り、平成6年12月、ニコチン置換療法を主とした禁煙外来を始めました。 初診では、まず患者さんの喫煙状況を調べます。なぜ禁煙をしたいのか、どんなたばこを1日何本、何年間吸ってきたのか、職場環境は、禁煙の経験、その失敗理由は、身内にがんの人がいるか、などです。そして、ニコチン依存度テストをしたり、呼気中の一酸化炭素濃度の測定、次に資料や写真でたばこの害についてお話しして、患者さんに合わせた禁煙プログラムを作成します。Q.患者にはどんな方が多いのですか?A.開設当初の来院者は男性が9割で、女性が1割でしたが、女性がだんだん増えてきて、最近では7対3から6対4の割合です。特に最近、ニコチンのパッチ(貼付剤)が発売されてから女性が急激に増えました。女性はガムをかむことに抵抗感があるようですね。年齢は50歳以上が6、7割を占めています。 また、来院の動機で一番多いのは、健康が心配でたばこをやめたいという人。だから9割が何の疾患もない健康な人です。それから、身の周りの職場や飛行機で分煙化が進み、「こんなことなら、いっそやめてしまおう」と思った人です。 ほとんどが1日に30本以上吸うヘビースモーカーです。禁煙外来に来る人はみな、身体的依存と精神的依存の両方の側面をもっていますが、7割が身体的依存の方が強い。そして来た人の9割程度にニコチン置換療法を指導しますが、その結果、3カ月から6カ月の禁煙導入ができる人は6割くらいです。禁煙の動機がはっきりしている人の方が成功する率が高いです。 Q.最近、軽いたばこが増えていますが?A.低タール、低ニコチンなどの軽いたばこは問題です。確かに単純に比較をすれば、軽いほうがからだにいいのですが、喫煙者はみな自分のからだに合ったニコチンの量が決まっています。だから、軽いたばこに変えると、結果的に吸う本数が増えたり、いままでより深く吸い込んだり、たばこの根元まで吸ったりと、吸い方が変わります。一酸化炭素に関していえば、吸う量が増える分だけ被害がもっとひどくなるかもしれません。 それから、高校生で7割、中学生で5割、小学生で3割と、未成年者の喫煙経験率が「75.3」だと言われていますが、軽いたばこはとっつきやすいので、若年層の喫煙習慣という点からも大きな問題だと思います。
2005.10.14
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キノコに豊富な抗酸化作用物質 キノコが、抗酸化作用のあるエルゴチオネイン(ergothioneine)の自然供給源として第一級の食品であるという報告がなされた。その量は、これまでによい抗酸化作用食品とされてきた小麦胚芽や鶏レバーをしのぐという。この研究は、ウシ組織に含まれるエルゴチオネインの量を測定するために普通に用いられている技術を、食品に応用したもの。米ペンシルベニア州立大学の研究者らは、米国のどこでも売られているマッシュルームが小麦胚芽の12倍、鶏レバーの4倍の抗酸化作用物質を含むことを突き止めた。米国で普通に売られているキノコの中では、ポルタベラやブラウンマッシュルームのほうが、マッシュルームよりもエルゴチオネイン量が多かったが、シイタケやヒラタケ、エリンギ、マイタケなど外国産キノコではさらに多く、小麦胚芽の40倍というものもあったという。この研究は、ワシントンDCで開催された米国化学会(ACS)年次集会で発表された。専門家によると、抗酸化作用物質は人体の細胞の酸化を防ぎ、慢性疾患のリスクを減少するという。
2005.09.26
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笑いも百薬の長 しのびやかに笑うことをクスリと表現するが、表題のクスリは「薬」の意味である。昔から「酒は百薬の長」と言われてきた。適量を飲めばからだにいい。しかし飲み過ぎるとかえって害になる。近代医学では「笑いも百薬の長」と言うようになった。動物で笑うのは人間だけであり、笑いとからだ、笑いと病気の相関関係が次第に明らかにされてきたのである。笑いは血行をよくし、気持を明るくし、免疫機能を高める――ということが医学的に実証されている。昔の人はこうした知識を持ち合わせていなかったが、笑いの効用については十分に心得ていた。笑いは世界共通 中国では古くから「笑門来福」と言い、「一怒一老、一笑一若」と言いならわしてきた。日本でも「笑う門には福来たる」と言われているし、「怒ると老けますよ。笑うと若返りますよ」という言葉には妙に説得力がある。アフリカの諺に「明るい笑顔は家の中の太陽である」というのがある。結婚披露宴の祝辞に使うにはもってこいの言葉である。お正月の行事にも笑いはつきものであった。三河万歳は身ぶり手ぶりよろしく面白い歌い文句で門づけをしたし、家の中では家族が福笑いの遊びに興じたが、いまではすっかりすたれてしまったようだ。山口県防府市の「笑い講」はいまでも行われている。年末に当番の家に十数人が集まり、その年を無事に過ごせたこと、新しい年がよい年になることを祈念して、大きな声で笑う行事である。最初のうちはぎこちなさが出たり、空笑いであったりするのだが、そのうちに皆が腹の底から笑うようになる。聴いている方も思わずつりこまれて笑い出してしまうほどである。年末のあわただしい中で、いかにものどかな行事と言える。笑いの系譜 笑いの系譜を辿ってみると、最初はなんといってもアメノウズメノミコトの歌と踊りである。アマテラスオオミカミが天の岩戸に隠れてしまい、あたり一面は真っ暗闇。神々が困り果てているときにアメノウズメノミコトが薄衣を身にまとって面白おかしく歌い踊った。それを見て神々は囃したて笑い声をあげたのでアマテラスオオミカミが何事ならんと岩戸を少し開けたところ、タヂカラオノミコトが力まかせに引き開けたので、この世は再び明るくなったという神話である。笑い声はこの世の中を明るくする力を持っている。 鳥羽僧正の描いたといわれている「鳥獣戯画」は、いつみても面白くて楽しい。能・狂言の前身とされる申楽(さるがく)も、なかなかに滑稽味がある。豊臣秀吉にはお伽(とぎ)衆と呼ばれる人たちがいて、中でも有名なのが曽呂利新左衛門。頭の回転が早く頓智がよくきいたという。頓智と言えば一休禅師も大変な人であった。笑いは人心収攬(じんしんしゅうらん)にも使われるが、逆に時の権力者を風刺、揶揄(やゆ)する場合にも使われる。京の都大路に貼り出された「落首」がそうであり、一休禅師もなかなか辛辣な言葉を発している。江戸時代になると狂歌、川柳が盛んとなった。これに都々逸が加わって、現在でも時流を風刺している。漫画もまた全盛をきわめている。落語の元祖は江戸時代末期の三笑亭可楽とされているが、漫才、漫談も含めていわゆるお笑いも根強い人気を保っている。芝居や映画にも喜劇といわれる分野がある。笑いで病気を克服 カナダの医師ハンス・セリエがストレス学説を発表したのは1936年。米国のジャーナリストのノーマン・カズンズが難病の強直性脊椎炎にかかりながらも、生きる意欲を強く持ち、笑うことに専念し、ビタミンCを大量摂取することによって病気を克服したのは1964年。ストレス学説にヒントを得て、物事をポジティブに考え、とにかく笑うことで病気と闘ったわけである。それが見事に奏功し、論文にまとめて発表したところ、世界中から大変な反響を呼ぶことになった。日本でも筑波大学の小田晋先生は「一日に100回は笑ってほしい」と呼びかけ、倉敷市の柴田病院の伊丹仁朗先生は「生き甲斐療法」を実践している。日本医科大学の吉野槙一先生は慢性関節リウマチの治療に落語家を登場させた。旧約聖書「箴言」の一説に「喜びに満ちた心は、薬のようによい働きをする」とあるのがヒントとなって、患者さんに一時間落語を聴いてもらった。結果は上々吉であった。笑いの効用 医学博士の花岡満男先生は、笑いの効用を 次のようにまとめている。 ◎いくら使っても減らないし、無料。 ◎長時間大量に使っても副作用がないし、中毒症状も起こさない。 ◎周囲も陽気になり、活力が湧いてくる。 腹の皮がよじれる、脇腹が痛くなるほど笑ったことが最近あるだろうか……。
2005.09.26
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さん、毎朝ちゃんと食事をしていらっしゃいますか? ダイエットしたいから食べな い、朝起きるのが遅くて食べられないということはありませんか? 近年、朝食を摂らない男性が増えています。殊に20歳代の男性で毎日朝食を摂る人 は35.5%しかおらず、3割の人が週の半分以上は朝食を摂らない生活を送っていま す。女性は約6割が毎日朝食を摂っていますが、欠食が日常化していることを感じさ せます。健康的な生活習慣という面からみても、好ましいものではありません。近 年、成人病が生活習慣病として改められ、健康に深いかかわりがあることが強調され ています。アメリカの研究者ブレスローの調査研究に基づいた、健康な生活のための 7項目というものがあります。7項目とは、喫煙をしない、適度の飲酒、適度の運動、 7~8時間の睡眠、朝食を毎日摂る、毎日間食をしない、身長に見合った体重です。 これらの生活習慣をより多く実践している集団は、そうでない集団に比較し、死亡率 に差があり、早く年をとることが証明されています。 それでは、なぜ朝食が必要なのかについて、お話ししましょう。 英語で朝食はbreakfastといいます。この語源はbreak(やめる)+ fast(断食) で、断食のあとに食べる最初の食事のことを指します。朝食とは、まさに夜間の飢餓 状態の後の最初の食事なのです。 朝食の目的は、体温を上昇させ、脳にエネルギーを供給してその働きを活発にし、 心身ともにすっきりとした目覚めを迎えることにあります。脳のエネルギーはブドウ 糖です。夜、7時頃に夕食を摂ったとしましょう。エネルギーの素であるブドウ糖は 肝臓や骨格にグリコーゲンとして貯えられますが、そのグリコーゲンは、あまり長時 間もちません。脳はエネルギーを貯えることができないので、常にブドウ糖を供給す ることが必要です。グリコーゲンは夜間消費しつづけられているのです。朝食を摂ら ずに仕事や勉強をすると、10時頃にはエネルギー切れを起こし、脳の働きが低下しま す。さらに、食べる行為自体が体温の上昇を促し、脳の働きを活発にします。 腸にとっても大切です。朝5時頃から最も活発に腸は動き出します。朝食は、さら に腸の活動を活発にし、排便を促す作用もあります。身体の1日のリズムをつけるの に太陽光線が効果的であることはよく知られていますが、朝食も体内リズムを刻むの に効果的なのです。 では、どんな朝食がよいのでしょう。望ましいのは、1日に必要な栄養の約4分の1 から3分の1を朝食で摂ることです。昼食・夕食の2食では1日に必要な栄養を充分に 摂取できません。主食、卵料理にキャベツ、牛乳・ヨーグルト。このような食事でよ いのです。今まで食べずに出かけていた人は、ヨーグルト1個でも牛乳1本でも構いま せん。何か口にいれるようにしましょう。また、パンと牛乳だけだった人は、ベーコ ンエッグと野菜などを一皿加えるようにしましょう。ダイエットしたい人は、朝食を しっかり摂ることがやせる秘訣です。夕食で1日分のカロリーを摂取するといった、 まとめ食いすると肥満しやすいが、朝食を含めて3食に分けて摂取すればやせるとい う報告があります。 時間がなくても、電子レンジや冷凍食品、夕食の残り物を上手に利用し朝食をきち んととって、すがすがしい一日のスタートを切るのが、健康に生活する秘訣です。
2005.09.26
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見つからないワクチン、治療法 1981年に米国で最初に報告されて以来、不気味に増え続けているエイズ。83年にHIV(エイズウイルス)が見つかり、その正体が突き止められたものの、予防ワクチンや決め手となるような治療法はまだ見つかっていないのが実情だ。この間エイズは世界中に広がり、世界保健機関(WHO)によると、2000年には感染者が4千万人に達するという驚くような予測もある。日本では外国に比べて、感染者、患者とも少ないが、厚生省のエイズサーベイランス委員会の発表では、感染者と患者が急速に増えており、身近な病気になりつつあることを示している。「このままでは日本もエイズ大国になってしまう」と厚生省や研究者は危機感をつのらせている。増加著しい東南アジア 世界のエイズ事情を見てみよう。WHOによると、95年12月15日現在でエイズ患者は129万1800人余り。その半年前の発表に比べると、12万人以上増えており、毎月2万人以上が新たなエイズ患者になっている計算だ。しかし、この数字はWHOに報告のあった患者数なので、実際にはこの数倍以上に達するとみられている。 HIV感染者となると、これよりぐんと多い。WHOの推定によると、世界のHIV感染者は昨年半ばの段階で1400万~1500万人、2000年には最大で4000万人に達する見通しだ。 地域的に最も感染者が多いのはケニアやタンザニアなどサハラ以南のアフリカで850万人。続いて東南アジア地域の300万人だが、この地域での感染者は急速に増加しており、将来アフリカを大幅に上回る可能性もあるという。 東南アジアなどでのエイズの感染拡大の原因は「売買春」である。さらに麻薬用の注射器でも感染が広がっており、特に麻薬の密造で知られるタイ、ミャンマー、ラオス国境の「黄金の三角地帯」周辺で感染が急速に進んでいる。増加著しい異性間の性的接触による感染 日本はどうか。厚生省のエイズサーベイランス委員会の2月の発表によれば、95年12月末現在、日本の累計患者数は1154人、感染者数は3524人で世界的にみるとまだ少数にとどまっているものの、感染は確実に全国に広がっている。感染者の内訳は、血液凝固因子製剤による感染者が1806人、異性間の性的接触が866人、同性間の性的接触が350人、静注薬乱用11人、母子感染9人、その他37人、不明445人となっている。 患者・感染者を性別でみると男性では90年から増加傾向を示し、95年は94年の290人から335人と大幅に増加。逆に女性は92年の291人を頂点として減少し昨年は111人になっている。 国籍別では、92年に日本人男性の2倍近く報告のあった外国人女性は年々減少し、95年は日本人男性の3分の1を下回わり、外国人男性とほぼ並んでいる。日本人男性は増加し続け、95年は255人になり全報告例の6割近くに達している。 感染原因で注目されるのは異性間の性的接触によるものの増加。特に日本人男性については95年は対前年比50%増の123人が報告されている。異性間の性的接触による増加が今後大きな問題になってきそうだ。 一方、89年2月に施工されたエイズ予防法以降のデータでは、患者・感染者の年齢構成は、20代と30代が全体の69%を占めており、エイズが性的活動の活発な若い人の病気であることが分かる。 性別では、男性は30代が32%と最も多く、20代と40代がそれぞれ約26%を占めている。これに対して、女性は20代が72%を占め、より若い世代に感染が集中している。 気になる事実がある。異性間の性的接触について感染地域をみると、日本人では男女とも国内での感染例が多い。特に男性の感染増が著しいのだ。この事実はエイズが外国の病気で、日本にいる限り安全だという「神話」は通用しなくなってきているのだ。こうした中で厚生省の中に懸念が広がっている。エイズ検査や相談が、92年をピークに減少し、検査数が92年には13万件以上あったのが昨年は約5万8千件と半分以下になっており、相談件数も92年の半分になっているのだ。「エイズに対する関心が薄れ、それが件数の減少につながっているのではないか。そのうちにエイズが広がってしまっては…」と厚生省エイズ結核感染症課の心配は尽きない。数年間の無症状期間、やがて発病 エイズ発症の過程をもう一度見てみよう。HIVに感染すると、まずHIVの抗原が血液中にでき、風邪に似た症状が出現することがある。この後、無症状の状態が数年間続く。この状態の人が無症候性キャリアである。この時期も他人への感染に注意しなければならないが、数年の無症状期の後、無症候性キャリアの数パーセントから数十パーセントにエイズの前段階の症状(エイズ関連症候群)が出現する。 最初はリンパ腺(せん)がはれて、発熱や下痢、体重の減少などといった全身症状が現れる。さらに進むと、痴ほうや知能低下などの神経症障害、トキソプラズマ症やサイトメガロウイルス脳炎、カリニ肺炎などの日和見感染、そして悪性腫瘍(しゅよう)、全身の衰弱といった重い症状が見られるようになる。本物のエイズの発病である。 鹿児島大医学部の納(おさめ)光弘教授のグループが実施した全国の疫学調査によると、エイズ患者の30%に神経障害が見られている。納教授は「エイズが重症化すれば神経障害が起こりやすくなるのではないか。HIV感染者がここ2、3年急速に重症化しているようだ」と現在のエイズ事情を説明している。 逃げ回るウイルスしかも5種の亜種 普通、ウイルス感染症を予防するにはワクチンが一番効果的だ。世界中でHIVの構造を解明して、その弱点を攻撃するワクチンを開発しようと懸命の努力が続けられているが、エイズを予防するワクチンはまだないのが実情だ。HIVはウイルスの表面タンパクの構造を変えながら逃げ回るため、今世紀中のワクチン開発はとても無理との見方が強い。 国立予防衛生研究所がBCG菌を使ったワクチンなどを研究しているが、実際に効果を確かめるのに時間がかかるなど実用化までの道のりはまだ遠いようだ。現在HIVは遺伝子構造が少しずつ違った5つのサブタイプが知られており、それもワクチンの開発を難しくしている大きな理由になっている。 治療薬についても実情は同じ。現在日本で治療薬として認められているのは、AZTとDDIの2種。どちらもウイルス増加を抑えて発病を遅らせるだけで、根本治療には程遠いのが実情だ。しかも、副作用の危険もある。AZTの場合、胃腸障害を起こしたり、極度の貧血や白血球の減少が起こるし、DDIにもAZTほどではないが副作用の危険がある。その上、長期間使用すると、効かなくなってしまうという欠点もある。戦術の転換 治療が無理なら、戦術を転換してエイズの発症を遅らせることができないか。感染から発病まで数年から7、8年とされてきたが十数年たっても発病しない長期未発症例が10%程度あることが分かってきたのだ。このため多くの研究者が発症抑制の試みに力を注ぐようになっている。 その1つが遺伝子治療である。熊本大医学部の高月清教授のグループが計画しているのは、HIVの遺伝子の一部を組み込んだレトロウイルスを感染者の筋肉などの細胞に感染させ、細胞の表面にHIV特有の抗原をつくらせる。 この抗原を異物として認識した免疫細胞が活性化して、本物のHIVが感染している血液のリンパ球細胞を攻撃して、HIVの増殖とエイズ発病を抑える仕組みだ。米国では既に3年ほど前から実施されているが、熊本大学の遺伝子治療臨床研究審査委員会は「安全性に問題はなく効果も期待できる」としており、現在厚生省の遺伝子治療臨床研究中央評価会議で審査が続けられている。 もう1つ注目される報告がある。名古屋市立大医学部の岡田秀親教授のグループがHIVに感染した長期未発症患者からHIVの感染細胞を殺す抗体を見つけたというのである。まだ研究は始まったばかりだが、期待できるかもしれない。 長期未発症例にウイルス側に何か要因はないのか。東京医科歯科大の山本直樹教授(微生物学教室)が関心を寄せているのは14年前にHIVに感染したオーストラリア人男性のケース。この男性の血液から感染した7人がすべて発症しなかったというのだ。「調べてみるとHIVの特殊な遺伝子に欠損が見つかったというんです。この遺伝子をウイルスに導入してやればワクチンができる可能性がある」と山本教授は期待をかけている。予防に勝る治療法はない このように現在のところ決め手になりそうなワクチンもなければ治療法もない。このため予防に全力を挙げているのはエイズ予防財団だ。「エイズの予防には地域、会社や職場、それに学校が一体になってエイズの予防に取り組む必要がある。そのためにも性教育が大切だ。せめて高校卒業までにコンドームの正しい使用法を教えてほしい」と同財団の山形操六専務理事は強調する。 「レトロウイルスと呼ばれるHIVは普通のウイルスと違って、細胞の中に入っているので簡単にやっつけることはできない。根治は無理ではないか。エイズが発症しないようになるのは、人間が耐性を獲得するかウイルスが発病しないように変化する以外にないのではないか」と山本教授はみる。とすると、私たちに残されているのは、HIVに感染しないことに尽きる。まさに「予防に勝る治療法はない」のだ。エイズを撲滅するために1人ひとりが真剣に取り組む必要がある。
2005.09.25
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肥満は肺動脈塞栓症の危険因子 80年間もの間、肥満が肺動脈塞栓症(PE)の危険因子(リスクファクター)ではないかと疑われてきたが、今回、男女共に、特に40歳未満において、肥満が静脈の血栓塞栓病の危険因子であるという研究結果が報告された。肺動脈血栓症は、通常、脚でできた血栓が肺に到達し、肺の動脈が突然詰まる致死性の疾患である。この研究は、米St. Joseph Mercy Oakland病院(ミシガン州)のPaul D. Stein博士らがSt. Joseph Mercy Oakland病院およびウェイン州立大学(ミシガン州)、オークランド大学(ミシガン州)との共同研究で行ったもので、米国退院調査(NHDS)で蓄積された20年以上にわたる患者の記録が調べられた。この記録には過体重の米国人データが多く含まれていた。その結果、肥満の場合、肥満でない場合に比較した肺動脈塞栓症リスクは2.21倍であった。特に40歳未満の患者で影響が最も大きく、リスクは5.19倍であった。この結果は、米国医学誌「American Journal of Medicine」9月号に報告された。肺動脈塞栓症は心筋梗塞、脳卒中に次ぐ第3位の急性心血管系疾患であるにもかかわらず、その診断は見逃されることが多い。Stein博士は、患者が肥満の場合には、医師は肺動脈血栓症の診断を考慮するよう述べている。
2005.09.25
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血液は体の中をどうめぐっている? 「血液サラサラ」や、その反対の状態を表す「ドロドロ血液」というフレーズは、ここ数年でちょっとしたブームにもなり、広く一般に知られるところとなりました。しかし、「血液サラサラ」という言葉だけは知っていても、どうして血液の流れ方(流動性)が重要なのかということをよく理解していない人は、案外、多いのかもしれません。そこで、ここではまず、私たちの体の血液の流れについて、ごく基本的なことがらを解説しましょう。人間の体内の血液の総量は、体重が60kgの人であれば約4.8リットル(体重の約8%)です。いうまでもありませんが、この血液は、血管の中を流れる形で存在しています。そして、全身の血管内を循環しながらさまざまな働きをしているのですが、中でもいちばん大きな仕事が、酸素と二酸化炭素の運搬になります。その流れを追ってみると─。肺で新鮮な酸素を受け取った血液は肺静脈から心臓に入り、心臓のポンプに押し出された勢いで全身をめぐることになります。心臓を出ると、まず大動脈という太い血管を通ります。やがて、動脈は枝分かれしながらだんだん細くなり、末端では毛細血管になります。この毛細血管は、頭のてっぺんから足の先まで、すべての臓器に、全身くまなく網の目のように張りめぐらされています。各組織の毛細血管に到達して、細胞に酸素を届けた血液は、今度は細胞から不要な二酸化炭素を受け取り、心臓に戻っていきます。毛細血管はどこも途切れることなく動脈と静脈を橋渡ししており、二酸化炭素を運ぶ血液は、帰りは静脈を通るのです。動脈とは逆に、静脈の場合は枝が幹に向かうように、細い静脈がだんだんと太い静脈になり、最後は心臓につながる大静脈となります。そして、心臓から肺動脈に押し出された血液は、肺で二酸化炭素を捨てて、新しい酸素を受け取り、いわばきれいな血液となって、再び全身の毛細血管を目指して心臓から送り出されるのです。 ■ 血液の流れのポイントは「毛細血管」にあり! ちなみに、毛細血管も含めて体じゅうの血管を1本につないだとしたら、その長さは約9万kmにもなります。これは地球を2周以上する長さです。この距離を血液が、いったいどれくらいの時間で流れるのかというと、たったの50秒。約5リットルの血液が50秒間で全身の毛細血管を通り、酸素と二酸化炭素を交換して戻ってくるのです。これは驚くべきスピードです。しかも、毛細血管というのは非常に細いのです。その内径は約7マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル)。ちょっと想像もつかない細さですが、たとえば、髪の毛は細いものでも約100マイクロメートルなので、毛細血管の細さは髪の毛の1/14ということになります。そのような細い毛細血管内を、血液は一瞬のうちに流れているというわけです。ところで、血液が運搬するのは、酸素と二酸化炭素だけではありません。食事で吸収した栄養分を各細胞に運んだり、体内で作られた各種ホルモンを目的の器官に運んだりもします。また、細胞で不要になった老廃物を受け取って、肝臓と腎臓に運ぶ働きもあります。また、血液にはほかにも、体内に入った細菌の捕食や傷口の補修、また体温の調節など、“運搬”以外にも大切な役割がありますが、これらも含めて血液の重要な働きというのは、ほとんどが毛細血管で行われています。つまり、血液の流れで最も重要視すべきは毛細血管なのです。 ■ もしも血液がスムーズに流れなかったら……? もしも血液が毛細血管をスムーズに流れないようなことになったら……ちょっと考えてみるだけでも、各細胞に酸素や栄養、ホルモンが充分に行きわたらなくなる、あるいは二酸化炭素や老廃物をきちんととり去ることができなくなるなど、体によくない事態が生じることが予想できます。とはいえ、正常な血液であれば、毛細血管を通り抜けるのになんの問題もありません。血液中の白血球(リンパ球、単球、顆粒球など)や赤血球は、じつは毛細血管の内径よりもサイズが大きいのですが、そこはうまく変形してスルリと血管を通ってしまうのです(変形能)。血小板はもともと毛細血管よりもサイズが小さいので、簡単に通ることができます。これが、いわゆる血液がサラサラと流れやすい状態です。ところが、生活習慣とのかかわりで血液の流れが悪くなることがあります。たとえば赤血球や白血球が変形できなくなったり、あるいは白血球の粘着度が増して血管壁にくっつきやすくなったり、また、血小板が必要以上に凝集しやすくなって大きなかたまりになってしまったり……こうなると、毛細血管の流れが悪い、まさにドロドロ血液の状態です。血液がドロドロ状態にある人は、毛細血管での血液の働きが正常に行われにくくなるのですから、健康体とはいえません。病気を発症しているか、あるいは発症していなくても、おそらく、さまざまな自覚症状が出ているはずです。たとえば、「だるい」「疲れやすい」「肩がこる」「胃がもたれる」「冷え性がつらい」などです。そして逆にいえば、それらの症状を持つ人は、血液がドロドロである可能性大なのです。
2005.09.25
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通常、肥満者はいろいろな病気にかかりやすく、一般に肥満度が高ければ死亡率も高いと思われがちですが、やせ側でもまた死亡率が高く、生命保険会社の統計などでは、最低死亡率は平均体重のややプラスの辺りにあり、総死亡率は肥満度に対してU字型の分布をすると指摘しています。 肥満度を表す指標としては、最近はBMI(Body Mass Index,(体重)kg/(身長))がよく用いられ、標準は22.0とされています。本来は体脂肪の測定が最良と思われますが、直接的には非常に困難であり、皮下脂肪の厚さをキャリパー(皮脂厚計)を用いて推定する方法やインピーダンス法により推定する方法などが使われています。 肥満者がインスリン非依存型糖尿病になりやすいことは、以前からよく知られていますが、1990年の循環器疾患基礎調査では、糖尿病の疑いがある者で男性の肥満者では7.8%、非肥満者では4.9%であり、女性の肥満者は9.0%、非肥満者3.3%とそれぞれ有意に高く、肥満と糖尿病との間ではたしかに強い関連が認められています。 また、糖尿病以外にも脂質代謝異常や高血圧とも関連があることは数々の調査で判明しています。このように肥満と循環器疾患の危険因子との関係は非常に深いものがあります。 一方、虚血性心疾患や脳卒中の相対危険度では、男性のBMI28.0以上のグループでとりわけ高くなっていました。 また、ある報告によれば、悪性新生物の死亡率は肥満度と負の相関を、循環器疾患の死亡率は肥満度と正の相関を示すといっています。 肥満の種類には単純性といわれるものと、病的な症候を伴うものがありますが日常よくみられるのは前者で、その成因は遺伝的な素因と生活環境とになっています。 食習慣や身体活動量の低下などの関与が大きいのですが、結局は摂取エネルギーが消費エネルギーを上まわり、過剰分が体脂肪として蓄積されるのです。 肥満の治療としては摂取エネルギーを減らすことが第一ですが、極端な食制限は永続きしない上、精神的にも悪影響を与え、拒食症や過食症を招くため注意しなければなりません。特に若い女性では、自分は肥っていると思っている人のうち半数以上が標準体重以下との調査もあります。不必要なダイエットは栄養のバランスをくずし、将来の骨粗しょう症のもとになることなども考えられます。食べすぎないように気をつけることは必要ですが、併せて消費エネルギーを増やすことつまり、運動を継続的に行うことが大切です。特に長続きするするようにするためには無理のない範囲で行うことやできれば日常生活活動の中に運動を取り入れるようにするのが最も効果的と思われます。
2005.09.25
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洋医学ブームの中で、鍼灸院に通う人が増えている。腰痛や坐骨神経痛が治ったという人も周囲には少なくないだろう。おかかえの鍼灸師にかかるスポーツ選手も珍しくなくなった。腰痛、五十肩だけでなく、健康増進にも効果があるらしい。なぜ効くのか。メカニズムを解く科学的研究が待たれる。 鍼灸とは?細い金属のはりとひとつまみのもぐさ。鍼灸とは、こんな簡単な道具で病気に対処する治療法だ。遠い昔、中国から渡来したこの伝統医療が効くとしたら、なぜなのか。科学的研究はそれをどこまで明らかにしたのだろう。そして鍼灸師にかかる場合、どんな注意が必要なのか。「本当にびっくり。あんなにはりが効くなんて思ってもみなかったものだから」と語るのは東京都町田市の童話作家、山崎まちこさん。山崎さんは、内臓が弱い関係からか、何年かに一度訪れる激しい腰痛に悩んでいた。3年前のある朝、ベッドから起きあがろうとして腰をひねったとたん、激痛が走った。「また、やっちゃた」。いつもの要領で、からだを安静にして一日様子を見ようとそのまま横たわっていたが、ふと夫の友人が最近、近くに鍼灸院を開業したのを思い出した。夫に電話してもらうと、タ方になって鍼灸師のKさんがやってきた。鍼灸では腰痛の場合、足首の外側の崑崙や内くるぶしの中封、ひざのまうしろの委中などという名前のツボ(経穴)をよく使う。そこにはりをしたり、灸をすえる。特に急性症状の場合は、痛みがある腰部よりも、遠く離れた脚の部位を治療点にする。それが面白く、かつ不思議でもある。Kさんは型通り、山崎さんの崑崙と委中にそれぞれ一分ほど、刺すというより軽く触れるようにはりをした。「ちょっと、動いてみてください」という彼の声にうながされ、こわごわからだを起こした山崎さんは、信じられない思いだった。痛みはうそのように消え、何事もなかったように歩ける。「実はぼくの方が驚きだったんです」とKさんはふり返る。「当時はまだ、経験不足で教科書通りの治療をしただけ。それがあんなに劇的な効果をもたらすなんて。朝から休んでいて、筋肉に負担をかけなかったという好条件のせいでしょうね。治療院に来るのは、慢性の患者さんが多いからでしょうか、同じ腰痛でも、山崎さんほど即座に効くことは少ないんです」最近は、テレビや雑誌の少々過熱気味の紹介もあって、治療院には奇跡的な治療効果を期待する患者さんも現れるという。「それ自体が、銭灸を何か神秘的な特別の医療と見ていると思うんですね」と語るのは東京都杉並区の鍼灸師、Aさん。「近代の西洋医学が定着する以前は、中国でも日本でも銭灸は漢方薬と共に、あらゆる病気の治療と予防に活躍していました。ごく普通の医療だったんです」国連のWHO(世界保健機関)は、1979年、はり治療の適応症として、感冒、気管支喘息、胃炎、十二指腸潰瘍、頚腕症候群、座骨神経痛など41の疾患名を公式に発表している。日本の厚生省も、頚腕症候群やリウマチ、神経痛、五十肩など六疾患については、医師の同意書などの条件付きで健保診療も認めている。けれど、Aさんの治療院を訪れる患者さんが抱える病気は、これらの疾患に限らない。病む人間そのものを包み込む「不妊症や子宮内膜症の人が来ます。精神を病む人も、がんを抱えている人もいます。一人の治療家がこんなにいろんな患者さんのお世話ができるのは、漢方や鍼灸という東洋医学の特色でしょう。医療理論のふろしきが大きくて、個別の病気を超えて病む人間そのものを包み込めるからです」いろんな息者さんを包み込める大きな枠組み。それを「気の理論」と言えば、分かりやすいかもしれない。銭灸の考え方では、人間の体には生命エネルギー(気)が流れる12本のルートがあり、それを経絡と名付けている。この経絡を流れる気が何かの理由で滞ると、からだの不調を訴えるようになる。だから、圧痛やしこり、へこんだ個所など経絡上の反応が現れている部分「ツボ」を目標に、はりや灸をする。そして、気の流れを良くしてやると、症状や病気は次第に治ると考える。「ですから、鍼灸は筋肉などの運動器や神経系の疾患だけが得意なのではありません。からだ全体の調子を整え、心の状態も改善できるので、応用範囲は広いのです」疲労回復や健康増進の効果については、昔から認識されてきた。江戸時代、俳人の松尾芭焦が、ひざの外側の三里のツボに灸をして「奥の細道」に旅立ったのは有名だ。三里は胃腸を丈夫にし、疲労やストレスを解消する「健康増進,無病長寿のツボ」として、今でもよく用いられる。また「女性の三里」と称されてきたのが、足の内くるぶしの上の三陰交。月経の乱れ、生理痛、足腰の冷え、更年期の症候群から妊婦の安産のためまで広く使われている。1972年に中国のはり麻酔が世界に報道されて以来、鍼灸の鎮痛効果はよく知られている。国立がんセンター麻酔科ではこの10年間、末期がんの患者さんの痛み緩和に鍼灸も役立てている。このようなさまざまな鍼灸治療の効果について、従来は「施術した・治った・効いた」という素朴な経験的評価しかできていなかった。しかし、現在では、京都府の明治鍼灸大学、大阪府の関西鍼灸短大、つくば市の筑波技術短大など鍼灸専門の大学や研究機関も生まれ、治療効果を科学的に推定できる材料が増えてきた。治療効果の科学的研究「まず、筋肉への鍼灸刺激により、こりや緊張、腫脹が軽減し、血液循環が改善されます」と筑波技術短大の形井秀一助教授は説明する。「その結果、局所の炎症が収まり、痛みも軽減します。また、はり刺激がβエンドルフィンなど鎮痛作用がある脳内モルヒネ様物質を増量させるという報告もあります。神経系を介して脳の視床下部や下垂体に伝達された刺激が、自律神経系やホルモン系を賦活し、生体のバランス調節機能や免疫機能を高めるとも考えられているんです」数ある科学的研究の中で、同短大の西條一止教授の研究はとりわけ興味深い。それは私たちの人体を隅々まで支配する自律神経のメカニズムに着目し、現代人特有の病気を治癒させるには、どんな刺激を加えればいいかという問題意識に基づいている。「忙しく、ストレスに満ちた生活をしている現代人は、疲れやすく、いったん疲れるとなかなか回復しません。いつも体調が悪い。そして、いらいらし、腰痛や肩こりに悩まされている。これは、自律神経のうち、副交感神経が過剰に抑制され、交感神経が過剰に緊張している状態です」この状態を改善するには、副交感神経機能を亢進させ、交感神経機能を抑制すればいいということになる。西條教授は、長年の試行錯誤の末、患者さんが座った姿勢で、息を吐くときに、皮膚に浅くはりを刺すことによって、それが可能になることを発見した。「この刺法で治療した学生の反応を調べると、刺した直後に腰部の可動性が高まり、足の温度も上がることが分かりました。交感神経の過緊張が緩むことで、筋の緊張が解け、足の血管が拡張したことを示しています」西條教授のこの研究成果は、鍼灸はなぜ効くのかという、複雑な問いの回答に私たちが一歩近づいたことを示している。鍼灸はもう古めかしい迷信でもなければ、謎めいた神秘でもなくなっているのだ。 鍼灸師の選ぴ方全国で活動している鍼灸師は約3万人と見られている。数は多くても、いざ頼れる人を探し出すとなると、そうたやすくない。Aさんが、あなたに合った信頼できる鍼灸師選びのポイントをあげてくれた。◎よく訴えを聞いてくれる人。◎病気の状態や今後の治療方針について分かりやすく説明してくれる人。◎現代医学の知識もあり、必要なら現代医学的検査も勧めてくれる人。◎自分でできるお灸の仕方や病気と付き合う知恵を教えてくれる人。「鍼灸院は鍼灸師と患者さんの人間的な出会いの場です。お互いが信頼できる心地いい関係をつくれるかどうかが治療に大きく影響する。それに、お灸などは患者さんがある程度は自分でもできるんです。それを教えてくれる人。私ならそんな人を選びます」また例えば、頭痛といっても、さまざまな原因がある。かぜ、肩こり、眼精疲労、高血圧、脳腫瘍などなど。これらの原因疾患を判定し、重大な病気ではないことを確認した上で治療を施すのも、鍼灸師の役割だ。形井助教授は、「その点は、鍼灸専門学校でも重点的に教育されています」と言う。「患者さんががんを抱えていたとします。そうすると痛みを治療しても、その時は良くても、痛みがじきにぶり返しやすいことも皆が認識するようになってきました。また治療を2~4週間続けながらその間の経過によってその後の方針を決めることも行うようになっています」このような情報を念頭に、鍼灸師選びをするのも、東洋医学ブームの時代の賢い患者学入門といえるだろう
2005.09.24
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からだを動かすことは健康づくりに大きな役割を持っている。今回は、健康日本21の中の課題の一つである、「身体活動・運動」分野の基本的な考え方を紹介する 。身体活動と健康 からだをよく動かす人や、運動をよく行っている人は、死亡率、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗しょう症、結腸がんなどに罹ったり死亡が少ないなどの関連が認められており、心の健康とも関連していることが分かっている。高齢者でも、歩行などの日常生活における活動が、寝たきりの減少や寿命の延長に効果のあることが示されている。このような効果は、「身体活動の強さ」と「行った時間」を掛け合わせた「身体活動量」が多いほど有効であるが、長期的にみると十分程度の歩行を1日に数回行う程度でも一定の効果が得られることが分かっている。したがって、スポーツや体操など特別に行う活動だけでなく、通勤・通学、家事、勤労など日常生活のからだの動き全体が重視されている。 身体活動量を正確に測定することが難しいため不明な点が多いものの、食料の消費動向や厚生省が実施している国民栄養調査などから、平均的な食事からのエネルギー摂取量がゆるやかに減少しつつあることが分かっており、一方で男性を中心に肥満者が増加していることをみると、身体活動量が平均的に減少傾向にある(つまり運動不足状態)のではないかと考えられている。 一方、運動を実践する人の数は近年増え続けており、フィットネスクラブの会員数も増加傾向にある。関心は高まりつつあるといえる。 身体活動・運動は、健康を考えるきっかけにもなっており、身体活動を活発にすることは健康づくり全体を進めることにつながると予想される。 健康日本21では、国民の身体活動や運動についての意識や態度が向上し、身体活動や運動の実施につながることを目指している。成人における身体活動●からだを動かす心掛け 身体活動量を増やすためには、状況に応じて、通勤・買い物で歩くこと、階段を上がること、運動スポーツを行うことなど身体を動かすことを日常生活に取り入れることが有効である。平成8年保健福祉動向調査によると「日ごろから日常生活の中で、健康の維持・増進のために意識的にからだを動かすなどの運動をしている人」が、男性52.6%、女性52.8%となっており、これは、運動の実践に加えて、できるだけ参加するといった意識を含んでいると考えられる。からだを動かすことの実践は、その前段階として「できるだけ心掛ける」という意識の変化があると考えられる。そのため、このような意識をつくっていくことが重要である。●まず歩行から からだを動かすことのうち、最も身近に取り組むことができるのは、歩行である。これは、ウォーキングのような特別に時間をとって行う活動の他、通勤や買い物などの活動も含まれる。また、わが国では、歩数計を利用している人が20歳以上の16.7%に上り、身近なものとなっていることを考えると、「1日当たり1万歩」などの目標を定めて、取り組むことも有効な方法である。わが国では、1日当たり平均歩数は、男性8,202歩、女性7,282歩(平成10年国民栄養調査〔厚生省〕)となっている。●運動習慣を身につける 運動・スポーツは余暇の時間に行う活動であり、爽快感や楽しさを求めて行われる。同時に、疾病を予防し、活動的な生活を送る基礎となる体力を増加させるものでもあり、積極的な行動として勧められる。「週2回以上、1回30分以上の運動を、1年以上継続している人」という定義で調べると、男性28.6%、女性24.6%が運動に取り組んでいる(平成10年国民栄養調査〔厚生省〕)。男性では30歳代が20.6%、女性では20歳代が16.7%と最も低く、60歳代までは年齢が上昇するに従って取り組んでいる人が増える傾向にある。運動の強さとしては、中程度、自覚的には「息が少し弾む程度」が勧められる。それまで運動経験のない人が急に運動を始めようとすると心臓事故や、整形外科的障害を起こす可能性があるので、それぞれが自分の健康状態をよく把握した上で取り組むことが重要である。 また、女性は、運動の実践や一日当たりの歩数などすべての面で男性よりも少ない傾向にある。より一層働きかける必要がある課題となっている。児童・生徒における課題 児童・生徒における身体活動は心身の健全な発育のために重要である。特に、健康のためのよい習慣を定着させるといった面からも考慮が必要である。児童・生徒では、運動をする者と、しない者が二極分化していることや、体力・運動能力調査によって低下傾向があることが示されているなどの課題がある。身体活動量が低下する原因としては、外遊びの減少やテレビ、テレビゲームなど非活動的に過ごす時間の増加が指摘されている。テレビ(テレビゲームを含む)の視聴時間が1日3時間以上の児童・生徒の割合は、10歳男子38.7%、女子38.6%、16歳男子25.2%、女子24.2%に上っている。テレビの視聴時間が長いほど、体力の低い傾向が示されている。米国の小学生を対象にテレビ時間を制限する教育を行った調査では、テレビ視聴時間の減少と、肥満の予防・改善効果があったことが示されている。日本でも、非活動的な時間の減少を意識することが重要となっているといえる。それぞれの児童・生徒が「外遊びや運動・スポーツを行う時間を増やす」ことや、「テレビを見たり、テレビゲームをするなどの非活動的時間を制限する」といったことに取り組むことが有効であると考えられる。 高齢者の課題 現役の職業生活を退いた高齢者は、社会的役割の減少をきっかけとして不活発な生活におちいる危険が指摘されている。このような状況は、身体的だけでなく、精神的、社会的な生活機能が低下する大きな要因となる。高齢者が身体的活動量を確保する身近な方法としては、まず、日常生活のあらゆる機会を通じて外出することや、ボランティア、サークルなどの地域活動を積極的に実施することである。60歳以上で「自分から積極的に外出する方である」とする人は男性59.8%、女性59.4%(平成11年高齢者の日常生活に関する意識調査〔総務庁〕)であり、さらに増加することが望まれる。 これらの活動に加え、積極的な健康づくり活動として、体操、ウオーキング、軽スポーツなどの運動を定期的に実施することが有効と考えられる。高齢者の身体的な自立能力は下肢機能から低下するので、歩行、下肢・体幹部のストレッチング、筋力トレーニングも有効である。 一人ひとりの方には、年齢や能力に応じて、「仕事、地域活動やボランティア活動、知的・文化的学習活動」など、「ストレッチや体操を1日10分程度、散歩やウオーキングを1日20分程度、下肢及び体幹部の筋力トレーニングを1週間に2回程度」などの中から選択して取り組むことがお勧めできる。 活動的な日常生活を送るためには、すべての世代が気軽に取り組めるように、運動施設のあり方、高齢者の外出が容易になるまちづくり、歩道、自転車道、階段などの環境づくり、職場における取り組みなど多くの環境としてとらえることが重要になる。関連する皆様にもご配慮をお願いしたい。 これまで述べたとおり、身体活動はからだを動かすことは、健康を考えるきっかけとして大きな意味を持っており、また、さまざまな程度で実施できる。わずかずつであっても、取り組んでいただくことをお勧めする。
2005.09.20
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みんな風邪をひく 風邪をひかない、という人は稀である。古今東西、人類は必ずといっていいほど、1年に何度かは風邪をひいてきたし、今でもひいている。一般的症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、頭痛、発熱、咳、寒気、のどの痛みと腫れなどで、これらは風邪症候群と呼ばれている。原因はウイルスや細菌類の感染、寒冷、ほこりなどの刺激、アレルギーが挙げられる。風邪の症状の原因となるウイルスは100種類以上である。インフルエンザはA型とB型(C型もあるが日本では発症例がほとんどない)。どちらも似たような症状となるが、風邪の場合は熱が37度台、インフルエンザは38度を超えて40度近くまで出る。症状が重くなると吐き気や腹痛を伴い、下痢をする場合もある。昔は季節の変り目や冬の病気だったが、現在は冷房が普及し、夏でも風邪をひく人が増えている。そのため風邪薬は季節商品から年間商品へと変った。風邪は万病のもと なぜ風邪をひくのか。風邪のウイルスはそれほど強くはない。体力、気力、抵抗力、つまり免疫機能が正常ならば風邪にかかることはない。ところが仕事や遊びで疲労がたまっていたり、不規則な生活で栄養が十分でなかったり、睡眠不足だったりすると、風邪をひいてしまう。「風邪は万病のもと」という言葉がある。風邪くらいの弱いウイルスにとりつかれるような体力なら、他の強い病原菌にやられる可能性が大である。そこで風邪を軽視せず、大事をとって安静に、という戒め言葉となっている。風邪をこじらせると、肺炎など命にかかわる場合や髄膜炎になって入院生活を送らなければならないこともある。風邪をひいたら 風邪をひいたらまず安静、というのは昔も今も変らない。風邪のウイルスをやっつける薬がないという状態も変っていない。細菌感染が疑われる危険な場合には、抗生物質という強い味方ができている。風邪の諸症状への対症療法がとられているわけだが、総合感冒薬とか咳止め、点鼻薬などが使われるようになるかなり以前から、いろいろな治療法が言い伝えられてきた。今でも実行されている方法がいくつもある。古くから伝わる治療法 葱(ねぎ)をきざんで手拭いにくるみ、首に巻く。芥子(からし)の粉を湯で溶いて、胸に湿布する。卵酒を飲む。炎症を和らげる、熱をさます、発汗作用を促す、といずれも理にかなった風邪の治療法である。卵酒の作り方は、小さな鍋に卵黄1個と砂糖大さじ1杯を入れて、よく混ぜる。そこへお酒(焼酎を入れる地方もある)をコップ一杯に入れて弱火にかける。箸でよくかき混ぜながら加熱する。少し経ってから火を止め、熱いうちに飲む。からだを温め、血行をよくし、発汗を促進するので、飲んでよく眠れば風邪は全快ということになる。咳を止めるには 大根をすりおろして、その汁を飲むのもよい。消化を助けるので、風邪で弱った胃を守るし、おろし汁に蜂蜜を少量混ぜて飲むと、喉にうるおいを与え、咳を伴う風邪に効果がある。咳止めには、オオバコ(全草)を煎じて飲む、柿の実を食べる、カリンを砂糖漬けにしておいて食べる、キンカンの果皮を乾燥させて煎じて飲む、熊の舌を粉末にして飲む、葱の白い部分を火で焙り揉んで手拭いに包んで湿布する、などの療法がある。人参をすりおろして布にくるみ、首に巻いて咳を止める、という所もある。からだを温めるには 風邪や冷え症の時、血行をよくし、からだを温める方法として、ニンニクを豚肉と一緒に食べる、ニンニク酒を飲むというものがある。卵酒の向こうを張るものとしては、葱と鰹節と味噌の取り合わせがある。葱の白い部分を1本細かく刻み、鰹節を削り、適量の味噌を一緒にどんぶりに入れてかき混ぜる。そこへ熱湯を半分ほど注いで飲むのである。また、蜜柑を丸ごと炭火で、皮が黒く焦げるまでゆっくりと焼き、皮をむいて熱いうちに食べる方法もある。その他の治療法 西瓜(すいか)には利尿作用がある。果汁をとろ火で煮つめ、飴状にしたものを西瓜糖といい、熱さましに使う。梨の果汁を煮つめてシロップ状にしたものは咳止めとなる。 熱を下げるには、大根や蕪(かぶ)の葉を額にはちまき状にあて、手拭いでしばる。葉が熱を吸収してぐったりしたら、新しい葉と取り替える。 鎮咳・去痰には紫蘇(しそ)が効く。葉あるいは種子を5~10グラム用意し、水1合半で半量にまで煎じて、服用する。
2005.09.18
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日本人の死亡原因のトップを占めるがん。昭和56年に死因の第1位に踊り出て以来、それまでトップだった脳血管疾患が減少傾向にあるのと対照的に増加を続けている。「対がん10カ年戦略」など国の本格的な取り組みもあって、治療成績も次第に向上しているものの、4人に1人以上ががんで死亡しているのも事実だ。対がん10カ年戦略が終わったのを受けて、今年度から「がん克服新10カ年戦略」がスタートすることとなった。がんの治療法や診断法、そして予防の研究はどこまで進んでいるのかを探ってみた。▽増加し続ける死亡者数 厚生省の人口動態統計を見ると、がんによる死亡者数が増えているのがよく分かる。平成4年の死因別死亡者数は、がんが23万1,700人余り(人口10万人当たりの死亡率187.7)で最も多く、続いて心臓病が約17万5,300人(同142.0)、脳血管疾患が約11万7,900人(同95.5)の順番になっている。平成4年1年間の全死亡者数はざっと85万5,000人だったので、27%ががんで亡くなった勘定だ。がんによる死亡者の割合は、昭和10年にはわずか4.3%、30年には11.2%、40年には15.2%だったことを考えると、いかにがんによる死亡者数が増えているかが分かる。 臓器別の死亡者数で見てみよう。平成4年のデータだと、男性では胃がんの3万485人が最も多く、続いて肺がんの29,208人、肝臓がんの19,555人、大腸がんの14,867人の順番だ。一方、女性では胃がんが17,526人と一番多く、次いで大腸がんの12,408人、肺がんの10,938人と続いている。 このうち、男性では肺がん、肝臓がん、大腸がんが増加しているのに対し、胃がんは減少している。厚生省統計情報部によると、平成5年1~8月には、肺がんの死亡者数が胃がんの死亡者数を上回り、年間を通じても、肺がんが上回る可能性が高くなっている。女性ではやはり大腸がん、肺がんが増えているのに対して、胃がんや子宮がんは減少か、横ばい傾向が続いている。 増加しているがんについて、その理由を探ってみよう。増加の著しい肺がんのケースは、喫煙が挙げられる。「喫煙開始から肺がんになるまで、22~23年かかるので、昭和50年代に最高に達した喫煙率の影響が、今後も当分残る」と指摘する研究者もいる。 大腸がんの増加は脂肪摂取量の増加や運動不足、さらには食物繊維の摂取量の不足-などが理由だ。一方、胃がんの減少は、発症に関係するとされる食塩の摂取量が減ったうえ、集団検診が進んで早期発見が可能となり、治療成績が向上したことが大きく寄与しているといわれている。 ▽治療成績アップに欠かせない早期発見 がんの治療成績を上げるためには、早期発見がなによりも欠かせない。早期発見できるようになったがんは、胃がんだけでなく、子宮頸がん、乳がん、大腸がんなどがある。平成4年から大腸がんが集団検診の対象になり、これで老人保健法対象のがん検診は、胃がんと子宮がん、乳がん、肺がんの計5つ。これらのがんのほとんどは、早期に発見できれば100%近く治る。治療の難しいとされる肺がんでさえ、早期に発見できれば90%以上治る(加藤治文東京医大教授)という。 早期発見に必要不可欠なのが画像診断。目覚ましい進歩を遂げ、この10年の間に超音波診断が臨床の現場で日常的に使われるようになり、メーカーの推計では現在、エックス線CT(断層診断装置)が約1万台、MRI(核磁気共鳴診断装置)はざっと1,700台に達し、がんなどの画像診断に威力を発揮している。 この2、3年の間に急に普及した装置が「らせん走査型CT」である。従来のCTは患者のからだを一定の間隔で不連続に断層撮影していたのに対し、らせん走査型CTは、寝台の上の患者を一定のスピードで移動させ、その間らせん状に連続してCT撮影する。そうすると連続した画像が得られるので、間隔の間に入って、見逃す危険性の大きかった小さながんも見つかる。このCTを使って肺がんの診断を続けている国立がんセンター東病院の大松広伸医師(呼吸内科)は「5ミリのがんも見逃さない」と強調する。しかもコンピューター処理すれば、立体画像もお手のもので、がんの診断に最適と注目を集めている。 治療法はどうか。「治し方が問われるようになってきている。つまり、せっかく早期に発見しながら胃の3分の2を切除してしまっては、からだへの影響が大き過ぎる」と国立がんセンターの垣添忠生中央病院長。 それから診断の方法が非常に精密になって、治療計画が厳密に立てられるようになってきた。また、腫瘍マーカーの検査が使えるようになって、マーカー検査と画像診断で、詳しく患者の状態が把握できるようになった。「化学療法、抗がん剤治療と手術をうまく組み合わせて、進行したがんが治せるようになってきた。早期がんに関しては、むしろ治るのが当然で、進行したがんでも抗がん剤が効くがんの場合には、昔は2、3カ月で亡くなるような、それほど進んだ病気の患者も、100%と言えないが、少なくとも治せるがんが大分出てきている」▽期待集める遺伝子診断 診断、治療で見逃せないのは、いくつかの分野の技術を結集して成果を上げていく「集学的な手法」が定着しつつあることだろう。診断に関しては、例えば内視鏡に超音波診断装置を組み合わせて、内視鏡で内側の気管の中を観察した後、スイッチ操作一つで、今度は気管の壁の中にがんがどれぐらい浸潤しているか-など診断できる装置も登場している。 気管だけでなく胃や十二指腸といった上部消化器官や、直腸や結腸など下部消化器官に対しても、内視鏡検査と超音波検査がワンタッチで両方いっぺんにやれる。内側から調べるので、診断の精度がぐんと高まる。 治療の方も、抗がん剤と手術、温熱療法、放射線治療、あるいは化学療法と手術、放射線治療の組み合わせなど治療成績を上げるためさまざまな試みが続けられている。 一方、早期に診断することが難しいがんがある。いわゆる難治がんである。肺がんや肝臓がん、膵臓がん、胆のう・胆道がんなどがそれに当たる。これらのがんが難治がんといわれている理由は、もともとがんの性質として早い時期から浸潤転移が相当あるうえ、早期診断が非常に難しかったことによる。その筆頭が膵臓がんだろう。からだの深い場所にあって症状が出ない。CTとかMRIとか超音波を使ってもなかなか診断ができないケースも多い。 なんとか早期診断ができないか、そこで期待を集めているのが遺伝子診断だ。 がんというのは遺伝子の異常で起こる病気で、遺伝子が何回もの変化で、やがて発現する慢性病である。これを利用しようというのが遺伝子診断だ。 現に幾つかのものは使われており、膵臓がんの場合は、「k-ras」というがん遺伝子に90%以上突然変異が起きているという具合に、特異性が高い。そこで、膵液を取り、膵液の中に少し混じっている細胞から遺伝子をPCR法という特殊な方法で増幅させて、k-rasに突然変異があるかどうかを調べるのだ。それで、早期の膵臓がんを見つけたという報告もある。 乳がんでは「c-erb-2」というがん遺伝子のたんぱくを染めて、予後のよい乳がんと予後の悪い乳がんを選別して、予後のよいがんだったら手術だけ、予後の悪いがんだったら、その後に化学療法など補助療法を加えるということが既に行われている。「これからがんごとに遺伝子診断がどんどん実用化されていきそう」。垣添病院長は推測する。▽お茶の成分に熱いまなざし がんが予防できたら…。平成5年8月までがんセンター研究所のがん予防研究部長を勤めた藤木博太・埼玉県立がんセンター副所長が熱いまなざしを注いでいるのが、緑茶に含まれるエピキロカテキンガーレート(EGCG)という物質。EGCGを0.005五%を含む飲料水をマウスに与えたところ、がんの発生率が3分の1以下になったというのだ。「EGCGはお茶に含まれるタンニンの成分で、お茶1杯に100ミリグラムが含まれており、マウスの飲んだ量は人間ではお茶10杯に相当する」 こう解説する藤木副所長のグループが、EGCGの研究に取り組んで10年近くなる。この間にさまざまなグループの研究で、皮膚がんや胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がんなどの発がんが抑制される事実が明らかにされている。EGCGには、発がん物質から細胞を守る作用があると推定されており、同じようにたばこを喫っていても日本に肺がんが外国より少ないのは、お茶を飲んでいるためではないかというのが藤木副所長の推理である。性格と病気の間には関係があるので、がんも予防できるようになるかもしれない、と研究を進めているのは東北大医療技術短大部の細川徹助教授のグループ。せかせか、せっかち、頑張り屋のA型人間は心筋梗塞になりやすいとされているが、がんになりやすいC型人間という分類もある。C型人間は、感情の抑制が利いて、我慢強く、物事を合理的に考える傾向を持つ。「こうした人は協調性があり、自己主張しないので他人からはよい人に見える。半面ストレスを受けると、発散できないでうつ状態になりがちで、ストレス管理のうまくない人でもある。それが生体防御反応や免疫力を弱めている可能性がある」と細川助教授。 宮城県対がん協会などが協力して実施した約5万人にも上る大規模アンケート調査を分析したところ、C型人間と判定されたのは3,033人で、かつて胃がんや乳がんなどと診断されたことのある人が、C型人間では1.9%含まれていたのに対し、そうでないグループは1.1%と、C型人間の方ががんと判定される割合が高かったという。 この結果から直ちにC型人間にがんが多いと断定できないが、自分がC型人間と分かれば、心構えや生活習慣を変えてがんを予防できるかもしれない。グループは追跡調査をして調べることにしている。▽がん克服新10カ年戦略スタート 対がん10カ年戦略がスタートしたのが昭和58年。この10年で◎がんは複数の遺伝子の変異が積み重なって起こる慢性病◎がん遺伝子やがん抑制遺伝子など、がんにかかわる多くの遺伝子が見つかった◎環境中の発がん物質の発見や、がんに関与するウイルスの存在が明らかになった-などの成果が上がっている。 今年度からスタートする「がん克服新10カ年戦略」では、従来の基礎研究の充実と併せて、その成果の臨床への応用を目指すとともに、国立がんセンターを中核としたがん診療情報ネットワークを整備して、がんの研究や診療に関する情報交換を行っていくことになっている。それにかける研究者の期待は大きい。
2005.09.17
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分かっちゃいるけどやめられない――。ほとんどの喫煙者がこの心境だろう。 一方で喫煙は周囲の人にも深刻な健康被害を及ぼす。厚生省は今年、たばこの害の初の全国調査に乗り出し、自治体や企業の禁煙・分煙対策も本格的に動き出した。 やめようかどうしようかと迷っているあなたに、上手な禁煙のこつを教えましょう。 ▼ニコチンに依存性 欧米に比べて大幅に遅れていた日本のたばこ対策も、ここ数年で大きく動き出した。 厚生省が今年3万人を対象に実施する喫煙被害調査は、成人喫煙者だけでなく、受動喫煙の影響が最も心配な妊産婦や乳幼児から、小、中、高校生まで喫煙率や被害の実態を総合的に明らかにしようという狙いだ。 また1997年版の厚生白書は、初めて「喫煙と健康」の項目を設け、たばこはニコチン依存性があること、たばこの煙に40種類以上の発がん物質、発がん促進物質が含まれていることなどを明記した。 ニコチンが麻薬やアルコールと同様に依存性の薬物であることが、禁煙が難しい理由だ。医学的には、本人にとって「無意味、不合理」と分かっていても、そうしなければ気がすまない、という状態が「依存症」。喫煙者の七割はたばこをやめたいと思っている、というデータは、まさにこの状態だ。 特に働き盛りの世代は、ストレスの多さに加え、パソコン操作などでデスクに縛り付けられる時間が長く、最も禁煙が難しい環境に置かれている。最近、こうした中年男性にも大きな成果を挙げている禁煙法を報告しよう。▼禁煙9つのこつ 「大丈夫、たばこはだれでもやめられます。意志の強弱は無関係」と、奈良県・大和高田市立病院内科医長の高橋裕子先生の言葉は力強い。 94年6月に国内初の「禁煙外来」を設立し、約600人の禁煙を指導してきた。平均年齢45歳で1年以上の禁煙成功率は70%。米国などの禁煙プログラムの成功率は40%程度とされ、大きく上回る。 高橋先生が実際に禁煙に成功したヘビースモーカーとともにまとめた、吸いたくなったときに乗り切る秘けつが次の9カ条だ。◎冷たい水か熱いお茶を少しずつ飲む 冷やしたコップに氷水、お茶は沸騰したお湯で入れたてを。冷たいほど、熱いほど効果的だ。 ◎深呼吸をする ラジオ体操の要領で、腕を大きく動かして。 からだを絶えず動かす じっと我慢は最悪。散歩、入浴、おしゃべりなどなど。囲碁将棋など考え込むゲームはしばらく避ける。 ◎場所を変える 吸いたくなったらとりあえず場所を変える。食事を終えたらすぐ席を立つ。 ◎歯を磨く 歯磨剤は使わはなくてもOK。ていねいにブラッシングすれば、歯周病予防と一石二鳥。 ◎野菜を食べる たばこをやめると胃腸が元気になってお腹がすく。繊維の多い煮野菜は空腹感を抑える。 ◎お酒の席にご用心 アルコールは禁煙しようという気持ちを弱める。最初の2週間は外で飲まない。断れない宴席では吸わない人の隣に座り、早めに帰宅を。 ◎煙の多い場所へ行かない 喫煙者の隣に座らない。煙の多いパチンコ店などへは2週間は行かない。 ◎気楽な気持ちで禁煙している時間を延ばしていく 「一生吸わない」などと肩肘を張らず、これまでやめていた時間を振り返って「もう1分だけたばこを吸うのを待ってみよう」と自分に言い聞かせる。どこまで記録を延ばせるか楽しむ気持ちで。 ▼ 周囲のサポートが励みに 禁煙が成功するかどうかは、家族や職場のサポートが大きなポイントだ。 まず、禁煙を強制するのはよくない。特に「あなたのからだを心配して言ってるのよ」は禁句。「大きなお世話だ」と逆効果になる。 高橋先生は「ほめる」「隠す」「責めないでやさしく」がポイントという。 禁煙しなくても、たばこを減らす努力をしていれば「ありがとう」と感謝し、ほめる。禁煙すればもちろん「よく続いてるね」とほめる。 灰皿やライター、マッチなどは見えないところに隠す。 重要なのが「やさしく」だ。禁煙を始めて特に最初の2週間はついいらいらして周囲に当たり散らすことがたびたび。そのときにやさしく接することが成功につながる。 周囲が気をつかってほしいのは、ついたばこを吸ってしまったときだ。「だめね」「意志が弱いんだから」と、傷口に塩を塗り込むような言葉で責めない。日頃えらそうにしている人はよけいに傷つきやすい。「よくがんばった」とほめる。そして大事なのが「もう1回練習しましょう」と、できるだけ早く、次の機会へつなぐ。禁煙外来でも1回でいきなり禁煙できるのは10人に一人、ほとんどは小さな失敗を繰り返しながら、だんだん禁煙に慣れていくという。▼ たばこはなぜいけないのか 実際の禁煙外来では、まず本人の生活習慣をじっくり聴く。各人に合った方法をアドバイスし、医師の指導によってニコチンガムを使う場合もある。 96年の国の保健福祉動向調査では、男性の喫煙率が55.1%と八〇年の前回調査より12.0ポイント減り、女性の喫煙率は13.3%で逆に1.7ポイント上昇、最近の健康志向を反映して全体の喫煙率は下がりつつある。 では、実際のたばこの害はどの程度なのか。世界保健機関(WHO)の最新の試算では、95年に日本でたばこが原因とされる死亡数は9万5千人(男性7万6千人、女性1万9千人)、世界では312万5千人に上る。 たばこは慢性気管支炎などの呼吸器系疾患、虚血性心疾患や脳血栓などの循環器系疾患などの原因となり、がんの原因の30%は喫煙とされる。 男性ががんで死亡する割合は非喫煙者を1とした場合、喉頭がんで32.5、肺がんは4.45(公衆衛生審議会「喫煙と健康――喫煙と健康問題に関する報告書」)。故・平山雄博士の調査では喉頭がんが90倍以上、肺がんで7倍以上というデータもある。 虚血性心疾患による死亡は非喫煙者1に対し喫煙者1.76とされるが、滋賀医大の上島弘嗣教授は昨年、一日21本以上の喫煙者は心臓病の死亡率が非喫煙者の7.4倍、脳卒中では4.2倍とする調査結果を発表している。 禁煙すれば、こうしたリスクは下がっていく。高橋先生は「最も影響が長く残る肺がんでも、やめて1年で4.45がほぼ2に、5年以上は1.61まで下がります」という。 ▼受動喫煙防止に分煙を 受動喫煙の被害はより複雑だ。火のついたたばこから立ちのぼる副流煙は有害物質が2~4倍以上多く含まれる。副流煙と喫煙者が吐き出す煙が混じり合っている状態を「環境中たばこ煙」と呼び、これを吸わされるのが受動喫煙だ。 故・平山博士ら複数の研究で、夫が喫煙者の場合、たばこを吸わない妻の肺がん死亡率は夫婦とも吸わない場合より明らかに高く、危険度は1.3~1.5とされる。 米国では96年に疾病対策センターが非喫煙者の尿の分析から、88%が受動喫煙を強いられている発表。昨年にはミネソタ大がんセンターの研究チームが、喫煙区域で働く人の尿からたばこの発がん物質の代謝物を検出した。日本でも静岡県立子ども病院が96年、家族の喫煙で幼児の血液中の鉛濃度が高まることを突き止めている。 受動喫煙の被害を避けるため、米国では職場の禁煙・分煙はもう常識。ところが、日本では92年の労働省の調査で、職場の全面禁煙実施はわずか5.7%しかなかった。 95年に公衆衛生審議会が「たばこ行動計画」を意見具申し、96年に労働省が受動喫煙防止のための分煙対策推進を趣旨とした「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を策定、ようやく各企業で分煙、禁煙への取り組みが本格化したところだ。 自治体では埼玉県と大阪府が昨年そろって喫煙者減を目指す10年計画を打ち出した。 中でもがんによる死亡率が47都道府県中ワースト1位の大阪府は「成人病克服10カ年プラン」の柱の1つとして、当面は分煙の普及を進め、10年後の喫煙率は男性が半減の30%、女性は3分の1の5%を目標としている。 いまのところ法的拘束力はないが、公的場所や職場の分煙・禁煙は時代の流れ。いずれくるその日のために、たばこを吸わない時間をどこまで延ばせるか、いまからちょっと試してみませんか。 紙巻きたばこ煙有害物質の主流煙と副流煙中の含有量 主流煙(MS) 副流煙(SS) SS/MS比 ●発がん物質(ng/本) ベンゾ(a)ピレン 20-40 68-136 3.4 ジメチルニトロソアミン 5.7-43 680-823 19-129 メチルエチルニトロソアミン 0.4-5.9 9.4-30 5-25 ジエチルニトロソアミン 1.3-3.8 8.2-73 2-56 N-ニトロソノルニコチン 100-550 500-2750 5 4-(N-メチル-N-ニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン 80-220 800-2200 10 ニトロソピロリジン 5.1-22 204-387 9-76 キノリン 1700 18000 11 メチルキノリン類 700 8000 11 ヒドラジン 32 96 3 2-ナフチルアミン 1.7 67 39 4-アミノビフェニール 4.6 140 30 0-トルイジン 160 3000 19 ●その他の有害物質(mg/本) タール(総称として) 10.2 34.5 3.4 ニコチン 0.46 1.27 2.8 アンモニア 0.16 7.4 46 一酸化炭素 31.4 148 4.7 二酸化炭素 63.5 79.5 1.3 窒素酸化物 0.014 0.051 3.6 フェノール類 0.228 0.603 2.6
2005.09.13
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1 疲労とはどういう現象か・努力のしすぎによる危険を避け、休息を求めている状況である 仕事を続けていると、疲れたなと感じ(疲労感)、作業能率が下がってきます。主に眼とか、使っている筋肉の機能にも変化があらわれます。そして、これ以上はむりだ、ひとやすみしたいなという欲求がおきてきます。これが疲労という現象です。 つまり、疲労とは「仕事の結果、体内に変化がおこり、そのまま続けるとやがてへばることが予測されるので、休息を求めている状況」と考えられます。努力のしすぎによっておこる危険を避けるための“安全装置”が発動した現象ともいわれています。 疲労は、病的状況ではないので、活動を中止し、休息をとるともとの状態にもどります。からだが、その時点でどの程度の休息を要求しているかによって、疲労の度合いがはかれることになります。2 疲労にはどんな原因があるか 疲労のあらわれ方やメカニズムはきわめて複雑です。疲労の原因として次のような仮説が立てられています。・有毒物質の蓄積により疲労がおこるという説 ある特殊な物質が体内に蓄積される結果、疲労がおこるという説です。疲労をおこす物質としては、筋肉の収縮を抑える物質、たとえば乳酸や、その他の代謝産物があげられています。しかし、これらの物質と疲労との関係は必ずしも明らかではありません。・エネルギー源の消耗により疲労がおこるという説 筋肉の活動にも、精神的な活動にもエネルギー源が必要ですが、そのエネルギー源の消耗によって疲労がおこるという説です。たとえば、激しい筋肉作業で筋肉中のグリコーゲンが使われて、蓄えが少なくなると筋肉疲労がおこるという考え方です。しかしエネルギー消費の少ないOA機器操作などや、精神作業の場合にはあてはまりません。・からだの内部環境の失調により疲労がおこるという説 私たちのからだには、内部環境を一定に維持するしくみ(ホメオスタシス)があります。外界や内部から精神的、身体的に強い刺激をうけると、このしくみがくずれ、疲労がおこるという説です。たとえば、暑さ、寒さ、あるいは飢え、睡眠不足、さらには不安、焦燥などの刺激が、からだに耐えきれないほど強くなる。つまりストレス状態が、精神疲労の主原因になるという考え方です。 このように、いろいろの説が唱えられています。これらのことが全体として統合されて、疲労という生命現象が現れてくるということでしょう。3 疲労はどのように分類されるか・「精神疲労-肉体疲労」「全身疲労-局所疲労」という分け方について 主に心理的、精神的緊張を強いられる作業でおこるものを精神疲労、筋肉作業が原因でおこるものを身体(肉体)疲労と呼ぶことがあります。このような分類は、人間の諸機能を便宜的に2つの側面に分けた考え方です。実際には、精神だけを使う労働もなければ、筋肉だけが働く身体活動もありえません。 また、疲労がおこる部位別にみて、その作業に主として働いた筋肉や器官に現れるものを局所疲労、全身に及ぶ疲労を全身疲労と呼んだりします。・[急性疲労」と[慢性疲労」という分け方が実際的 急性疲労-その作業を始めて数分から数十分しておこる疲労です。急性疲労のしるしとしては、たとえば、重量物を取り扱う作業では、息切れや心拍数の増加がおこってきます。キーパンチ作業のような高密度の連続操作では、腕の筋肉痛、エラーが増えてきます。そのまま作業を続ければ明らかなへばり状態にいたります。 ちょっと手を休めては、作業を続けて、数時間それをくり返していると、しだいに疲労は進んでいきます。結局、長めの休憩時間(昼休みなど)が必要になります。(長時間立っている仕事、対人折衝などのときにも、このタイプの疲労がみられます。) 慢性疲労-その日の疲労が、休養や睡眠によって解消されないうちに、つぎの疲労が重なると、しだいに疲れがたまってきます。数日から数か月にわたって蓄積されたものが、慢性疲労の状態です。作業中にすぐ疲れやすく、無気力となって、労働意欲も低下してきます。 こうなると、毎日の生活周期のなかでは、容易には回復しません。やがて健康障害をまねき、欠勤しがちになったりします。 一日働いたあとの疲れは、ふつうはひと晩の睡眠によって回復します。しかし、労働が過重だったり、長時間にわたるようなときには、翌日に疲労がもちこされます。眠け、だるさ、注意力散慢などで作業能率が落ちるだけでなく、疲労のおこり方も、ふだんとちがったリズムになってきます。疲労をどうやって少なくするか-職場における予防対策 慢性疲労状態や健康障害を予防するには、まず疲労をおこす原因を取り除くような対策が必要です。1 作業自体による疲労の発生を軽減する・作業には“ゆとり”がぜひ必要 作業中にちょっと手を休めたり、眼を閉じたり、椅子から立ち上がって背伸びをしたりすることを「自発休息」といいます。これより少し長めの休息は「休憩」です。こうした作業の合間のちょっとした休息が疲れを防ぐことは、私たちは体験として知っています。 作業中に発生した疲れは、その場その場で処理できればいちばんよいわけです。作業負荷がきびしければきびしいほど、自発休息や休憩のとれる時間的な“ゆとり”がぜひ必要です。 連続して行う作業では、仕事の区切りのつけにくいこともあるでしょう。そのような場合には、一連続の作業時間を短縮します。たとえば、キーパンチ(連続穿孔作業)は60分に制限し、合間に10~15分休むというように、一定の割合で休憩をとり入れます。早いうちから休んだほうが結局は有利です。・機器や設備を“人間に合わせる”ことが大切 機器が使いにくかったり、作業面や椅子の高さがからだに合っていないと、わるい姿勢を強いられ疲労をまねきやすくなります。 人間の動作や反応をきちんと考えにいれた、働きやすい設備や作業環境をととのえることが大切です。・疲れをやわらげる作業環境をととのえる たとえば流れ作業の場合は、単調さや拘束されている苦痛感を少なくすることが重要です。音楽(バックグラウンドミュージック:BGM)を流すのもよいでしょう。 温度、照明、騒音なども、疲労と関係してきます。とくに、複雑な作業や精密さが求められる作業では、ちょっとした“うるささ”“やかましさ”が作業を妨げ、疲労を生むといわれます。2 作業者教育や作業管理 正しい動作、作業のやり方などを習熟するよう努力(教育、養成)することも重要です。慢性疲労は、作業密度が高く、休憩時間のとれない場合、規制あるいは責任が過大で、作業の達成感が得られない場合、また対人折衝が複雑な場合に多くみられます。その人に合った適正な配置、勤務のローテーションを考え、行動の自由を増すなどを考えることも必要です。疲労をどう回復するか 疲労から回復する基本は、なにも特別なことではありません。適正な栄養と休養をとることです。このことはまた、疲労を予防するための個人的対策ともなります。1 休養による疲労回復促進・最良の休養はよく眠ること からだにとって、睡眠は最良の休養です。しかし、いつも遅くまで残業したり、通勤に時間がかかるような場合は、どうしても寝不足がつづいてしまいます。また、夜勤明けに昼間眠る場合には、睡眠が妨げられがちです。 睡眠時間の短くなった分は、睡眠の深さで補う必要があります。熟睡できるような環境をくふうしたいものです。・入浴も効果的 入浴は血液循環をよくし、筋肉の疲れをいやしてくれます。疲労回復には、40度前後のあまり熱くない湯にゆっくり入るのがよいとされています。・“積極的休養”で疲労回復をはかる 仕事の合間、あるいは一日の労働を終えたあと、からだ全体を軽く動かすのはよいことです。運動は、適度な刺激となって、からだの機能の回復に好都合の状態をつくるといわれています。このように、疲れたあとに軽い運動をすることを「積極的休養」といいます。ただし、強すぎる運動は逆効果です。 疲れがたまってきたら、休日にリクリエーションで気分転換をはかることも考えましょう。2 栄養補給による疲労回復促進・自分の身体活動に見合った栄養摂取を心がける どの程度のエネルギーおよび各栄養素をとったらよいかは、『日本人の栄養所要量』(厚生省)が参考になります。身体活動量に応じて生活活動強度「軽い」「中等度」「やや重い」「重い」の4段階別に、男女のエネルギーおよび、たん白質、脂肪、カルシウム、鉄、ビタミン類の所要量が示してあります。・たん白質についての注意 自分の身体活動量に見合った十分なエネルギー量をとっていれば、筋肉労働をするからといって、とくにたん白質量を増やす必要はないでしょう。ただし、睡眠不足とか、昼夜逆転した生活リズムの乱れなどのストレスで、また長時間とくに激しい運動をしたときは、たん白質がからだから失われます。・ビタミンやミネラルについての注意 ビタミンB1は激しい筋肉労働で、ビタミンCは発汗を伴うような運動や各種のストレスによって、体内での消費が高まります。 また、高温環境での作業では、汗の中にナトリウムが失われます。その他のミネラルも、運動による疲労時、ストレスなどによって失われます。・消費に見合った栄養補給が大切 実際には、労働や運動によるエネルギー消費量の増大にともない、食事摂取量も増加するのがふつうです。この増加分を、バランスのよい食事でとるよう心がけることが大切で、これはたん白質だけでなく、ビタミン、ミネラルの摂取増加にもつながります。3 嗜好品や保健薬について・適量を心得て利用 仕事の前や、ひと休みして飲む1杯のお茶やコーヒーは、生活の休止符としての意義もあります。お茶類に含まれるカフェインは、眠けや疲労感を抑え、思考力や運動機能を高めてくれます。 少量のお酒(アルコール)は食欲を増し、眠りを誘い、疲労の回復をうながします。 ただし、お茶もアルコールも、適量を過ごせば、害ばかりが目立ってきます。 また、肉体疲労などの場合の栄養補給をうたった、いわゆる保健薬も市販されていますが、表示されている用法・用量をよく守って適正に使用することが必要です。疲労の予防・疲れをためないように休息や休養を適切にとる 疲労はその局面局面で処理し、疲れをあとにもちこさないのが原則です。そのためには、“ゆとり”のある作業を組み立てることが求められます。適切な休息・休憩をとり入れましょう。 疲れがたまれば食欲不振や睡眠不足をおこしやすく、ひいては病的状態におちいることにもなります。体調や生活をコントロールし、疲労を予知して休養を先取りするなど、自分自身に合った疲労予防対策を編み出すことも必要でしょう。・基礎体力を高める体力が低下すると、疲れを感じる度合も増えてきます。体力のある人では、疲労のあらわれる時間が遅くなり、そして疲労からの回復ははやまります。積極的に運動をし、基礎体力を高めておくことが必要です。・必要十分な栄養をとる 日ごろからバランスのよい食事で、基礎体力を養っておくことも大切です。必要な量のたん白質その他の栄養素をすべてきちんととっていれば、疲労の予防だけでなく、回復もはやめます。むりなダイエットなどしていたら、力もでません。朝食は一日の源、必ず食べるようにしましょう。・リラックス法を身につける 緊張などのストレス状態から、気分転換したり、リラックスするのも重要なことです。自分なりのリラックス法を身につけることも大切です。おわりに 疲労のおこるメカニズム、その予防と回復策について述べてきました。毎日の疲労の回復には、睡眠を主とした休養、バランスよい食事による栄養の補給をはかります。そして疲労の予防には、疲れをためないこと、日ごろからよく運動をして基礎体力を高めておくことがなにより大切です。
2005.09.11
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1 疲労とはどういう現象か・努力のしすぎによる危険を避け、休息を求めている状況である 仕事を続けていると、疲れたなと感じ(疲労感)、作業能率が下がってきます。主に眼とか、使っている筋肉の機能にも変化があらわれます。そして、これ以上はむりだ、ひとやすみしたいなという欲求がおきてきます。これが疲労という現象です。 つまり、疲労とは「仕事の結果、体内に変化がおこり、そのまま続けるとやがてへばることが予測されるので、休息を求めている状況」と考えられます。努力のしすぎによっておこる危険を避けるための“安全装置”が発動した現象ともいわれています。 疲労は、病的状況ではないので、活動を中止し、休息をとるともとの状態にもどります。からだが、その時点でどの程度の休息を要求しているかによって、疲労の度合いがはかれることになります。2 疲労にはどんな原因があるか 疲労のあらわれ方やメカニズムはきわめて複雑です。疲労の原因として次のような仮説が立てられています。・有毒物質の蓄積により疲労がおこるという説 ある特殊な物質が体内に蓄積される結果、疲労がおこるという説です。疲労をおこす物質としては、筋肉の収縮を抑える物質、たとえば乳酸や、その他の代謝産物があげられています。しかし、これらの物質と疲労との関係は必ずしも明らかではありません。・エネルギー源の消耗により疲労がおこるという説 筋肉の活動にも、精神的な活動にもエネルギー源が必要ですが、そのエネルギー源の消耗によって疲労がおこるという説です。たとえば、激しい筋肉作業で筋肉中のグリコーゲンが使われて、蓄えが少なくなると筋肉疲労がおこるという考え方です。しかしエネルギー消費の少ないOA機器操作などや、精神作業の場合にはあてはまりません。・からだの内部環境の失調により疲労がおこるという説 私たちのからだには、内部環境を一定に維持するしくみ(ホメオスタシス)があります。外界や内部から精神的、身体的に強い刺激をうけると、このしくみがくずれ、疲労がおこるという説です。たとえば、暑さ、寒さ、あるいは飢え、睡眠不足、さらには不安、焦燥などの刺激が、からだに耐えきれないほど強くなる。つまりストレス状態が、精神疲労の主原因になるという考え方です。 このように、いろいろの説が唱えられています。これらのことが全体として統合されて、疲労という生命現象が現れてくるということでしょう。3 疲労はどのように分類されるか・「精神疲労-肉体疲労」「全身疲労-局所疲労」という分け方について 主に心理的、精神的緊張を強いられる作業でおこるものを精神疲労、筋肉作業が原因でおこるものを身体(肉体)疲労と呼ぶことがあります。このような分類は、人間の諸機能を便宜的に2つの側面に分けた考え方です。実際には、精神だけを使う労働もなければ、筋肉だけが働く身体活動もありえません。 また、疲労がおこる部位別にみて、その作業に主として働いた筋肉や器官に現れるものを局所疲労、全身に及ぶ疲労を全身疲労と呼んだりします。・[急性疲労」と[慢性疲労」という分け方が実際的 急性疲労-その作業を始めて数分から数十分しておこる疲労です。急性疲労のしるしとしては、たとえば、重量物を取り扱う作業では、息切れや心拍数の増加がおこってきます。キーパンチ作業のような高密度の連続操作では、腕の筋肉痛、エラーが増えてきます。そのまま作業を続ければ明らかなへばり状態にいたります。 ちょっと手を休めては、作業を続けて、数時間それをくり返していると、しだいに疲労は進んでいきます。結局、長めの休憩時間(昼休みなど)が必要になります。(長時間立っている仕事、対人折衝などのときにも、このタイプの疲労がみられます。) 慢性疲労-その日の疲労が、休養や睡眠によって解消されないうちに、つぎの疲労が重なると、しだいに疲れがたまってきます。数日から数か月にわたって蓄積されたものが、慢性疲労の状態です。作業中にすぐ疲れやすく、無気力となって、労働意欲も低下してきます。 こうなると、毎日の生活周期のなかでは、容易には回復しません。やがて健康障害をまねき、欠勤しがちになったりします。 一日働いたあとの疲れは、ふつうはひと晩の睡眠によって回復します。しかし、労働が過重だったり、長時間にわたるようなときには、翌日に疲労がもちこされます。眠け、だるさ、注意力散慢などで作業能率が落ちるだけでなく、疲労のおこり方も、ふだんとちがったリズムになってきます。疲労をどうやって少なくするか-職場における予防対策 慢性疲労状態や健康障害を予防するには、まず疲労をおこす原因を取り除くような対策が必要です。1 作業自体による疲労の発生を軽減する・作業には“ゆとり”がぜひ必要 作業中にちょっと手を休めたり、眼を閉じたり、椅子から立ち上がって背伸びをしたりすることを「自発休息」といいます。これより少し長めの休息は「休憩」です。こうした作業の合間のちょっとした休息が疲れを防ぐことは、私たちは体験として知っています。 作業中に発生した疲れは、その場その場で処理できればいちばんよいわけです。作業負荷がきびしければきびしいほど、自発休息や休憩のとれる時間的な“ゆとり”がぜひ必要です。 連続して行う作業では、仕事の区切りのつけにくいこともあるでしょう。そのような場合には、一連続の作業時間を短縮します。たとえば、キーパンチ(連続穿孔作業)は60分に制限し、合間に10~15分休むというように、一定の割合で休憩をとり入れます。早いうちから休んだほうが結局は有利です。・機器や設備を“人間に合わせる”ことが大切 機器が使いにくかったり、作業面や椅子の高さがからだに合っていないと、わるい姿勢を強いられ疲労をまねきやすくなります。 人間の動作や反応をきちんと考えにいれた、働きやすい設備や作業環境をととのえることが大切です。・疲れをやわらげる作業環境をととのえる たとえば流れ作業の場合は、単調さや拘束されている苦痛感を少なくすることが重要です。音楽(バックグラウンドミュージック:BGM)を流すのもよいでしょう。 温度、照明、騒音なども、疲労と関係してきます。とくに、複雑な作業や精密さが求められる作業では、ちょっとした“うるささ”“やかましさ”が作業を妨げ、疲労を生むといわれます。2 作業者教育や作業管理 正しい動作、作業のやり方などを習熟するよう努力(教育、養成)することも重要です。慢性疲労は、作業密度が高く、休憩時間のとれない場合、規制あるいは責任が過大で、作業の達成感が得られない場合、また対人折衝が複雑な場合に多くみられます。その人に合った適正な配置、勤務のローテーションを考え、行動の自由を増すなどを考えることも必要です。疲労をどう回復するか 疲労から回復する基本は、なにも特別なことではありません。適正な栄養と休養をとることです。このことはまた、疲労を予防するための個人的対策ともなります。1 休養による疲労回復促進・最良の休養はよく眠ること からだにとって、睡眠は最良の休養です。しかし、いつも遅くまで残業したり、通勤に時間がかかるような場合は、どうしても寝不足がつづいてしまいます。また、夜勤明けに昼間眠る場合には、睡眠が妨げられがちです。 睡眠時間の短くなった分は、睡眠の深さで補う必要があります。熟睡できるような環境をくふうしたいものです。・入浴も効果的 入浴は血液循環をよくし、筋肉の疲れをいやしてくれます。疲労回復には、40度前後のあまり熱くない湯にゆっくり入るのがよいとされています。・“積極的休養”で疲労回復をはかる 仕事の合間、あるいは一日の労働を終えたあと、からだ全体を軽く動かすのはよいことです。運動は、適度な刺激となって、からだの機能の回復に好都合の状態をつくるといわれています。このように、疲れたあとに軽い運動をすることを「積極的休養」といいます。ただし、強すぎる運動は逆効果です。 疲れがたまってきたら、休日にリクリエーションで気分転換をはかることも考えましょう。2 栄養補給による疲労回復促進・自分の身体活動に見合った栄養摂取を心がける どの程度のエネルギーおよび各栄養素をとったらよいかは、『日本人の栄養所要量』(厚生省)が参考になります。身体活動量に応じて生活活動強度「軽い」「中等度」「やや重い」「重い」の4段階別に、男女のエネルギーおよび、たん白質、脂肪、カルシウム、鉄、ビタミン類の所要量が示してあります。・たん白質についての注意 自分の身体活動量に見合った十分なエネルギー量をとっていれば、筋肉労働をするからといって、とくにたん白質量を増やす必要はないでしょう。ただし、睡眠不足とか、昼夜逆転した生活リズムの乱れなどのストレスで、また長時間とくに激しい運動をしたときは、たん白質がからだから失われます。・ビタミンやミネラルについての注意 ビタミンB1は激しい筋肉労働で、ビタミンCは発汗を伴うような運動や各種のストレスによって、体内での消費が高まります。 また、高温環境での作業では、汗の中にナトリウムが失われます。その他のミネラルも、運動による疲労時、ストレスなどによって失われます。・消費に見合った栄養補給が大切 実際には、労働や運動によるエネルギー消費量の増大にともない、食事摂取量も増加するのがふつうです。この増加分を、バランスのよい食事でとるよう心がけることが大切で、これはたん白質だけでなく、ビタミン、ミネラルの摂取増加にもつながります。3 嗜好品や保健薬について・適量を心得て利用 仕事の前や、ひと休みして飲む1杯のお茶やコーヒーは、生活の休止符としての意義もあります。お茶類に含まれるカフェインは、眠けや疲労感を抑え、思考力や運動機能を高めてくれます。 少量のお酒(アルコール)は食欲を増し、眠りを誘い、疲労の回復をうながします。 ただし、お茶もアルコールも、適量を過ごせば、害ばかりが目立ってきます。 また、肉体疲労などの場合の栄養補給をうたった、いわゆる保健薬も市販されていますが、表示されている用法・用量をよく守って適正に使用することが必要です。疲労の予防・疲れをためないように休息や休養を適切にとる 疲労はその局面局面で処理し、疲れをあとにもちこさないのが原則です。そのためには、“ゆとり”のある作業を組み立てることが求められます。適切な休息・休憩をとり入れましょう。 疲れがたまれば食欲不振や睡眠不足をおこしやすく、ひいては病的状態におちいることにもなります。体調や生活をコントロールし、疲労を予知して休養を先取りするなど、自分自身に合った疲労予防対策を編み出すことも必要でしょう。・基礎体力を高める体力が低下すると、疲れを感じる度合も増えてきます。体力のある人では、疲労のあらわれる時間が遅くなり、そして疲労からの回復ははやまります。積極的に運動をし、基礎体力を高めておくことが必要です。・必要十分な栄養をとる 日ごろからバランスのよい食事で、基礎体力を養っておくことも大切です。必要な量のたん白質その他の栄養素をすべてきちんととっていれば、疲労の予防だけでなく、回復もはやめます。むりなダイエットなどしていたら、力もでません。朝食は一日の源、必ず食べるようにしましょう。・リラックス法を身につける 緊張などのストレス状態から、気分転換したり、リラックスするのも重要なことです。自分なりのリラックス法を身につけることも大切です。おわりに 疲労のおこるメカニズム、その予防と回復策について述べてきました。毎日の疲労の回復には、睡眠を主とした休養、バランスよい食事による栄養の補給をはかります。そして疲労の予防には、疲れをためないこと、日ごろからよく運動をして基礎体力を高めておくことがなにより大切です。
2005.09.11
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明るくいきいきとした生活は、健康から始まります。健康のありがたみを知るのは、自分が病気になった時です。 人間、病気になると、とても心細いもの。その時、かかりつけのお医者さん、つまり主治医と呼べる人が身近にいると、どんなに心強いことてしょう。 あなたが病気になった時、頼りになるのが、あなたの主治医です。健康で健やかに長生きするために、あなたの健康を普段から管理してくれる主治医を決めておくことをお勧めします。 そこでまず、どうしたらそのような主治医が持てるかを、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。 「医者のかかり方」を説明する前に、どんな理由で主治医を決めたかを語ってもらいましょう。Aさん「そうですね。私の場合は、家の近所ということで決めました。家に近いと、身体の具合が悪い時、すぐにみてもらえますし、往診もお願いしやすいですからね。それから、内科小児科という看板も目に入り、それも決めた理由の一つです」Bさん「私は気軽に相談しやすいお医者さんだったのて、決めました。いろいろ相談することで、信頼関係ができますし、気持のよい人間関係も生まれますからね」Cさん「まあ、私がそのお医者さんに決めたのは、健康や病気のことを、やさしく説明してくれたからですよ。患者ってのは、自分の病気のことを詳しく知りたいもんでしょ?そんな時、診察の結果や治療方針や生活上の注意などを判りやすい言葉でやさしく説明してくれると、不安がなくなりますからね」Dさん「私の家では年寄り夫婦と一緒に住んでいて、家族ぐるみで何かと相談にのってもらっています。家族の病歴にも詳しいので、急病のときなど、手早い対応をしてもらえます。家族の体質など、よく把握してもらっていますし、それに、必要なときには気易く病院にも紹介してもらっていますので安心です」 今のお話にあったように、主治医を決める目安は、自宅に近い、気軽に相談しやすい、病気や健康管理についてやさしく説明してくれる、適切な病院を紹介してくれる、そういったことて、皆さん、主治医を決めていらっしャるようです。 それでは、次に、診察を受けるときや健康相談をする時は、どのようなことに注意すれぱよいのてしょうか?A先生「いやあ、この前もあったんですがね。患者さんがいろいろ心配されるのは判るんですが、話が要領を得ないんですよ。ま、早く治してもらいたい一心からだと思うんですが、もうちょっと順序だてて、整理して話をして欲しいですね。そうでないと、医者の方も判断に余計な時間がかかります」 「おっしゃる通りですね。診察を受ける時は、順序だてて話をしましょう。できれば、過去にかかった治療の記録、人間ドックや健康診査の結果などを持っていき、その記録を見せたいものです。順序だてて話をしたり、記録を作ったりする時の例を、ここにあげておきましょう。 もしあなたが病気になり、その病気で初めて診察を受ける時は、最初に今一番苦しんでいることを伝えます。 次に、いつから具合が悪くなり始めたのかを伝えます。 そして、時間の経過に従って、どんな風に症状が変わってきたかを伝えます。 この時、今までにかかった大きな病気のことや、アレルギーなどの特別な体質のことも伝えましょう。健康診査などを受けた時に渡された健康診査記録や、健康手帳などがあれば、それも見せましょう。 二度目の診察からは、主治医から言われたことを守ったかどうかを伝えます。 特に症状が悪化したような時は、そのことも伝えます。B先生「そうですね。困るのは別の病気で他の病院に行っているのを、言ってくれない患者さんですね。それがあらかじめ判っていれば、適切な治療もできるんですが」 確かにその通りですね。健康に関することは、できるだけ主治医に報告しましょう。 特に健腰診査とが別の病気で他の医療機関を利用している時、薬を使用している時は、必ず報告するようにしたいものです。C先生「私にいろいろ聞きたいことがあるのに、うまく口をついて出ない患者さんがいるんですよ。質問をあらかじめ簡潔にわかりやすくメモして来ると、自分の聞きたいことがちゃんと聞けると思うんですけどね・・・」 そうですね。質問したいことはあらかじめメモしておきましょう。 時間のかかる相談をしたい時は、「相談したいことがあるのでお時間をいただきたいのですが、何時がよろしいですか?」と、あらかじめ相談する日と時間の予約を取っておいた方がよいてしょう。 まず主治医に指示された通りの療養生活を送る努力をすることです。指示されたことが守れそうもない時は、主治医にその理由を説明して、相談しましょう。 診察についての疑問点は、キチンと質問しましょう。疑問に思っていることをそのままにしておくと、あとでトラブルの原因になります。判らないことは納得がゆくまで質問すれば、信頼関係がさらに深まります。 年に1回は、健康診査を受け、主治医のところで健康相談をするようにしましょう。健康診査を受け、健康相談をしておくと、主治医もあなたの普段の健康状態が判り、病気の時の診断に役立ちます。 基本健康診査や職場での健康診査を受けている人は、その結果を持って主治医に健康相談に行くことをお推めします。 病気や健康に関することは気兼ねせずに何でも気軽に相談できる関係になるよう努力しましょう。 病気の時だけの関係に留まらず、主治医と患者という間柄であっても、常日頃から信頼関係が保てる努力をしましょう。 日頃から診察をしてもらっていると、主治医は専門的な検査や治療が必要だと判断した場合、適切な医療機関を紹介してくれるものです。自分で病院をはしごしないで、主治医の紹介で他の病院に行った方が確実です。 また、引っ越しした時は、主治医の紹介状をもらって、近くのお医者さんにかかることをお推めします。 いま、地域のお医者さんや関係者が集まって作った地域医療計画に沿って、主治医と総合病院や専門病院などの病院や、その他の保健・福祉サービスとのつながりをよくするシステムづくりが進められています。したがって、診療所のお医者さんは患者さんの病状にふさわしい医療機関などを紹介しやすくなりますし、このことが患者さんにとっては安心して相談できることになり、病気が主治医の専門外であっても、適切な治療も受けられることになります。また、主治医の紹介で訪問看護サービスを受けることができます。
2005.09.08
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WHOと世界銀行の報告書から たばこと健康の問題は、世界的にも優先度の高い健康問題である。世界保健機関(WHO)と世界銀行は、8月8日に出版した報告書の中で、「たばこ税の増税は、特に貧困層、若年層、および比較的教育を受けていない層のたばこ消費を削減するための鍵である」としている。増税による10%のたばこ価格の上昇は、約4200万人の人々に喫煙をやめる動機を与え、約1000万人(うち低中所得国900万人)のたばこに関連する死を予防し、平均7%のたばこ増税分が政府歳入に上乗せされるだろうと研究者は見積もっている。 WHOの担当者は、世界の人々の喫煙行動が変わらなければ21世紀中には20世紀におけるたばこ関連疾患による死者の10倍にあたる10億人がたばこ関連疾患で死亡するだろうと予測している。たばこ税の増税や密輸の抑制に加えて、たばこの広告や販売促進を禁止することによっても、たばこの需要は減らすことができる。公共の場所や職場での喫煙を禁止していれば1995年には2300万人が禁煙することによって死を免れ、500万人のたばこ関連疾患が予防できた。さらに、ニコチン代替療法を受けたり、なんらかの介入を受ければ加えて600万人の人々がたばこをやめ、100万人の命が救われたであろう。喫煙者は非喫煙者よりも短命であるにも関わらず、非喫煙者よりも健康にかかる費用が大きい。先進国では、たばこ関連疾患に対する費用が年間の健康に関係する費用の6~15%に達している。高所得国、低所得国ともにGDPの1%を喫煙者の健康対策に費やしているのである。 たばこの供給を減らすことは効果的ではなく、たばこの法的規制や通商制限を実際に施行できる国はなく、10代の喫煙者へのたばこの販売をやめさせる試みもほとんど失敗に終わり、たばこの転作計画もまた失敗に終わっている。健康日本21におけるたばこ対策 日本におけるたばこによる超過死亡数は、1995年で95000人とされ、全死亡の21%を占めている。たばこによる疾病や死亡に係わる超過医療費は1993年に年間で1兆2000億円で国民医療費の5%となっている。 わが国においても、世界禁煙デーと連動した禁煙推進の取り組み、2度にわたる「たばこ白書」の作成、「公共の場所における分煙のあり方検討会」、「21世紀のたばこ対策検討会」の開催等、少しずつではあるが、たばこ問題に対して取り組むための環境整備が進みつつある。 本年度から開始された21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)においても、目標設定の対象となる領域9分野のうちの1分野として『たばこ』を掲げている。具体的目標としては、最終的に以下の4つを挙げている。(1) 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及(2)未成年の喫煙をなくす(3)公共の場や職場での分煙の徹底、および効果の高い分煙についての知識の普及(4)禁煙、節煙を希望する者に対する禁煙支援プログラムをすべての市町村で受けられるようにする。 また、具体的な対策としては、(1) 消費者に対する情報提供、(2) 喫煙防止、(3) 非喫煙者の保護、(4) 禁煙支援を提案している。たばこの健康影響 喫煙者は非喫煙者に比べてがんによって死亡するリスクが高くなるだけではなく、虚血性心疾患、脳血管疾患、気管支ぜんそく、胃潰瘍、歯周病等の疾病のリスクとなったり、早産、低出生体重等の妊娠への影響も見逃せない。一方、日本人の知識を平成十年度「喫煙と健康問題に関する実態調査」から見ると、たばこと肺がん、妊娠への影響、呼吸器疾患との関係は過半数が知識を有しているのに比べて、心臓病、脳卒中、歯周病との関係については、まだまだ知識が普及していない状態にあるといえる。 次に、未成年の喫煙防止については、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べてたばこ関連疾患に罹るリスクが増大することからも重要である。健康教育の充実のみならず、社会環境の整備あるいは規制という形で保護する必要がある。平成8年度の「未成年者の喫煙行動に関する全国調査」によると中学1年の男子の喫煙率は7.5%、女子は3.8%、高校1年になると男子36.9%、女子15.6%に増加している。成人の喫煙率が平成10年の国民栄養調査結果でみると男性50.8%、女性10.9%であること、男女ともに喫煙率のピークが20歳代、30歳代の若年成人期にあることを考えると、喫煙者の多くが未成年期に喫煙を開始し、成人期以降も喫煙習慣が持続しているといえる。したがって、将来におけるたばこによる超過死亡、たばこ関連疾患を予防する観点から優先順位の高い健康課題であるといえる。 さらに、非喫煙者の保護について考えてみよう。環境たばこ煙という言葉がある。たばこ煙は、喫煙者が吸い込む主流煙、喫煙者が吐き出す呼出煙、火をつけたたばこから出る副流煙に大別される。これらのうち、呼出煙と副流煙をあわせて環境たばこ煙と呼んでいる。受動喫煙で問題となるのがこの環境たばこ煙である。喫煙による健康被害は喫煙者だけでなく非喫煙者の問題でもあるのは、この環境たばこ煙の存在による。公共の場、職場における分煙を進めるべき根拠もまさにここにある。 最後に、禁煙支援について述べる。平成10年度の「喫煙と健康問題に関する実態調査」によると喫煙者の26.7%が「やめたい」と考えており、「本数を減らしたい」と考えている者をあわせると64.2%にものぼる。現在、市町村、保健所、医療機関等で実施されている禁煙支援プログラムの提供をさらに拡大する必要がある。特に、妊産婦への禁煙支援は優先順位が高い。 以上、健康日本21におけるたばこと健康について述べてきた。国、都道府県、地域保健、職域保健、学校教育の各レベルにおいて、たばこ対策を推進しなければ実効のあがるものにはならず、専門職能団体、学術団体の役割も大きい。保健医療従事者や教育関係者が自ら国民に範を示すことも必要であり、自主的な取り組みを大いに期待したい。
2005.09.05
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だれでも毎朝、「ああ、よく寝た!」と気持ちよく目覚めたいものだ。快適な睡眠が健康な生活に必要であることはだれでも知っている。しかし、エジソンが白熱電球を発明して以来、われわれ人類の生活はどんどん夜型に移行し、睡眠障害を訴える人も増えている。交通事故から原発事故、タンカーの座礁事故など多くの重大事故の背景に睡眠障害があるとして、米国は1993年に国立睡眠障害研究センターを設立、睡眠の研究を積極的に進めている。日本の厚生省も来年度から、睡眠障害に関するパンフレットなどを作成、関係機関への啓発活動に乗り出した。最新の睡眠に関する情報などを紹介しつつ、睡眠と健康について考えてみよう。◆さまざまな睡眠の役割 かつて睡眠は、脳やからだが疲れて休んでいるだけの状態と思われていた。ところが1950年ごろから、睡眠中の脳波や眼球運動などを調べてみると、一晩の間に睡眠が深くなったり浅くなったりしていることが分かってきた。さらに、各種ホルモンや免疫に関与していることが判明。ごく最近では、脳の記憶のメカニズムともかかわっているらしいことも指摘されている。 睡眠状態は大きく2つに分類される。からだの力は抜けているが脳は動いているレム(REM)睡眠と、逆に脳は深く休んでいるがからだの筋肉の緊張状態は保持されているノンレム(NREM)睡眠だ。健康な人はこの2つの状態がおよそ90分から120分周期で、一晩に4、5回繰り返される。夢を見たり、目が覚めやすい状態は、このレム睡眠の時。動物にもレムとノンレムがあり、猫や犬が行儀悪く横になってヒゲやまぶたをピクピクさせて寝ているのがレム睡眠で、行儀よくうずくまって寝ているのがノンレム睡眠だ。 睡眠はからだの免疫と密接に関係している。かぜをひいて熱が出ると眠たくなるのは、からだが免疫機能を高めてウイルスを排除しようとしているのだ。大手生命保険会社の調査結果によると、マスコミや金融機関など睡眠が不規則な職業の人は、がんによる死亡率が高いという。国立精神・神経センター精神保健研究所の内山真・精神生理部精神機能研究室長も「睡眠を引き起こす物質は免疫にも関係している。だから免疫と睡眠は表裏一体で、夜寝るときは同時に免疫機能も高まっている。よく眠る人は免疫機能が増強され、感染症やがんなどの予防にもいい影響があるだろう」と指摘する。 何か怖いものに追いかけられる夢を見た経験のある人は多いだろう。このような夢について内山室長は「何か危機的な状態に対応するための本能的な危機回避反応が、レム睡眠中に再学習されているのではないか」とみている。つまり人間は、寝ながらにして危機回避の訓練を復習しているというわけだ。 また睡眠と記憶について、内山室長は「人を集めて語学学習をさせると、その中で優秀な人の睡眠はレム睡眠の時間が長い。どうもレム睡眠中に短期記憶が長期記憶として定着しているのではないか、という指摘があります。寝ている間に脳が必要な記憶を整理しているというのです」と話す。ということは、徹夜で語学の試験勉強をしてもあまり効果は上がらないのかもしれない。 レムとノンレムの現れるパターンも重要だ。通常、人は寝入って90分ぐらいたってレム睡眠に入るが、うつ病の人は40分から60分。しかし、うつ病が治ると元のように長くなるという。離婚した直後の女性も同様、レム睡眠に早く入るという。睡眠には、私たちがまだ知らないさまざまな機能がありそうだ。◆睡眠不足の人が増加している 97年に健康・体力づくり事業財団が全国3,030人を対象に行った調査によると、「睡眠で十分に休養がとれていない」と訴える人が23.1%もいる。夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」は15.0%で、これは高齢者に多い。また、仕事や授業の最中に眠くなる「日中の眠気」も15.0%で、これは20代、30代の若い人に多い。多くの人が睡眠不足で悩んでいる。 これを裏付けるかのように、NHKの国民生活時間調査では、1970年の日本人の平均睡眠時間は7時間57分だったが、1990年になると7時間39分に減っている。深夜零時まで起きている人も、1960年には日本人全体の2.4%だったのが、1990年には13%に増えている。一方、厚生省が96年に全国34,464を対象に行った保健福祉動向調査によると、平均睡眠時間が「6時間から7時間未満」と答えた人が一番多かったという。生活が急速に夜になる一方で、睡眠時間もどんどん短くなっている。◆ 多様な睡眠不足の原因 睡眠不足となる原因は極めて多様だ。最も多いのが、仕事や勉強が忙しくてあまり寝ていないなどという、単に睡眠時間が取れないケース。ほかに、時差ぼけや交替勤務など外的な生活リズムの変化にからだがついていけないケースや、心配事などの精神的なストレスの場合も多い。これらは仕事のリズムを変えたり、ストレスがなくなれば解消する。痛みやかゆみなどを伴う疾患で眠れないケース、アルコールやカフェインなどによるケースもある。 最近、主に中高年の男性の間で問題になっているのが、睡眠時に時々呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。肥満などで気道が狭くなり、呼吸ができなくなる。夜中に突然苦しくなって目が覚める。睡眠不足となり、昼間の眠気や頭痛を訴え、ひどい時は突然死することもある。 睡眠をコントロールしている脳の中の「体内時計」と実際の生活のリズムがずれていて、寝付かれない、頭痛がする、食欲がないなどの異常を訴える人も増えている。これは「睡眠・覚醒リズム障害」とか「概日リズム睡眠障害」とか呼ばれている。登校拒否の背景にこのような問題が潜んでいることも多い。◆ 生体のリズムを刻む体内時計 人間の体温や血圧は、夜間の睡眠中は低くなり、昼間覚醒している時は高くなる。逆に成長ホルモンは夜中にピークを迎えて、昼間はほとんど分泌されない。このように人の生体機能は24時間周期で変動している。たとえ、室内光が一定の明暗のない部屋で、2時間ごとに食事をとり、睡眠はとらない、という生活のリズムが全くない状況下に健康な人間を長期間置いても、やはり同じように体温、血圧、各種ホルモンは上昇、下降のカーブを描く。つまり、脳にある体内時計が、これらの生体活動が一定周期で変動するようコントロールしている。 実はこの体内時計、さきに述べたような外的刺激が全くない状況下に人間を置くと、24時間周期でなく25時間周期で動く。つまり人間は体内に25時間周期の時計を持ちながら、毎日、1時間ほどその時計を進めて24時間周期にリセットして生活しているのだ。 1時間ほど時計を進める仕組みについて、同研究所の大川匡子精神生理部長は「人は朝起きて明るい光を浴びると、その日に入眠する時刻が24時間周期になるよう、体内時計がリセットされるのです。だから朝に光を浴びないと25時間周期のままとなります。逆に、夜中にギラギラと光るテレビの前に居ると、体内時計はさらに遅れます。私たちの体内時計が25時間周期だからこそ、私たちは寝坊が得意で、夜更かしができるのです」と説明する。◆概日リズム睡眠障害 最近、この体内時計をうまく24時間周期にリセットできない人が増えている。「睡眠後退症候群」は、睡眠スケジュールが慢性的に遅れたまま、努力しても望ましい時刻に入眠できず、朝早い時刻に起きられない病気。「非24時間睡眠・覚醒障害」は、毎日、入眠と覚醒が1、2時間ずつ遅れて25時間周期を示す障害。いずれのケースも、昼間に仕事や勉強に打ち込めずに社会的生活に大きな支障をきたす。 具体例として、大川部長は「17歳の高校生の例です。子供のころから朝起きるのが苦手。毎日だんだん入眠時刻が遅くなり、学校では昼寝ばかり。そしてだんだん学校に行きづらくなった。今、不登校と言われる子供の何割かが、この睡眠後退症候群だと言われています」と話す。また治療法については、「50歳の塾教師の例です。幼少から寝起きが悪く、大学を出て入社したものの、毎日午前4時、5時まで入眠できずに35歳で退社。49歳の時に私たちのセンターを受診しました。睡眠薬を投与したがほとんど無効。このため、明け方に強い光を浴びせる光療法を併用して、朝起きられるようになりました。現在もこの光療法で規則的な夜間睡眠が得られています」と説明する。◆ 睡眠のリズムを取り戻そう 概日リズム睡眠障害で悩んでいる人でなくても、この体内時計の考え方は生活上たいへん参考になる。「どうも最近寝付きが悪いな」などという人は、朝起きたらすぐに窓を開けて朝日を浴びて思いっきり深呼吸をしたらどうだろう。また、夜はテレビなど見ずに、部屋を暗くして静かな音楽に耳を傾けるのも効果がありそうだ。「来週、海外出張で時差ぼけがつらいな」などという人は、一日の長さが長くなるように、出発前の数日間や機内での睡眠の取り方を工夫して、現地の時刻に少しずつ合わせてみてはどうだろう。 今や日本の総労働人口の3分の1が、夜勤などの変則勤務をしているという。この変則勤務のために体調不良を訴える人が多い。大川部長は「このような人々にみられる睡眠障害は、人間が本来起きて活動すべき時間帯とは異なった時間帯に活動し、からだの生体リズムに逆らった生活をすることから引き起こされると思われる」と指摘。具体的な対策として、「長期に変則勤務を続ける場合は、勤務に合わせた生体リズムになるように工夫をした方がいい。不規則な時間帯の勤務の場合は、日勤時の生体リズムを壊さないように夜勤時に適度の仮眠を取る。また交替勤務では、人間の体内時計の本来のリズムが25時間周期であることから、一日の長さが長くなる方向のローテーション、つまり、日勤、準日勤、深夜勤の順番にするといいでしょう」とアドバイスをする。◆ よく眠るコツ 睡眠不足を訴えている人をモニターして調べてみると、実はけっこう寝ていることが多い。これを睡眠誤認という。その背景には「毎日きちんと寝なくてはいけない」という不眠に対する恐怖がある。「もし寝られなかったら、明日たいへんだ」などと思うと、ますます寝られなくなる。不眠の恐怖が募って医者に行き、睡眠薬をもらって寝られるようになると、今度は「睡眠薬には習慣性があるから」と心配する。そこでまた薬を飲まなくなり、再び寝られなくなるという人がいる。 最近の睡眠薬は安全で、大量に飲んでも死ぬことはない。それに、医師の指示通り飲めば、習慣性の心配もない。例えば、冬は夏に比べて眠りが浅くなり、睡眠時間は長くなる。だから、あまり「毎日決まった時刻に規則正しく眠ろう」「毎日8時間眠ろう」などと思う必要はない。神経質にならないことが快適な睡眠のコツだ。 内山室長は快適な睡眠を得るコツとして「寝る前にお茶やコーヒーなどカフェインは控える。寝酒はだんだん量が増えるし、夜中に目覚めるのでしない。体温が上がると寝付きが悪くなるので、寝る前の風呂はぬるめに。寝る前には、食事やジョギングなど激しい運動はしない。寝室はあまり明るくしない」とアドバイスしている。 また、大川部長は「とにかく朝起きて、冷たい水で顔を洗い、冷たいジュースを飲み、朝の光に当たってストレッチをする。それだけで1週間から1カ月でだいたい睡眠障害が治る。朝、太陽の光を浴びて駅まで歩くだけで早く眠れるようになる。生活のリズムができると自信も戻ってくる。そういう当たり前のことをしていない人が多い。よい睡眠を確保することは、健康を維持するための大きな武器となるのです」と話している。
2005.09.04
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野生動物には老化がない 著者は20年ほど前、海外医療専門家チームの団長として家族と共に東アフリカのケニヤ国に居住し、多くの野生動物を身近に見て来た。 自然界の動物の寿命は遺伝的背景を持っており、その種族、系統によって運命づけられている。概して言えば、からだの大きい動物ほど長命で、からだの大きさと寿命には正の相関が認められる。そして動物には老化がなく、草食動物にしろ肉食動物にしろ、老化は死を意味している。この相関から大きく外れて老化があって長命なのが人間である。人間には生活環境を整えることができ、その良否が要因として強く作用する。「人生50年」は昔の話? 日本は戦後50年足らずの間に世界の最長寿国となった。現在、男性78歳、女性83歳の平均寿命となっているが、あの有名な『人生50年……』と舞った織田信長の時代を含めて、戦前まで日本人の寿命は50歳に達していなかった。しかも、明治に至るまで人口は3,000万人を超えることはなかった。これは飢饉や疫病など、衣食住の生活環境の劣悪に基づくものであった。また、日本人の体格ついても戦後の若者の身長の伸びは著しく、かくも短年数でこれほど身長を伸ばした国民はなく、しかもそれは脚が長くなったことによるもので、他の民族の歴史上にも例を見ないものである。寿命の延びや体格の増大に見られる事実は、戦前までの日本人の生活が如何に貧しく、生活環境が劣悪であったかを物語るものである。そして戦後の経済発展が素晴しく、これに基づいて食料の供給、質の改善、衛生状態などあらゆる生活環境の整備が豊かな生活を作り、日本人の寿命に反映されたかを如実に示すものである。 既に過去の歴史の中に埋没されようとしているが、戦前の海外移民は国策による棄民とも言えるものであることから、戦前の日本は現在の豊かさからは想像もできないほどの貧しい国であった。日本民族の歴史の中で現在ほど飽食の時代はない。もともと日本人は飢餓民族であった。飢餓には強いが、飽食には耐えられない素質をもった民族である。今日本人の成人10人に1人は糖尿病に罹っていると言われる。そして同じ飽食の米国において、日系人は欧米系のアメリカ人に較べて、10倍ほど糖尿病罹患率が高いことが知られている。これは飽食に対し弱い日本人の体質に基づくものである。今後寿命は低下する? 『動物の寿命を延ばすことができるのか』という研究がある。それによれば、自由摂取でネズミを飼育した場合とカロリー制限をした場合とでは、後者の方が確実に寿命が延びている。そして、更に寿命の後半でバランスのとれた質の高い食餌摂取をすれば、その効果は大きいことが証明されている。今の高齢の方々は戦前・戦後の経過の中で、この研究テーマに準じた偉大な人体実験(?)の成果を証明したことになる。しかし一方で、熟年者の成人病としての高脂血症の増加が社会的問題となっているが、コレステロールは老化を早める因子である。 日本の現状は、外食を含めて飽食によって児童の血中コレステロールが欧米の児童に較べて高値となっており、成人病が増えているという重大な危険を示す現象が見られている。彼らが高年齢になった時、現在の長寿命を更新するであろうか? 筆者は今後低下していくのではないかと思っている。 我が国の経済発展が、そして生活環境の改善が如何に素晴しいものであったかを示す事実と共に、今後別の課題を秘めていることになる。若者こそ老化問題を考えよう このように、日本人の寿命が戦後50年の短期間に人類史上例をみないほどの驚異的な延びを達成したが、今や一方でこの高齢化の進展が家庭的にも社会的にも重大な関心事になりつつある。そこで改めて老化の問題に触れてみたい。 先に述べた如く、老化は人間だけに見られる現象で、野生の動物では老化は即、死と同義語になる。最近は家庭で飼われているペットに成人病や老化の現象が見られるようになってきたが、これはペットが野生の動物ではなくなり、人間と同じ生活環境にあることを示している。 なぜ老化が起こるかの機序は解っていないが、それが生理的なものか、または病的なものかで意味合いが大きく違ってくる。後者で問題になるのが老人性痴呆、いわゆる「ぼけ」と言われるものである。この「ぼけ」には二種類あって、その一つは米国の前大統領レーガン氏が自己告白し、国民に別れを告げた〔アルツハイマー病〕である。この病気は脳細胞が死滅していくもので、病因は解らず欧米人に多く、最も恐れられている病気である。今のところ、日本人には少ないとされている。これに対してもう一つのものは、日本人に多いとされる〔脳血管性痴呆〕で、脳動脈の動脈硬化に基づく脳実質の梗塞による機能消失である。いずれにしても「ぼけ」られた当人には病識がなく恍惚の人となるが、周囲の人達には大変な負担が掛かり、肉親の愛情だけでは対応ができない事態にまで追い込まれることが往々にしてある。このような老人を介護するのに、最近2人の健常者が必要と言われているが、そうなれば少子高齢社会においては、大袈裟な言い方をすれば、老人を世話するだけで生産性のある仕事に従事する人間がいなくなる恐れがないとは言いきれない。 老人性痴呆について学術的に詳述する誌面はないが、「人間は血管と共に老いる」という有名な言葉がある。要は若い時分からの高脂血症、動脈硬化、高血圧などの循環器病の予防にある。 老化は老人における問題ではなく、その素因は若い時分に作られるもので、むしろ若い人が関心を持つべきものである。今後とも自分の人生の中で自分の生活態度によって、言い換えれば、自分の責任下で人生の後半での病気が如何に作られていくかを知っててもらいたいと願っている。「成人病」は「生活習慣病」と名を変えた
2005.08.28
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[25歳はお肌の曲がり角」という言葉が示すとおり、明らかに20代後半から老化が始まる。さらに50代に入ると、身体的な衰えはもちろんのこと、視力や脚力、身体のさまざまな筋肉が弱っていく。社会的にも家庭においても最も充実し、安定して、その責任も重い時期のはずなのに、生活習慣病にかかって悩んでいる人は少なくないはずだ。老化と密接に関係するのが生活習慣病だ。この病気は30歳以降、特に40~60歳までの人に多い病気である。働き盛りのシニア世代が生活習慣病から逃れる方法を探ってみよう。◆最も多い高血圧性疾患 平成8年の厚生省の患者調査によると、主要疾患のうちで患者数の最も多いのは、高血圧性疾患の749万人、次いで糖尿病の218万人、心臓病の204万人、脳卒中の173万人、がんの136万人の順番だ。これらは食生活や運動習慣、休養の取り方、嗜好など生活習慣が発病に密接に関係する生活習慣病なのである。日本の三大死因であるがん、脳卒中、心臓病が生活習慣病なのだから、生活習慣病の予防こそ、私たちの健康を守るための最大の課題と言っても過言ではない。 職場での健康診断や住民検診などで検査数値を目にする機会が増えている。健康を維持するためには、健康の指標となる数値を知っておくことは必要だ。とは言っても一知半解の誤りは避けたい。そこで、心筋梗塞など心臓病や脳卒中の危険因子であるコレステロールについて調べてみよう。 東京都内に住む50歳になる会社員のAさんのケースだ。身長170 、体重75 。BMI指数で26、明らかに太り過ぎである。会社の健康診断は毎年、受診しているものの、体重は一向に減らない。「これではいけないと自覚しているんですが、なかなかできなくて…」とAさんは弁解する。 ところが、今春の健診で総コレステロール値が290 に増加し、診断の総合判定欄には「高脂血症」と記載された。しかし、Aさんはその後、これといった治療を受けようとしない。痛みやかゆみなどの自覚症状がないと、なかなか病院に行きたがらないのは、患者の共通した心理のようだ。Aさんの場合、今のうちは何でもないように見えても、血管は着実に侵されていくだろう。高脂血症の恐ろしさはそこにあるのだ。 コレステロールと言えば、どうしてもマイナスのイメージがつきまとう。実は、われわれのからだにとってなくてはならない脂肪だ。さまざまな組織に運ばれ細胞膜やホルモンの材料になったり、脂肪の消化吸収を助けるなどの役割を果たしている。 問題は血液中のその量である。ここに厚生省研究班がかつて実施した調査がある。それによると、総コレステロール値は心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患と明らかに相関している。例えば血液100当たり総コレステロール値が200と比べて、280~320は2.6倍、320~360は3.3倍、360~400では何と5倍、といった具合だ。 そこで、日本動脈硬化学会は1997年に、動脈硬化を引き起こさないコレステロール値を決めた。血液100当たり総コレステロールで200以下、悪玉コレステロール(LDL)で120以下を適正値、総コレステロールで220以上、LDLで140以上を治療が必要なレベル、その間をグレーゾーンとし、その人の動脈硬化の進行具合に合わせて治療するようにしたのだ。 健康診断で異常値が示されても、治療を受けようとしないのは、Aさんだけではないだろう。高脂血症で病院を訪れるのは、60代の人が圧倒的に多い。これらの人たちは、胸痛など動脈硬化の自覚症状が既にあるケースがほとんどだ。◆早い段階にきちんと治療 心臓の筋肉に栄養などを送っている冠動脈は、コレステロールなどで詰まって細くなっても、なかなか症状が現れない。動脈硬化が「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」と呼ばれるゆえんだ。胸の痛みなどを訴えるようになったら、冠動脈は既に75%は詰まっている。「もちろん一夜にしてこうなるわけではなく、何十年もかけて狭さくを起こす。既に10代の後半から動脈硬化が始まっているケースもある」(秦葭哉(はた よしや)・杏林大学医学部教授)。それだけに、健康診断で異常が指摘されたら、早い段階にきちんと治療を受ける必要があることを示している。 高脂血症治療の目標は、いうまでもなくコレステロール値を正常にすることにある。現在は食事療法だけでなく、薬物療法で異常値をかなりの割合で適正範囲にできるようになっている。 ある大学病院のデータによると、220~259 の軽症の場合、100%近く、260~299の中等症では約50%、300以上の重症でも40%近くが正常になっている。総コレステロール値を1%下げると、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発生を2%抑えることができるという報告もある。高脂血症の治療で、高脂血症によってもたらされる動脈硬化性疾患は、約90%は予防可能という。 働き盛りのシニアを襲う突然死の多くは、心臓病や脳卒中など血管病変が原因。これに関与するのはコレステロールばかりではない。最も患者数の多い高血圧や肥満、喫煙などの影響もある。このためにはできるだけ安定した血圧に保ち、太り過ぎを防止して喫煙も止めるのが望ましいことが分かるだろう。◆見逃せない糖尿病 もう一つ見逃せないのが糖尿病だ。最初は症状がないため放置して、血管合併症が出てきて大慌てするのが糖尿病だ。その患者が600万人を下らないほどに急増している。増加の大きな原因は、栄養過多に運動不足というライフスタイルがあることは間違いない。糖尿病の専門医は「ハイリスクグループは特に用心してほしい。高血糖状態を放置しておくと動脈硬化症になり、間違いなく失明など悲惨な結末につながる」と警告する。 糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気だ。その状態が長期間続いた結果、血管が侵され、やがて網膜症や腎症、神経障害、心臓病などさまざまな合併症が出現する。 だが、現実には糖尿病患者のうち治療を受けているのは218万人しかいない。残りの大部分は全く治療を受けていないのが実情という。このため最近のデータでは糖尿病が原因で失明する人が1年間に4,500人余り、腎症になって人工透析を受けなければならなくなる人がざっと1万人、歌手の村田英雄さんのように壊疽などで下肢や足指を切断するケースが数千人にも上ると推定されている。こうなったら手遅れ、もう決して元に戻ることはない。糖尿病の終末像の合併症がいかに恐ろしいかを示している。 糖尿病には血糖値をコントロールするインスリンが全く分泌されないため、インスリンの注射が欠かせないインスリン依存型とインスリンの分泌量が少なく、その効きが悪い非依存型の2つのタイプがあることが知られている。日本では後者が99%以上を占めており圧倒的に多いという。 健康な人は常に血糖値は狭い範囲に維持されている。食間や夜間には、肝臓が放出した糖分を全身の組織がエネルギーとして取り込んで正常値に保たれる。 ◆管理の決め手は悪循環を断ち切る 食事をして栄養を吸収し血糖値が上昇すると、インスリンが分泌され、その結果、肝臓からの糖分放出が減少、全身の糖分取り込み率も上がって、血糖値をうまく保つ仕組みが働いている。血糖値の高さはその変化に応じてタイミングよく分泌されたインスリンと、インスリンの働きを受ける臓器の絶妙な協調作用で血糖値は正常に保たれている。この機構のどこが狂っても糖尿病が発症することになるわけだ。 それでは糖尿病のハイリスクグループとはどんなタイプなのだろうか。まず挙げられるのは糖尿病の家族歴がある人。糖尿病には遺伝的な要因が大きく関与しており、例えば遺伝的な背景が全く同じ一卵性双生児の片方が糖尿病になると、もう一人も94%が糖尿病かそれに近い状態になっているというデータもある。親、兄弟に糖尿病患者がいると、著しく発症率が高くなる。遺伝的に糖尿病の素因を持っている人は、インスリンの分泌が遅くて少ないわけだ。 さらに標準体重よりだいたい25%以上重い異常肥満のケースも当てはまる。肥満はインスリンの効きを悪くするなどの理由で、糖尿病の発症率が非肥満者の5倍になってしまう。また高脂血症や高血圧、妊娠中に高血糖になったり、感染症を繰り返したりする場合も糖尿病のハイリスクグループに入る。 これらハイリスクグループが中年になって過食や運動不足など環境因子が加わると、肝臓や筋肉組織でのインスリンの効き悪くなってしまう。やがて反応しなくなって血糖値が上昇。すると、からだは血糖値を下げようとインスリンを大量に分泌しようとするが、疲れきってインスリンの分泌も低下してしまい高血糖が続くようになる。これが糖尿病である。 専門医によると、まず肝臓や筋肉など臓器のインスリンの効きを高めるためには、ライフスタイルを見直し、発症前の状態に戻すことが必要だ。食べ過ぎや肥満、運動不足をなくすことに尽きる。 特に毎日10,000歩を目標に歩くと筋肉の糖分取り込みが顕著になり、インスリンの出もよくなって効きもよくなってくるという。 それでも改善しないときはインスリンの分泌を促す薬剤を使うが、出ない場合は、短期間インスリンを注射して膵臓を休めると、再びインスリンが出てきてインスリンの効きもよくなる。糖尿病と診断されたら、いい血糖状態を維持して失明など悲惨な結末を防ぐことが重要、と専門医は強調している。◆欠かせない一次予防 従来の成人病が生活習慣病という名称に変わったのには訳がある。二次予防に重点をおいていた従来の対策に加えて、生活習慣の改善を目指す一次予防対策を推進する意味合いが込められている。病気の予防には健康を増進し発病を予防する一次予防、病気を早期に発見し早期に治療する二次予防、そして病気にかかった後の対応の三次予防がある。生活習慣病の予防には、一次予防が欠かせないことを示しており、このことは私たち自身が、生活習慣病を予防する意識を強く持つことが重要なことを物語っている。☆ブレスローの7つの健康管理 1.適正な睡眠時間2.喫煙をしない3.適正体重を維持する4.過度の飲酒をしない5.定期的に運動をする6.朝食を毎日食べる7.間食をしない (1965年にカリフォルニア大学のブレスロー教授は、7つの健康習慣の有無が寿命に影響することを報告している。)
2005.06.19
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かむことの大切さはだれでも知っている。咀嚼には、脳の発達を促したり肥満の予防につながるなどの効用がある。そればかりではない。高齢社会で問題になるぼけや寝たきりの防止に、かむという行為が密接に関係しているともいわれる。健康であるためには何よりも歯の健康が欠かせない。歯に対する健康意識は次第に高まっているが、からだの健診は受けても歯の健康チェックまで受けている人は少ないのが現実。そこで「歯の衛生週間」を期に歯の健康についてもう一度考えてみたい。 虫歯は平均15本、4人に1人が歯周炎 厚生省の歯科疾患実態調査がある。1994(平成6)年7月に発表されたのが最新データだ。この調査は1957年から6年ごとに実施されており、7回目に当たるそのデータは、1993年11月に、全国の9827人を対象に行われた。それによると、日本人1人の平均虫歯数は15本で、12年前より2本近く増加し、4人に1人が歯槽膿漏など歯周炎を起こしているというのだ。 調査内容を詳しく見てみると、永久歯の虫歯を持っている人は85.6%で、88年に公表された前回調査よりも0.8ポイント増えたが、治療を終えた人も前回の35.9%から42.7%に伸びており、虫歯治療に前向きの人が増えている様子がうかがえる。 永久歯の平均虫歯数は、抜いてしまったものを含め15.0本で、前回、前々回の調査から増え続けているという。 年齢別では、20歳以下の若年層で減少傾向が目立ち、20歳の虫歯の本数は9本台に落ちた。30歳と40歳が14本台、60歳になると20本台に乗り、80歳以上ではほとんど抜かれて平均4・5本しか残っていない。厚生省や日本歯科医師会では、80歳で20本の歯を残そうという「8020」運動を続けているが、現実は目標達成までにはかなりほど遠いことを物語っている。 一方、歯ぐきに異常のある人は68.1%いた。一番多かったのは軽度の歯肉炎で42.3%だが、歯槽膿漏を含む重度の歯周炎が23.4%、さらに末期症状まで進んで歯を残すのが困難な人も2.4%おり、4人に1人が歯ぐきに重い症状を持っている勘定だ。15~24歳の若い世代でも6割を超える人に歯ぐきの異常が見られ、ピークの45~54歳では8割以上に増え、55~64歳の年代になると、約4割の人が重い歯周炎を抱えている。 厚生省は、この結果について「全体として歯の健康意識は高まっている」と分析しているが、人生80年時代に果たして「入れ歯いらずの人生80年」が実現できるのだろうか―。その実現のためには、私たち自身が日ごろから歯に対する健康意識をしっかりと持つことが欠かせないことを示している。 おふくろの味よりも袋の味 こうした歯の健康とともに見逃せないのが、かむという行為の効用だ。現代の子供たちが食事の際に極端に咀嚼の回数が減っているというデータもあり、気になる問題を含んでいる。 斎藤滋・神奈川歯科大学教授のグループが、古代から現代までの食事を復元して、かむ回数と食事時間を調べてみた(表1・図1)。するとどうだろう。卑弥呼の時代は、1回の食事でかむ回数が4000回近く、時間は51分だったのが、時代とともに減少。戦前の食事では回数が1420回、時間は22分になり、現代の食事では回数で620回、時間はたったの11分という結果になった。 咀嚼回数の減少は、子供の大好きなオムレツやカレー、アイスクリーム、サンドイッチ、ハンバーグ、ヤキソバ、スパゲティ、メダマヤキなど「オカアサンハヤスメ」と表現される食品にも大いに関係がある。これらは軟らかくよくかまないでも、のどを通ってしまうからだ。 「昔はおふくろの味と言われたが、現代の食材は袋の味になってしまった。しかも食事の団らんの場が少なくなり、1人で食べる孤食化の傾向も生まれ、それがかむ回数や食事時間の減少につながっている」 細面ですっきりした現代っ子の小さめの顔がもてはやされているが、手足をよく動かさないと筋肉が発達しないのと同じように、かむ回数の減少はあごの発達を低下させているようだ。 それは「あごをよく動かさないためにその筋肉や骨の発育が不十分となっている。軟らかいものばかりを食べているため、あごが小さくなり、そのくせ栄養状態はいいので、永久歯の幅も広くなり、八重歯やらんぐい歯のかみ合わせの悪い子供の増加につながっている」と、専門医や学校関係者を心配させているような現実にも見られる。 このように「よくかむ」という行為は、歯とからだの健康をつくるためには不可欠の要素なのである。また、かむことによって、あごの骨や筋肉を成長させ、きれいな歯並びをつくることにつながるとなれば、いかにかむという行為が重要かが分かるだろう。 もう1つ忘れてならないのは、かむことによって「食べ物がおいしい」と感じられる味覚の発達を促す点だ。豊かな人生を送るために欠かせない行為なのである。だから、乳歯のときこそ、かむ学習を正しくすれば、永久歯も正しく健康に生えてくる。よくかんで何でも食べる子供になってほしいなら、発育段階に合わせた母親の正しいメニューづくりが大切なことを示している。 こう見てくると、咀嚼の効用は実に多い。斎藤教授によると、まず挙げられるのは肥満防止だ。さらに味覚の発達や言葉の発音がはっきりする効果、脳の発達の促進もある。忘れてならないのは歯の病気の予防とがんの予防、胃腸の働きの促進、全力投球の活力が出るようになるというのだ。 「かむ際に分泌されるだ液に含まれる消化酵素には、がんの発生に深く関与している活性酸素を抑える作用がある(表2)。咀嚼の効能は、その頭文字から『ひみこのはがいーぜ』と表現している」 そればかりではない。増加しているアレルギーとも関連しているらしい。よく咀嚼しないで未消化の状態で腸から吸収されると、食べ物が異物と認識され、アレルギーの抗原になりやすくなる。咀嚼回数の減少が、あるいはアレルギーの増加の一因になっているのかもしれないという。 それでは子供たちにどうしたら、かむ習慣をつけられるのか。かまないからといってカレーやスパゲティなど子供たちが好きな食物を取り上げては元も子もない。食事を食べなくなってしまう。 それよりも、例えばカツカレーにしたり、スパゲティならかまないと食べられない貝類を入れたりするなどちょっと工夫する。 「一口で10回かむところを、30回に増やすことも可能。そうすれば戦前のかむ回数まで増やせる」 かむことによって、だ液がよく出るので歯を清潔に保つ働きもある。かむ大切さをもう一度見直して―。斎藤教授のアドバイスである。 よくかむ人ほど正常な人 最近注目を集めているのが、咀嚼と脳の活性化・老化防止の相関である。九州大学のグループが実施した疫学調査がある。高齢者の長期入院患者87人(平均年齢78.5歳)を調べたところ、残存歯数、義歯(入れ歯)の使用能力、かみ合わせなどの口腔機能の低下が、痴ほうの進行と相関関係にあるという(図2)。 87人のうち半数近くが痴ほう症状を示し、これらの残存歯数を見ると、正常な人、痴ほうの始まった段階の人、中度の人、そして重度の人というように、痴ほうの程度が高くなるにつれて、残存歯数が少なくなっているのが分かる。また、義歯の使い方もだんだん下手になって、かむ力も弱くなり、重度になるとほとんどかめない人も出てくるようになるというのだ。 かむという行為によって、脳の広い領域が活性化していることが、陽電子放出断層画像診断装置(PET)を使った脳の血流検査で確かめられるようになってきた。 脳の血流検査は、日本咀嚼学会会長の窪田金次郎・東京医科歯科大学名誉教授と東京大学医学部放射線教室などが協力して実施した。18歳から40歳までの12人(男性5人、女性7人)に、咀嚼訓練用のガムをかんでもらい、脳の血流がどのように変化するのかを調べた。 方法は生理食塩水を注射した後、PETで撮影。脳が活性化すると、炭酸ガス分圧が高まるため、酸素が取り込まれ脳血流が増えるので、PETで酸素を検出すれば、脳血流が測定できる仕組みだ。こうして撮影したPET画像と磁気共鳴診断(MRI)画像を 1ガムをかまない安静時 2咀嚼中 6咀嚼後15分 4咀嚼後30分―の4つで比較したところ、咀嚼中は大脳の一次感覚運動領野で25~28%、補足運動野・島(味覚中枢)で9~17%、小脳などで8~11%も血流量が増加していることが分かったという。 窪田名誉教授によると、一次感覚運動領野は咀嚼感覚運動中枢をつかさどり、口の筋肉に指令を出す部分。補足運動野は食べる際の首の運動にかかわっていると推定されており、PET画像では咀嚼中、咀嚼に関連するさまざまな部分の血流量が増加し、咀嚼をやめると血流量がすぐに元に戻ることが確かめられた。 この研究は、脳血流の検査だったが、同グループは、咀嚼が脳の働きにどのような影響を与えているのかを突き止めるため、神経伝達物質のドーパミンが咀嚼によってどのように変化するのかを調べる計画を現在進めている。 「サルの下あごの歯をみんな抜いて実験すると、脳の神経細胞が委縮してしまうことが知られている。まず、感覚神経細胞が駄目になり、やがてその他の神経細胞も変性すると考えられている。かむという行為によって、脳に刺激を与えることがいかに大切かを示している。入れ歯でもよくかむことが、ぼけの防止につながることは間違いない」と、窪田名誉教授は、咀嚼の効用を力説する。 固いエサで賢いラット このことは、つまりかむという行為を通して末しょうからの感覚情報が脳に入力され、脳を介してからだが活性化されることを示している。朝日大学のグループがラットを使った迷路学習実験や回避学習実験をしたところ、粉のエサを与えて飼育したラットと、固いエサを与えたラットでは、固いエサを与えて飼育したラットの方が、明らかにすばしっこく賢いという結果が出ており、これを裏付けているのである。 脳の神経細胞は再生されず、いったんできあがった後は死んでいくだけだ。その数は1日に10万個とも20万個ともいわれている。体細胞は再生を繰り返して常に新しい細胞と入れ替わるが、神経細胞は死ぬまで誕生時の細胞のままなのである。脳にはそれだけの細胞が用意されているわけになるが、こうした脳細胞を長生きさせる仕組みも必要になるわけだ。脳細胞の長生きに関連する物質にNGF(神経成長因子)やEGF(上皮成長因子)などの栄養因子が必要なことも次第に明らかになっている。 驚くことにラットやマウスの実験で、こうしたNGFやEGFがだ液腺にも含まれていることが分かってきたという。咀嚼によってだ液が分泌されるのは当然のことだ。咀嚼と脳神経の活性化が、こうした栄養因子によっても関連づけられていることを示していて、非常に興味深い。 人間が健康に生活していく上で、歯が健康で、食物をよくかんで食べられることがいかに大切かが分かるだろう。軟らかいものを楽しく食べると同時に固いものを嫌がらないでまんべんなく食べることが、健康の第一歩であることは間違いない。健康は決して1日でできるものではない。毎日3度3度の食事をしっかり食べることが大切なのだ。その積み重ねの上に健康があるといっても過言ではない。もう一度、歯の健康とかむ効用を考えてみたいものだ
2005.06.17
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WHOと世界銀行の報告書から たばこと健康の問題は、世界的にも優先度の高い健康問題である。世界保健機関(WHO)と世界銀行は、8月8日に出版した報告書の中で、「たばこ税の増税は、特に貧困層、若年層、および比較的教育を受けていない層のたばこ消費を削減するための鍵である」としている。増税による10%のたばこ価格の上昇は、約4200万人の人々に喫煙をやめる動機を与え、約1000万人(うち低中所得国900万人)のたばこに関連する死を予防し、平均7%のたばこ増税分が政府歳入に上乗せされるだろうと研究者は見積もっている。 WHOの担当者は、世界の人々の喫煙行動が変わらなければ21世紀中には20世紀におけるたばこ関連疾患による死者の10倍にあたる10億人がたばこ関連疾患で死亡するだろうと予測している。たばこ税の増税や密輸の抑制に加えて、たばこの広告や販売促進を禁止することによっても、たばこの需要は減らすことができる。公共の場所や職場での喫煙を禁止していれば1995年には2300万人が禁煙することによって死を免れ、500万人のたばこ関連疾患が予防できた。さらに、ニコチン代替療法を受けたり、なんらかの介入を受ければ加えて600万人の人々がたばこをやめ、100万人の命が救われたであろう。喫煙者は非喫煙者よりも短命であるにも関わらず、非喫煙者よりも健康にかかる費用が大きい。先進国では、たばこ関連疾患に対する費用が年間の健康に関係する費用の6~15%に達している。高所得国、低所得国ともにGDPの1%を喫煙者の健康対策に費やしているのである。 たばこの供給を減らすことは効果的ではなく、たばこの法的規制や通商制限を実際に施行できる国はなく、10代の喫煙者へのたばこの販売をやめさせる試みもほとんど失敗に終わり、たばこの転作計画もまた失敗に終わっている。健康日本21におけるたばこ対策 日本におけるたばこによる超過死亡数は、1995年で95000人とされ、全死亡の21%を占めている。たばこによる疾病や死亡に係わる超過医療費は1993年に年間で1兆2000億円で国民医療費の5%となっている。 わが国においても、世界禁煙デーと連動した禁煙推進の取り組み、2度にわたる「たばこ白書」の作成、「公共の場所における分煙のあり方検討会」、「21世紀のたばこ対策検討会」の開催等、少しずつではあるが、たばこ問題に対して取り組むための環境整備が進みつつある。 本年度から開始された21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)においても、目標設定の対象となる領域9分野のうちの1分野として『たばこ』を掲げている。具体的目標としては、最終的に以下の4つを挙げている。(1) 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及(2)未成年の喫煙をなくす(3)公共の場や職場での分煙の徹底、および効果の高い分煙についての知識の普及(4)禁煙、節煙を希望する者に対する禁煙支援プログラムをすべての市町村で受けられるようにする。 また、具体的な対策としては、(1) 消費者に対する情報提供、(2) 喫煙防止、(3) 非喫煙者の保護、(4) 禁煙支援を提案している。たばこの健康影響 喫煙者は非喫煙者に比べてがんによって死亡するリスクが高くなるだけではなく、虚血性心疾患、脳血管疾患、気管支ぜんそく、胃潰瘍、歯周病等の疾病のリスクとなったり、早産、低出生体重等の妊娠への影響も見逃せない。一方、日本人の知識を平成十年度「喫煙と健康問題に関する実態調査」から見ると、たばこと肺がん、妊娠への影響、呼吸器疾患との関係は過半数が知識を有しているのに比べて、心臓病、脳卒中、歯周病との関係については、まだまだ知識が普及していない状態にあるといえる。 次に、未成年の喫煙防止については、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べてたばこ関連疾患に罹るリスクが増大することからも重要である。健康教育の充実のみならず、社会環境の整備あるいは規制という形で保護する必要がある。平成8年度の「未成年者の喫煙行動に関する全国調査」によると中学1年の男子の喫煙率は7.5%、女子は3.8%、高校1年になると男子36.9%、女子15.6%に増加している。成人の喫煙率が平成10年の国民栄養調査結果でみると男性50.8%、女性10.9%であること、男女ともに喫煙率のピークが20歳代、30歳代の若年成人期にあることを考えると、喫煙者の多くが未成年期に喫煙を開始し、成人期以降も喫煙習慣が持続しているといえる。したがって、将来におけるたばこによる超過死亡、たばこ関連疾患を予防する観点から優先順位の高い健康課題であるといえる。 さらに、非喫煙者の保護について考えてみよう。環境たばこ煙という言葉がある。たばこ煙は、喫煙者が吸い込む主流煙、喫煙者が吐き出す呼出煙、火をつけたたばこから出る副流煙に大別される。これらのうち、呼出煙と副流煙をあわせて環境たばこ煙と呼んでいる。受動喫煙で問題となるのがこの環境たばこ煙である。喫煙による健康被害は喫煙者だけでなく非喫煙者の問題でもあるのは、この環境たばこ煙の存在による。公共の場、職場における分煙を進めるべき根拠もまさにここにある。 最後に、禁煙支援について述べる。平成10年度の「喫煙と健康問題に関する実態調査」によると喫煙者の26.7%が「やめたい」と考えており、「本数を減らしたい」と考えている者をあわせると64.2%にものぼる。現在、市町村、保健所、医療機関等で実施されている禁煙支援プログラムの提供をさらに拡大する必要がある。特に、妊産婦への禁煙支援は優先順位が高い。 以上、健康日本21におけるたばこと健康について述べてきた。国、都道府県、地域保健、職域保健、学校教育の各レベルにおいて、たばこ対策を推進しなければ実効のあがるものにはならず、専門職能団体、学術団体の役割も大きい。保健医療従事者や教育関係者が自ら国民に範を示すことも必要であり、自主的な取り組みを大いに期待したい。
2005.06.16
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心と免疫とストレス反応 不安や恐怖も使いよう 「勝利の秘けつは、恐怖を感じることだ」と言った格闘家がいますが、これもストレス反応の一種を活用した考え方といえます。大きな失敗をした時など、ぞっとした経験はありませんか。このような緊急ストレス時に分泌されるものの内、ノルアドレナリンには恐怖や不安などの感覚を強める作用があります。精神状態とストレス反応が関連していることを示す一つの事例といえるでしょう。修行を積んだ格闘家なら、ノルアドレナリンをカンフル剤として活用することも簡単なのかもしれません。免疫にも影響するストレス 代表的なストレス疾患にはぜんそくや、発がんなど、免疫機構の異常や低下が関与している疾患が少なからずあります。配偶者の死などの強度のストレスを感じている人を調べると、免疫をつかさどる細胞の活性が落ちている、といった調査結果もあります。また、風邪やインフルエンザの感染がストレス反応のきっかけとなる場合もあります。この場合は、免疫反応が活性化することで視床下部や下垂体に刺激が伝わり、その結果コルチゾールの分泌高進が起こることが考えられています。これらのことからも、精神-免疫-内分泌の密接な関係をうかがい知ることが出来るのです。ストレスが強いと健康な生活がおくれません。自分のストレスの程度はどの程度あるのか一度考えて見ましょう。
2005.02.20
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肥満に気をつけ、たばこやお酒はほどほどにし、定期的に運動を――などと言われても、「もう、耳にタコ!」と感じてしまう人が多いのでは?しかし、生活習慣病の芽は若いうちから生じるもの。「年をとってから気をつければいいや」とばかり、好き勝手に暮らしていると、寿命はどんどん縮まってしまう。2/1~2/7は生活習慣病予防週間。これを機に自分の生活を見直してみよう。 平均余命とは? 現在の死亡状況が今後も変化しないと仮定したときに、各年齢の人が、その後生存できると期待される年数のこと。ちなみに、「平均寿命」(生まれてから死ぬまでの期間)とは、0歳における平均余命のことをいう。日本人の平均寿命は、世界でもトップクラスだ。厚生労働省の調査によると、平成15年は、男性が78.36歳、女性が85.33歳。女性は19年間連続世界1位となった。戦後まもなくの昭和22年では、男性が50.06歳、女性が53.96歳だったのに比べ、飛躍的に延びていることがわかる。理由として考えられているのは、淡白な和食文化や、戦後の経済成長とともに食糧事情が向上したことなど。下は平成15年における、おもな年齢別の平均余命だ。さて、あなたの余命はあと何年!?●おもな年齢別平均余命年齢 平均余命 男性 女性 0歳 78.36年 85.33年 10歳 68.72年 75.69年 20歳 58.89年 65.79年 30歳 49.23年 55.97年 40歳 39.67年 46.22年 50歳 30.47年 36.68年 60歳 21.98年 27.49年 寿命を8年も縮めている三大疾病! だが、はたして日本人は今後も世界のトップレベルを維持できるのだろうか。肉食を中心とする、食の欧米化は進んでいる。喫煙率も男性が48.3%、女性が13.6%と、欧米に比べるとかなり高い(2003年JT調べ)。このままでは、せっかく延びた寿命はまた縮んでしまうかもしれない。日本人の死因として最もよく知られているのが、三大死因。すなわち「がん」「心疾患」「脳卒中」などの「生活習慣病」だ。平成15年の厚生労働省調査によると、将来予想される各死因での死亡確率は、0歳、65歳、80歳のどの場合でも、この三大死因が男女とも全体の半分を超えている。これらの疾病が死因にならないとしたときに、どのくらい命が延びるのかを計算したデータがある。三大死因すべてを合計すると、なんと男性で8.71年、女性7.9年も寿命が延びるのだ。つまり、これらの病気にかからないよう気をつければ、男女ともにかなり長生きすることができるはず、というわけだ。●特定疾病で死亡しなかった場合の平均寿命の延び (※平成15年厚生労働省「簡易生命表」による) 生活習慣から余命がわかる!? では、がんや心疾患、脳卒中をはじめとする生活習慣病を防ぐにはどうすればよいのだろう?予防法として、最も有名なのが、カリフォルニア大学のブレスロー博士による「7つの健康習慣」。日常生活において、気をつけるべき点を謳ったものだ。あなたは何個当てはまっただろうか。いずれもとくに目新しさのない、簡単なものばかりだが、侮ってはいけない。下は該当する習慣の数による、年齢別の平均余命。年齢が若いほど、生活習慣によって余命に差が出やすいことがわかる。●あなたは孫の成長を見届けられるか!? もしあなたが男性で45歳だった場合、○が0~3つだと66.6歳までしか生きられないかもしれない。これでは、生まれたばかりの可愛い孫を残してこの世を去ることになってもおかしくない。何より、これからの時代、66歳と言えばまだまだ現役だ。おおいに活躍しようというときに、志半ばで急逝――なんてことにも…。女性の場合でも73.6歳と、亡くなるにはちょっと早すぎる。ところが、同じく男性45歳で、○が6~7つという場合は、78.1歳までは生きられそうだ。女性なら80.8歳。孫も無事成長し、子どもたちも親として落ち着きを見せている頃かもしれない。男性が75歳で、○が6~7つなら86.2歳、女性なら87.5歳まで生きられる計算となる。これならまず、大往生というところだ。 「生活習慣なんて、年をとったら気をつければすむこと」なんてタカをくくっているあなた。45歳にして、その差は歴然だ!死神が忍び寄ってくる前に、日ごろの生活を振り返ってみよう。
2005.02.12
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ダイエットの本来の目的は、病気を予防し健康を保つことだ。したがって、一時的に体重が減っても逆戻りしては意味がないし、誤ったダイエット法によって健康を害してしまっては問題外だ。大切なのは、ダイエットによって太りにくい健康的な生活習慣を身につけ、ベスト体重を維持することだ。◆あなたには ダイエットが必要か? ダイエットを行う必要があるかどうか、その目安になるのが肥満度だ。 肥満を判定する方法の一つに、ボディー・マス・インデックス(BMI)という体格指数がある。BMIは、【体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)】で求めることができる。22前後の人は最も病気になりにくいという研究結果から、日本肥満学会では【身長(メートル)×身長(メートル)×22】を健康体重(標準体重)として推奨しており、【(実測体重ー標準体重)÷標準体重×100(%)】という式から求められる数値を肥満度としている。肥満度が20%を超えたり、BMI26.4を超えた場合、肥満と判定される(表1・2)。表1 BMI指数による肥満の判定(日本肥満学会 1992年) 肥満の判定基準 B M I 肥 満 度 や せ 19.8未満 -10%未満 普 通 19.8以上24.2未満 -10%以上+10%未満 過体重 24.2以上26.4未満 +10%以上+20%未満 肥 満 26.4以上 +20%以上 表2 健康体重(標準体重)に対する肥満度による判定 肥満度 判 定 -20%以上 やせすぎ -20~-10% やせぎみ -10~+10% 普 通 +10~+20% 太りぎみ +20%以上 太りすぎ(肥満) 表3 体脂肪率の判定(成人) 正常範囲 男性15~20% 女性20~25% 肥 満 男性25%~ 女性30%~ ところで、肥満とは、体脂肪が増え過ぎてからだに過剰にたまった状態を指す。からだに占める脂肪の割合(体脂肪率)が男性で25%、女性で30%以上になると肥満と判定される(表3)。 ◆肥満は生活習慣病の誘因 糖尿病や高血圧症、高脂血症などの生活習慣病と肥満は深い関係にある(図1,2,3)。 日本肥満学会では、肥満と生活習慣病の関連性を重視して、1999年の3月をめどにBMIの見直しを進めている。日本肥満学会理事長で、国立健康・栄養研究所老人健康・栄養部の井上修二部長によると、「現在はBMI指数が26.4以上を肥満としているが、糖尿病や高血圧症などの合併率が高まるBMI指数は、それぞれ病気ごとに異なるので、病的肥満である肥満症を定義するにはどこを基準にとるか検討中。BMIに体脂肪率や、体脂肪のつき方なども反映させていくつもりだ」という。 肥満と生活習慣病は切っても切れない関係にある。ダイエットは、その関係を断ち切り、健康な生活を送るために欠かせない。◆生活習慣の改善がダイエット成功の早道 それでは、ダイエットを始めるにあたって何をしたらよいのだろうか。 まず目標体重を設定しよう。体脂肪率や過去の体重変動を考慮し、自分が最も活発に活動できると思われる体重が理想だ。標準体重は目安にはなるが、とらわれる必要はない。現在の体重を5~10%減らせば、肥満による健康障害の心配はかなり解消される。減量のぺースは、1カ月に1~2キログラム程度を目指せば、からだへの負担が少なくてすむ。 実際の方法としては、日常生活の見直しを基本とする「行動修正療法」がすすめられる。食事のとり方や運動不足など太った原因を突き止め、それらを修正して太りにくい生活習慣を身につける。ある程度の時間と手間は必要だが、体重の逆戻りを防いで確実にダイエットするためには有効といえる。 行動修正療法は、以下の手順で進める。.食事、運動、体重を記録する 日ごろの生活習慣を見直すために、食事や運動といった生活習慣を記録する。 常にメモ帳を携帯し、飲食をしたらすぐに飲食した時刻、飲食した物の種類、目安量、どこで・だれと・何をしながら、どんな気分のときに、などを正確に記入する。 運動やそのほかの生活活動については、別のメモ帳に、起床から就寝までの一日の行動を記録する。二つの記録をすぐに見比べられるように、ノートを用意して、左ページに食事日記を、右ページに生活活動日記を貼る。また、毎日の歩行数と体重、体脂肪率を折れ線グラフにするとダイエットの効果が一目で分かる。なお、体重と体脂肪率は、毎日同じ時刻に一定の条件のもとで測るようにする。2.記録を分析して生活習慣を見直す 記録をつけ始めて2~3週間たったら、食事日記の項目について自己分析をする。肥満を招きやすい傾向を表4に示したので、当てはまるものがあれば改めよう。 表4 肥満を招きやすい傾向 食事の時間/食べ方 食事時間が短く、早食い食事の時間が不規則1日1~2食で、1食の量が多い間食や夜食をとる朝・昼食は軽くすませ、夕食に比重を置く夕食後2~3時間以内に就寝する週末のように時間の余裕があると、ダラダラと食べ続ける 食事の内容 揚げ物などの油っこい物をよく食べる菓子類、甘い物をよく食べる清涼飲料水をよく飲む酒をよく飲む外食ではめん類や丼物などの単品料理が多い 食事の量 量を意識せずに食べている出された物は、満腹でも残さずにたいらげる 食事の場所/環境 食事場所が決まっておらず、食卓以外の場所でも食べる一緒にいると、つられて過食してしまうテレビを見たり新聞を読みながら“ながら食い”をする 食事の時の気分 退屈感、イライラ、落ち込みなど特定の感情があると食べ過ぎてしまう甘い物やお酒でストレスを解消している ◆食事の基本は 低エネルギーバランス食 食事からの摂取エネルギーよりも、運動や生活活動による消費エネルギーを増やせば減量できる。しかし、運動などによるエネルギー消費量はさほど多くはないので、ダイエットには食事のコントロールが欠かせない。ただし、絶食や極端な減食をすると健康を損ない、体重のリバウンドを招きやすい。必要な栄養素をとったうえで摂取エネルギーを抑えることが大切だ。 栄養バランスを保つには、一日三食を通して、6つの基礎食品群(表5)のそれぞれから1~2品ずつとるようにすることだ。 おすすめは おふくろの味 ともいえる、1汁2~3菜の和食メニューだ。これなら、主食(ご飯)で糖質、主菜(肉・魚・卵料理)でたんぱく質が、副菜(野菜の煮物やおひたしなど)や汁物からはビタミン類が摂取できる。ここに乳製品を加えれば、不足しがちなカルシウムも補える。 ご飯やパンなどの糖質は太るから、ダイエット中はとらないという人もみられるが、糖質は大切なエネルギー源。ご飯なら一日に茶わんに軽く3杯、食パンなら3枚は必要だ。もちろん食べ過ぎは禁物。丼物やカレーライスなどのように器が変わるときには、目分量で茶わん1杯を超える量は残すようにする。 一日の摂取エネルギーは1,200~1,600キロカロリーに抑える。カロリー計算が面倒でも、「腹八分目を守る」「一口につき30回以上かむようにし、20~30分以上かけてゆっくりと食事する」「各料理とも一口ずつ残すように心がける」といった工夫で、自然に摂取エネルギーが抑えられるはずだ。表5 6つの基礎食品 食品の種別 含まれる栄養素 一群 魚・肉・卵・大豆 たんぱく質(ほかに脂肪、鉄、カルシウム、ビタミンA、B1、B2) 二群 牛乳・乳製品・骨ごと食べられる魚 カルシウム(ほかにたんぱく質、鉄、ビタミンB2) 三群 緑黄色野菜その他の野菜 カロチン(ほかにビタミンC、B2、カルシウム、鉄) 四群 果物 ビタミンC(ほかにカルシウム、ビタミンB1、B2) 五群 米・パン・めん・芋 糖質性エネルギー(芋にはビタミンB1、C) 六群 油脂 脂肪性エネルギー ◆食事パターン別 ダイエット処方箋 ダイエットには、個々の生活スタイルに合わせた工夫が必要だ。4つのケースについて、国立健康・栄養研究所の管理栄養士・健康運動指導士の田口素子さんに分析してもらった。38歳の女性。主婦。小学生の子供がおり、子供の好みに合わせたボリュームのあるメニューになりがち。いっしょにおやつを食べることも多い。同じ物を食べているせいか体重が増えてきた。 「脂肪分、ファストフード、菓子類の間食は控えるなどを心がけてみてください。最近、食生活の乱れによる子供の健康上の問題がクローズアップされていますが、子供にも好きな物ばかり食べさせるのではなく、小さいころからバランスのよい食事についての食事教育をすることも大切です」45歳の女性。パート勤務。女性の多い職場で様々なダイエット情報が飛び交う。スカートのウエストがきつくなってきたので、ご飯の替わりにキャベツの千切りを食べる方法を試している。 「ダイエットの早道は、脂肪分と甘い物を極力控えること。ご飯はエネルギー源となる大切な食品であり、毎食茶わん一杯で太ることは全くありません。むしろ、現在のように主食をとらなかったり、バランスの悪い食生活になると、やせにくくなるばかりか健康を損ねることにもなりかねません」48歳の男性。会社員。会社の健康診断で太りぎみを指摘されたので体重を減らしたいが、昼食はいつも外食。仕事が忙しく、夕食も残業のために外食になることが多い。 「めん類や丼物などの単品よりも、栄養バランスのよい和風定食を選びましょう。外食だと量が多くなりがちなので、主食を減らしてエネルギー調整を。メニューをよく見て、揚げ物が少なく、野菜はできるだけ多い物を選んでください。家での食事は、外食で足りない物を補うよう工夫しましょう」50歳の男性。会社員。40歳代から体重が増加、おなかも出てきた。仕事の関係などで週に1~2回お酒を飲む。家でも毎日晩酌をする。 「お酒は高エネルギーなので、ダイエット中は極力飲まず、飲むならアルコール分の少ない物や、水割りなどをゆっくりしたペースで飲むようにする。飲み過ぎないように気をつけ、つまみは冷ややっこ、刺し身、煮物、枝豆など低エネルギーで、たんぱく質やビタミン、ミネラルが豊富な物を選びましょう。飲んだ後にラーメンなどの夜食をとることは禁物です」 ◆運動をプラスして 太りにくいからだをつくる 運動による消費エネルギーはあまり多くない。しかし、からだを動かせば、エネルギーの消費量は確実に増え、太りにくい代謝状態に変えることができる。 そこで、日常生活の中でまめにからだを動かすことが大切だ。エレベーターの替わりに階段を利用し、通勤や買い物の際にはできるだけ歩く。掃除や洗濯を毎日行うのもよい。 さらに、有酸素運動をプラスしよう。食事制限だけでは肝心の体脂肪はなかなか減らず、筋肉や骨などの体脂肪以外の組織も減少してしまうことがある。有酸素運動には、体脂肪を燃焼させる効果がある。 有酸素運動にはウォーキング(速足歩き)、サイクリング、水泳などがある。体脂肪が燃え始めるまでには運動開始後15~20分かかるので、運動効果を上げるために30分~1時間、休まずに続ける。運動の強さは軽く汗ばむ程度で、心拍数でいうと1分間に120前後が理想だ。ウォーキングなら、分速80~90メートルのスピードが目安だ。これを1週間に5~6日、できれば毎日行う。生活活動も含めた一日の歩数は10,000歩を目標にしよう。 ダイエットを続けていると、体重の減り方が鈍ってくることがある。これは、少ない摂取エネルギーに合わせて、からだが基礎代謝量(呼吸や心臓の拍動といった生命活動のために安静時でも消費されるエネルギー)を減らしてしまうからだ。基礎代謝量を維持するためには筋力トレーニングも大切だ。 そもそも人類は、狩猟・採集生活のころから食料不足と闘ってきた。そのような歴史の中で、食料難のときでもエネルギー不足に陥らないよう、食べた物を体脂肪として蓄える能力が培われたのだ。この能力を備えながら、飽食、車社会である現代で生活していれば、だれでも肥満になる可能性はある。肥満度の判定で「肥満」とならなかった人も、油断をせずに、活動的な生活を心がけてほしい。
2005.02.11
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日本人の食生活で、近年、著しく変化してきた点は、外食の増加といえるでしょう。外食は昭和40年代から増大し、現在では、いわゆる外食比率が30%を超えるレベルにまで達しているのです。 外食とは「家庭の外で食事をとること、またはその食事」を指す言葉ですが、持ち帰りの弁当、ファーストフードのテイクアウト、出前なども含めた、幅広い捉え方がされるようになってきました。今後、外食はさらに増大の傾向をたどると考えられます。 日本人の食文化にあって、「食の外部化」はどのような影響を及ぼしてきたのでしょうか。肉類が中心となる食の西洋化と成人病の関係が叫ばれる今日、健康・栄養面に及ぼす影響は、決して少なくないはずです。 諸外国に例をみない急速な高齢化を背景として、国民の健康づくりの推進が急務とされている現在、その根幹ともいえる食生活に手軽さ、簡便さを求め、外食の依存度が高まっていく風潮は、大きな問題といえるでしょう。ここで改めて、栄養面からみた外食、その問題点と注意する点について、考えてみましょう。外食の概念 外食と一言でいっても、実に多様化しています。現在では、ファーストフード、コンビニエンスストアなどのテイクアウトも含めて「家庭で,調理をしない食事」を総じて外食と呼んでいます。そこでまず、便宜上、外食を3つのパターンに分類してみましょう。1 必需的外食・最も一般的な外食 サラリーマンや学生が、ふだんの昼食を社員食堂や学生食堂、町の飲食店で済ますケースがこれにあたります。最も一般的で、空腹を満たし、からだが必要とする栄養を補うための外食といえるでしょう。もちろん、昼食に限らず、残業の際に出前でとるタ食などもこれにあたり、独身男性や、単身赴任の男性などで、3食とも外食で済ますというケースもあります。2 嗜好的外食・楽しむ要素が大きい外食 必要な栄養を補給するといった目的よりも、美味しいもの・好みのものを楽しむ要素が大きい外食です。仕事帰りに友人や仲間と、あるいは休日に家族とレストランや専門料理店などに出かける場合がこれにあたるでしょう。内容的にも、ふだん(必需的外食)よりも美味しいもの、好みのものを選んで食ベ、さらに店の雰囲気やサービスを楽しむといった要素も大切となる外食です。3 簡便的外食・手軽にすませたいときの外食 ふだんの食事の中で、特に手軽にすませたい、調理の手間を省きたいときに利用するファーストフードのテイクアウト、持ち帰りの弁当などがこれにあたります。職場での昼食、また、単身者や共働き世帯、あるいは高齢者世帯などに需要は増大しています。各自の生活リズムがばらばらになって、いわゆる「孤食化」の傾向が高まり、また24時間営業のコンビニエンスストアなどが増えたことも大きな理由といえるでしょう。 このように、外食のパターンは多様化しています。そして、外食率も20~40歳代の男性、20歳代の女性を中心に確実に増加してきているのです。外食の栄養成分 昭和40年代から50年代にかけて、日本人の食生活は、所得の上昇、家庭用冷蔵庫の普及、食料の流通の発達などに伴って、著しく改善され、以来日本人の栄養摂取量は、平均的にみて、ほぼ充足している状況にあるといえるでしょう。しかし、インスタント食品、ファーストフードの普及などが、特に若い世代の食生活を一変させ、栄養のバランスということになると、かなりの問題点があげられます。もちろん個人差はありますが、エネルギーの過剰摂取、脂肪のとり過ぎ、加工食品に依存することによる栄養の偏り・・・・・・。これらは、外食の増大に伴って増えてきた問題ともいえるものです。 1日の食生活の1/3を外食が占めている現在、成人病の予防、健康増進の面からも、あらためて外食の栄養成分を認識しておくことが必要でしょう。 まず、料理の種類別に、その栄養成分をみていきましょう。1 めん類・具の食材が多いものを選びたい ふだんの昼食をめん類だけで済ませている人も多いと思います。めん類は、使用される食材料がきわめて少なく、かけそばなどは、薬味を人れても2~3品にとどまります。したがって、1食だけではどうしてもたんぱく質、脂肪、ミネラル、ビタミンなどが不足がちになります。できたら五目そば、鍋焼きうどんなど、具の食材数が多いものを選ぶようにしたいものです。 かけそばと五目そばの栄養価を比較してみると、エネルギーはかけそばが310kcal、五目そばは640kcal、たんぱく質は10.3gに31.4g、脂質は2.0gに7.0gと、それぞれ2倍、3倍、3.5倍と、五目そばの方が栄養的に勝れ、バランスもとれています。2 どんぶり物・なるベく野菜と一緒にとりたい 天丼やかつ丼などの、いわゆるどんぶり物は、めん類に比べれば、使用される食材も多く、特に卵、肉類の入ったものを選べば、栄養的にもいくらかはよくなります。ただし、どんぶり物だけで食事を済ませては、バランスの面で問題が残ります。 たとえば親子どんぶりの栄養価をみてみると、たんぱく質が高く、ビタミンはきわめて低くなっています。なるべく野菜と一緒にとりたいものです。3 定食・単品ものには副菜をつけたい いわゆる定食メニューには、比較的多くの食材が使われているので、めん類やどんぶり物に比べるとバランス的にかなりよくなります。ただし、ごはんに焼き魚や焼き肉などの単品を添えただけのものには、野菜、大豆製品などの副菜をつけるようにしたいものです。栄養成分がアンバランスにならないように気をつけて下さい。4 持ち帰りの弁当類・多数のおかずが入っているのを選びたい 最近では、持ち帰り弁当のメニューも実に多種類になっていますが、栄養のバランスからみれば、幕の内弁当のように、多数のおかずが入っているものを選ぶのが賢明といえるでしょう。とんかつ弁当、からあげ弁当などは食材の品数が少なく、脂肪、たんぱく質が高い偏った栄養バランスになるので、これらを食べるときは野菜などを添えるようにしてください。5 ファーストフード・あまり頻繁にならないようにしたい ハンバーガーやフライドポテト、フライドチキンなどは手軽なものですが、どうしても脂肪が過剰になる傾向があります。あまり頻繁にならないように十分な注意が必要でしょう。外食の問題点 3日問の9回の食事のうち、外食が占める割合を調査した報告があります。平成3年のデータによれば、平均18.9%。年代別にみると、20~29歳の男性が30%と最も高く、その年代の女性は約20%となっています。 前述した3つのパターンごとに、外食の問題点を考えていきましょう。・必需的外食‐‐‐朝・タ食で野菜、海藻、乳製品を多くとる サラリーマンの多くがふだん昼食をとるのは、そば・うどん店が最も多く、次いで定食屋となっています。そば・うどん店では、どうしても単品のメニューで済ましがちです。前にも記した通り、使用される食材の数が少なく、特にミネラル、ビタミンの供給源である野莱類、海藻類、牛乳・乳製品が不足するので、朝食、タ食で、そういった食品を多くとるようにしてください。・嗜好的外食‐‐‐頻度が多いときはメニューの選択に注意 休日などに家族で外食する場合、最も人気の高い料理は寿司で、中華科理、和食と続きます。1回の食事としてみれば、栄養のバランスに心配がありますが、月に1~2回程度という頻度を考えれば、問題は少ないでしょう。ただし、それが高い頻度となると、メニューの選択に十分な注意を払う必要があるでしょう。・簡便的外食‐‐‐ビタミン、ミネラルの摂取に心くばりを・「1日に30品目」を目安に、なるべく多種類の食材の外食を 私たちのからだは、食事によって得た栄養素をエネルギーとして活動しています。健康の維持、増進にとっての第1条件は、からだが必要とする栄養素をバランスよくとることです。栄養素とは、脂肪、たんぱく質、糖質の3大栄養素に加えてビタミン、ミネラル、食物繊維などで、それぞれを含む食品を、なるべく多くの種類をとることが大切です。「1日に30品目」が理想的な目安となります。 そして、献立の上では「主食、主菜、副菜」をそろえることも必要なのです。特に日本人には不足がちだといわれるビタミン、ミネラル、食物繊維を充足させるために、ほうれん草などの緑黄色野菜を欠かさないようにしましょう。 なお、特に食事制限を受けていない人の、エネルギー摂取量に占めるたんぱく質、脂肪、糖質の比率は、それぞれ15~20%、20~25%、55~60%程度が理想とされています。ただし、糖質のうち砂糖類は10%以内に抑え、穀物類、いも類からの摂取が50%以上となるようにしましょう。 外食の3つのパターン別に、それぞれの注意点をみていきましょう。1 心需的外食の場合・1週間の中でなるべく変化をもたせたメニュー選択を サラリーマンなどのふだんの昼食で心がけたいことは、まず、毎日同じメニューのものを食べないということです。1週問の中で、なるべく変化をもたせたメニュー選びをしてください。その際、なるべく単品メニューよりも、定食を選ぶようにしたいものです。そして付け合わせの野菜類も残さず食べましょう。成人病予防の上からも、塩分の過剰摂取は避けたいものです。めん類を食べるときには、汁は半分残すことを実践してみてください。 また、食後の喫茶店では、コーヒーではなくミルクを飲むようにすれば、栄養のバランスはだいぶよくなります。2 嗜好的外食の場合・アルコール類を飲むときは、エネルギー過剰摂取に注意 たまに家族そろって美味しいものを楽しく食べる、といった意味合いの強い嗜好的外食ですから、メニューの選択に、あまり気をつかう必要はないでしょう。ただし、単身者で外食の頻度が高いような場合は、必需的外食の注意点に加えて、次のような点にも留意するようにしてください。 まず、なるべく多種の食材を使用しているメニューをえらぶようにすること。野菜料理を必ず1品はとるようにしましょう。また、アルコール類を飲むときは、糖分や脂肪、塩分を多く含む料理は控えめにしてください。おわりに 食事は、とても大切なものです。そして、私たちは食事に、ただからだに必要な栄養素をバランスよくとることだけを求めているのではなく、嗜好を満たし、楽しみ、安らぎをも求めているのです。 さらには、女性も積極的に社会参加を果たし、料理や後片づけの簡便化を望んでいる面もあるでしょう。 サラリーマンにとって昼食は、外食が当たり前になっています。手軽な外食の場は、さらに多様化していくことでしょう。それだけに、食事の栄養バランスを考えることが、健康管理の重要なポイントになってきました。これまでに述べてきた点を考慮して、バランスのよいメニューを楽しくいただくことを心がけてください。
2005.02.09
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笑いも百薬の長 しのびやかに笑うことをクスリと表現するが、表題のクスリは「薬」の意味である。昔から「酒は百薬の長」と言われてきた。適量を飲めばからだにいい。しかし飲み過ぎるとかえって害になる。近代医学では「笑いも百薬の長」と言うようになった。動物で笑うのは人間だけであり、笑いとからだ、笑いと病気の相関関係が次第に明らかにされてきたのである。笑いは血行をよくし、気持を明るくし、免疫機能を高める――ということが医学的に実証されている。昔の人はこうした知識を持ち合わせていなかったが、笑いの効用については十分に心得ていた。笑いは世界共通 中国では古くから「笑門来福」と言い、「一怒一老、一笑一若」と言いならわしてきた。日本でも「笑う門には福来たる」と言われているし、「怒ると老けますよ。笑うと若返りますよ」という言葉には妙に説得力がある。アフリカの諺に「明るい笑顔は家の中の太陽である」というのがある。結婚披露宴の祝辞に使うにはもってこいの言葉である。お正月の行事にも笑いはつきものであった。三河万歳は身ぶり手ぶりよろしく面白い歌い文句で門づけをしたし、家の中では家族が福笑いの遊びに興じたが、いまではすっかりすたれてしまったようだ。山口県防府市の「笑い講」はいまでも行われている。年末に当番の家に十数人が集まり、その年を無事に過ごせたこと、新しい年がよい年になることを祈念して、大きな声で笑う行事である。最初のうちはぎこちなさが出たり、空笑いであったりするのだが、そのうちに皆が腹の底から笑うようになる。聴いている方も思わずつりこまれて笑い出してしまうほどである。年末のあわただしい中で、いかにものどかな行事と言える。笑いの系譜 笑いの系譜を辿ってみると、最初はなんといってもアメノウズメノミコトの歌と踊りである。アマテラスオオミカミが天の岩戸に隠れてしまい、あたり一面は真っ暗闇。神々が困り果てているときにアメノウズメノミコトが薄衣を身にまとって面白おかしく歌い踊った。それを見て神々は囃したて笑い声をあげたのでアマテラスオオミカミが何事ならんと岩戸を少し開けたところ、タヂカラオノミコトが力まかせに引き開けたので、この世は再び明るくなったという神話である。笑い声はこの世の中を明るくする力を持っている。 鳥羽僧正の描いたといわれている「鳥獣戯画」は、いつみても面白くて楽しい。能・狂言の前身とされる申楽(さるがく)も、なかなかに滑稽味がある。豊臣秀吉にはお伽(とぎ)衆と呼ばれる人たちがいて、中でも有名なのが曽呂利新左衛門。頭の回転が早く頓智がよくきいたという。頓智と言えば一休禅師も大変な人であった。笑いは人心収攬(じんしんしゅうらん)にも使われるが、逆に時の権力者を風刺、揶揄(やゆ)する場合にも使われる。京の都大路に貼り出された「落首」がそうであり、一休禅師もなかなか辛辣な言葉を発している。江戸時代になると狂歌、川柳が盛んとなった。これに都々逸が加わって、現在でも時流を風刺している。漫画もまた全盛をきわめている。落語の元祖は江戸時代末期の三笑亭可楽とされているが、漫才、漫談も含めていわゆるお笑いも根強い人気を保っている。芝居や映画にも喜劇といわれる分野がある。笑いで病気を克服 カナダの医師ハンス・セリエがストレス学説を発表したのは1936年。米国のジャーナリストのノーマン・カズンズが難病の強直性脊椎炎にかかりながらも、生きる意欲を強く持ち、笑うことに専念し、ビタミンCを大量摂取することによって病気を克服したのは1964年。ストレス学説にヒントを得て、物事をポジティブに考え、とにかく笑うことで病気と闘ったわけである。それが見事に奏功し、論文にまとめて発表したところ、世界中から大変な反響を呼ぶことになった。日本でも筑波大学の小田晋先生は「一日に100回は笑ってほしい」と呼びかけ、倉敷市の柴田病院の伊丹仁朗先生は「生き甲斐療法」を実践している。日本医科大学の吉野槙一先生は慢性関節リウマチの治療に落語家を登場させた。旧約聖書「箴言」の一説に「喜びに満ちた心は、薬のようによい働きをする」とあるのがヒントとなって、患者さんに一時間落語を聴いてもらった。結果は上々吉であった。笑いの効用 医学博士の花岡満男先生は、笑いの効用を 次のようにまとめている。 いくら使っても減らないし、無料。 長時間大量に使っても副作用がないし、中毒症状も起こさない。 周囲も陽気になり、活力が湧いてくる。 腹の皮がよじれる、脇腹が痛くなるほど笑ったことが最近あるだろうか……。
2005.02.07
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疲労とはなんだろう 私たちは日ごろ、なにげなく「疲労」とか「疲れた」という言葉を使っています。しかし、私たちが日常体験する「疲労」はどのようなメカニズムで発生するのか、疲労の本態はなにか、ということは、いまのところ明らかにされたとはいえないのです。1 疲労とはどういう現象か・努力のしすぎによる危険を避け、休息を求めている状況である 仕事を続けていると、疲れたなと感じ(疲労感)、作業能率が下がってきます。主に眼とか、使っている筋肉の機能にも変化があらわれます。そして、これ以上はむりだ、ひとやすみしたいなという欲求がおきてきます。これが疲労という現象です。 つまり、疲労とは「仕事の結果、体内に変化がおこり、そのまま続けるとやがてへばることが予測されるので、休息を求めている状況」と考えられます。努力のしすぎによっておこる危険を避けるための“安全装置”が発動した現象ともいわれています。 疲労は、病的状況ではないので、活動を中止し、休息をとるともとの状態にもどります。からだが、その時点でどの程度の休息を要求しているかによって、疲労の度合いがはかれることになります。2 疲労にはどんな原因があるか 疲労のあらわれ方やメカニズムはきわめて複雑です。疲労の原因として次のような仮説が立てられています。・有毒物質の蓄積により疲労がおこるという説 ある特殊な物質が体内に蓄積される結果、疲労がおこるという説です。疲労をおこす物質としては、筋肉の収縮を抑える物質、たとえば乳酸や、その他の代謝産物があげられています。しかし、これらの物質と疲労との関係は必ずしも明らかではありません。・エネルギー源の消耗により疲労がおこるという説 筋肉の活動にも、精神的な活動にもエネルギー源が必要ですが、そのエネルギー源の消耗によって疲労がおこるという説です。たとえば、激しい筋肉作業で筋肉中のグリコーゲンが使われて、蓄えが少なくなると筋肉疲労がおこるという考え方です。しかしエネルギー消費の少ないOA機器操作などや、精神作業の場合にはあてはまりません。 ・からだの内部環境の失調により疲労がおこるという説 私たちのからだには、内部環境を一定に維持するしくみ(ホメオスタシス)があります。外界や内部から精神的、身体的に強い刺激をうけると、このしくみがくずれ、疲労がおこるという説です。たとえば、暑さ、寒さ、あるいは飢え、睡眠不足、さらには不安、焦燥などの刺激が、からだに耐えきれないほど強くなる。つまりストレス状態が、精神疲労の主原因になるという考え方です。 このように、いろいろの説が唱えられています。これらのことが全体として統合されて、疲労という生命現象が現れてくるということでしょう。3 疲労はどのように分類されるか・「精神疲労-肉体疲労」「全身疲労-局所疲労」という分け方について 主に心理的、精神的緊張を強いられる作業でおこるものを精神疲労、筋肉作業が原因でおこるものを身体(肉体)疲労と呼ぶことがあります。このような分類は、人間の諸機能を便宜的に2つの側面に分けた考え方です。実際には、精神だけを使う労働もなければ、筋肉だけが働く身体活動もありえません。 また、疲労がおこる部位別にみて、その作業に主として働いた筋肉や器官に現れるものを局所疲労、全身に及ぶ疲労を全身疲労と呼んだりします。・[急性疲労」と[慢性疲労」という分け方が実際的 急性疲労-その作業を始めて数分から数十分しておこる疲労です。急性疲労のしるしとしては、たとえば、重量物を取り扱う作業では、息切れや心拍数の増加がおこってきます。キーパンチ作業のような高密度の連続操作では、腕の筋肉痛、エラーが増えてきます。そのまま作業を続ければ明らかなへばり状態にいたります。 ちょっと手を休めては、作業を続けて、数時間それをくり返していると、しだいに疲労は進んでいきます。結局、長めの休憩時間(昼休みなど)が必要になります。(長時間立っている仕事、対人折衝などのときにも、このタイプの疲労がみられます。) 慢性疲労-その日の疲労が、休養や睡眠によって解消されないうちに、つぎの疲労が重なると、しだいに疲れがたまってきます。数日から数か月にわたって蓄積されたものが、慢性疲労の状態です。作業中にすぐ疲れやすく、無気力となって、労働意欲も低下してきます。 こうなると、毎日の生活周期のなかでは、容易には回復しません。やがて健康障害をまねき、欠勤しがちになったりします。 一日働いたあとの疲れは、ふつうはひと晩の睡眠によって回復します。しかし、労働が過重だったり、長時間にわたるようなときには、翌日に疲労がもちこされます。眠け、だるさ、注意力散慢などで作業能率が落ちるだけでなく、疲労のおこり方も、ふだんとちがったリズムになってきます。疲労をどうやって少なくするか-職場における予防対策 慢性疲労状態や健康障害を予防するには、まず疲労をおこす原因を取り除くような対策が必要です。1 作業自体による疲労の発生を軽減する・作業には“ゆとり”がぜひ必要 作業中にちょっと手を休めたり、眼を閉じたり、椅子から立ち上がって背伸びをしたりすることを「自発休息」といいます。これより少し長めの休息は「休憩」です。こうした作業の合間のちょっとした休息が疲れを防ぐことは、私たちは体験として知っています。 作業中に発生した疲れは、その場その場で処理できればいちばんよいわけです。作業負荷がきびしければきびしいほど、自発休息や休憩のとれる時間的な“ゆとり”がぜひ必要です。 連続して行う作業では、仕事の区切りのつけにくいこともあるでしょう。そのような場合には、一連続の作業時間を短縮します。たとえば、キーパンチ(連続穿孔作業)は60分に制限し、合間に10~15分休むというように、一定の割合で休憩をとり入れます。早いうちから休んだほうが結局は有利です。・機器や設備を“人間に合わせる”ことが大切 機器が使いにくかったり、作業面や椅子の高さがからだに合っていないと、わるい姿勢を強いられ疲労をまねきやすくなります。 人間の動作や反応をきちんと考えにいれた、働きやすい設備や作業環境をととのえることが大切です。・疲れをやわらげる作業環境をととのえる たとえば流れ作業の場合は、単調さや拘束されている苦痛感を少なくすることが重要です。音楽(バックグラウンドミュージック:BGM)を流すのもよいでしょう。 温度、照明、騒音なども、疲労と関係してきます。とくに、複雑な作業や精密さが求められる作業では、ちょっとした“うるささ”“やかましさ”が作業を妨げ、疲労を生むといわれます。2 作業者教育や作業管理 正しい動作、作業のやり方などを習熟するよう努力(教育、養成)することも重要です。慢性疲労は、作業密度が高く、休憩時間のとれない場合、規制あるいは責任が過大で、作業の達成感が得られない場合、また対人折衝が複雑な場合に多くみられます。その人に合った適正な配置、勤務のローテーションを考え、行動の自由を増すなどを考えることも必要です。疲労をどう回復するか 疲労から回復する基本は、なにも特別なことではありません。適正な栄養と休養をとることです。このことはまた、疲労を予防するための個人的対策ともなります。1 休養による疲労回復促進・最良の休養はよく眠ること からだにとって、睡眠は最良の休養です。しかし、いつも遅くまで残業したり、通勤に時間がかかるような場合は、どうしても寝不足がつづいてしまいます。また、夜勤明けに昼間眠る場合には、睡眠が妨げられがちです。 睡眠時間の短くなった分は、睡眠の深さで補う必要があります。熟睡できるような環境をくふうしたいものです。・入浴も効果的 入浴は血液循環をよくし、筋肉の疲れをいやしてくれます。疲労回復には、40度前後のあまり熱くない湯にゆっくり入るのがよいとされています。・“積極的休養”で疲労回復をはかる2 栄養補給による疲労回復促進・自分の身体活動に見合った栄養摂取を心がける どの程度のエネルギーおよび各栄養素をとったらよいかは、『日本人の栄養所要量』(厚生省)が参考になります。身体活動量に応じて生活活動強度「軽い」「中等度」「やや重い」「重い」の4段階別に、男女のエネルギーおよび、たん白質、脂肪、カルシウム、鉄、ビタミン類の所要量が示してあります。・たん白質についての注意 自分の身体活動量に見合った十分なエネルギー量をとっていれば、筋肉労働をするからといって、とくにたん白質量を増やす必要はないでしょう。ただし、睡眠不足とか、昼夜逆転した生活リズムの乱れなどのストレスで、また長時間とくに激しい運動をしたときは、たん白質がからだから失われます。・ビタミンやミネラルについての注意 ビタミンB1は激しい筋肉労働で、ビタミンCは発汗を伴うような運動や各種のストレスによって、体内での消費が高まります。 また、高温環境での作業では、汗の中にナトリウムが失われます。その他のミネラルも、運動による疲労時、ストレスなどによって失われます。・消費に見合った栄養補給が大切 実際には、労働や運動によるエネルギー消費量の増大にともない、食事摂取量も増加するのがふつうです。この増加分を、バランスのよい食事でとるよう心がけることが大切で、これはたん白質だけでなく、ビタミン、ミネラルの摂取増加にもつながります。3 嗜好品や保健薬について・適量を心得て利用 仕事の前や、ひと休みして飲む1杯のお茶やコーヒーは、生活の休止符としての意義もあります。お茶類に含まれるカフェインは、眠けや疲労感を抑え、思考力や運動機能を高めてくれます。 少量のお酒(アルコール)は食欲を増し、眠りを誘い、疲労の回復をうながします。 ただし、お茶もアルコールも、適量を過ごせば、害ばかりが目立ってきます。 また、肉体疲労などの場合の栄養補給をうたった、いわゆる保健薬も市販されていますが、表示されている用法・用量をよく守って適正に使用することが必要です。疲労の予防・疲れをためないように休息や休養を適切にとる 疲労はその局面局面で処理し、疲れをあとにもちこさないのが原則です。そのためには、“ゆとり”のある作業を組み立てることが求められます。適切な休息・休憩をとり入れましょう。 疲れがたまれば食欲不振や睡眠不足をおこしやすく、ひいては病的状態におちいることにもなります。体調や生活をコントロールし、疲労を予知して休養を先取りするなど、自分自身に合った疲労予防対策を編み出すことも必要でしょう。・基礎体力を高める 体力が低下すると、疲れを感じる度合も増えてきます。体力のある人では、疲労のあらわれる時間が遅くなり、そして疲労からの回復ははやまります。積極的に運動をし、基礎体力を高めておくことが必要です。・必要十分な栄養をとる 日ごろからバランスのよい食事で、基礎体力を養っておくことも大切です。必要な量のたん白質その他の栄養素をすべてきちんととっていれば、疲労の予防だけでなく、回復もはやめます。むりなダイエットなどしていたら、力もでません。朝食は一日の源、必ず食べるようにしましょう。・リラックス法を身につける緊張などのストレス状態から、気分転換したり、リラックスするのも重要なことです。自分なりのリラックス法を身につけることも大切です。最後に疲労のおこるメカニズム、その予防と回復策について述べてきました。毎日の疲労の回復には、睡眠を主とした休養、バランスよい食事による栄養の補給をはかります。そして疲労の予防には、疲れをためないこと、日ごろからよく運動をして基礎体力を高めておくことがなにより大切です。
2005.02.04
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最近の私達の食生活は、とても豊かになりました。しかし、食卓を家族団らんの場にして楽しく食べるという点では、問題のある家庭が多いことが指摘されています。 たとえば、以前は家族そろって食事をしていましたが、生活環境の変化や生活時間の過ごし方などによっては、家族が別々に食事をすることが多くなっています。 そして、そのまま食べられる食品だけで食事をすませるなど、食事作りを軽視する風潮が見られます。一方、昔から伝えられてきた食事づくりの知恵や家庭の味も失われつつあります。 また、食事時間の乱れや食事のとり方の乱れといった生活リズムの乱れから、健康を損なう人も多くなっています。 そこで、食事を生活の楽しいひとときとして、また家族や友人とのコミュニケーションの場として、見直すことが大切です。ここでは、心のふれあう楽しい食生活を中心に、説明しましょう。 人間の社会生活を形づくっている私達の食生活や食文化は、大部分が家庭において家族と一緒に食べることから成り立っています。 ですから、一人暮しの人が増える、孤食化が進むといったことや、手作り料理が少なくなってきたこと等は、人間社会のあり方やヒトとしての生き方に大きな問題を投げかけています。 国立民族学博物館の石毛直道さんは、人類文化を特長づけるものとして、「ヒトは料理する動物である」、「ヒトは一緒に食べる動物である」と言っています。 ヒトの特権としての食事を作ること、一緒に食べることは、これからも是非続けてゆきたいものです。 昔は一日二食であった日本人の食事も、江戸時代の後期に一日三食が定着してきました。そして、現在は一日三食を規則的にとることが、健康面でも効果的であると言われています。 いつも決まった時間に食事をとっていると、いつの間にか体のリズムとして定着し、その時刻が来ると消化液の分泌、腸のぜん動などが起り、食事をとる準備が整ってきます。 ですから、一日三食をリズムよくとることは、食物の消化吸収や栄養素の利用がよくなり、健康によい影響を与えることになります。 ところで、私達大人の普段の食事を見てみますと、忙しいと言って5分ぐらいで簡単に食事をすませたりもします。また、朝食を抜いたり、昼食時間が遅れたり、夕食が午後の10時、11時といった時間になることもあります。 こうした場合には、食事のリズムもくずれ、健康を損ねている例も少なくありません。 これは、望ましい食事のとり方をあげたものてす。健康的な食事のとり方のポイントは、・ゆっくりよくかんで食べる・なるベく同じ時刻に食べる・欠食せず一日三食を規則正しく食べる・夜食はさける・家族そろって楽しく食べることです。 ところで、どんなごちそうでも一人で食べては食欲が起らず、楽しくないものです。 心配ごとがあったり、イライラしている時などは、消化管も収縮し、消化液の分泌も悪くなります。 また、ストレスは、たん白質、ビタミンC、カルシウム、マグネシウムの消費を高めます。ですから、ストレスの多い人は、これらの栄養素を十分とる必要があると言われています。 ストレスの多い時に、食事やお酒で発散しようとすると、食べすぎや飲みすぎになって、肥満を招いたりアルコール依存症になる人も多いようです。 現代のようなストレス仕会を健康に生きるためには、毎日の生活を規則正しくしたり、規則的に食事をとる習慣をつけましょう。 そして、栄養のバランスのよい食生括をして、運動もかかさず、充分に睡眠と休養をとり、生活のリズムを整えることも大切です。 最近は主婦の半分以上が、外に働きに出ている時代です。手を抜くつもりがなくても、買い物をする時間や調理時間が短くなるために、調理済食品や冷凍食品を増やさざるを得ない人も多いと思います。 でも、なるべく手づくりを心がけたいものです。家庭の味、手づくりの味は、いつの時代でも家庭を平和に保つ潤滑油であると言われています。 家庭の手づくり料理は、これからも家庭の味として、親から子へと伝えてゆきたいものです。 ところで、最近はどこの食料品店を見ても、加工食品で一杯です。大型スーパーともなると、8,000種類にも及ぶと言われている時代です。 加工食品に偏ると、・動物性脂肪のとり過ぎになりやすい・食塩のとり過ぎになりやすい・野菜が不足し、ビタミン・ミネラルが不足しがちになる・食物繊維が不足しがちになる・献立のバラエティが乏しくなって、栄養的にも偏ってくる 加工食品は料理の素材を考え、あたたかみのこもった手づくりの副菜と組み合わせる配慮が大切です。 特に、食物繊維やビタミンA、C、ミネラルの供給源となる野菜類を付け合わせるなど、付加価値づけを行いましょう。 現代は飽食の時代と言われ、物の豊かな時代になりましたが、非行児などの話を聞くと心の貧しさが気になる時代ともなりました。 ある生徒の食事調査の例で、子供の非行と食事のかかわりを見ますと、非行児は家庭ではほとんど食事をしないで、外でスナックやインスタント食品ばかり食ベ、 栄養が偏り、性格もイライラして非行に陥るようです。子供たちの健全育成、非行防止のためにも、家族そろって楽しく食べることの意義を見直しましょう。 夕食だけでも家族そろってし、その日の出来事を報告しあえるような語らいの場として、また、子供たちにとっては、マナーを学ぶ場としたいものです。 また、日本人の「お茶好き」は有名ですが、食後のひとときをお茶て楽しく語らう心のゆとりも持ちたいですね。 最後に、老年期の食生活は成人病(生活習慣病)、老人病を予防し、健やかな老年期を過ごすために、量と質の両面を考えることが大切です。 老人食は、・バランスのとれた栄養をとることによって、老化を少しても遅らせる食事・一人ひとりの老人の体の健康状態に合わせた食事・温かみのある、思いやりのある食事の3つのポイントを重点に考えたいものです。 つまり、老年期の栄養はその人の活動状況や健康状態によって著しい差があり、同じ70才でも活動的な社会生活をしている人と、すっかり老い込んだ人とは、大違いだからです。 それに、老年期の食生活は、それぞれの人の生活圏や生活環境によって異なりますから、たとえ問題があっても急に変えることはむずかしいことです。 また、老人にとって食事は、なんといっても日常生活の最大の楽しみです。老人の生きがいにも通じますから、温かみのある、心のこもった、思いやりのある食事を作ってあげたいものてす。 人間にとって、食事は体を養うだけではなく、食文化を育て、人間関係をも育てます。 食べることの楽しさを味わえるのは、人間だけです。これからも食事の場は、単に食事を共にするだけではなく、コミュニケーションの場として、大切にしたいものです。皆さんも、心のふれあう楽しい食生活を送り、健康づくりに役立てて下さい。 健康づくりのための食生活指針は、ご覧のように5つの項目からなっています。1 多様な食品で栄養バランスを ・1日30食品で栄養バランスを ・主食、主菜、副菜をそろえて2 日常の生活活動に見合ったエネルギーを ・食べすぎに気をつけて、肥満を予防 ・よくからだを動かし、食事内容にゆとりを3 脂肪は量と質を考えて ・脂肪はとりすぎないように ・動物性の脂肪より植物性の油を多めに4 食塩をとりすぎないように ・食塩は1日10g以下を目標に ・調理の工夫で、むりなく減塩5 こころのふれあう楽しい食生活を ・食卓を家族ふれあいの場に ・家庭の味、手づくりのこころを大切に以上です。
2005.02.03
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健康でいきいきとした毎日を送りたい。これは、皆さん誰もが願うことです。 しかし、現代社会では都市化、工業化などによって大気汚染が進み、ストレスも多く、不規則な生活を送りがちとなり、健康を維持していくことが難しくなっています。 ですから私たちは日頃から、バランスのとれた食事を基本にするとともに、健康を守る働きのある栄養素の一つでもあるビタミンも十分にとる必要があります。 ビタミンには、生きていくために必要な栄養素としての働き(生理作用)のほかに、病気を予防する働きがあります。 ビタミンにはたくさんの種類があって、それぞれがいろいろな働きをしていますが、その中でも最近注目されているのが抗酸化作用をもったビタミンです。 抗酸化ビタミンの主なものには、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンがありますが、これらのビタミンが、がんや成人病を予防したり、老化を遅らせる働きもあることがわかってきたのです。 ここでは、この抗酸化ビタミンについてみていくことにしましょう。 「みなさん、こんにちは。私はビタミン博士です。少しむつかしいのですが、いま話題の抗酸化ビタミンとは一体どんなビタミンなのかということについて、お話しましょう。」「抗酸化ビタミンとは読んで字のごとく、酸化を防ぐビタミンです。」「では、酸化するということはどんなことなのでしょう。 例えば、皮をむいたりんごが茶色く変色したり、油が古くなって変質したり、また包丁が錆びたりしますね。 これらはすべて酸化が原因で起こるのです。 これと同じことが人間のからだの中でも起こっているのです。」「人間は酸素をとり入れて生きているため、酸素はかかせないものですが、体内にとり込まれた酸素のうち約2%が不安定な形で漂っています。 これを活性酸素といいます。 この活性酸素が安定した形になろうと暴れまわり、フリーラジカルと呼ばれる物質を作りだし、それが細胞に障害を起こさせる引き金になっています。」「活性酸素やフリーラジカルは、大気汚染、放射線、紫外線、化学薬品、たばこ、農薬などによって促進されます。」「また、激しい運動ストレスなども、活性酸素やフリーラジカルの生成を促進します。」 「この活性酸素やフリーラジカルが、私たちのからだを構成する細胞を攻撃して壊してしまい、はじめは一つだったフリーラジカルは細胞を攻撃する度に過酸化脂質がどんどん増えていき、次から次へと細胞を壊していって、さらに過酸化脂質を増やしていっているのです。」「細胞が壊され続け、過酸化脂質が増えると、やがてがんや成人病へとつながっていきます。 また、老化を早める原因になるともいわれています。」「しかし普段は、私たちのからだに備わっている防御機能が働いて、酸化を抑えています。 それが、抗酸化酵素と抗酸化ビタミンなのです。」「抗酸化酵素は必要に応じてからだの中で作られ、活性酸素やフリーラジカルの作用を消してくれます。」 「ところが、環境の悪化やストレスの増大等でからだがダメージを受けると、活性酸素やフリーラジカルがどんどん増え、抗酸化酵素の生成が間に合わなくなって、対応しきれなくなってきます。」「そこで、抗酸化ビタミンの存在が重要になってくるのです。 抗酸化ビタミンは細胞を壊そうとしている活性酸素やフリーラジカルを取り除いてくれたり、守ってくれる、頼もしいビタミンなのです。」「ですから、日頃から抗酸化ビタミンを十分とっていれば、がんや成人病を予防し、老化を遅らせることができるのです。」 「では次に、抗酸化ビタミンであるビタミンCとビタミンEとβ-カロテン、それぞれの特徴についてお話しましょう。」「ビタミンCは水に溶けやすいビタミンで、からだの中では水溶液の部分に含まれています。」「私たちのからだの六割位が水分ですが、そこにフリーラジカルが発生した場合、溶けているビタミンCはそれらをやっつけて増えないようにしてくれるのです。」「ビタミンCには抗酸化作用以外の働きとして、細胞と細胞をつないでいるコラーゲンの生成を助けたり、鉄の吸収をよくしたり、免疫機能を正常に保つ働きをしたり、発がん物質であるニトロソアミンの形成を防いだりといった働きがあります。」「ビタミンEは油に溶けるビタミンです。 脂質からでいている細胞膜や血液の中にあるコレステロールを運ぶ物質(リポたんぱく)などに多く含まれています。」「ビタミンEはフリーラジカルをやっつける力が強い、強力な抗酸化ビタミンです。 脂肪酸などはとても酸化されやすく、一度酸化されると過酸化脂質となってからだに悪影響を及ぼすので、このビタミンEの働きは重要です。かつて、動脈硬化の原因といわれた悪玉コレステロールも、最近の研究では、コレステロールが酸化されて悪玉に変わることがわかってきました。」「ビタミンEには抗酸化作用以外の働きとして、抹梢血管を拡張し血液の循環をよくしたり、発がん物質であるニトロソアミンの形成を防いだり、妊娠・出産に関わる働きをもっています。」「β-カロテンは、緑黄色野菜や果物等に含まれいる色素の一つです。 このβ-カロテンがからだの中でビタミンAになるわけですが、からだの中に入ったβ-カロテンすべてがビタミンAになるわけではなく、必要に応じてビタミンAに変わりますが、一部はβ-カロテンのままで、いろいろな働きをしていることがわかってきました。」「その一つが酸化防止剤としての働きなのです。 β-カロテンも油に溶けやすい性質を持っているので、ビタミンE同様、細胞膜やリポたんぱく質の中に多く含まれ、活性酸素やフリーラジカルの攻撃を防いでいます。」「そのほかβ-カロテンは、前がん細胞を増殖することを抑えて、がんに進行していくのを妨げる働きがあるといわれています。」「これらの3つのビタミンの抗酸化作用とは働きの少し違うものにビタミンB2があります。 ビタミンB2は、水に溶けやすいビタミンの一つです。」「ビタミンB2は動脈硬化の元凶とされる過酸化脂質(いわゆる細胞の酸化)を分解するのを助けます。ビタミンB2には、コレステロールの低下や血液の固まりやすさを正常に保つ働きもあるといわれています。 動脈硬化が気になるときは、ビタミンB2を意識してとりましょう。」「ビタミンB2のその他の働きとしては、成長を促進するのに必要なビタミンです。 また、皮膚や目、鼻、口などの粘膜を健康に保つために必要な栄養素でもあります。」「いかがでしたか。抗酸化ビタミンは私たちにとってとても大切なビタミンであることが、おわかりいただけたでしょうか。ただ、抗酸化ビタミンも体の防御機構の一つです。ですから、抗酸化ビタミンだけをとっていれば良いというわけではないことを強調しておきましょう。」 ビタミン博士のお話は、これで終わります。 次は、抗酸化ビタミンの上手なとり方について説明しましょう。 ビタミンCを多く含む食品は、果物、野菜、いも類、お茶などです。 ビタミンCは水に溶けやすく、その上熱に弱く、空気やアルカリ、酵素によっても壊されてしまうので、調理法に十分注意が必要です。 皆さんも参考にして下さい。私のサイトで最新のビタミン剤が購入できます。ぜひこの機会にお試し下さい。
2005.01.28
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人間が生きていくのに必要な五大栄養素のひとつがビタミンです。ビタミンCが不足して起きる壊血病、B1が不足すると脚気、Dの不足はくる病など、食生活におけるビタミンの重要性はよく知られている。そのビタミンが生活習慣病との関係で最近見直されている。Q.最近ビタミンが見直されていますが?A.ビタミンはさまざまな生理作用を持っています。その生理作用が十分に得られないと欠乏症が起こります。一方、ビタミンを摂取し続けると生理作用にはとどまらない効果を及ぼすことが少なくありありません。こうした作用を薬理作用と呼んでいます。ビタミンの研究は、かつては欠乏症の学問でしたが、最近では、意識的に多く摂取して病気を予防、治療をすることが注目されています。ビタミンの秘めたる効果を利用して、がんや脳卒中、心臓病、動脈硬化などの生活習慣病やからだの老化を防ぐことなどに役立てようという研究が活発になっています。なかでも脚光を浴びているのがその抗酸化作用です。Q.抗酸化作用とは?A.私たち生物は酸素なしには生きていけないのですが、それがからだに取り込まれて悪玉酸素ともいうべき活性酸素に変化するのです。それが、その毒性で細胞膜を壊し、脂質やたんぱく質を変性させ、DNAに傷を与えるなどして、がんや動脈硬化などの生活習慣病の原因となっていることがわかってきました。この活性酸素の障害からからだを守るビタミンが、ビタミンCとE、β-カロチンの3つで、これらを抗酸化ビタミンと呼んでいます。 だから人間は酸素の毒性から逃れることはできません。酸素の毒性からいかに防御していくかがかぎなのです。活性酸素は酸素の毒性がより強力になったもので、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素の4種があります。活性酸素のほかにフリーラジカルという物質があり、これは対になっていない電子を持っていて不安定なので、他の分子から電子を奪って、つまり酸化して、安定化しようとする物質です。フリーラジカルには活性酸素のスーパーオキシドやヒドロキシラジカルのほかに、脂質ラジカル、脂質ペルオキシルラジカル、一酸化窒素などがあります。Q.どのような時に活性酸素やラジカルが発生するのですか?A.胃炎や関節炎などの炎症は、血液中の好中球やマクロファージが本来は細菌などの病原体を殺傷するための活性酸素を大量に放出することで起きるのです。また、紫外線や放射線などが体内に入ると、活性酸素が産生されます。そのほかに心筋梗塞などで虚血した後に血液が再灌流する時にも大量の活性酸素が出ます。タバコの煙の中にはたくさんのラジカルがあるし、排気ガスや農薬の中にもあります。 これらの活性酸素やフリーラジカルを消去する物質が抗酸化物質で、抗酸化作用がある酵素としては、スーパーオキシドを消去するスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)や過酸化水素を消去するカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどがあります。また酵素以外に、さきほどの抗酸化ビタミンなどがあります。Q.生活習慣病と酸化ストレスとビタミンとの関係は?A.日本人の死因の2位が脳卒中で、3位が心臓病ですが、心筋梗塞と脳梗塞を合わせた虚血性疾患の死亡数は1位のがんを上回ります。これらの虚血性疾患を起こす動脈硬化は、がんよりもむしろ恐ろしい病気といえるかもしれません。動脈硬化の原因としてコレステロールがあげられます。コレステロールはからだの細胞を構成するのに必要な物質なのですが、油なので血液にとけません。だから、LDL(低比重リポタンパク)やHDL(高比重リポタンパク)に乗せられて運ばれます。HDLは善玉、LDLは悪玉と考えられてきましたが、これが最近の研究で、LDL自体はさほど悪くないが、それが活性酸素によって変性LDLとなり、それをマクロファージが取り込んで泡沫細胞となって動脈壁に沈着することで動脈硬化となることが分かってきました。 米国人医療従事者の男性39910人の調査結果では、ビタミンEを服用している人は、1回目の心臓発作を起こすリスクが40%低いことが分かりました。英国で行われた臨床実験でも、1回目の心臓発作を起こした患者約2000人にビタミンEを1日800ミリグラム、1000日間投与したところ、2回目の発作を起こす確率が77%減少しました。つまり、コレステロールが多くてもビタミンEなどの抗酸化物質を多くとっていれば動脈硬化になりにくいということです。 また、糖尿病はその合併症が怖いのですが、そのほとんどが血管の病気です。血糖値のコントロールが悪いと、糖化たんぱくが増え、その過程で活性酸素が発生すると同時に、SODなどの酵素も糖化されてその抗酸化作用を失います。このような活性酸素が亢進した状態が続くと毛細血管がボロボロとなり、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症などを併発し、冠動脈や脳動脈の動脈硬化が進むと心臓病や脳卒中を発症することになります。合併症の予防にはラジカルの消去が必要なのです。Q.がんや痴ほうにも関係しているのですね?発がんにはイニシエーション(開始)、プロモーション(促進)、プログレッション(悪性化)の3段階を経て進行します。発がん物質のほとんどが、さまざまな手段で活性酸素を発生させてDNAに損傷を与え、細胞膜の働きを変化させ、悪性度を増すといったがん化の3つの過程を進行させます。このように活性酸素の産生ががんを引き起こす元凶であれば、抗酸化ビタミンによってがんは予防できるはずです。 例えば中国の河南省林県は胃がんや食道がんが多い地域として知られていますが、その林県に住む40歳から69歳の約3万人を対象に5年間以上かけて行われた調査によると、β-カロチン15ミリグラム、ビタミンE30ミリグラム、セレン50マイクログラムを毎日とったグループは、とらなかったグループより、がんでの死亡率が13%低く、特に胃がんの死亡率は21%も低く抑えられたのです。 また、アルツハイマーでも活性酸素が関係しているといわれています。米国で341人のアルツハイマー病患者に1日200ミリグラムのビタミンEを投与したところ、病気の進行が遅くなったという結果があります。病気は、活性酸素とラジカルの傷害と抗酸化物質とのバランスで引き起こされるのです。Q.抗酸化物質を含む食品とは?A.抗酸化物質の主役はなんといってもビタミンですが、植物にはビタミン以外にも抗酸化物質がたくさん含まれています。最近話題になっている、赤ワインや緑茶、そしてニンニク、タマネギなどのユリ科の植物、キャベツ、カリフラワーなどのアブラナ科、大豆、甘草、コショウ、ゴマなどにはそのような抗酸化物質が含まれています。ビタミンを効果的に摂取して健康になろう。
2005.01.24
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大変なビタミンブームですね。ビタミンの持つさまざまな効用が話題を呼び、気軽にビタミン剤を利用する人が増えています。健康を守るために欠かせないのはもちろんだが、成人病、老化、がんの予防にも有効といった研究報告が発表されるにつれて、健康維持と病気予防の両面から関心が高まっている。そこでビタミンにはどんな効用があるのか、どうすれば上手に摂取できるのかを考えてみたいと思います。過熱ぎみのビタミンブーム 今や注目の的ともいえるビタミンですが、それではビタミンは体内で具体的にどんな働きをしているのだろうか。 ビタミンは、糖質、たんぱく質、脂質という3大栄養素が血や肉、あるいはエネルギーをつくる化学反応(代謝)を助ける役目をしている。現在ビタミンとして認められているのは13種類。主なビタミンの働きと効用を簡単にまとめてみました。◆ビタミンA 目の機能を正常に保ち、粘膜や皮膚を強くする。◆ビタミンB群 糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促進する。B6は糖尿病やアレルギーに、B12と葉酸は貧血に効果がある。◆ビタミンC 毛細血管、歯、骨などの結合組織を強固にするのが主な働き。病気に対する抵抗力を高め、しみやそばかすを防ぐことはよく知られている。ストレスを軽くする“抗ストレス効果”も見逃せない。◆ビタミンD カルシウムの吸収を助けて骨や歯を強くする。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防に有効。◆ビタミンE 老化を促進する有害物質・過酸化脂質ができるのを防ぐ“抗酸化作用”が注目を浴びている。善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を予防する。 ざっと挙げただけでもビタミンの働きは大変なもの。健康に不安を抱く人が多い昨今、ブームになるのもうなずける。そのきっかけをつくったのは、アメリカのノーベル賞学者、ライナス・ポーリング博士。1970年に「ビタミンCの大量摂取が風邪の予防に効果がある」という説を発表。その後「がんの予防・治療にも有効」と報告したことで、一気にブームが過熱した。 CだけでなくAやEにも制がん作用があるとの研究報告が増え、この3つを合わせて“ビタミンACE(エース)”と呼ぶようになった。しかし制がん作用については、そのメカニズムがはっきり解明されたわけではない。1994年の春にはβ-カロテン(体内でビタミンAになる)の制がん効果を否定するようなデータが発表されて、世界中に波紋を投げかけた。 帝京大学医学部の安田和人教授によると「フィンランドで3万人近いヘビースモーカーの男性を4つのグループに分け、それぞれに偽薬、ビタミンE、β-カロテン、β-カロテンとEを投与して、平均6年間追跡調査した結果、予想に反してβ-カロテンとEを投与したグループが最も肺がん発生率が高かった」という。これまでβ-カロテンは肺がんの予防に有効といわれていたが、その逆の結果が出たのである。ただし、その評価も分かれていて、未だ解明されていない。 ビタミンは素晴らしい可能性を秘めてはいるが、今はまだ研究途上。新しい情報をうのみにして、必要以上に摂取するのは危険でもある。現代社会はビタミン不足を招きがち ビタミンは種類が多く、調理による損失もかなりあるので、すべてのビタミンをバランスよく摂取するのはなかなか難しい。しかも一度にまとめてとるというわけにもいかない。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積され、必要に応じて利用されるが、水溶性ビタミン(B群、C)は余分な量は排せつされてしまう。とりだめがきかないのである。毎日、必要な量を補給しなければならないため、どうしても不足しがちになる。 最近では夜盲症、かっけ、壊血病、くる病といった典型的なビタミン欠乏症はないものの、潜在性の欠乏症、いわば病気と健康の中間のような状態はかなりあるといわれている。安田教授によると、最も不足しがちなのはBとCだという。ストレス、不規則な生活、外食やインスタント食品の増加、たばこやアルコールなどもビタミン不足を招く大きな要因となっている。 また「豊かさの中で新しい形の栄養失調が起きている」と指摘するのは大妻女子大学の橋本勲教授(運動栄養学)。それはダイエットと運動と栄養のアンバランスによるものだという。知っておきたい調理のポイント 食品から摂取する場合には、各ビタミンの性質をよく知っていないと調理による損失が大きくなる。そこで、女子栄養大学の吉田企世子教授に効率よくビタミンをとるための調理法、食品の組み合わせ、保存の仕方などをアドバイスしてもらった。●ビタミンAは植物油と一緒にとる ビタミンAは脂溶性で水に溶けず、熱にも強いので扱いやすい。AにはそのままAとして吸収されるレチノールと、体内に吸収されてからAとしての効力を発揮するカロテンとがある。カロテンは緑黄色野菜の色素で、吸収率が悪く、レチノールの3分の1程度。しかし油と組み合わせると吸収率がグンとアップする。 例えばニンジンの場合、生だと吸収率は8%と低いのに対して、煮ると30%。油で炒めたり、揚げ物にしたりすると50~70%と高くなる。使う油はビタミンEを豊富に含む植物油を。Aが酸化して効力を失うのを防いでくれる。 脂肪分を控えたい人は、サラダにしてドレッシングをかけたり、コマツナやホウレンソウをゴマ和えにしたりする工夫を。また献立の中に油を使った料理を組み入れてもかまわない。 Aは冷凍したり、缶詰にしてもあまり損失がないので、旬でない時期は冷凍食品や缶詰を利用するのもよい。解凍するときは電子レンジを使うか、冷凍のまま煮汁に入れたり、炒めたりするのがコツ。●ビタミンB群は軽く洗って手早く調理 ビタミンB群は水溶性なので水に溶けやすい。なかでも最も不足しがちといわれるB1は、水に溶けるだけでなく熱にも弱いので、調理による損失が大きい。そのほかのB群は比較的扱いやすい。 B1をとるためには、白米の代わりに胚芽米や強化米を使うのが1番。毎日食べるものなので効果が上がる。その場合に注意したいのは、あまりとがないこと。ていねいに水洗いするとB1は30~40%も流出してしまう。毎朝パン食の人はライ麦パンにするとよい。ソバもB1の多い食品だ。 魚類にはB群を含めて、ビタミンの豊富なものが多い。特に皮や血合いの部分にたっぷり含まれているので、残さず食べるようにしたい。血合い肉の発達しているサバ、イワシ、カツオなどが効果的。 生の貝やカニ、コイにはアノイリナーゼというB1分解酵素が含まれている。火を通せばこの酵素は働かなくなるので、あまり神経質になる必要はないが、生で食べるときには量を控えめに。●ビタミンCは調理法を工夫して ビタミンCも水溶性なので水に溶けやすい。そのうえ熱に弱く、空気、アルカリ、酵素によっても破壊されるので、調理法によっては半減してしまう。所要量の3倍はとるようにしたい。 ホウレンソウなどの葉菜類をゆでるときは、たっぷりの熱湯に少しずつ入れて短時間にゆで上げる。時間が長くなるとCはどんどん失われていく。ゆでた後、水にさらす時間もなるべく短くしたいもの。たった1分で約20%も流出してしまう。 炒め物や揚げ物は短時間で調理できるので、煮物より損失が少ない。煮物にする場合は、Cが溶け出した煮汁ごと食べられるシチューや鍋物などが効果的。 Cは空気に触れると酸化して効力を失うので、切ったり、おろしたりするのは食べる直前に。 生で食べるサラダは理想的な調理法だが、かさがあって量をとれないのが弱点。おひたしのほうが損失分を計算しても摂取量は多くなる。それにサラダに使われる野菜は一般的にビタミンの含有量が少ない。サラダを食べたからといって安心は禁物。 生のニンジン、キュウリ、カボチャなどには、Cを破壊するアスコルビン酸オキシターゼという酵素が含まれているので要注意。野菜ジュースやもみじおろしなど、生のまますりおろして使う場合は、レモン汁や酢を加えるのがコツ。そうすれば酵素は働かなくなる。●ビタミンDは紫外線によって効力発揮 脂溶性のビタミンDは油と合わせてとると吸収率が上がる。調理による損失はあまりない。カルシウムの吸収を助ける働きがあるので、カルシウム豊富な食品と一緒に摂取するとよい。 Dは動物性食品にはDそのものの形で含まれているが、シイタケなどのD(エルゴステロール)は紫外線によって活性型Dに変化する。最近の干しシイタケはほとんどが電気乾燥なので、一度日光に当てて使うとよい。●ビタミンEは植物油からとるのがベスト ビタミンEも脂溶性なので、油と組み合わせるとよい。特に、植物油はそれ自体がEをたっぷり含んでいるので効果が大きい。吸油量の多い揚げ物が理想的だが、パンにマーガリンをつけたり、サラダのドレッシングにしてもよい。 ただし、油は新しいものであることが条件。古くなると過酸化脂質を生成し、逆効果になってしまうためだ。 油は紫外線に弱いので、保存するときは冷暗所に。使用した油はそのつど、ていねいにこしておくこと。 ところで、ビタミン剤は手軽で、しかも食品と違って摂取量を確認できるというメリットがある。食後に飲むのが効果的で、お茶やコーヒーなどと一緒に飲んでもさしつかえない。ただ重曹の入った胃腸薬を服用したときは少し時間をおいたほうがよい。ビタミンB1が分解されてしまうからだ。ビタミン剤を常用する場合に注意しなければならないのは過剰症の問題。脂溶性ビタミンはとり過ぎると体内に蓄積し、障害をもたらす危険性がある。脂溶性でもEには過剰症の心配はないです。皆さんも効果的ビタミンを採るようにしましょう。
2005.01.23
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健康っていったい何でしょうか?我々人間はいつか亡くなります。生きている間は出来るだけ健康でいて(心身共に)いたいものです。日々の生活を漠然と続けているだけでは日々の健康はありえません。自分の体が今どういう状態なのか一度血液検査をしてみてください。検査によって悪くなっているのを中心に今後の方針を決めればいいと思います。今日はビタミンの話です。ビタミンは13種類あって、種類によって食品での含まれ方が違っています。そこでまず、食生活が乱れないようにいろいろな食品を幅広く食べて、ビタミンが不足しないように気をつけたいものです。ビタミンには栄養素としての働き(不足すると欠乏症を起こす)のほかに、健康を守る働きがあります。このようなビタミンの働きについてお話しましょう。 もともとビタミンは微量栄養素の1つで不足すると欠乏症を起こしますが、ビタミンの種類によっては必要量の10倍とか、50倍といったたくさんの量をとると、成人病やガンを予防する働きがあることが最近の研究で分かってきました。私たちが呼吸している酸素が必要なことはだれでも知っていますが、この酸素の仲間で悪い働きをする酸素(コレステロールと同じで悪玉酸素と呼んでもいいかもしれません)がからだの中でいつも少しずつ作られていて、長い間に成人病などの病気の原因になることがはっきりしてきたからです。 この悪玉酸素の働きを防ぐために、私たちのからだは防衛機能を持っています。この防衛機能の1部を担っているのがビタミンC、ビタミンE、ベータ・カロテンなどです。これらは悪玉酸素をやっつける働きをしているので、抗酸化ビタミンと呼ばれています。このような抗酸化ビタミンが効率よく働くためには1日にビタミンCなら500mg、ビタミンEなら100mg、ベータ・カロテンなら6mgぐらいは必要といわれています。動脈硬化や心臓疾患、老化にも悪玉酸素が絡んでいることが分かってきたからです。さてもう1つのビタミンの話題は老人、特に女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。これにはカルシウムや運動も関係していますが、ビタミンも関係しています。 特に注目されているのが、ビタミンDとビタミンKの2つです。ビタミンKは納豆に多く含まれていて、骨粗鬆症の治療に好成績を挙げることがはっきりしてきました。ある程度の高齢になったら1日1回納豆を食べて、ビタミンKの補給を忘れないようにしましょう。ビタミンの重要性がわかりましたか?私のサイトにビタミンが効率よく採ることの出来る商品が購入できるようになりました。一度試してみてはいかがでしょうか?
2005.01.21
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やまさんは今サプリメントを積極的に摂取して体質改善を図っていますが、どのサプリメントが一番ベストなのかまだまだ勉強中です。近頃薬局にいくとサプリメントがたくさん置いてありますがサプリメントにもいろいろ効能の違いがあるみたいです。一番いい状態で精製されたサプリメントを追い求めていたらこれだというものが見つかりました。ぜひ紹介したいと思います。皆さんも健康に不安な方がいられましたらぜひメールでもいいので返信下さい。あと健康管理士の資格も取っていこうと思います。一緒に勉強したいというかたも大歓迎です。すべての人に健康をがテーマです。
2004.09.04
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皆さん暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?今やまさんは高血圧、高脂血症ということで病院での投薬治療、健康科学センターで運動療法、栄養指導の3本の柱で懸命にがんばっています。上記の病気はやはり運動不足による肥満が原因だそうです。高血圧は一生薬を飲まないといけないといわれ、いろいろな本を読み自分で病気を理解して対処方法を出し、運動療法、栄養指導を加えたしだいです。皆さんも病気にまずはならない体つくりに挑戦してはいかがでしょうか?街中にはいろいろなサプリメントが氾濫してますが、サプリメントを飲むだけでは駄目で、まず自分の体を血液検査から分析してサプリメント平行して定期的な継続して運動することが大切になってきます。皆さんにベストなサプリメントは何か?一緒に考えたいと思いますので気軽に相談してもらえればと思います。あとダイエットの経過報告も今後していきたいと思います。現在178センチ90キロです。
2004.08.26
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メディカルチェックを受けよう! 医療機関で行うメディカルチェックは、日頃自分では気がつかない病気の予兆を発見したり、体のさまざまな器官の健康度を確かめるために定期的に行うもの。「健康には自信があるから必要ない」「若いからまだいいだろう」という人も多いかもしれないが、むしろ自覚症状のないうちから積極的に受け、生活習慣の改善や病気の予防、また病気の早期発見・早期治療に役立てて欲しい。代表的なメディカルチェックには、大きく分けて「健康診断」と「人間ドック」がある。 ■健康診断 代表的なものには、自治体や職場の健康保険組合などで行われる健康診断がある。健康診断には大きくわけて基本健康診査とがん検診があり、また骨粗しょう症検診、歯周疾患検診などが実施されることもある。年に1回は必ず受診し、健康状態を定期的にチェックしよう。 ●主な基本健康診査問診、診察、身体計測、尿検査、血液検査、血圧測定、心電図、眼底検査など●主ながん検診胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がんなど ■人間ドック 健康診断より検査項目が多く、体の状態をより総合的にチェックしたい場合に行うのが人間ドック。1週間ほど入院して内科をはじめさまざまな専門科の検査を行い、医師に健康状態をじっくり相談できる長期ドックや、生活習慣病をメインとした2~3日の短期ドック、検査から判定までの時間を短縮させた1日ドックや半日ドック、また婦人病をメインとしたレディースドック、その他、脳ドック、心臓ドックなど専門的なドックもある。 何らかの健康上の不安を抱えている人や、生活習慣病かも、という人は、ぜひ自宅でもセルフチェックを。体重測定や体温測定などはすでに行っている人も多いが、より健康管理を徹底したいなら血圧測定、体脂肪測定、心電図測定、脈拍測定なども必要に応じてプラスしていこう。 ■体重測定 肥満度をチェックするために行う。一般的にはBMI(ボディー・マス・インデックス)という肥満度を示す指標が使われている。<BMI計算式>BMI=体重(kg) ÷[身長(m)×身長(m)] ■体温測定 38度以上の急な発熱にはウイルスや細菌などによる感染症が、37~38度の微熱がある一定期間続いている場合には、自律神経の失調や甲状腺機能亢進症、うっ血性心不全、膠原(こうげん)病などの可能性が疑われることもある。また、女性の場合は、排卵後~月経開始前までの期間は女性ホルモンの影響で体温が高温となる。体温はワキの下か口で測るのが一般的だが、ワキの下で測るときには10分間ほど、口で測るときには5分間ほど安静にして測定するとよい。 ●血圧値の見方 ■血圧測定 高血圧や肥満、貧血などを調べるきっかけになるのが血圧測定。1999年にWHO(世界保健機関)が制定した基準を参考に、自分の血圧の状態を見てみよう。今私は高血圧、高脂血症で通院していますが、血液検査を受け自分の今の体の状況は概ねわかっています。薬の量を減らそうと積極的にサプリメント、健康科学センターに通い運動プログラムを取り入れて改善に努めております。病気になってからもとの健康な体に戻すには大変な労力がかかります。これからの時代は予防医学の時代です。この日記を通じて皆さんと一緒に健康について考えみなさんと一緒に健康な体が維持できればと思っております。
2004.08.21
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会社で健康診断があり結果が返って来ました総コレストロール、トリグラセイド(中性脂肪)が基準値を大幅にオーバー。なぜか肝機能が悪いみたいです。酒は普段飲まないのでおそらく高血圧で服用している薬の副作用と考えられます。血圧は降圧剤(ニューロタン、ヘルべッサーR)を服用しているにもかかわらず、128、96と高めでした。やはり若いうちから一生薬を飲み続けるより、健康食品、サプリメントを積極的にとり、運動を計画的にし徐々に薬の量を減らそうと考えています。この日記では、健康についていろいろな情報を日記形式でお届けして皆さんにも健康について考えていただきたいと思っています。 バランスの取れた栄養を~30品目を目標に~ 食品を栄養素の働きで分類し、それぞれの中からいろいろな食品を食べることによって栄養素をバランス欲取れるように作られたのが「6つの基礎食品」です。主食、主菜、副菜(1食品に2~3品)をそろえることを基本に、6つのグループからまんべんなく1日30品目以上、適量取ることが大切です。◎ー魚介類50~60g(魚1切) 肉50~60g 卵1個 大豆製品60~90g(豆腐1/3丁)(肉は脂身の少ないものを選びましょう)◎-牛乳、ヨーグルト200g 海藻 毎日積極的に◎-緑黄色野菜120g以上(片手1杯分)◎ー淡色野菜200g以上(片手2杯分) きのこ類 毎日積極的に 果物150~200g(みかん中2個)◎-ごはん500g~600g いも類60~100g(じゃがいも中1個) 砂糖10グラム(小さじ2~3杯分)◎-油脂15g(大さじ1杯) 果実少量(つまむ程度) 以上参考にしてみてください。
2004.08.20
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