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わたしは激しく嘔吐した。
わたしがそれまでに抱いていた不愉快な感情や他人への妬みをすべて吐いた。それは結核の末期の患者が吐血するのに似ているかもしれない。わたしは毎日傷つけられていた。わたしは見えない血を流し続けていた。
わたしは小さな穴に暗い感情を吐いた。
冬のある日、ベランダでポリバケツを使って育てていた貧弱な大根を抜いた。すぽんと大根は抜けて、跡が直径5センチくらいの穴になった。
そのぽっかり開いた穴を覗いて見ると、そこには小さいながらも完全な闇がある。その物理的な大きさは大根と同じはずだが、闇が内部で無限に広がっている。光がその中に吸い込まれて行き、逃げられない。
穴の周囲に表面の乾いた土が少し盛り上がった。偶然なのだが、その盛り上がった土の凹凸のために、穴の入り口は円ではなく、デフォルメされた十字架のように見えた。
だからこそ、わたしはそこにどろどろとした感情を嘔吐したのだ。わたしは救われるかもしれないと思った。
やがて春が来て、ベランダのこのポリバケツにも花が咲くことを願った。 絶望を肥料にして希望が生まれると思った。