PR
Keyword Search
Comments
Freepage List
醜悪な群の中にいた。油虫が身を寄せ合っている。それこそ植物の葉や茎の表面がまったく見えないぐらいに群がっている。
自分とまったく同じ形をした子を産む。大きな体の油虫のすぐ脇に少し小さな油虫がいて、虫と虫の間隙を埋めるようにさらに小さな油虫が張り付いている。大小様々な、それでいてまったく形の同じ虫が体を密着させている。
ほとんど動かない。口針を植物の茎に突き刺して師管液を飲む。そして体が大きくなって子供を産む。ただただ、増えていく。そのためだけに生きていく。
指でぐちゃっと簡単に潰せる。簡単に潰せるということを試してくださいというかのように無防備に体をさらしている。潰されて出てきた体液を全身に浴びても逃げもしない、動きもしない。
ぶよぶよとした弱々しさが無限に再生されていくことが気持ちが悪くてたまらない。
醜悪な群の中で、わたしはおそらく一匹の油虫なのだ。
茎の中を流れている、この少しとろみがある透明な液体を一日中少しずつ飲み続けていけば、わたしのからだはぶよぶよと大きくなっていく。
そのうち、わたしの中にわたしを見出し、その瞬間にはおやっと感情の起伏を持つのかもしれない。 わたしの中のわたしは、実はさらにわたしを内在していて、わたしの中にいくつものわたしがいる。そういった無限の連鎖を考えるのに耐えられなくて、一番外側のわたし以外の残りのわたしを体外に押し出すわけだ。
ふと気づくとわたしの隣にわたしがいるのだが、わたしの外のわたしにはもう関心を払う必要がないと、ともあれ、とろみのある透明な液体を飲み続ける。ぶよぶよの体がさらにぶよぶよになって、わたしの中にまたわたしがいることにやがて気づくだろう。
夢や希望、喜びや笑いがないけれども、失意や絶望、悲しみや泣くこともない。とろみのある透明な液体のせいだろうか。何も考えることができなくなっている。今しかない時間が限りなく続いていく。
ぶよぶよした体の中のどろりとした体液が弾けた。外側から強く押されて、ぶよぶよとした体が潰れたのかもしれない。それでも痛くも痒くもない。隣のわたしも同じ運命なのかもしれない。しかし、わたしはいつもと同じように茎の中を流れるとろみのある透明な液体を少しずつ飲んでいれば良い。ゆっくりと飲んでいればよい。それだけだ。