カテゴリ未分類 0
黒川博行 0
染井為人 0
全50件 (50件中 1-50件目)
1
スクエア 横浜みなとみらい署暴対係【電子書籍】[ 今野敏 ] 結局今野敏は何を言いたかったのかねえ。 使えねえ所轄のマル暴係なんかそのまま地にさらせばいいのに、殺人事件の捜査本部に監察官のお目付け役付きで駆り出され、そこで本部捜査一課長とか捜査二課長の前で諸報告をする。 そのバックには本部長の意向が(威光が?!)ある。 出てくる人々はどれも魅力的なのだが、いかんせん相変わらずこの人の刑事法音痴とハチャメチャな警察組織感がある。 暴対法が施行され、警察の組織が変わり、組織犯罪対策部門が刑事部から離されてから一体何年になるのだろうか。 つまり、それだけ組織犯罪対策部門は中央集中管理をされているわけで、所轄の刑事がチョロチョロ動けるわけがないのだ。 なんで逮捕被疑者の取調べに弁護士が立ち会えるんだ。 それじゃあ逮捕の意味が無いじゃないか。 被疑者の権利は、弁護士と立会人なしに接見できるということなんだぞ。 必ず取調室に3人で入るってか。 記録者がいるって?! 誰から聞いたのやら。 書くのは取調官でしょうが。 録取するのは取調官ですよ。 しかも今は録録あり。 捜査そのものが大きく変わったのだ。 そんなことより取調室に入った三人が被疑者を置き去りにして取調室の外になど出るもんか。 ただね、諸橋の情報源としての神野は魅力的な立ち位置にいるね。 彼がいるから諸橋と城島は、良い捜査ができるのだ。 そこがこのシリーズの魅力でもある。KindleUnlimited、中山と今野の作品が小出しにされる。 どちらかというと今野のほうがどっと出るね。 それに内藤了の作品もそうだ。 見つけたときにライブラリーに入れて置かなければならない。 そんな面白さもKindleUnlimitedにはある。(1/14記)
2024.04.11
コメント(0)
臥龍 横浜みなとみらい署暴対係【電子書籍】[ 今野敏 ] あまりこのシリーズは好きでないけれど、それでもKindleunlimitedの厚意に甘えて一生懸命読むことにした。 少なくとも2点私の気持ちの中ではこの作品に突っ込みを入れたいと思っている。 1点目は、県警本部と所轄署が別々に動いていること。 それが殺人事件が発生してもなお本部捜一と所轄組対が反目している。 そもそも警察捜査は組織捜査だから、本作のような捜査機関内部の為体はないのだ。 もう1点は、限度を超えた身柄拘束。 逮捕状がないのに85時間も拘束したってか。 こんなバカな話があるわけはない。 反面、冤罪防止のための要諦がきちんと説明されていた。 これは作者が言うとおりだ。 曰く、「城島が言うとおりだ。自分たちが描いた図式にこだわり、それに合致しない証拠は切り捨てて行く。都合のいい事実を並べれば起訴に持ち込める。起訴しちまえば、裁判では有罪率が九十九・九パーセントだ。弁護士も本気で無罪を獲得しようなんて考えない」という捜査方法に対する批判論。 なし割捜査というもので、最初にストーリーを立てて、その図式にのっとった捜査をする手法。 多くの冤罪を生んできた手法だ。 平成15年、鹿児島県警が起こした志布志事件以来、警察内部ではそのような捜査を行っていないと聞くが…。 などという刑事法の蘊蓄の香りを漂わせながら、本作は進むのだった。 マル暴がらみの謎なんて、何のトリックもないから、結局本作の登場人物がいかに動くかという問題になる。 そこで今野敏が描いたみなとみらい署の暴対係が活躍するというわけだ。(1/11記)
2024.04.08
コメント(0)
防波堤 横浜みなとみらい署暴対係【電子書籍】[ 今野敏 ] 短編集。 今野敏は、力技だ。 とにかく本作の登場人物同様、世の中のこと、とりわけ警察組織のことなど関係なしに突っ走るわけだ。 本作でやっと登場人物のフルネームが明らかになった。 諸橋夏男警部、城島勇一警部補、笹本康平警視だ。 諸橋が警部なのに係長に降格されたものだから警部補の城島が係長補佐などというわけのわからん職名になったと本作ではなっている。 けれども警察官の降格というのは、階級の降格なので、諸橋は警部補に降格されたというのが正しくて、城島とW係長なのだというのが正しい表現になろうか。 本シリーズでは、本部と所轄が全く別個の組織のような書き方をしているけれど、それはありえない。 そもそも所轄に応援という形で本部は参加してくるのだ。 この辺の手間がないのがこの作家の弱点だ。 ただただ自分の思い通りにまるで先に書いたように登場人物同様に突っ走っていたら、リアルに欠ける。 まあそれでも、いつの間にか本シリーズの主役である諸橋、城島コンビは大怪我を負いながら最後、めでたしめでたしなので、それはそれで評価はできる。 人は不幸を喜ばない。 ハッピー・エンドやら勧善懲悪を喜ぶ。 それを朝ドラ理論という。 読み手は、ハラハラ・ドキドキしながら本シリーズを読み進めるわけだ。 そして朝ドラ理論でホッとする。 このホッと感が本シリーズの魅力だろう。 KindleUnlimitedがこれで終わりなのがなんだか悔しい。 本シリーズもKindleUnlimitedにまわしてほしい。(12/10記)
2024.02.28
コメント(0)
逆風の街 横浜みなとみらい署暴力犯係【電子書籍】[ 今野敏 ] 一気に読了。 しかし残らんなあ。 諸橋と城島のコンビがマル暴事件捜査にひた走る。 潜入捜査官という命題を出していながら、それが深くとらえられていない。 しかし本件が潜入捜査官がらみで、上層部がもみ消しを図っていたらしい、というシチュエーションは、意外だった。 だから、その決着を本作でつけてほしかったのだ。 まあね、マル暴の話だから、血とか暴力が出るのはやむを得ないにしても、あたしゃあ、不快にしか感じないね。 いずれにしても、笹本監察官がまたまたでばってきたのだから、潜入捜査員に関しては先に書いた通りなんらかの決着が欲しかった。 大体本部組対のことを所轄が知らないわけがないし、本部組対が所轄を知らないわけがない。 まるで別個の組織が存在するような書きっぷりはリアルに悖る。 司法警察官という言い方はない。 司法警察員である。 などなど相変わらず本作では今野のオンチもたもたぶりが気にかかる。 それはともかく、一気に読めたのは、話そのものが面白いこと、あるいは、今野の文章力のなせる技、もしくは、その両方ということになろう。 このシリーズはあと1冊私は所有しているので、とにかく読むことにしよう。 なんだかんだ言いながら今野敏の作品数が増えているな。 それは今野が積極的にkindle unlimited作品を流してくれているからだ。 それはそれでありがたいことだと感謝しよう。(12/8記)
2024.02.27
コメント(0)
禁断 横浜みなとみらい署暴対係【電子書籍】[ 今野敏 ] 本当にツッコミどころ満載の小説だった。 このシリーズを何作か読まなければならないのは苦痛だ。 そもそも暴対に生安から麻薬・覚醒剤等が渡されたのが平成16年頃のこと。 暴対という部署が本庁で暴対部になり、銃器対策やら薬物犯罪対策、暴力団対策を主とするようになり、全国警察がそれにならった。 にもかかわらず、今野は本作において何度も何度も麻薬は生安みたいなことを書くものだから、読み手は辟易してしまった。 せっかくいい話を作ってもそれで話が台無しになっては始末に負えない。 今野の警察内部における取材源は、本庁と見たが、そのせいでどうも現場との乖離が大きい。 今野は思い切り警察から離れればいいのにね。 そうすりゃあ自分の得意な、棒術とか空手を存分に小説で活かせるだろうに。 そういう諸々のアンリアルを抜きにしても話が平板すぎましたな。 たしかにマル暴の話だから、その筋の話を読みたい向きはずいぶんいるのだろうが、暴対法施行以来マル暴刑事とマル暴の関係も大きく様変わりしたという。 結局暴対法施行以前というのは、マル暴刑事とマル暴が本作のような丁丁発止の掛け合いで腹のさぐりあいをして、それなりの事件解決をしてきたようだ。 いま両者は完全に敵対していて、テレビでマル暴事務所のガサ入れなんか見ていると、警察官は完全武装だものな。 長い話のわりに結局筋そのものは単純で、何も面白いものがなかった。 そういやあ本作では中国の武装警察が日本に研修に来ているなんていうシチュエーションも使っていたな。 第一作を読んで私はまずは嫌悪の感を抱いてしまった。(12/6記)
2024.02.24
コメント(0)
連写 TOKAGE3 特殊遊撃捜査隊【電子書籍】[ 今野敏 ] 結局シリーズ3作目までしっかり読み終えましたな。 このシリーズの特徴は、TOKAGEと警視庁刑事部捜査第一課の動きを主にしていて、3作とも犯人側の詳細は語られていない。 そんなところで本書の解説でも、著者は警察小説の第一人者で…、なんて表現がなされている。 けれども果たしてそうだろうか。 警察小説の第一人者足りうるには少なくとも警察組織、警察内部のヒエラルキーの問題、のほか、刑事法(刑法、刑事訴訟法、少年法、道路交通法、各種特別法etc.)に通暁していなければならない。 今野敏の作品を読むと、この法律の面におけるグリップが完全でない表現が散見される。 けれども本シリーズはその表現が不要なわけだ。 何しろ中心は捜査第一課でも隠密行動が要求される、TOKAGEなのだから。 前作のバスジャックも、本作コンビニ強盗もTOKAGE側の表現力が実に高い。 文章でこれだけ臨場感を持たせる作家はそういない。 その点で今野敏は、なるほど多くの読み手に、警察小説の第一人者、と思わせているんだろうな。 しかしミステリーリーダーの立場から言わせてもらうと、それは甘い。 その理由は前述のとおり。 バイク使用のコンビニ強盗をしながら警察の動きを観察するなどという考えはこれは作家ならではの観点でしょうなあ。 それは素晴らしい。 そしてその目的がテロなのかそれとも…? なんてね、このシリーズは、犯人側の描写が少ない面白いミステリーでもある、ということを付記しておこう。(10/12記)
2023.12.30
コメント(0)
天網 TOKAGE2 特殊遊撃捜査隊【電子書籍】[ 今野敏 ] こんなにも感情の入らないミステリーは初めてだ。 前作では涼子のクレバーさが目立っていたが、本作は上野の自信のなさが際立った。 ネットライターなんて言い方この時代にはあったんだね。 時代はさらに進んで今やだれでもこの小説に書いてあるネットライターとしてSNSという媒体を通じて書きたいこと書いてらあ、の世界になった。 それはともかく作中半分にして初めて、バスジャックが3台はおかしい、とか、犯人の要求がないのはおかしい、なんて記述がでてくるんだものな。 こういうのも叙述トリックというんじゃないのか。 それが結局ネット上の賭け、なんて収まり方じゃあ、今まで真面目に読んできた私たちはいったい何なのよ、となる。 ジャックされたバス会社が、もう警察には頼らない、と、上が決めた、に対してさっさと警察が切り上げるシーンもあるけれど、こんなバカな話あるもんか。 いずれむかしむかーしの話だと思ったのは、ハイテク犯罪対策総合センターなんて記述が出てきたからだ。 今じゃサイバー犯罪対策課でしょうが。 ただね、警察間で円滑な無線が使えないなどという話も盛り込んでそれっぽい話にしたのは認めるけれど、この作品が書かれた時代にはすでに異警察間でも無線のやり取りはできるようになっていたと思うけどな。 本作では一人殺され、殺人事件となった。 その陰には、ネットを利用した狡猾な金儲けの仕掛けがあった。 そういう意味で、現代を見据えていたとはいえようが、冒頭の通り、血も涙も感動も何もないミステリーなんて読みたくない。 なにが警察小説の第一人者だ。(10/11記)
2023.12.28
コメント(0)
TOKAGE 特殊遊撃捜査隊【電子書籍】[ 今野敏 ] しかし本当に今野敏は多作家だな。 今回は捜一SITのバイク部隊TOKAGEがヒーローだ。 というよりもその隊員の一人、涼子、ヒロインだ。 今野敏は多作家であるが、多作になるのは、シリーズモノが多いからだ。 これまでも本ブログにアップしたシリーズモノは、特殊防諜班、ST、同期、継続捜査ゼミなどなど数多い。 そしてこんどはTOKAGEだ。 どんな話になるのか、バイクが出てくるから、私自身はバイクがあまり好きではないので、期待はしていなかったが、何しろ、Kindleunlimited所収なので、クリックしてみたわけだ。 今回の事件は、ミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態でしたな。 おそらく私でなくとも、本誘拐がのっけからおかしいという事に気付くだろう。 あーた、被誘拐者は3人の成人、しかも同じ銀行の行員ときたもんだ。 これじゃあ筋が見えすぎだね。 この数行でもできる読み手は話を紡いでしまいまっせ、今野敏。 今野敏、しっかりしろやー!かな。 それはともかくこの大事な誘拐事犯の現場で管理官だのその道一筋の係長だのがけんかするかね。 そういうのが実にアンリアルだ。 本件の筋に気付くのも遅すぎ。 もう帳場で本件の筋は見えていたはずだ。 あたしゃあ、後2冊読まなければならんのだぞ。 こりゃあ、一つの拷問でっせ。(10/10記)
2023.12.24
コメント(0)
激突 聖拳伝説(3)【電子書籍】[ 今野敏 ] この作家はよほど武術が好きなんだろうな。 それとシリーズ化も好きだ。 多分、警察取材先は警備公安部門と見た。 刑事部門だとすると、司法手続きがたどたどしい。 それもあってこういうアバウトな警察もんを書くんだろう。 日本の諜報部門は一本化していない。 ということは、警察の公安と公安調査庁と自衛隊がバッティングしていてそれはそれでとても不合理であるという感じもするが、作者が極めて丁寧に把握している通り、大臣の下の次官がこの国を牛耳っているのは事実で、警察は大臣が国家公安委員長で次官が警察庁長官、その他もさまざまなバリエーションで並び立っているのは、それはそれで、民主主義の権力に対する安全さともいえよう。 前回は、総理にすり寄っていた法務大臣が実は真津田だったという話で、彼が脳溢血で死んでしまう話だったが、その手先松田が逃げてしまうという話で第三話に引き継がれた。 今野敏に格闘シーンを詳細に表現できる力があったんだなあと今更ながら感心しているのだけれど、そのシーンをマジに読んでいると眠気に誘われてしまうのだ。 それはともかく、この3冊のシリーズを一気に読了してしまえたのは、今野敏の筆力がすごいからとしか言いようがない。 たしかに今野敏は刑事手続きに疎い面があるけれども、警備公安畑の話になると、つまり、エスピオナージの話になると本当に切れ味鋭い作品を出してくれる。 そしてシリーズモノが多いので、冊数も多くなる。(10/2記)
2023.12.15
コメント(0)
襲来 聖拳伝説(2)【電子書籍】[ 今野敏 ] 本シリーズにおける筋は、現権力者つまり総理を中心にした、諜報力と実力の集中運用ということになろうか。 何とかして現政権は、軍事力、警察、諜報力を一本化して、自由に操りたいと考えるわけだ。 そのために直下に内閣情報調査室を設け、その指揮下に自衛隊やら警察、公調を置きたいと考えるのだが、表だった思想からの反対ではなく、権力を操る側からの、お家騒動、ですな、これがテーマで流れていく。 いずれにしろヒーローは上智大学生にして無敵の武闘家ときたもんだ。 汗一つ流さず敵を倒してしまう魅力の人物だ。 それに悪が戦いを挑む仕掛けで、よくよく考えてみれば勧善懲悪もの。 ちょっと気にかかるのは、警察官がいとも簡単に倒されてしまうところだな。 権力に絡んで思想が見えないのはそれはそれであり、という解釈もできようが、逆に明らかにその筋とかマタギ、ワタリ、シノビなどという現代では理解できない人々が出てくると、確かに面白い読み物という一点ではわくわくして読めるということになろうが、本当は権力は、そんな得体のしれないものがバックについているのではなくて、明らかに思想と思想の戦いなんだという点を無視するわけにはいかないのではないのか。 書かれたのが昭和60年のこと、それでNTTと国鉄が混在する。 そして今のような個人がいつでも利用できる通信がないのでヒーローたちがかなり苦労している。 そういうのがなければ、今の話だといっても通用するのではないのか。(10/2記)
2023.12.14
コメント(0)
降臨 聖拳伝説(1)【電子書籍】[ 今野敏 ] 聖拳伝説シリーズと銘打たれたシリーズの第一作。 今野敏にはこのテの作品が多い。 つまり警察で言うと警備公安畑で激しい戦闘シーンが入り、しかも現政権を巻き込んだ政変を題材にする。 その大元が古代から続く天皇家と秦家の信頼関係にあるというのが実はキーポイントである。 片や荒服部家、こなた荒真津田家、この両家はマタギやワタリなど山岳民族の代表格で、今や現政権の後ろ盾になっているという設定だ。 しかも武術がめっぽう強い。 だから小説中何度も戦闘シーンが出てくるのだ。 それをしっかり読んでいると間違いなく居眠りしてしまう。 さてこのシリーズ、電子書籍化されたのはつい最近のことだ。 しかし初出は昭和60年のこと、つまりいまから38年も昔のことなのだ。 いまなら電話は個人もち、どんなときにもどんなところでも話す事が出来る優れものが、この時代は、家電にかけなければ連絡不能の状態になるのだ。 まあそれにしても野蛮な拳法があったもので、骸骨を壊さずに脳みそを破壊するというのだから何とも恐ろしい話だ。 作者は上智出身、ところどころに上智が出てくる。 よっぽどいい大学だったんだろうな、うらやましい。(10/2記)678901234567890
2023.12.13
コメント(0)
精鋭【電子書籍】[ 今野敏 ] いわく事件の起きない警察小説なのだそうだ。 しかし警察内部の実情が事細かに書かれていて、リアリティ満載だった ヒーロー柿田巡査のそのもの怖じしない根性だけが取り柄みたいなキャラには、読み手も登場人物もみんな救われた。 今野敏を読むと間違いなく取材源に警察官がいることがわかる。 それはおそらくこれまでの経緯を踏まえるとどうやら警視庁警備部あたりかあるいは本庁かというところだろう。 警察官であれば警察学校は誰でも通るところだから、詳しいのが当たり前。 その後の実習生としての交番勤務及び署内勤務で飲食店に生安実習生が飛び込んでいくなどということはいただけない。 この卒配しても実習という形をとるのは警察官としていきなり現場を踏ませたくないという思惑が働いているのだから、ありえない話でしたな。 柿田が配属された署の、各課の彼の指導員の言は、まさに警察の第一線の警察官の真のことばでしょうな、ここまで取材したことは本当にすごいと思う。 そしてなにより、本筋である、SATの話、作中何度も一般ピープルに知られてはならない存在としながら、果たして本作のような訓練やら何やらがなされているものなのかどうかは、もちろん不明だ。 本作を事件を伴わない警察小説としたのは、けだし名案だった。 その形をとったことにより本作がまた別のジャンルを生んだという思いもする。 1970年代にアメリカの現職警察官が書いた、センチュリアン、という小説は映画化もされたが、まさに経験論からくるリアルであったけれども、本作はそれに比肩できる出来栄えになったのは、作者が警察の関係者でないことを鑑みると、すごい作品になった。 快哉である。(9/29記)
2023.12.10
コメント(0)
キンモクセイ【電子書籍】[ 今野敏 ] 今野敏の情報源が本庁にいることはほぼ確定だな。 しかもそれはどうやら警備局警備企画課らしい。 キャリアの悲哀がきっちりと描かれていた。 ただ当然本作はフィクションだろうから、どこまでが本当でどこまでが虚構かはわからない。 しかし十分なリアルがミステリーリーダーに迫ってくる。 本作において同期の女に対する恋心とか同期に対する嫉妬心なんか果たして必要だったのかね。 その分他のエピソードを入れたほうが面白かったのでは。 ということで今野敏が本格ミステリーに参入することはほぼ不可能と私は判断した。 ただしエスピオナージ作家としては、これから十分面白い作品を出すことができるんじゃないか。 そもそも私は本作の読中、もう全員を疑わざるを得なかった。 終盤近くに真犯人が元米水兵と判明したけれど、今野はこの辺が甘いね。 その時までの話のもたせ方が実に絶妙かつ巧妙であったことから、元水兵が出てきてからは、ちょっと西京的に過ぎてしまってがっかりもした。 けれどもリアルという点で、西京的な嘘がない分とても面白かった。 結局取材力だね、ミステリーは。 さて今野、このあとどんな手に出てくるか。 私は今の公安続きでいいと思うのだけれど…。 いずれにしろ一気に読むことができた。 作家には読ませる技術も必要だということだ。 今野の次作が楽しみだ。(9/18記)
2023.11.29
コメント(0)
呪護 (角川文庫) [ 今野 敏 ] ちょっと出来が悪かったね。 冒頭からの能書きが長すぎた。 所轄の強行犯係と本部の少年事件捜査係の関係が桁ずれしている。 少年事件捜査に関する理解が不十分だ。 それから刑事事件の強制捜査の場合の時間のくくりと警察と検察の関係があいまいだ。 ただ本作が超能力的な話だからその辺は甘くしてもいいか,などということに私は与したくない。 それから本作の肝である真言立川流に関する説明も不十分だ。 本作ではただ単に東密と台密の対立のみを描いていたがそれでいいのか。 冒頭の高校教師と女子高生のシーンを細かく書くとたぶんアラートが鳴ってしまうからここは自重しよう。 しかしあの事件が刑法犯か淫行条例かを論じるのであれば,女子高生が明らかに18歳未満だと言う事を書いておかなければなるまい。 被害者の供述も取らないで事件化する馬鹿な警察官が世の中にいるはずがない。 まったく今野敏の取材先というのはいったい誰なんだ。 ここまでリアルがないとどうも私は今野敏から離れたくなるね。 だからたとえば清張のように巧妙に警察から離れて自分のフィールドで勝負をすればいいのだ。 あまりにも今までの今野敏の作品と違いすぎるので,彼に何かあったのかと心配になる。 ただ東京の,靖国神社を中心にした築地本願寺などの形が魔法陣になっていて,山手線が結界になっており,さらに大江戸線がその力を発揮すれば,それらがとけて仕掛けが崩壊するみたいな話は良く作ったものだと感心した。 しかしせっかくのその話もひとつの図面もなくてがっかりしたのだった。(6/1記)
2023.08.14
コメント(0)
エムエス 継続捜査ゼミ2【電子書籍】[ 今野敏 ] このシリーズの第1作目がとても面白かったものだから, 2作目を早く読みたいと思っていたのだけれども Kindle Unlimited になったのが, つい最近のことでやっと読了できた。 しかし 2作目は駄作だな。 まず今野敏そのものが捜査の仕組みを分かっていない。 今回取り上げたのが冤罪でそれを大学のゼミでやっていくわけだけれども, そのためには生の公判やらさらには本作において小早川教授が大滝警部補から犯人扱いされるという そのシチュエーションで冤罪の怖さを演出しているのだけれども, その端々に強引な捜査手法に関して今野敏の一方的な思い込みが書かれていてとても不快だった。 まず警察捜査は逮捕したら終わりではない。 そこからの長い道のりがある。 そこを今野敏は理解していない。 警察逮捕後48時間で検察官に送致されるがそれは身柄と書類が送致されるというものでその際検察官が送致されてきた書類を検討するとともに被疑者から弁解を受ける1つの形式だ。 その後検察官は24時間以内に裁判所に10日間の勾留を申請するわけで その流れから行くと確かに書類上は検察の手に移ったように見えるけれども 実質は警察にあって警察署の中にある留置施設に勾留されているわけであり10日で捜査が間に合わなければさらにもう10日勾留請求して真相解明に当たるというのが捜査の形であくまでも捜査の主体は警察なのだ。 だから本作のように逮捕して万歳ということはない。 少なくとも検察に起訴をしてもらわなければその捜査は失敗だったということになる。 本作において, 今野敏は捜査官が思い描いた筋を絵を描くと表現しているが,これこそが 警察が今まで冤罪を生んできた原因であってなし割捜査とも呼ばれているもの, それが ,平成15年, つまり 2013年に鹿児島県志布志署における選挙違反事件の取調べであった。 以後警察は本作における大滝のような無謀な取調べはできなくなった。 当たり前の話である。 本作は2020年に刊行されたものとすれば 警察の捜査の現実の姿は分かっていたはずだ。 本作において今野敏には本当に失望したというのが私の今回の感想である。(5/2記)
2023.07.30
コメント(0)
蓬莱 新装版【電子書籍】[ 今野敏 ] 平成6年初版,平成9年文庫化。 スーパーファミコンが出てくるから,かなり古臭いのだけれど,安積班長シリーズとしては素晴らしい出来だ。 感動とか涙が出てきたとかそういう類の素晴らしさでもないし,ミステリー的に優れているわけでもない。 今野の5色シリーズとか特殊防諜班シリーズともまた趣が異なるのだけれど,なんと本作には,歴史学あり,政治学あり,警察学あり,捜査学あり,反社学ありとこれだけ書いたら総花的と言われそうだが,そうではなくて,それぞれの知識が実に深く,それらの小ネタを読むだけでもためになるのだ。 平成シングル私はまだ40代で,仕事的に最も脂が乗っていた時代だ。 だからそんな時代,残念ながら推理小説など読む暇がなかった。 今ね,今野敏の作品は脳内スパークがしない,文章力がない,なんてうだうだ書きながら,また彼の本を読んだら,いやあなんとこれが傑作だったというのが本作だね。 今野は,コンピューターやネットに詳しいんだね。 そういう作品が時々出てくる。 そして思うこと,このサイバーの世界は日進月歩,書いているうちに時代が変化している舞台なのだ。 それは流行作家には実に困難な状況ではないのか。 本作を読んでみて,本作は玄人向き,とても売れた話ではない,と私は思いつつ,本作に引き込まれてしまった。 時代は,現代から過去を見ることしかできない。 未来は過去から現代に来た線上のベクトルにある。 未来の予測はできても予言はできない。 私は,本作からそのことを学んだ。 今野敏おそるべし,たまにいい作品を書く作家だ。
2023.02.22
コメント(0)
茶室殺人伝説【電子書籍】[ 今野敏 ] 本作も実に読みづらい。 また安積が出てくる。 茶道の家元が剣術の達人であった。 それは宗祖からの伝授であり,家元たるものは殺気を感じあるいは殺気を感じなくても敵の攻撃に反射的に反応し,敵を制圧する技を持っているというものである。 そのことをもってつまり敵が刃物を持って襲ってきた場合,自らを傷つけることなくまた相手の返り血を浴びることもなく組伏せることができ,その様はあたかも刃物で自ら命をたったように見えるということだ。 よってもし茶室においてそのようなことが起きれば密室になる,つまりそれが本作のトリックなんだけれども,うーむ,そのトリックとても素晴らしい! のだけれども,如何せん話がくどくて, でも幹になる話というのは茶道の家元,その息子二人,その息子の愛人,もう一人の息子の将来恋人になる弟子そして安積。 それに検察官だの弁護士だの裁判官も出てきて茶室でお茶を嗜みつつその家元が不意の襲来を阻止することができるかという実地検証をしてしまうという構造的には非常に斬新な話だった。 ただ何度も言うけれども今野敏の文章が私には響かないのである。 本当にもったいない作品だなあと私は思った。 これが後の特殊防諜班シリーズに繋がるんだなとも思った。 まあそれぞれ,書き手と読み手の合う合わないはあるだろうね。 しかたのないことだ。
2023.02.20
コメント(0)
イコン 新装版【電子書籍】[ 今野敏 ] イコン というのはアイコンのことであった。 本書が書かれたのは1995年10月,以後1998年8月文庫化されさらに2016年11月電子書籍化された。 本作においては,パソコン通信, などという言葉が使われているが,すなわちこれは今日の SNS のこと,ある意味今野敏の先進性が認められる。 しかしながら今野敏の文章がこんなに読みづらかったろうか。 どうも私の脳内がうまくスパークしないのだ。 いったい本書で何を求めていたのだろうかという疑問にさらされた。 次の作品も同じく今野敏の作品を読んだので,安積シリーズとでもなるのか。 後の班長ものなんだろうけれども,結局私は森村でかなり自力をつけたのだろうね,今野敏の作品が物足りなくなったのだろう。 本件は少年事件だ。 今野敏に関しては多分本庁あたりに情報源があるのかなと思っていたけれども,本作は初期の作品だったろうか,少年警察に関する理解が甘い。 少年事件だからといってしかもこの作品が書かれた時代少年事件は全盛期であり,前線の警察官が少年事件を甘く見て捜査したりは決してしていなかったはずだ。 そのような時代背景も考えると,今野敏の情報源はやはり現場から乖離している本庁の警察官なのかなあなどと思ってしまう。 ただパソコン通信と言うアイテムを通じて現代の SNS のあり方を予言したということは確かであり,その先見性には脱帽しなければなるまい。 これまでの今野敏の作品と比べるとイコンはいまいちだったなというのが私の偽らざる感想である。
2023.02.19
コメント(0)
豹変【電子書籍】[ 今野 敏 ] さて本作は、 とその前に、本書が四作目となる《祓師・鬼龍光一》シリーズのおさらいをざっとしておこう。 まず第一作の『鬼龍』だが、これだけはちょっと別格で、主人公は鬼龍浩一という〝亡者祓い〟を請け負う鬼道衆の血筋を引く人物であった。 が、このときはまだ鬼龍浩一は単独での登場で、奥州勢の祓師・安倍孝景も、警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・富野輝彦も出てこない。 シリーズ作として現在のような形になったのは、第二作『陰陽』が最初で、このとき鬼龍の名前も浩一から「光一」と変更され、富野と孝景もこの作品から登場する。 以後『憑物』そして本書となるわけだが、最初の『鬼龍』から数えると二十年以上の歳月を経て続く稀有なシリーズと言えよう。というもの。 つまりまたまた今野敏の新たなシリーズを私は探し出したのだ! それはともかく本作もツッコミどころいっぱい、それはそれとして憑依モノ、心霊モノ、とも言える本シリーズは、例えば、 「他者の意識との同調や共鳴、つまりもっと平たく言えば、他者との共感ということになりますが、それを司るのは脳の側頭葉です。側頭葉の中でも、特に神秘体験などに関係している部位があり……」与部がうなずいた。「シルヴィウス溝だね?」というように心霊事象をシルヴィウス溝としているあたり、少しは科学的にしようと思いつつ、本作のほぼ主人公である鬼龍光一に、企業秘密と言わせて、靄靄とするあたり、先の解説者の書いたとおり、20年もの長きにわたるシリーズモノになったということなのだと私は思う。 本作もまたこの間読んだ作品同様バーチャルリアリティをテーマにしたもので、あの作品つまり「殺人ライセンス」より先の時代、だから今の時代に近い話で、それゆえ読み手には臨場感があったのではあるまいか。 ただ、やはりここでも今野敏の法律音痴は否めない。 いいですか、少年事件の全件送致というのは、第一次捜査機関としての警察が少年事件を全件送致しなければならないということで、その送致先は検察官なのである。 その先に家裁があるということ。 まあ、今野敏は現場を知らないのだからしょうがないか。 つまり今野敏の情報源も少年警察の本質を知らない関係者ということなんだろうな。 殺人ライセンスよりはずっと本質をついてはいるけれど…。 あーあ、私はこのシリーズもきちんと読みつぎたいな。 とても魅力的なシリーズだ。 たしかに、乱歩、正史、清張、森村のあとの人ではないけれど、面白い作品が多すぎる。
2022.12.15
コメント(0)
殺人ライセンス【電子書籍】[ 今野敏 ] 2002年初刊、サイバーの世界は日進月歩、本作を読めばその分野が様々変わったことがわかる。 その時代から今日まで見てきた吾々世代には2002年当時の画面も頭に描くことができるのだが、現代に生きる子どもたちにはちんぷんかんぷんな話だろうなあ、きっと。 それはともかく、今野敏とは一体何者? 警察小説作家だと私は思っていた。 しかしどうもそうではないらしい。 こだわりたいのは本庁の記述。 今野敏は特殊防諜班だったかSTのシリーズで、本庁に、ほんぶ、のルビを振っていた。 今回はそこがまだ理解されていない記述でしたな。 なのに本庁の係長は警部、所轄の係長は警部補、などという小ネタも散りばめられていた。 本作も含めて今野敏は少しずつ進歩してきた警察小説作家なのかもしれない。 あっ、それから警視庁生安部ハイテク犯罪うんたらかんたらなどというのは、2002年当時既にサイバー犯罪対策課だったと思うけれど(間違っていたらごめんなさい)。 そもそも今回は高校生が主人公でそこに刑事やら探偵が出てきて、チャンチャンなのだが、上記のことを様々分析すれば、この作品を書いた頃の今野敏はまだまだ警察に対する取材力不足、まだ警視庁内部に情報源を設けていなかったんだろうな。 その後の長足の進歩を考えると、情報源というのはリアリティに関し実に重要なファクトだ。 話は私にも理解できた。 ことサイバーとなると尻込みしてしまうけれど、犯人まで読み手を引き連れていったのは見事な文章力だ。 つくづく今野敏の文章力には敬服する。
2022.12.14
コメント(0)
空席 今野敏 本作で警察キャリアの竜崎は大森署長から神奈川県警刑事部長に栄転していく。 残された大森署の幹部が竜崎を頼りにして急場をしのぐという小品。 シリーズには列しないけれど、今野敏が自ら小品としたもの。 特に大きな波はない。 ただ警視庁方面本部野間崎管理官が大森署に出張ってきて、緊配の果てまで云々カンヌンするものだから、困った大森署の副署長警務課長が竜崎に相談するという話だ。 話は都合よく収まるのだけれど、今まで警察の事を詳しく取材してきた今野敏にしてはかなり素人っぽいなと感じた作品でもあった。 そもそも緊配で事件が解決するなら刑事など必要ないという話。 こっちの事件の緊配だからあっちの事件の緊配ではないなどとう話がどこにあるのか。 事件が2つでも所轄が違っていても隣接しているならばそれは複数の目で緊配していいんじゃないか。 などツッコミどころ満載、なんだか今までの今野敏では考えられないようなつまらなさでがっかりしてしまった。 それもこれも小品なるがゆえの当然の帰結。 まそれにしても今野敏は竜崎にご執心のようだ。 つまり竜崎こそが今野敏の情報源ではないのか。 だから現場感とか臨場感とかリアリティが感じられないのだ。 さて隠蔽シリーズのKindle Unlimitedほここまで。 またいつの日かKindleが隠蔽シリーズをUnlimitedにするまで待つことにしよう。 Unlimitedで読めるだけ幸いとしなければなるまい。
2022.11.27
コメント(0)
隠蔽捜査 (新潮文庫 新潮文庫) [ 今野 敏 ] そうかそういうことか、今野敏の情報源は本庁だったか。 事件の内容はあの国松長官狙撃事件を彷彿とさせる。 つまり連続殺人事件の被疑者が警察官であることをいかにして隠蔽するか、という点で、暗に国松長官狙撃事件の犯人はやっぱり警察官だったということを示唆したのか。 それはともかく本シリーズはこれまでのシリーズとは毛色を異にしますな。 ようするに警察キャリアの話だものね。 今野敏の情報の出どころが本庁であるとすると、なるほど今までのシリーズ、つまりSTであるとか、特殊防諜班であるとか、同期シリーズの話が現場から飛んでいる理由がわかる。 今挙げたシリーズについてキャリアの側から読むとなるほど現場を通り越してぶっ飛んでいるわけで、まあそれにしてもキャリアが情報源とすると、この情報源もキャリアにしては法の知識不足じゃないのかな、キャリアなら司法試験も通る頭脳のはずなのにな、という問題点は残る。 本作をよくよく読んでみると本庁の総務課長と警視庁刑事部長が小学校の幼なじみだったという伏線があって、終盤この二人が対峙する場面が出てくるのだ。 そこが本作の見せ場でもある。 さて最終盤主人公の息子がコカイン使用で取り調べを受け、その結果、本庁総務課長から警視庁大森署長に、本作が言うには、左遷、させられるのだが、大森署と言ったら東京でも指折りの署じゃないのか、それが左遷なんですかね。 そういう組織だとするとこの国の治安体系は狂っているという気がするけど、今野敏にその点を指摘する気はないようだった。 まあいずれにしろ今日では隠蔽などした日には、ばれたらとんでもないことになるわけだから、誰も自分の組織防衛のために隠そうなんて気にはならないだろうね。 防衛する必要もないほど警察の不祥事が続いているものね。 むしろ本当のことを言い続けたほうがこの先安全なのかもしれない。
2022.11.26
コメント(0)
熱波【電子書籍】[ 今野 敏 ] 今野敏の守備範囲の広さを感じることになるのだろうかと期待したけれどそれほどでもなかったかな。 結局今野敏節を感じることになってしまった。 今回は内調つまり内閣調査室員の話。 旧自治省のキャリアが内調に出向して沖縄県にさらに出向する。 なーんて事そもそもあるのかな。 つまり出向の出向。 そして結果彼は沖縄県の職員になることを切望して終わる。 このへんは残念ながら朝ドラ理論に悖る。 沖縄県内では台湾マフィア2つがその利権を求めて抗争中。 内調からの出向者である彼は台湾マフィアのほかCIAからも目をつけられる。 ところがこの内調、その内実は他官庁からの寄せ集めにしてその仕事の実態は新聞記事の切り貼りつまりスクラップづくりとか。 彼に実力などあるはずもなくただただ脅威にさらされていくのだ。 そうこうしているうち米軍が仲立ちしてこの台湾マフィアの抗争を収め無事だった彼は沖縄県職員を切望しさらに沖縄に来た最初に知り合った女性との恋を進展させていくだろうというこれは一作限りの作品になると思われるものだった。 本作後の解説では本作は今野敏の作品中傑作の部類に入るとのことだったがこれまで彼の作品を一生懸命読んできた私にとってはどうも魅力に欠ける作品だった。 まあそれにしても今野敏の作品は一定のレベルが保たれているのでハズレがないと言ってもいいのかもしれない。 安定感のある作家ということになろう。
2022.10.02
コメント(0)
特殊防諜班 最終特命【電子書籍】[ 今野敏 ] シリーズ第6作、第7作は一気に読み終えた。 何より芳賀舎念その息子夫婦に孫娘の恵理が無事だったのがよろしい。 また真田武男、早乙女隆一もそしてモサドザミルも無事だったのが朝ドラ理論でよろしい。 でもよろしいことばかりでよろしいですかどということになるのかな。 ともかく私は今野敏のシリーズを二つ完全に読了したことになる。 一つは本シリーズ特殊防諜班でありもう一つは以前読んだ ST である。 ST に関してはテレ朝の5人組シリーズに似ていたのだがその5人が有機的に絡むということはなく結局青色が名探偵役だったのがつまらなかった。 しかしこの特殊防諜班に関しては出てくる人物がしっかりデッサンされており私の脳内で煌びやかにスパークしたのだ。 どの人物も非常に魅力的だ。 真田武男、早乙女龍一、モサドザミル、芳賀舎念、芳賀恵理、そして武器を売るミラー。 新人類委員会側では怪人が何人か出てきたのだが、後半は日本人東田夢妙斎がその中心となった。 本作の特徴は最終盤のどんでん返しだろう。 大どんでん返しとまではいかない。 つまりハリアーの操縦士について芳賀車念も芳賀恵理も悪意を感じないというような念を感じていることを何回か暗示していたことからもしかして… これ以上書けばいわゆるネタバレになるので書かない。 しかしそれにしても本当に筋その物は単純で書かれていることは戦闘シーンが多いということから文学の体をなしていないのかもしれないけれど、娯楽作品としては超一流ではなかったか。 下手な映画を観るよりずっと面白かった。 私は今野敏は奇才だと思う。 本作の幹はユダヤの12支族の内の一支族が日本にきたという仮説に基づく。 この仮説は本当にある仮説である。 日本語とヘブライ語が似ていることもその根拠である。 第7作ではそのうえ高邁な宗教論も出ている。 つまりこの世界の歴史はキリスト教を基準にして考えられているというものだ。 まあたしかにそのとおりだろうな。 そういう意味でも実によくできた小説だった。
2022.10.01
コメント(0)
特殊防諜班 聖域炎上【電子書籍】[ 今野敏 ] いよいよ第6作目。 結局私は本シリーズにのめり込んでしまった。 なんという作りなんだろうか。 よくできている。 今野敏という作家が偉大に思えてきた。 ようやく7作目で終わりなのだが、芳賀舎念、芳賀恵理、真田武男、早乙女隆一、モサドのザミル、そして恵里の両親がだんだんだんだん収斂されてきて新人類頻委員会との一騎打ちに臨んで行くのだ。 今作の題名、聖域炎上という言葉から類推されることは何と言っても芳賀舎念の住んでいる山が炎上するということなのだろうなとということ。 その一点を見つめながら読み進めた。 ハリアーというジェット戦闘機が出てくる。 それは低空で飛行できる。 レーダーにかからない今で言うステルス戦闘機のような性能を持つ戦闘機だ。 その乗組員は天才的なパイロットである。 それと山の民でありながら新人類委員会についた東田夢妙斎がこの第6作第7作で芳賀一族そして特殊防諜班に宣戦布告してくるという内容である。 何より今野敏の武器とか戦闘機などに関する知識が豊富なのがすごいと思う。 彼はどこでこのような知識を得たのだろうか。 彼が得意とする警察ものとは全く別の内容で、その守備範囲の広さには脱帽する。 ひとつの二刀流ではなかろうか。 それはともかく本シリーズは警察もの或いはミステリーとは全く違う読み物として楽しめばよろしい。 私はそういう読み方でいいと思う。
2022.09.30
コメント(0)
特殊防諜班 諜報潜入【電子書籍】[ 今野敏 ] うむ、実に巧妙に話を繋いでいきますなあ。 とにかく、真田、早乙女、ザミル、芳賀老人と孫娘は今回も健在。 彼らは安定してきたね。 そのうえ特殊な状況下で真田は自衛隊をも動かすことができるのだ。 ただし警察には及ばないというのがひとつのオチだね。 今回はどうやら真田と同じ山の民の男が何故か新人類委員会のエージェントとして動き始めたらしいことがわかったところ。 つまり今度は彼が本シリーズの怪人役となるのだろう。 サイドストーリーでは芳賀恵里が薄化粧して飲酒する。 これはうまくないね、今は。 まあ、どの面下げて18の女が酒飲んじゃ悪いなんて言っているのかと多方面から責められそうな気もするけれど。 とにかく言論封殺の時代になってきた。 逆の意味でね。 だから昔の小説のあとがきには必ず当時の云々なんて但書がつくんだもの。 まあそれはともかく本シリーズは武器やらヘリやら自衛隊やら霊能力やらがハチャメチャに動くんだけれど決してまとまりがつかなくてわからんなどという話ではなくて多分今野敏は7作目に大きな落とし所を仕込んでいるんだろうな、そんな気がする。 つまり訳がわからんとか独りよがりで読めん、なんてことがなくて、じつにキレが良いということ、キレが良いということはこの先の話に期待が持てるということ、だからこのまま最後まで読めそうだなという気持ちになってきた。 まあそれにしても今野敏という作家は頼もしい作家だ。
2022.09.28
コメント(0)
特殊防諜班 凶星降臨【電子書籍】[ 今野敏 ] シリーズ7作中4作目。 3作目では、ここでやめようかなどということを書いたけれど、本4作目はまた持ち直したかなという感じがする。 シリーズの登場人物それぞれの個性を生かしておそらくこのまま7作目まで行くのだろうか。 読んでいるうちだんだんだんだん彼らに私はのめり込んでいくのだ。 今回も主人公真田その上司早乙女イスラエルモサドのザミル、特殊な霊能力を持つ芳賀老人とその孫娘が有機的に動いて話を進める。 悪者はドイツのナチスの生き残りで今回は史上亡くなったとされるヘスというナチスの幹部が生き残っていてイギリスで指揮を執るという話になる。 話の形はひとつのマンネリなのだけれどその方が読み手にはありがたい。 悪者は二十面相的に何回も生き返るのかと思いきや今回はあのドイツの怪人は出てくることがなかった。 まあ、その方が自然なんだろうね。 だがある意味常識や自然を超えるのも小説の特徴だから、ミステリーリーダーから言うとドイツの怪人はまた何らかの形で生き返って欲しかったなと思うのである。 芳賀恵里が男の心に深く入り込む結果時々その霊能力をなくすなどと言う与太話も面白い。 本作あたりからもモサドのザミルに今度は気があるようなことを言っているのはちょっと気にかかるけれど、女には興味がないような態度を取っている真田こそ恵里に気があるんだろうなというそういうサイドストーリーも本シリーズでは気になるところだ。 ここまで読むと最後まで読み切らなければ私的には納得がいかない。 従って馬力を上げてシリーズを読了することにしよう。
2022.09.27
コメント(0)
特殊防諜班 標的反撃【電子書籍】[ 今野敏 ] シリーズ物を続けるのは難しいですな。 よく言われることはだんだん尻すぼみになるということ。 つまり正より続、続より続々になるに連れ作品が雑になってマンネリ化し矮小化していく。 今野敏の別のシリーズ物STはそれぞれにテーマをもって話を進めそれがミステリーの体裁をもっており一話一話が独立した作品だったので尻すぼみにはならなかったけれど本シリーズは3作目にして矮小化してしまったような気がする。 真田やザミルの好敵手が今回もバズーガ砲に打たれて本来ならば命を落としたのだろうが多分私の予想では4作目の凶星降臨でもまた異形で回帰することだろう。 今回は芳賀孫娘がロシア人に恋をし霊能力を逸してしまうのだった。 女性の霊能力者にありがちなことだという。 それはともかくユダヤの十支族を中心にしてそれを滅ぼそうとするチームとそれを守ろうとするチームのせめぎあいはこのシリーズが終わるまで続くんだろうな。 それがこのシリーズの売りだものな。 しかし私はここに来て本シリーズに少し食傷気味なのだ。 私は本シリーズにのめり込まなければならない義務はないわけでしたがってここでやめてもいいのだけれど実はKindle Unlimitedの7冊合本を購入しているので結局最後まで読み続けることになるだろう。 ただ残念ながらここまで読んでSTほどの煌めきを感じることができず残念ながらこのシリーズを読み終えたあとは私は今野敏を読むのをやめることになるのかもしれない。 そんなことを感じる本作であった。 4作目でなんとか挽回してほしいものだ。
2022.09.24
コメント(0)
特殊防諜班 組織報復【電子書籍】[ 今野敏 ] 第2作。 思った通り怪人は生きていたぞ。 しかも片方の目玉やら腕やら足が飛んでなくなっていた。 それほどの重傷を負っても彼は真田の敵として残ったのだ。 さらに芳賀の孫娘も活躍する作品になっていた。 今回はチベットの僧侶が日本に来て真言宗の僧侶と会議をするなどという話が混ぜてある。 密教同士の話し合いということだ。 これもまた第一作のカルト宗教との絡みか。 どうやらユダヤを出たユダヤ民族が日本で生きているということの仮定をこの物語の核にして進み始めているんだなと思った。 相変わらずアクションシーンは凄まじいばかりだ。 けれどこのシリーズはそのアクションがなければ進まないもののようだ。 いずれにしろ私は今野敏というのは警察小説を書く人だとばかり思い込んでいたから本作のような毛色の違った作品もまた面白いなと思えるほどの1,2作品の出来上がりでいよいよまた3作目を飲み始めるぞという強いモチベーションを保つことができた。 本シリーズは7作まであるという。 1,2作はほんのジャブ程度の話だね。 これから先まだまだ話が続きそうだし芳賀孫娘がいよいよその特殊な霊視能力とちょっとしたアクションで活躍しそうなのが楽しみな部分である。 真田の出自も少しずつ明らかになりつつあるしモサドのエージェントは真田と友達になりつつある。 この2作目で大体の人間関係が見えてきた。 さてこれから先いったいどのように話が進むかはわからないけれどもなかなかはちゃめちゃなので期待が持てるなと思うのは私だけだろうか。 ミステリーリーダーとして少し気楽に小説を楽しむということがあってもいいのだと思う。 その意味で本シリーズはとても面白い。
2022.09.18
コメント(0)
特殊防諜班 連続誘拐【電子書籍】[ 今野敏 ] ウーム、今野敏も多作家なんだな。 いよいよこの特殊防諜班シリーズに入った。 一作目果たしてどんな内容なのかワクワクしながら読み始めたわけだ。 結構分かりやすい人物配置だ。 つまり自衛隊に派遣されている警察庁の警視正を長とし自衛隊の陸自の一匹狼的な隊員を部下とする特別な部署の話だ。 第一作は日本におけるカルト的な宗教の創始者などが次から次へと誘拐され大抵の人は無事帰るのだけれどただ一つの宗教の創始者が殺されてしまう。 それはイスラエル・ユダヤに関係があるということだ。 要するにユダヤの放浪の民族が日本にたどり着いたという仮説に基づく話なのである。 警視庁からの派遣の警視正は早乙女といい本シリーズの主人公となるのは自衛隊の真田というものである。 そこにモサドのエージェントと芳賀という祖父と孫娘が関連して相対する悪者のグループは実は日本駐在のドイツの大使にしてナチスからの流れを汲んでいる。 ユダヤの民族の生き残る事を望まないグループの長なのだ。 デフォルメすれば江戸川乱歩や横溝正史か。 この先この男があなた達のライバルになるのだろうか。 いずれにしても様々な武器や軍事的なアイテムが次から次へと出てくるし素手対素手という戦いも出てきてとてもテンポが速い。 それでもなんとか私がついていけるのは今野敏の文章力のなせる技なのかもしれない。 本シリーズは明らかにミステリーではない。 従って私の分野ではないけれども今野敏という作家について読み始めた流れでこのシリーズもきちんと読み上げて仕上げなければならないと思う。 ちなみに先ほど乱歩か正史と見紛うばかりの怪人の出現について書いたけれどもこれはきっとまだ死んでないぞと言う感じが強くした。
2022.09.17
コメント(0)
継続捜査ゼミ【電子書籍】[ 今野敏 ] ウーム、なんという面白い作品だ。 ますます今野敏にのめり込んでいくじゃないか。 読了後数点思ったことをここに書き記す。 まず私がいつも今野敏に対して書いている辛口の批評つまり法律オンチであるということに対する明確な彼の答えが本作にしたためてあったということ。 つまり女子大のゼミを通じて彼つまり今野敏は見事に法律の勉強をしているのだ。 主人公は警視庁を定年退官した元警察官で最終の職が警視庁警察学校長であったということ。 このことから私は今野敏の情報源がこの人当たりじゃないかと思ったね。 現役時代からさまざまな情報を得ていたのだろうが定年退官となりさらにバージョンアップしてきたのではあるまいか(本作が書かれたのが2017年作者がちょうど60歳のころつまり定年の頃である)。 その彼小早川が請われて女子大の刑事政策の講座を担当する教授になる。 その中のゼミが継続捜査ゼミである。 ここに現職の警視庁の刑事が来て様々な情報を提示するとともにゼミに所属する5人のメンバーがそれぞれ深く考慮した末に意見を述べあって一つの未解決事件を解決していくものである。 この作品は警視庁科学特捜班つまりあの5人組をまた彷彿させるものなのだかあの作品は青色君がただ一人孤軍奮闘してつまり青山名探偵として解決に導く作品で他の四人が狂言回しだった。 それに対し本作では5人のゼミ員のと小早川教授それに元部下である警視庁の現役の刑事3人が絡んでいく。 本作の大きな未解決事件は15年前の老夫婦強盗殺人事件であった。 窃盗に入り込んだ犯人が気づかれて夫婦を殺した後逃走したつまり事後強盗で強盗殺人事件になったと推定されるものである。 この事件を大きな幹にして小さな枝としては女子大のバレーボール部のシューズ3足盗難事件それからバスケットボール部の2足のシューズのうちそれぞれの片方が盗まれるというもの。 さて本件老夫婦被害にかかる強盗殺人事件であるがこれに対しては5人のメンバーが疑問を呈してそれに対して現職の刑事が次から次へと調べてまたその情報を高めて行くという流れである。 そしてついには犯人を突き止めてしまうものだ。 ただ物足りないのは本事件に関して警察の捜査陣が5人のメンバーが意見したような点を捜査本部で考えなかったのかということもあるしそれから犯人が結局15年もの間被害者宅のすぐ近くに住んでいたことなどちょっと考えられないことも多かった。 しかし本作は素晴らしいシリーズになることは間違いない。 すでに第2巻が刊行されているようだ。 それが早く Kindle Unlimited 版にならないのかと今からワクワクしているのだ。
2022.09.09
コメント(0)
ST プロフェッション 警視庁科学特捜班【電子書籍】[ 今野敏 ] さて本作も青山君の独壇場である。 名探偵青山が最後にプロファイリングをして犯人を言い当てる。 ただ他の色の人たちが出てこないことについて少しは著者自身が自分の気持ちやら読み手からの意見を聞いたのであろうか赤も黒も緑も黄色も少し動いた。 でもやっぱり黄色山吹の仕事がただ薬物の検出だけでは物足りない。 赤城に関してもただ体を開いて回線虫とか言う病原を指摘したくらいでは活躍の度合いが少なすぎる。 黒崎と翠の人間ポリグラフも今回は機能しそれをもとに青山がプロファイリングするという形に持って行っているけれどそれすら今まで人間ポリグラフの法的根拠も科学的根拠も薄いという著者自身が書いていたことに反するように誰も彼もが今のは嘘か本当かと聞く当たりがリアルに欠ける。 本件は大学の研究室の成員が誘拐された後原因不明の病気になり一人は死んでしまうという話になっている点そのプロファイリングに関してはミステリーの読み手つまりミステリーリーダーならば全部みろっとめろっとお見通しの話で青山にプロファイリングをしてもらう必要性はなかったのではないのか。 また赤城の解剖の段になって令状なしに解剖などできるものかということやら逮捕してその直後に送検したかのような文章が見えるところ相変わらず今野敏の法律オンチがこのシリーズからリアルを奪っているものであり従って今後今野敏の本はこの5色シリーズを持って一旦閉じたいと思っている。 しかし意外と他のものに手を出すかもしれないな。 だってこの色シリーズの前の同期シリーズも読んでとても面白かったもの。 まあ確かに私のミステリーリーダーとしての研究の対象としては今のところ乱歩、正史、清張の流れの次に来るものではないのでこれらと同列に論じることはできないのだけれど本シリーズは魅力のあるシリーズであった。
2022.09.05
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 沖ノ島伝説殺人ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] 本シリーズは次作プロフェッションで完結ということだ。 全部で13作ということだ。 つまり次作を読むことによって本シリーズ全作を読了することになる。 本シリーズのうちの伝説殺人シリーズに入ってから明らかに探偵役が青山になってしまった。 中心が心理学のプロファイリングになってきたのである。 沖ノ島に関してはその島自体がご神体になっており警察ですら容易にその島に渡ることはできないという縛りの元、青山はプロファイリングを重ね島に渡ることなく犯人を摘示する。 この間他のメンバーは申し訳なさ程度に出てくるのだ。 赤城は相変わらず死体がなければ俺の出番はないと言っているし黒崎と山吹はほとんど出番がない。 翠は黒咲と組んで時々人間ポリグラフの役目をするくらい。 それとその露出過度なキャラクターが私たち読み手はもとよりこの小説に出てくる刑事役の目の保養になるということ。 それから百合根の下にいる菊川が見事にこの翠をうまく操り始めたという見せ場もあるのだけれど結局本件隠岐の島伝説殺人に関しては島に渡ることなく青山が犯人を見つけてしまったのだ。 結局また今野敏の法律オンチが露呈されてしまったのであるけれどこのシリーズの見所は法律論争ではなくてまた捜査権ある警察官の話ではなくて科捜研の職員の話なのだ言うことを考えればなかなか見事な作りになってる。 今野敏のシリーズとしては売れ筋なのだそうだ。 そして今野敏そのものがこのシリーズに関しては2時間で読み切ることができることを考えながら書いていたそうだ。 つまり映画を観るのと同様の時間で本小説を読んでもらえばいいという思いがあったらしい。 そしてこのシリーズはベストセラーとも言えるシリーズになったということだ。 ただ読み手である私が今まで知らなかったということなのだろうか。 本作で12作目次のプロフェッションで13作目最後の作品となる。 返す返すも5色集めながら青色だけになってしまったのが残念だなー。 令状なければ何もできないというのが捜査の大原則である。 つまり令状があれば入ってはいけない島にも行けるのである。 そこのところがすっぽり抜けてしまってしかも青山は島にわたらず犯人を見つけたというくだりで尻切れトンボになってしまった。
2022.09.04
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 桃太郎伝説殺人ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] 色シリーズのあと伝説殺人シリーズに入ったが探偵役がすっかり青山になってしまって他の赤黒黄緑の存在感が薄くなってしまった。 緑と黒の人間ポリグラフも作品中出てくるのは数度。 それより翠と菊川の掛け合いが面白い。 翠は何より飛行機嫌いなのだ。 そこで医師の赤城が眠剤を処方し菊川が傍に寄り添って手を握るというパターンが多くなってきた。 さて本作は元警察官の話。 かつての職場の上司に復讐するために事件を仕掛ける。 この辺の共謀共同正犯の成立の有無についての法学的な議論は面白いものとなろうがさすが今野敏だ、法律音痴がここにも出てくるのである。 まあそれよりもこの5人組は縦横無尽に動ける分、百合根や菊川のような法律に縛られた警察官より魅力的ということになろうか。 結局青山が探偵役になるのは最終的に心理的な部分の総括により本件の動機の部分を深く追及して語らなければならないという今野敏の小説の成り立ちに起因するのである。 今では黒崎の出番は殆どないのだ。 それはとても残念なことだ。 本作では3件の殺人事件が語られるがそれらは桃太郎に関係するということ以外の繋がりはない上実行犯が次から次へと見つかる話で作中彼らが話しているとおりSTが参加しなければならないわけが一体どこにあるのかということになるのだ。 私は次作、沖ノ島伝説殺人事件も読むことになるがこれら伝説殺人事件に新たな展開が出ないようなら次の作家を探さなければなるまいなと考えている。 頑張れ!今野敏!
2022.09.03
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] さて本作は STが出張る必要はなかったと私まで思うような内容だった。 いわゆる5色シリーズを今まで読んできたがそれら5+2を使った作品と比べて本作ははっきりいって見劣りする。 赤城はこれは俺の事件じゃないとうそぶくし翠は飛行機に乗ってブーブー言うだけ山吹はお経を上げたくらいか黒崎は例によって全く話さないし祭文語り百合根はいつものようにおろおろし菊川は文字通りSTと現場刑事のつなぎ役ということで今回働いたのは青山だけだ。 それも単なる犯人のプロファイリングぐらいで最後に探偵役的な立ち位置で犯人を指摘したものの本作におけるプロットもトリックも物足りない。 人が3人死んで最初の2人はプロのダイバーであるがこの二人が期せずして為朝伝説のある海岸で死んだことからテレビ局のワイドショーが面白半分に為朝伝説を組み込んだ。 それによりその番組の女性キャスターが沖縄まで飛んだもののその為朝伝説のある海岸でこれまた死亡したわけだ。 でもよくよく考えてみれば最初の2人のダイバーの死亡は明らかに事故死であるという見立てでありそこにテレビ局が面白半分に為朝伝説をはめ込んだために女性キャスターが沖縄の現場に行く羽目になりそこで死んだという物語についてはそもそもよくよく読めば先の2つのダイバー死亡事故と後のキャスターの事件は明らかに違う質のものであるということが分かる。 それは何もSTに限らず我々ミステリーリーダーにとってもみろっとめろっとお見通しの話であって何も新しいものではなかった。 だからそもそも警視庁の科学特捜班 ST が本件に絡む必要はなかったはずである。 しかしながらこれは結局警視庁科捜研の問題でこの事件で ST の株をあげようという科捜研の所長の思惑が見え隠れしたわけだ。 だから警視庁のあの ST の敵役である検視官も出てこないわけで物足りない寸足らずの作品になってしまった点残念である。 まあそれにしてもこのような作家の苦し紛れの作品というのは乱歩にも正史にも清張にもあるわけである意味今野敏が一流の流行作家になったという証でもあろう。 売れすぎてその結果多くの作品を書かざるを得なくなった作家の病、多作家症候群、とでも言うのだろうかこういう面白くもない作品は。
2022.09.02
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] もう完全にこのシリーズに私はハマってしまった。 その魅力はST5の成員が職員だからだ。 すなわち警察官でないから捜査権がない。 その分今野敏の苦手な法解釈を考える必要がないわけだ(本作では恐喝の現行犯でパクって放火殺人で通常逮捕などということを書いている部分を見るとやはり法音痴なんだな)。 その結果5の連中が自由自在に動き回る。 そもそも今回の黒は黒崎の黒だ。 その黒はなんと警察官にしたいような武術の達人だ。 その彼がまんまと詐欺被害者復讐グループに潜入してしまう。 そしてなんと最後は中国マフィアとやり合うわけだ。 ところが本件は最終的に新宿に巣食う中国マフィアの頭領を放火殺人でパクるということなのだ。 その放火の方法はとても文系の私には理解しかねるものだ。 とにかく高出力の電波が火災を起こす仕掛けだ。 それが北京大学で物理学を収めた王という中国マフィアの頭領の仕業なのだ。 本作は今から15年ほど前に書かれたものでいささか古臭い。 それでもとにかく面白いものは面白い。 ただただ気にかかるのは先述のとおり今野敏の刑事法音痴だね。 警察の組織のことは実に詳しいのにね。 まあというわけで本作のテーマはまず本件犯罪の方法としての高出力の電波、警察組織内の刑事部と組対部の対立構図、新宿に巣食う中国マフィア、そしてそれこそこの本が書かれた頃に全盛だったワンクリック詐欺でこれらが複雑に絡み合い話が進んでいくのだ。 つまり今野敏の類まれなるストーリーテラーとしての才能が存分に出された佳作といえよう。
2022.09.01
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] ミステリーを読んで泣けたなどというのはこの本が初めてだ。 最初の事件が盗難事件で捜査三課が出張る。 もちろん本作で刑事たちが述べているとおり盗難事件もれっきとした事件であり日本ではおそらく八割近くが窃盗事件であって田舎の警察では泥棒探偵つまりドロタンと呼ばれるその職が警察官たちの憧れだと聞く。 まあそれにしても昨今のミステリーは殺人事件じゃないといけないみたいな風潮があってその感覚から行くと緑の調査ファイルは翠の話なんだなあと思いつつその盗難事件に付き合うかと思って読んでいたところなんとついに殺人事件が発生するのだ。 ミステリーの読み手にはホッとするような展開だ。 しかも密室殺人なのである。 ちゃんちゃんと‥。 まあ盗難事件も殺人事件もトリックは大したことない。 しかし本作が緑の調査ファイルつまり翠の音の世界の話なのだからそれこそクラシックの世界に文章でいざなうわけだ。 この技量が今野敏、凄い。 しかも緑、翠と言っていながら実は中心は菊川と青山と来ている。 そう、この事件の謎を解いたのはクラシック好きの青山でありその円滑化を図ったのが菊川というわけだ。 今回は検視官が出てなかった。 それはとてもいいことだ。 一課長と三課長が物わかりのいい人でよかった。 なぜ涙が出たかというとこの物語の重厚さに感動したからだ。 うーむ、今野敏恐るべし。 ボレロのようにだんだん好きになるシリーズだ。 次は黒だ。
2022.08.31
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] 黄は山吹すなわち曹洞宗僧侶にしてSTの第二化学担当。 黄という所から多分宗教めいた話になっていくんだろうなと思っていたら案の定。 状況は一酸化炭素中毒による集団死。 それをまた捜査第一課の検視官(あえて原作の死という字に変えて視を使わせていただきます。悪しからず)殿がうっちゃらかそうとするのをSTの5+2が待ったをかけるといういつものパターン。 そして本当は帳場が立ち上がるはずの大事件なのにST5+2と所轄(今回は綾瀬署)が解決する。 中に仏教の真髄も語られていて著者の幅広い教養が感じられる。 まあいずれにしろ検視は事件かどうかわからないからするのであって本件検視官のようななんでもない方向に導くベクトルはミステリーの世界でもリアルの世界でもありえない。 今回は少し納得性に欠ける。 Who done it?になって容疑者が4人に絞られそこから消去法で犯人になるのだけれど結局この4人の誰もが未だに犯人になりうるという問題があるね。 そして小説的に真犯人は最も面白くない人間がなってしまった。 ほかの3人と違って山吹のもとで修行を始めたやつが犯人だなんて。 百合根警部殿、そこに気づきませんかと山吹はいう。 それに青山がもっともな理由をつける。 ということで本作は今までの作品群の中ではイマイチという評価だね、私的には。
2022.08.30
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] 今回は赤城の赤の調査ファイル。 赤城は医師ゆえ医療過誤がテーマになる。 しかしながら医療過誤は実に難しい分野で警察官が事件を立件するのは実に難しいと言われている。 すなわち医学の知識が皆無に近いからだ。 故意がある殺人ならともかく業務上過失とか過失という部分を捉えての立件は実に難しいというわけだ。 そこに赤城のような医師を成員にして入れるるのだから今野敏はなかなかの知恵者だ。 だが本件のようにうまくいくものだろうか。 それとまだまだ今野敏は甘いな。 殺人の札を取りに行って裁判官が過失致死の札を出すものかね。 それはもう一度取り直しという構図だろう。 たしかに赤城を主人公に立てた本作では医療過誤というのは実にいいテーマだった。 だがもう一つピリッと感がなかったな。 それは読み手もまた書き手もしっかりと事案を把握していないからだろう。 影の告発者小山の内心が赤裸々に語られていたがそれにしてもその内心を証明するものがなければなんともならんだろう。 彼らが言うように本件が新聞沙汰になったことで権力者が権力の座からずり落ちるだけの結果でいいのならそれまでなんだろうがやはり法的に被疑者が有罪となるまでの固めが欲しかった。 まあそれにしても本シリーズは魅力があるね。 5+2がだんだんだんだん固まっていく。 さて今度は、黄、だから山吹和尚の番だね。 どんな話か今から楽しみだ。 いずれにしろこれだけの話を作れる作家はすごいというほかない。
2022.08.28
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 青の調査ファイル【電子書籍】[ 今野敏 ] いよいよ青色から始まった本シリーズは5人組+2の魅力を存分に魅せ始めた。 そもそも彼らは本作では技術吏員なので捜査権がない。 ゆえに自由に動き回れるのである。 何しろ前作ではロシアまで飛んだからな。 それはともかく本作はきちんとしたミステリー仕立てだ。 まあ小説だから許せるにしても検視官が(小説内では検死官)そんな甘い見立てをしていては世の中誤認検視だらけになる。 本件は事件性が実に高いわけだ。 それを黒崎が体を張って脚立から落ちる実験をする。 その結果マンションの住民たちが集まる。 首の骨の折れ方からして本件がコロシ以外の何物でもないことは明らかなのに動こうとしない。 そして帳場すら立てようとしない為体だ。 この辺の甘さがリアリストに嫌われることになろうがそれでも面白いのは5+2の個性がいよいよ開花し始めてきたからだ。 そもそも本件は霊能力者の話。 それを磁力と結びつけるなんざあ今野敏もなかなかのもんよ。 霊を見た本件被疑者が更に直後に見た人間が犯人だというところ実に臨場感がある。 おもしろい。 しかも霊能力者の脳腫瘍にまで言及しているのだ。 実に面白いミステリーである。 今後の赤、黄、緑、黒に期待が持てる。 さらに〇〇伝説シリーズもあるらしい。 しばらくの間この5+2にかかりっきりになりそうだ。
2022.08.26
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ【電子書籍】[ 今野敏 ] いやあすっかりハマっちまったな。 ファンになってしまった。 このSTシリーズはハンパじゃない。 そもそも科捜研にSTがあるわけがないからもうハチャメチャにSTは動き回ることができるわけだ。 そして今野敏の優れているところはこれまで読みついできたようにエピソード1、0、そして毒物殺人と続いてもその成員つまりSTのメンバーが7人いるということがわかりながらはっきりしているのは百合根警部殿と菊川警部補くらいでその他の赤、青、黄、緑、黒のそれぞれが全く見えてこなかった。 それが本作でなんと舞台をロシアに移して披露されるという極めてすごい仕掛けに読み手はさらされるのである。 さて今ロシアはウクライナに戦争を仕掛けもう世界中を敵に回しているような状態なのだが、本作が書かれた頃はミレニアム頃で日露関係もそれなりで行き来も自由だったんでしょうあなあ。 隔世の感がする。 それはともかく今回はあの武術の達人黒崎がロシアに指導者として招かれるところから始まる。 そして殺人事件。 二人の人間が殺される。 ロシア人マフィアと日本のゴシップ記者だ。 その殺人事件は紛うことないミステリーである。 よくよく考証してある。 ポルターガイスト、粉塵爆発等実に理にかなっているのだ。 本作に至り本シリーズはついにミステリーとしての萌芽を見せ始めた。 これは感激だ。 さて赤は赤城、医師免許を持つ法医担当、黒は黒崎で第一化学、爆薬のようなものを担当するほか今まで書いてきたように武術の達人、青は青山、類まれなる美青年だが、秩序嫌いな臨床心理士にして文書鑑定担当、黄色は山吹、曹洞宗の僧侶にして第二化学つまり薬物担当、そして結城翠つまり緑は露出すぎる美人にして特殊な音感を持つ物理担当と今回はここまで読み取った。 これから先本シリーズから目を離せない。
2022.08.25
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版>【電子書籍】[ 今野敏 ] さて今野敏のST シリーズ3作目。 ついに本ブログに今野敏のカテゴリーを追加した。 はっきり言って私のミステリーの研究の流れにそうものではない。 そして読みづらく脳内スパークもしない。 それでも読む気になっているのはリアルと想像の世界を行ったり来たりしているということと赤青黄緑黒と言う5人組の存在が何より魅力的なのだ。 エピソード1ではその5人の片鱗が少し出されただけでありエピソード0では全く出てこない。 菊川という現場の警部補と本件 ST の班長の百合根警部は警察官として捜査会議にも出て意見を述べている。 しかし本作つまりこの毒物殺人においてこの5人組が出てくるのは中盤頃でありいまだこの5人の詳しい性格なり特徴なりその専門分野がはっきりと私に入ってこない。 したがって私はこの作品を読み継いでいきたいという思いに駆られてしまったのだ。 そうしたらなんと Kindle Unlimited に赤青黄緑黒シリーズが登場しているではないか。 つまり私はこの色シリーズを読みつぐことにしたわけだ。 従ってカテゴリーも今野敏を立てたほうがよろしいのではないかという結論に至ったのである。 さて本作であるがストーカーが殺されそれにまつわる週刊誌の記者も殺されると言う殺人事件である。 そこに ST が投入され真実を追及する。 話はボレロのように終盤に行くにしたがって徐々に徐々に犯人に近づいて行くという作りになっている。 本件犯行に使われた毒物はフグ毒である。 フグ毒に関する著者の取材力はすごくフグ毒がゾンビを生き返らせることのできる道具だったというくだりは知らない者にとってはびっくりぽんだ。 ただし私が今研究をしている乱歩、正史、清張の流れにつながるものではないしミステリーとしての機会、動機、方法を読み手に開示し犯人を推理する形も取っていないので本シリーズは読み物に過ぎないということを付記しておく。 けれどもしばらく今野敏に付き合うことになりそうだ。
2022.08.24
コメント(0)
ST 化合 エピソード0 警視庁科学特捜班【電子書籍】[ 今野敏 ] さていよいよ本シリーズに耽溺してしまうことになるのだろうか。 しかしそれにしても馴染めない文章で脳内スパークするまでに時間がかかる。 それでもなんとか食らいついて読了した。 そもそも本作はエピソード0。 つまり1が生まれる前の話つまり前夜ということになる。 だから赤青黄緑黒のまるでテレ朝の日曜朝の5人組のような科学特捜班は出てこない。 産声もあげない。 ただ本件の結末としてこれからは科学捜査の充実が必要なのだなどと検察警察両方からの意見が出てシャンシャンだ。 1に出てくる菊川が本作では実におとなしい丸で優等生のような正義感あふれる刑事になっている。 まるで別人だ。 それはともかく本作は捜査権というものの考えその法解釈そして検察警察それぞれの思惑が絡み合った上に検事の暴走が加わり冤罪の一歩手前まで行って先述の菊川らの地道な捜査によって真犯人を炙り出したのだった。 たしかに検察vs.警察のようなテーマは面白いけれど警察の捜査の暴走を抑制する検察があっても検察の暴走を抑制する警察などありえないだろうな。 科学捜査は日進月歩で本作が書かれた頃から比べれば今はDNA鑑定の精度も上がり鑑識の緻密さも比較にならないだろうからたしかに本作で言うようにこれからは科学捜査の時代だということになりだから科学特捜班が必要になったという下りだということはエピソード0だからといえようけれど少なくとも本作に本シリーズのことが一つも書かれていなかったことは本シリーズファンには失礼至極なことだったな。 しかも相変わらず刑法刑事訴訟法音痴ときている。 ようするにリアルに欠け脳内スパークもしないということなのだ。 それでもなおかつ私はのめり込むのだろうか。
2022.08.23
コメント(0)
ST 警視庁科学特捜班 エピソード1<新装版>【電子書籍】[ 今野敏 ] 果たして私はこの作者と仲良くなれるのだろうか。 そしてこのシリーズと向き合えるのだろうか。 まずは小手調べのSTエピソード1。 なぜ科捜研から特別な班員を抽出しなければならないのかの理由付けが曖昧。 それから彼らに捜査権がないということの説明が本作の最終盤に出されては興ざめ。 つまり彼らが警察官であってこそ面白い読み物になるんじゃないかと期待したわけだ。 捜査権があるから現場に出ばる科学捜査官ならばその発想は驚くべきことといういことになろうな。 まあしかし今野敏は警視庁内科捜研やら鑑識にもきっと協力者を作ったに違いない。 他の作品と違い安心して読めるのは結局刑事法上の縛りをいちいち気にしなくてもいいからだ。 つまりいいところに目をつけたということになろう。 それでも余計な書き込みがしてあるね。 送致ということを完全に理解していない。 送致というのは逮捕後48時間以内に警察から検察に身柄と書類が送られること。 その後24時間以内に検察は10日間の勾留をつけるべく裁判を求める。 そういうところが多分具体的にこなれていないんだろうな、今野敏は。 推理小説としてみれば被害女性に体液が残っていたからと言って男とは限らない、なんてことはミステリー読みには全部みろっとめろっとお見通し事項。 まあ、とにかく本件は今野敏の硬さが相まってまだまだSTの凄さが伝わってこなかった。 中には警察官以上の武術の達人もいるというのに。 今後のシリーズに期待することにしようまずは。
2022.08.22
コメント(0)
欠落【電子書籍】[ 今野敏 ] 本作は同期シリーズの第2弾だ。 すでに1と3は読了している。 残ったのがこの第2巻というわけだ。 本作が1よりも3よりも高評価したい。 なぜなら警視庁刑事部と公安部の軋轢がテーマとなりまるでそれが本当の話のような信憑性に富む話のようだからだ。 あとでさらにその深い理由を書こうと思う。 捜一で刑事の道を歩んでいる宇田川、前作で懲戒免職となりながらどうやら公安部の警察官として仕事をしていると思われる蘇我、それに同期の大石が加わりそれに捜一の面々が微妙に絡んできて本作を動かしていくのだ。 じつに魅力的な作品だったと私は思う。 何より私が高評価している点は2点だ。 まず警視庁にいるだろうと思われる協力者からの取材力が実に高いこと。 その信憑性はほぼ満点だ。 それから本作では、作者が苦手にしている刑事法の絡みが出てこないこと。 すなわち、逮捕、留置、送検、勾留等の非常に基本的な刑事訴訟手続きが本作では皆無と言っていいのだ。 法に関しては逃げようがないものな。 それが嘘だといくら本当っぽくても信頼に絶えない だから乱歩も正史も清張もそこをうまくすり抜けている。 今野敏の場合は警察モノだからなおさらだ。 ただし、私は今野敏の場合先の大先生と違いなんと言っても刑事法のリアルだけはきちんと理解していただきたい。 そうでなければ警察モノとして立ち行かない。 刑事法が入らないので、警察の組織そのものの面白さが前面に出ている。 キャリアの警備局の警視正もいい。 まあな、捜査本部事件になんで警備が出張ってくるんだという点について、本件の深部がそうなっているからということに収斂されるのだけれど、その理由ならば実にわかりやすい。 で、本作は本当に私の脳内でスパークしたのだ。 果たして捜一の刑事がアクションシーンなんて場面に遭遇することなどあるのかはわからないけれど、ようするに警備公安が出張ってきたのは外事絡みということがあったということで、結局蘇我のような公安エージェントにさらに山田というのもでてきて話が実に面白くなる。 うーむ、同期シリーズは傑作でっせ。 これはもう本当に警察ファンには読んでもらいたいと切に私は思ったのだった。
2022.08.19
コメント(0)
変幻 (講談社文庫) [ 今野 敏 ] いわゆる警察小説で、ミステリーではない。 私は乱歩、正史、清張と読みついでできた。 いよいよ清張の後に続くものを探し始めた。 しかしその候補として今野敏を読んだわけではない。 本作は、同期シリーズ第3作目完結編、ということだ。 第一作は既に読了している。 第2作に、欠落、という作品が入るらしい。 それは次に読む本である。 さて本作であるが、多分作者は警察内部それも警視庁に協力者がいるのだと思う。 例えば警視庁を本庁と呼ばず本庁(ほんぶ)とわざわざルビを振っていたり細かな組織的なことに知悉しているからだ。 警察の組織についてネットなどで明らかになっているところは誰にでもわかるわけで、しかしながら今野敏が描くような細かい組織論については、明らかになっていないわけだ。 同期というのは警視庁捜査一課にいる宇田川という巡査部長とかつては公安部に所属していた蘇我(小説内では懲戒免職したことになっている)そして本作では大石という女性警察官が登場する。 彼女も捜査一課に所属しているがいわゆるSIT特殊捜査班に所属しているのだそうだ。 ところが何故か組対の潜入捜査に協力しているのである。 この辺は多分警視庁内の協力者から話を得た作者がオリジナルで出したことなのだと思う。 いずれにしろこの宇田川、蘇我、大石は優秀な3人組でお互いに切磋琢磨し合いながら警察学校を卒業した。 3人で頑張り合う時のサインとして複雑で分かりにくいからということでグー、チョキ、パーにそれぞれの意味をつけて出し合っていたという。 グーはグッド、チョキはもう少し、パーはだめくらいのことだったらしい。 それが本作では防犯カメラ映像の片隅にほんの少し映っていたということで事件解決が急展開するという流れである。 いずれにしろ商業小説は売れなければならないということだろうから、女性警察官がSITに所属してかつ組対部の潜入捜査に紛れ込むなどという突飛な話は、作者にとってはお茶の子さいさいのアイディアなんだろう。 本当に残念なのは前作でも指摘したけれど、あまりにも法無視、警察モノであれば刑事法つまり刑法・刑事訴訟法に則らなければならないところ、突然戒名なしの緊逮をしてみたり、釈放してみたりと非常にハチャメチャなのである。 そういうリアルさに欠けたところが私は好きになれない。 それからこれは当然のことなのだけれど、ミステリーではないから、私の研究の対象にはならない。
2022.08.18
コメント(0)
同期【電子書籍】[ 今野敏 ] 本庁にほんぶというルビを振ったりしてさも自分が警察の事をよく知っているような書きっぷりで気に食わない。 それでもあまたある警察小説のうちでは出来が良い方か。 一課と四課と公安と、このへんは警察通には実に玄人はだしの話だ。 けれどもやはり刑法刑事訴訟法の基本がなっていないのだな。 送検、起訴、釈放等の時間的な規制がこの方、理解されていない。 だからそこでリアルからかけ離れることになるのだ。 ただ先に書いたとおり西京等と比べたら実に玄人っぽいよ。 同期の宇田川という一課の刑事と蘇我という公安の話だ。 ミステリーは宇田川が暴力団から被弾されそうになるピンチを蘇我が偶然救うところ、そして蘇我が懲戒免職になること、その上蘇我が殺人犯となること、その殺人犯を目の前にして身柄を確保できないこと、などなど常識では考えられないことが次から次へと続いていくのだが、謎解きなどはないものの、話の筋からどうやら殺人現場となった部屋の持ち主が海外にいたことがポイントになり、今まで乱歩、正史、清張で鍛えられた私はこの部屋の持ち主が怪しいと踏んだのだった。 警察の組織論を面白いほど小説化しれくれる。 読み手は多分そんなもんなんだろうなと勘違いしてしまう。 それだけの力量がある。 けれど先に書いたとおり刑法刑事訴訟法の基本がなっていないので、つまらなくなる。 右翼のボスキャラも尻窄みだったな。
2022.08.10
コメント(0)
殺人ライセンス【電子書籍】[ 今野 敏 ] さて本作は、殺人ライセンス、というインターネットゲームが題材だ。 しかしそれにしても今日のサイバーの発展は目を見張るものがあるのだが、本作が今から10年以上も前の作品だということに驚く。 そもそもこのブログを立ち上げてから15年足らずでしょう、その間のサイバーの進展はSNSの進展と言ってよく、パソコンそのものの容量が大きくなり、そんなことしているうちに誰も彼もがスマホを持つ時代になって、堀江貴文(敬称略)によれば、スマホですべての仕事ができるほどのレベルであり、前米国大統領のツイッターのアカウントが停止させられる問題が話題になるほどの状況で、はっきり言って本作品が世に出てきたときとは全く違う時代に突入しているのだ。 それはともかく本作では神出鬼没なインターネットゲームががまるで殺人予告のように東京と大阪で殺人を敢行するのだ。 そこにしがない部長刑事やらドライな若手刑事、それに会社をリストラされた探偵の卵、その娘とパソコンオタクの同級生が登場して推理やらなにやらをしまくり事件を解決に導くという仕掛けだ。 読んでいるうちに交換殺人のたぐいだなとはわかった。 そのうえ、霊的現象がしし座流星群のせい、なんていうことまで出てくる。 たしかに10数年前にはトップを走るような話題の作品だったろうが、今私が読んでちょうどいいくらいのレベルになっている。 ようするにサイバーの世界の進展具合は尋常ではないということだ。 そう言えば警視庁のハイテク対策総合センターなんて部署が出ていたけれど、これはすでにサイバー犯罪対策課となっているはずだ。 そんなこと考えると時代の趨勢を感じずにはおれない。
2021.02.20
コメント(0)
鬼龍【電子書籍】[ 今野 敏 ] さて本作は警察小説の第一人者である作者の鬼道をテーマにした小説である。 しかしそれにしても見事な鬼道に関する話で、特に本作には警察官が登場しないのだ。 そのうえ、卑弥呼を中心にした古代史論まで飛び出す。 そもそも鬼道は卑弥呼に端を発すると言われているから、卑弥呼も登場するのだろうけれど、現代では否定されている縄文時代と弥生時代の分断を本当っぽく説くのはいただけない。 イメージとして日本が、大陸や半島に征服されたかのような書きっぷりも余計なお世話だ。 鬼道では、陰の気と陽の気のせめぎあいとなる。 女は陰の気男は陽の気なのだそうだ。 それを悪用する亡者を祓うのが鬼道衆の役割だ。 それはともかく主人公鬼道浩一には恵まれた人々がバックについていてくれる。 神主の祖父、禰宜の父、瑞々しい女性の院生、本作では同士となった常務の女秘書、この方々は常に鬼道をバックアップしてくれる。 だから鬼道と亡者の闘いも安心してみていることができるのだ。 本作のシーンにはエログロの部分が多い。 しかし亡者との闘いに勝てば原状回復する。 たしかにそういうシーンが多くて、中味が薄っぺらなことは否めない。 それでも、引きずり込まれるように読み進んだらいつの間にか終わっていた。 まあ、娯楽モノですな。 ようするにキワモノ。 そういう小説ではあるが、本鬼道シリーズの最初の作品だ。 興味がある方にはぜひ読んでいただきたい。
2021.02.15
コメント(0)
豹変【電子書籍】[ 今野 敏 ] 今野敏と言えば警察小説だが、本シリーズはいわゆる心霊モノ、しかもすでに4作目だと言う。 しかしそれは驚くに値はしない。 逆に心霊モノだからこそ、ほれぼれと話を聞き入れることができる。 変に警察のことを知ったふりして書かれるよりはましというものだ。 それはともかく狐憑きの原因を人間の脳に求めてしまうなんて、あーあ、夢も希望もありませんな。 しかしそれだから説得力があった。 なぜ14歳の少年が狐憑きにあったか、という疑問が科学の観点から、というより今をときめくITから解き明かすんだから、いやはやなんとも今風で…。 参りました。 もう古い時代の話は流行らないんですかねえ。 お祓い師もまた今のITを身に着けていないと話にならんのですよ、そんな気持ちになる、本作を読むと。 さて富野くんが見た白い光というのは一体何だったんですかね。 それが本作が残した謎でもある。 科学的に話を解決しながら、なにか心霊的なことを残した、ということかな。 それにしても神とか仏の世界というものもまた人間の脳の話ということになれば、なんだか味も素っ気もない話ですよね。 たしかに心霊的なことを感じることができる脳があるという視点に立てば、心霊現象はすべて解決する。 ようするに感じやすい人というのはそういう脳の働きが人一倍敏感だということだ。 そもそも霊など存在しない。 そういうのが21世紀的立場なのかもしれない。 今野敏の小説でそんなことを考えるなんて思いもよらなかったことだ。
2021.02.09
コメント(0)
全50件 (50件中 1-50件目)
1