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チャップリンを撃て【電子書籍】[ 日下圭介 ] これまた傑作。 5.15事件にチャップリン来日を合わせたもの。 冒頭から実に丁寧に描かれている。 クーデター側、その情報を掴んだ捜査側、そして来日するチャップリン側。 それらがだんだんだんだん5.15に収斂していくわけだ。 恐るべき筆力。 読み手はぐんぐんぐんぐん話に引き込まれていく。 読み始めたらやめられない本というのは、こういうのを言うんだよね。 しかも、話が現代でない。 当時を想像しながら読み進める楽しみもある。 本作における首謀者が、飼い犬に噛まれるがごとく左肩と右足を撃たれ入院してしまうことで、事件から離れてしまうんだな。 けれども、法的には、共謀共同正犯として責任を問われるだろう。 何しろ首謀者だからね。 残念ながら本件は、犬養毅総理が暗殺されるという最悪の結果を招いた。 本作における計画では、帝都が電力関係の施設の破壊により、大停電を起こして真っ暗闇になるはずだった。 首謀者不在でそのへんが失敗したのは間違いない。 それから情報の一元化がなかったから、事件が起きてしまった。 早くから握っていた情報だけに、ときの総理の暗殺を許してしまったということは、悔やまれてならない。(4/7記)
2024.06.30
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折鶴が知った…【電子書籍】[ 日下圭介 ] この作家の特徴は、ミステリーの要素をしっかり理解していること。 そのうえであえて、刑事法と警察組織を無視し、ストーリー性は活かす。 のだけれども今回は、そのストーリー性に冴えが見られなかった。 残念である。 なにより、芳雄という、母親を毒殺された男が、本作ヒロインを犯人と目し、執拗に追い求め、あまつさえ殺そうとしてしまうのだが、結局この男も殺されてしまう。 トリックは簡単だ。 ただし、昭和年代の生活を知っていないと解くことはできない。 つまり当時、牛乳が新聞のように宅配されていた時代、牛乳は瓶に入れられ、その蓋は紙製であった。 だから、注射針で毒を混入させてもその痕跡は容易に発見されず、簡単に人を殺すことができ、完全犯罪で逃げ切れるという読みなのだった。 そりゃあその当時の優秀な鑑識をバカにした話ですよ。 そんな穴すぐに見つけることができる。 トリックでもなんでもない。 まるでストーカーのようにナイフまで持ってかかってくる芳雄に対しヒロイン結城京子は、何もしない、何もできない。 こんな話もないよね。 刑事をバカにしている。 本作のような事件シチュエーションで真相を解明できない刑事鑑識なら、その警察はアウトだ。 ということで本作は、日下圭介にしてはいささか物足りなかった。 これもまた、多作家症候群か。(4/2記)
2024.06.24
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「野菊の墓」殺人事件【電子書籍】[ 日下圭介 ] もう40年以上も前、松田聖子主演の野菊の墓を見たことがあった。 あの時は、涙涙涙で本当に感動したのだった。 図らずもこの度日下圭介にかかる野菊の墓殺人事件を読むことになった。 その件の野菊の墓、伊藤左千夫が書いたものだが、どうも矛盾がてんこ盛りらしい。 それらがまことしやかに本作で披露される。 あたしゃあ、こっちのつまり伊藤左千夫論とか野菊の墓そのものの論評の方が実に興味深かった。 それに対して本作に於けるミステリーの部分はどうだったか。 どうもその伊藤左千夫論、野菊の墓論評に完全に食われたという感じだな。 むしろ、伊藤左千夫論と野菊の墓論評を独立させた方が面白いんじゃないかという思いに私は駆られた。 それはともかく本作はミステリーであるからそれなりの論評を加えなければならない。 本作は高らかにアリバイ崩しを宣言している。 そのアリバイ崩しは最終盤に記者牧田をして明らかにされる。 実はこのアリバイ崩しも視点の転換という独自の方法を使ったもので、面白いものだった。 それが先ほどから書いている伊藤幸男と野菊の墓に埋もれてしまって、残念ながら有名にならなかった。 このトリックは、純粋にミステリーとして語られたら、まあ、なんということでしょうと多くのミステリーファンに驚かれた方法ではなかったか。 同様、犯人宅のシチュエーションですな、これは作品冒頭から明らかにしなければやはりずるいよという話になってしまうのではないか。 ビルからの転落死、なんて簡単に警察にとらえさせて、実は、クレーンなんてか。 まあ、それくらいのネタバラシは許してほしい。(3/22記)
2024.06.21
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三千万秒の悪夢【電子書籍】[ 日下圭介 ] 30年も昔の作品だ。 殺人の時効が15年の時代の話だ。 だから三千万秒なんだと。 それはともかく、ごちゃごちゃしていて収拾のつかない話だったな。 なぜ能登で殺人事件が起こらなければならなかったのかという疑問も残る。 そういう旅情も当時は必須のアイテムだったんだよな。 ひき逃げ事件に刺傷事件に放火事件に…とちょっとも盛りすぎたね。 だから読み手はフォーカスできない。 そして心に残らない。 いい大人の殺人ごっこか。 ならば少しはミステリーの香りを強調してほしかったな。 ミステリーリダーとして頭を使うときがないのだもの。 ただただ複雑な人間関係を翻訳しながら読まなければならなかった。 これはもう拷問だぜ。 今回は伏流の話がなかったから、いつもよりライトになった。 その分魅力がなくなった。 旅情入れてごまかしてはだめだぜ。 それが今になって大地震で自分にかかって来ることになったのだから。 なかなか真のミステリーを書くことは骨の折れることなんだな。 そのことは正史も言っているところだ。(3/6記)
2024.06.07
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密室・十年目の扉【電子書籍】[ 日下 圭介 ] かなりややこしい話だった。 登場人物のエリコの推理が結局あたりだった。 このことは、私にとってもみろっとめろっとお見通し状態だった。 本作も然り、前読の啄木が殺した女も然り、サイドの取材が極めて仔細かつ緻密で、それだけで一つの読み物になるのだった。 しかしながら本筋のミステリーの切れがどうも思わしくない。 本作では、つごう二人の人が消えた。 一人は被疑者として、一人は被害者として。 それが本作の大きな筋だ。 しかしよくよく考えてみれば、最初の事件、夫が殺され、その知人が島から消えてしまうというトリックは、トリックにもならん話で、それは私もエリコも、全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 この話になんでわざわざ秩父騒動をくっつけてきたのかなという点、井上伝蔵という人物の逸話を知ることで明らかになるのだけれど、この辺がどうも強引で、私は好きになれない。 登場人物は少数だというのに、なぜかややこしくなるのは、この作家の特徴なのかもしれない。 けれども、その取材力には脱帽だ。 それを理解できない私が悪い。 しかしながら、日下の筆力は他の作家に比し劣る。 せっかくの面白話、もっとわかりやすく書けばいいのに。 理解できないおめえらが悪い、というのであれば、それは作家として認められないよ。 つうことで、結局、読書というのは、書き手と読み手のバトルでもあるのだ。(3/4記)
2024.06.04
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啄木が殺した女【電子書籍】[ 日下圭介 ] 面白いとかつまらないという観点から言ったら面白い方、と答えることになるかな。 ミステリー作品という観点から言うと、もたらもたらしすぎだ。 まず本筋の殺人事件が長らくうっちゃられてしまい、石川啄木の人生が長々と語られる。 そもそも本作の題名が、啄木が殺した女、だから、読み手はそこにひきつけられる。 この辺は心理戦ですね。 それはともかく、石川啄木は次から次へと借金を重ね、女性関係も派手に進行する。 そこに啄木が交際していた女の殺人なのか自殺なのかわからない事件を絡めてきて、それが啄木が殺した女というわけだ。 私自身小学校高学年あたりから啄木の伝記を読んだり、渋民村を訪ねたりして、彼がけっして嫌いではない、むしろ好きな偉人、と慕っていたから、本作を読めば読むほど、啄木という人が嫌いになってゆくのがわかるのだった。 それほどの力が日下圭介にはあるということだ。 少なくとも石川啄木に関する取材が半端ないもの。 ただ読者よ、本作に書かれている啄木論が全てではないということを申し添えておく。 そのことを前提にして、もう一度本ミステリーに戻ろう。 日下さん、ヒロインを寝せるのにイージー過ぎやしませんでしたか。 これが終盤に来るから、全部みろっとめろっとお見通し状態になる。 暗号もね、啄木の短歌を使った割には、これまたイージーで…。 これらを含めて私の評価は冒頭のとおりになったのだった。 こういう回りくどいのが日下の作風なんでしょうな。(3/2記)
2024.06.02
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脅迫者たちのサーカス【電子書籍】[ 日下圭介 ] 文句なしの一級ミステリー。 これが平成6年ころの作品だから、いかに今の作品で光るミステリーがないかがわかる。 ミステリーの3大要素は、言わずと知れた、動機、機会、方法。 本作は、誘拐事件ではない誘拐事件とでもいえるものだろうか。 小学生の男の子がいなくなったのは間違いないが、誘拐されたものではない。 しかし、なぜか、5000万円の身代金要求が入る。 報道協定を結んでいながら、協定に入っていない三流新聞社がすっぱ抜く。 捜査陣は犯人側の要求に翻弄される。 身代金は、病院のエレベーターで第三者に発見され…。 凝りに凝った作品で、しかもこの小説の中心的人物は、かつて過失致死で執行猶予刑を被っており、執行猶予期間が一けた台の日数になって、件の小学生の男子が転がり込んでくる。 さてその後、どうなるか。 私たちは、執行猶予刑の男と男子の側から外を見る仕掛けになる。 とすると、一体だれが脅迫状を送り現金をせしめようとしたのかが、大きな問題になる。 私も頭を使いましたよ。 謎解きは突然に、終盤にあらわれる。 それも叙トリではなく。 読み手の前にフェアに材料は揃えられてあった。 犯人の声なし。 その辺が大きなヒントかな。(3/1記)
2024.05.31
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【中古】 紅蓮の毒 薬売り・辻村の探偵行 推理傑作集 / 日下 圭介 / 光文社 [文庫]【宅配便出荷】 8作の短編集。 越中富山の薬売り辻村が主人公だ。 薬売りの話だけに、毒を盛るというトリックが多用されている。 けれども、なんと昭和初期に飛行機を使ったアリバイ作りも入っている。 そして、彼は司法警察員でないから、犯人に対しては寛大なのだ。 また、警察に対しても有益な情報を与える。 実によくできたシチュエーションだ。 この作品がすぐれているなと思うのは、前読で千草検事が仮説後に自供を得て証を得る方法を取っていたのに対し、あらかじめ証を提示しそれをもとに推理して犯人を突き止めるというところだ。 それがミステリーリーダーには実に心地よい。 久しぶりの一気読みだ。 この作品の得なところは、司法警察員があまり出てこないところ。 だから、刑事法の知悉も警察組織もなにも必要ない。 ミステリーの三大要素にストーリー性が加味されていればいいのだ。 そのストーリー性が実にすぐれていて面白い。 衝撃的な話は、硫酸で死体を溶かしてしまう話だな。 これは、密室トリックにもなっていた。 まあそれにしてもこれだけのミステリー作家が今はもういないと私には思える。 令和のミステリー作家よ、奮起せよ。(3/30記)
2024.05.24
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