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野良猫嫌い【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] 本作も超超超超短編である。 前読で我孫子にはミステリー評論家としての道を歩んで欲しいなどということを書いた。 それはこの紫色の超超超超短編がミステリーでなかったことにもよる。 しかし本作は立派なミステリーでしたな。 ただやはり短編の辛さ というのかな、急峻すぎてよくよく仔細に点検すれば、 無理がありすぎというものではないのかな。 なぜ野良猫殺しの犯人を私立探偵に頼んだのか。 殺されていた野良猫は全部オスだったとか。 などなどつまらない伏線を周囲に張っておりましたな。 短い作品の中で犯罪の動機、機会が盛られているというのは、 やはり作者がミステリー作家であったということの証左であろうか。 ただの野良猫殺しなら、戒名は器物毀棄にしか過ぎない。 とするとその陰に一体何があるか、となれば自然に吾々ミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態になる。 ミステリーとはそういうもの。 つまりミステリーとは、作家と読み手があって初めて成り立つものなのである。 これは否定しがたい事実だ。 書き手と読み手の葛藤がなければそれはミステリーではない。 そこが大事だ。(9/5記)
2023.11.19
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レタッチ【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] これも超超超超短編。 ミステリーと言うより近未来SF小説かな。 我孫子がミステリー作家を称しているのなら、本作のような作品は不快の極みだ。 なぜ美しいはずの妻がぶよぶよのデブになり、可愛くて利発な二人の娘がその母親に似て可愛くなくなったのか、という点がミステリーといえばミステリーか。 だがその謎はSFの世界に飛んでいってしまうのだ! 我孫子の作風というのはこんな感じだったかな。 彼の場合あの、叙述トリック概論、のすばらしさがあるので、まだまだ最終評価は慎みたいが、この段階では、彼は作家よりむしろ、私と同じミステリーリーダーの立場で物申してくれたほうがよろしい。 不快だろうがなんだろうがその作家の作風というものがあるわけだ。 たとえばけったいな(わけないか。本人が関西の方だものな)関西弁をあやつる有栖川有栖とか、警視とその息子という法月綸太郎とか、ここいらへんがいわゆる、新本格ムーブメント、なんでしょう。 そこに我孫子も入っていいるんだよね。 いやあしかし私の場合、乱歩、正史、清張、森村、東野と研究してきて今知念かな?なんていうところ、東野と知念の間の新本格ムーブメントは、まるで小惑星帯みたいなもんだね、などと思い始めた。 ことほどさように我孫子の作品を読むたび、こんなふうに評論風な文になってしまうのだ。 超超超超短編を持って我孫子は、私達ミステリーリーダーに問題を仕掛けて来ているんだね。 そういう意味で我孫子の評論家としての文章をもっと読んでみたいものだ。 私は、我孫子のようなたとえば叙述トリック概論のような慧眼は、ミステリー業界に絶対必要なものだと思う。 我孫子の評論家としての再生を望む。(9/3記)
2023.11.17
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危険な遊び【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] 彼も新本格ムーブメントの一人でしたな。 本作は超超超超短編作品だ。 殺してからその始末に困ってしまうという話だ。 それこそミステリーリーダーとしてどう始末するかという問題にぶちあたる。 このまま流していいものか、いいや、本格推理を自認するのなら本作はそういうものに当たらないから、読むに値しないと断じてしまうか。 ただね、著者は、叙述トリックに関する小論を書いているから、簡単に断じることはできないのだ。 とすると、流すか。 なんてね、これじゃあ読まない方がよかったか、などとも思うのだが、読まなければその実態はわからないわけだから、読まざるを得ないということなのだ。 超超超超短編で、サイコでもホラーでもないのに不快感漂う作品だ。 つまり犯人はなんて勝手なやつなんだと言う事、共犯者たる女も然り。 結局読む人がいるから小説は成立するのだ。 しかし書き手は読み手の反応をどう判断、評価するのか。 それを考えずして書く作家はおるまい。 ただね、そういう作品はたとえ超超超超短編でも、読み手に失礼だと思うんだよね。 たしかに数十分で読了するにしてもそれだけの時間を取られているんだからね。 その辺を考えて書いてほしいものだ、書き手には。(9/1記)
2023.11.15
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叙述トリック試論とか【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] さて叙述トリックとは, 「小説における、作者と読者の間の暗黙の了解のうちの一つあるいは複数を破ることによって読者をだますトリック」ということである 私は本書を読むまで大きな勘違いをしていた。 それは叙述トリックと倒叙を間違えたことだ。 倒叙のミステリーには名作がたくさんある。 だから倒叙に関する面白い論が展開されるのかなと思ったら違っていて,つまり読み手が読んでいて, 「そんなのはアンフェアだ!」と思った方は多いだろう。 もちろん、アンフェアである。 と感じるミステリー,男と女をはっきりさせないとか,医者と患者を錯誤させるような書き方などの小手先でのトリックをどうも叙述トリックと言うらしい。 だから私なんざ,そんなものに踊らされ騙されて悔しい思いをするよりも先の著者が書いたようなアンフェアという思いを強くして,何も 叙述を特別視して論じる必要はないと思うのだ。 この点について著者も, ただ、一つ付け加えておくと、物理トリックに関してもいえることだが、このようなトリック分類は非常に不毛な作業であり、ここから産み出されるものなどほとんどないといってよい。 自分が思いついて一瞬新しいと思ったトリックも、自分自身の分類に当てはめることができると知ることは、落胆以外の何ものももたらさないからだ。 などという見解を記している。 ミステリーに様々なトリックはあるけれども,私はこの度我孫子武丸が論じた叙述トリックは,トリックとしては認めたくないな。 さて本書は叙述トリックについてとうとうと論じた後,東西のミステリーライターの評論にも移っていて興味深いのであるけれども,有栖川有栖については学生有栖,作家アリスの2人がいるなどと分析していながら,乱歩,正史,清張,森村,東野について何ら書かれていなかったのがとても不満だ。 東野と同時代の作家 なんだろうけれども,ミステリーに華麗なトリックを取り入れさらにストーリー性のある文学に昇華した東野を評論せずして何がミステリーの評論なんだろうか。(4/1記)
2023.06.24
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理想のペット【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] 短編とはこうあるべきだという見本のような作品でしたな。 本作はミステリーでありホラーでありサイコである。 まあそれにしても三沢幸司は今後どうなるのだろうか。 作品は読み手が納得してなんぼのものだろう。 小学校近くのペットショップ上がりのペットがなぜ大きくならないのかは不明であるが,親と約束をして買ってもらい,約束を破ると親から虐待を受けるという流れの話だった。 なるほど聡のあざは当然犬がつけたものではなくて,いうことを聞かない聡を父親が殴った時のものとなると実に自然な話だ。 表題から読み手は特別な能力のあるペットの話か,なんて考えてしまうのだが,ただ大きくならないかわいいままのペットの話だったということなのだ。 その結果子供とペットの愛情獲得競争になるというかわった視点からの作品だった。 先に読んだのが独り善がりの消化不良本だっただけにやけに本作が際立つ。 先に読まなければ,本作も何だこの話なんてあたしゃあ荒びたことだろう。 事程左様に短編は難しいのだなとつくづく思った。 家にペットを入れるについて,三沢幸司の家のようなことが普通なんだろうと思う。 そうそう簡単に家の中にペットなど入れることはできない。 欲しがるのは子供,その子供を思い通りに操るための方策としてペットを飼うのが大人の図式でしょうな。 ただペットは子供の心を豊かにする。 しつけのついたペットなら家族同様になる。 そういう家族同様のペットを飼っている人に,犬畜生なんて言葉を間違っても投げかけてはならない。 嫌われるよ。(3/29記)
2023.06.20
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修羅の家【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] 本作はミステリーというよりはサイコスリラーとでも言うべきものだろう。 実際このような話は時々現実の犯罪になることがある。 一人の女王的な悪い女に支配されている家族。 そもそもの本作の入りがハルオという暴力的な出来損ないの男が殺人等の犯罪を優子という女に見られたところから始まる。 乗っ取られた西村家の愛香と言う若い女性を中心に話は動き,北村というその高校だか中学の同級生が救出に乗り出すという話だ。 途中話が飛び飛びになって繋がらない部分も出てくるしハルオという名前に愛香を救出に行った同級生北村が野崎春男などと言う名前を使うことになるものだから複雑になってしまうのだけれど,それらをガン無視して無理無理話を繋げれば結局愛香を同級生北村がその修羅の家から救出したというところでフェードアウトするストーリーでしたな。 面白くもないしだからといってつまらなくもない。 ただ時間つぶしにはなる小説だったけれどもミステリーリーダーにはもの足りない一作だった。 東野の後継を誰にしようかと思っているのだけれど,この我孫子武丸もまたこの間大作を読んだ法月綸太郎もこのブログ的にカテゴライズするまでにはいっていないのかなというのが私の評価である。 とにかく東野を読み継いでいるししかもじつは私の別のブログに30作も東野モノをアップしていることから,慌てる必要もないけれど,さすがに東野の後が難しい。 本作のような作品はそっちこっちにゴロゴロしているんだろうけれど,それはまるで原石見つけみたいなもので,更に読み込んで磨き上げなければ後継にはなりえない。 ミステリーリーダーの悩みである。
2023.03.19
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新装版 殺戮にいたる病【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] 作者は本作が自分の代表作だという。 本作は倒叙ものだがたしかに最終盤に大どんでん返しが控えているので要注意。 すなわち本作は決して後ろから読まないでくださいということだ。 しかしそれにしても読み手はまんまと一杯食わされるわけだ。 終盤読み手は???の思いにまかれてしまう。 そして最終盤になるほどと納得してしまうのだ。 本作は2000年代一桁に一度日の目を見、この度2016年に講談社文庫から再出版された。 本作は猟奇作品だ。 美しい姉妹の姉が殺され妹が真相を明らかにすべく元警部殿と犯人探しに乗り出す。 途中まるで桃太郎のように雑誌記者という子分がついてくる。 ストーリーはよろしい。 トリックは我々読み手に仕掛けられたものだ。 このことに早々に気づきそして読み進んだらこの作品は本当につまらないのになってしまったろう。 それがないから最終盤の大どんでん返しを楽しむことができるのだ。 本作の中盤で出てくる犯罪心理学者の学説が面白い。 猟奇犯罪は実際起きてはいるけれど主戦場はフィクションの世界だ。 本作のように身体を切り刻む行為は残虐ではあるが性嗜好の一つなのだろうか。 本作が優れているのはストーリーにブレがないことだ。 話は犯人の視点からの犯罪とそれを追う者の視線が絡み合うが、読み手が混乱するような複雑さはない。 いやあ、小説って本当に面白い!
2021.10.20
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