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染井為人 0
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レゾンデートル【電子書籍】[ 知念実希人 ] 438ページの大作。 ミステリーだとすれば、倒叙モノ、だよね。 というのは、このミステリー界によく出てくる切り裂きジャックの話なのだけれど、少なくともそのジャック川原丈太郎と、縁もゆかりもない岬雄貴の犯行だということが明示されているからだ。 主人公は進行末期がんを患った医師岬雄貴。 彼の周囲に同期にしてかつての恋人そして今は親友で彼の主治医である柴田真琴、それからシンガーソングライターを目指す南波沙耶がとりまく。 事件は連続殺人事件であるから当然警察には捜査本部が立つ。 そこに著者のフィールドである医療現場が入りヤクザやら臓器移植やらの問題も入り、実に多様な話題を散りばめつつ一つの漏れもないように話は進行していくのだ。 ミステリーが書きたくて慈恵医科大学に入った著者の思惑はこと医療モノに関してはその思いどおりになってきたのではないか。 私にとって医療の世界は未知の世界であるから、末期がん患者がこのようなハードな動態をしても何ら違和感はない。 最も同じ医師の目から見たら一体どうなんでしょうね、そこを聞きたいものだ。 それはともかく医療モノは人の生命に関わる話になるので泣かずにおれない部分も出てくる。 そういう意味で知念の話というのは、泣かずにおれない話である。 今回も私は泣いてしまっていた。 それにしても知念のストーリー力の高さには驚く。 ミステリー作家としてアウェイの作品をどのようにするかで今後の彼の評価が分かれそうな気がする。 何しろかの、硝子の塔の殺人、で見事に滑っていますからな。(9/10記)
2023.11.24
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崩れる脳を抱きしめて【電子書籍】[ 知念実希人 ] いやあミステリーで泣かされるなんてあまりないことだ。 この作家ただ者ではない。 いよいよ東野の後継候補に名乗り出た感じだな。 まず医師になったその動機が好ましい。 ミステリー作家になるために慈恵医科大学に入り医師になったのだ。 ミステリーに関する数々の知識は、前読、硝子の塔の殺人、に詳らかにされている。 ただ同作は大きく滑ってしまったけれどね…。 乱歩、正史の時代にはあるいは清張の時代でもそうだけれど、なりすましというのは、双子やら顔潰しという方法を使っていたけれど、現実の捜査手法にDNA鑑定が取り入れられるにいたり、さらにその精度が高まった結果、ミステリー作家たちは本当に悩んでいたろうね。 血液型という手もあるけれどDNAが出た以上、そんな子供だましでは、吾々ミステリーリーダーは納得しない。 東野をしてかなり悩んでいた分野でもある。 それを知念はいとも簡単にしかも精緻に本作で替えてみせた。 たいしたもんだ。 最後のミステリーリーダーの泣きは、ストーリーの質の高さもさることながら、このなりすましの巧妙さにやられたという悔しさもあったのだ! 詳細は当然ネタバレなので書かないが、ほんの少しのヒントを出せば、前読、硝子の塔の殺人にもあったことだ。 ほんの少しの記述、それはミステリー業界では、暗号、というものかもしれない。 これは、決して叙述トリックではないことを付記しておく。 ミステリー作家にとって大切なのはフィールドだと本作を読んでつくづく思った。 フィールドがしっかりしていればその分野の取材が不要だものね。(9/3記)
2023.11.16
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仮面病棟【電子書籍】[ 知念実希人 ] 著者はミステリーが書きたくて医者になった人だ。 それだけにミステリーに対する真摯な態度が見受けられる。 密室モノの、硝子の塔の殺人、では、滑ったけれど、本作は見事だった。 つまり自分のフィールドで書くことがいかに重要かと言う事なのだ。 本作は著者のフィールドである医学、医療機関が舞台であり、著者とすればアウエー感満載の刑事司法からはかけ離れた分野だから、それはそれは実にうまい話になったと思われる。 ただし、ベテランのミステリーリーダーからは、誰が真の犯人かは全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 けれども、事件の組み立ては見事で、私は一気に読み耽った。 医者という観点から見ると、ワトソン博士を思い出す。 硝子の塔の殺人でも、医者が一つのキーパーソンだったけれど、そういう点、知念は実に効果的に小説化している。 みごとだ。 そして知念は実にフェアだ。 読み手にさまざまなヒントを作中掲示している。 それを読み流すか心にとどめるかで、結果に大きな差が出る。 惜しむらくは、主人公である医者と被害者たる女性の関係性を、たとえばいきなり女性が医者を下の名前で呼ぶようになるなんて、それは実に非常識な話じゃないか。 そもそも主人公は当直医で、医者の格好をしているのだもの。 逆に言うとその辺も大きなヒントと言えばいえる。 そんなことで久し振りにいい作家に出会えた気がする。 ミステリー、万歳!(9/1記)
2023.11.13
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硝子の塔の殺人【電子書籍】[ 知念実希人 ] 題名からして密室モノであることは明らかだ。 その密室モノ、きわめて難しいテーマであることはたしかだ。 それに挑戦しようとする作者の気概は認めてやろう。 第一の事件の密室は実にシンプルで面白い。 犯人が医者であることが一つのポイントだ。 そもそもこの第一の事件は、倒叙ミステリーですからな。 しかし520ページの大作。 ミステリーリーダーはかなり苦労して読了しましたな。 とにかく本作は全部みろっとめろっとお見通し状態でした。 それは、今日、何読んだ? 230309 仮面山荘殺人事件 をすでに読んでいたからだ。 この作品を読んでおれば本作の筋は上記の通り全部みろっとめろっとお見通し状態だ。 その東野モノについて作者は作中、 苦悩する天下一大五郎。 その二人がミステリのお約束ともいえる様々なシチュエーションをこなしていく。 ただのユーモアミステリとして秀逸なだけではなく、それはある意味、ミステリ小説というスタイルへのアンチテーゼとも言えます。 現在でこそ、東野圭吾作品は重厚な人間ドラマをベースにしたミステリが多くなっていますが、初期にはパズラーとして秀逸な本格ミステリ小説も多く発表しているのです。 つまり、東野圭吾という稀代の作家の土台には、本格ミステリの素養が備わっていると言えるでしょう。 そのことは、代表作である『容疑者Xの献身』が直木賞だけでなく、本格ミステリ大賞を受賞したことでも明らかです。 ただ一方でその際に、『容疑者Xの献身』が果たして本格ミステリなのか。 そもそも、本格ミステリとはなんなのかという論争が……」などと仕掛けてきてさらに、新本格ムーブメント、がどうだらこうだらと講釈するが、然れば知念さんよ、その彼らの中に、乱歩、正史、清張、森村、東野を超える事が出来た作家がいたのかということを私は問いたいのだ。 たしかに本作は密室モノとして、そしてミステリー評論として面白いものに仕上がったのだが、その中で作者が作中語っている通り不可能なトリックも散見されていた。 作者の密室モノに対する果敢な挑戦には拍手を送りたい。 しかし本作は残念ながら爆死!というものだった点は否めない。 事程左様に密室モノは難しいのだ。 作者には密室モノ以外のミステリーに挑戦してほしいものだ。(8/31記)
2023.11.12
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祈りのカルテ【電子書籍】[ 知念 実希人 ] さて本作は, 愛する男の暴力から逃れるため、大量服薬をくり返し装っていた女性。 保険金によって家族を幸せにしようと、自らの体にメスを入れさせた老人。 幸せな未来を手に入れるために、下腿に湯をかけた母親。 愛しい父親と会うために、薬を捨てていた少女。 そして……。 目を閉じると瞼の裏に、世間を欺いてまで多くの人を救おうとした女性の微笑みが蘇る。などという短編からなる。 そもそも主人公は諏訪野という研修医である。 それにしても最後の作品はなんと偶然にも読んだその日の夜日テレで流されていましたな。 それはともかく本作を読むまで知念実希人と言う作家も知らなかったし,祈りのカルテがドラマ化されていたということも知らなかった。 したがって素のまま読み始めた。 そうしたらなんとこの研修医諏訪野が患者の裏にある物語を推理してしまう。 さらにその指導医が読み手の心のままにつまりしてくれる。 すなわち朝ドラ理論ですな。 しかし最後の作品は,循環器系の研修で,ヒロインは元アイドルにして女優,しかも諏訪野が好きだったと言う患者だったのだが,臓器移植というナイーブな話を見事にオブラートで包み込んで読み手に涙を流させるという仕掛けでしたな。 それで一気にこの作家のファンになってしまうのだ。 そこでもっとKindle Unlimitedに所収されていないかと探すと,ございません。 残念! そもそも研修医の世界などわからん分野だし,研修中に自分の適性を見極めその道に進まなければならない,医師の重要な場面なんでしたな。 諏訪野君は最後の循環器系の方に進むらしい。 医師の世界もさることながら,保険やら複雑な家庭関係やらも理解していなければならず,研修医にしては実に出来過ぎくん,こんな若い衆,いませんよ,どんな世界にも。 いたらどんな世界でも欲しい人材だ。 それだけ今の若い衆をプロ化するのは大変な作業なのだ。(11/6記)
2023.01.27
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