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染井為人 0
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仮面官僚 東京地検特捜部【電子書籍】[ 姉小路祐 ] まあようするに大掛かりな詐欺話、スティングのような。 そこに自殺にみせかける殺人などを織り込む。 官僚の悲哀を徹底して書く。 ただ、いただけないのは、少年事件についてのグリップがなされていなかったところ。 これが本作の評価をダダ滑りさせた。 少年事件など書かなければよかったろうに。 残念ながら、読者というのは多岐にわたるから、当然少年事件に詳しい人もいるわけだ。 本作は、警察で言うところの二課モノ。 ましてや地検特捜部という警察をものりこえた知能犯捜査軍団の話となれば、そんなものの詳細など誰もわからんだろうから自由に書いて構わないけれど、と言いながら、当時の文部省の組織について一部架空の部署をえがきましたなどというあとがきがあったのはよろしい。 ならば、傷害事件を起こした17歳の少年がすぐ警察から家裁に送致などということがあるわけ無いじゃないか。 警察の捜査の結果は、すべからく検察に送致され、その後家裁に送致されるか、年令によっては逆送されるか、とにかく今は年齢等によって複雑にそのルートが変わるのだ。 だから余計なことを書くなと言いたいのだ。そもそも17で芸妓だったら、それは、あーた、労働基準法に言う有害業務ということになりましょうぞ。 余計な逸話を付け足したばかりに折角の作品が台無しになってしまった。 まるで、万年筆書きの原稿用紙にお茶をこぼしたような結果になりましたな。 そこここに、小ネタを差し入れているのは、作者がミステリー作家だという自覚があるからでしょうね。 スケルトンエレベーターで人はいかにして消えるか。 定型的縊死をいかに達成させるか。 東京京都間2時間半のアリバイをどうやって作るか。 などなど、なかなかいいアングルから仕掛けてあった。 先の少年事件の誤りよりはまだましか。 だから、少年による傷害事件になどせず、普通の芸妓による傷害事件にすればよかったんだ。 縊死現場は、現場観察をすれれば、また死体観察を詳細にすれば、それが他易ということは容易にわかるだろう。 スケルトンエレベーターのトリックなんか、なぜ本作に必要だったのか。 ヘリを使ってのアリバイ作りだって? 夜間航行ですよ、いくら官僚でもそれは簡単にはいかないでしょう。 それも非合法商行為の後になんてことにはなおさらいくわけがない。 けれども、実は、私は本作に引き込まれてしまったのだった。 今まで書いてきた数々の突っ込みは、一生懸命読んだことの証左だと理解してほしい。(2/24記)
2024.05.25
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汚職捜査 警視庁サンズイ別動班【電子書籍】[ 姉小路祐 ] まあいわゆる二課モノだ。 それにしても汚職事犯を捕まえるために別働隊などが必要なんでしょうかね。 そのために元SPを使うなどという発想は、おそらく警察内部にはないだろう。 これは姉小路祐独特の発想だろう。 SP時代左目を負傷し、視力が低下したことから閑職に追いやられたが、その彼を班長にしてニ課別働隊を作ったわけだ。 そのターゲットはどうも唯一人という感じだったかな。 殺しも出てきた来て少しミステリーっぽくはしてあるけれど、まあ売りたい商業主義の読み物である以上、殺しはなんとしても入れなければならないものなのだろうが、果たして必要だったろうか。 しかも何人も死ぬんですものなあ。 最終結論が二課の補佐を逮捕する段という話では、なんとなくつまらなさだけが独り歩きしているような気がするのだ。 ここに来て平成シングルの時代の作品を立て続けに読んでいる。 その中で本作の作家姉小路祐、高柳芳夫、阿井渉介の作品はかなり硬質で、読み応えがある。 小説かくあるべしという思いを感じることができて快哉だ。 彼らは、森村と同世代だろうから、東野の次というわけにはいかないけれど、とにかくいい作品を書いていると感心する。 ここに来てやっと現役時代思い存分読めなかった作品を読むことができるようになったという感じかな。(2/21記)
2024.05.20
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東京地検特捜部【電子書籍】[ 姉小路祐 ] 平成7年作。 30年近く前の作品だが、作者があとがきで地検特捜部に関してきちんと取材した旨書いている。 故に、その組織の中の動きは実にわかりやすいのだけれど、地検の幹部が次から次へと悪を働くものなのかね。 ちょいと疑問だ。 それはともかくそういうコンセプトで描いた作品だから、それはそれで受け止めるほかあるまい。 主人公の検事は大学助教授(当時)からの転身者。 株仕手絡みの話が続く。 この辺の話をずっと読んでいると眠気がさす。 そこは構わず読む他ない。 何しろ400ページ超えの大作だから、なかなか読了につながらない。 それでも、努力が大事だね。 いつの間にか話は終わっていた。 前読、文学入門、のせいもあろうか、本作をきちんと文学と認識して読めたのは素晴らしい。 ただこの手の作品はね、どうしても警察が中心になるので、検察幹部が警察からかき回されるのが困るようなことを作中言わせているけれど、これは多分取材先からのネタでしょうね、検察の本音が垣間見える。 これもまた作中なのだが、警察は捜査、検察は裁判とおぼえておけばほぼ間違いない、というのは名言だね。 その通りの観念でよろしい。 ただ特捜部は、政界汚職、大きな経済犯罪をターゲットにしているということは、普通の検察ではないと言うことになるということだろうね。 さて、姉小路祐の作品は、まだラインナップしているので、これから読み進めなければなりませんな。(2/12)
2024.05.15
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首相官邸占拠399分【電子書籍】[ 姉小路祐 ] ミステリーリーダーとしていつもリアルについて書かせてもらっている。 本作ほどリアルに満ちた作品はない。 どこからこれだけの警察組織のリアルを引き出したものかわからない。 その引き出したと思われるリアルの歯車が一つの狂いもなく本作で披露される。 作者や世の中の人が思っているほど現場警察のキャリア、ノンキャリアの乖離はまずないと思ってよろしい。 特に田舎警察であればあるほど、いつか読んだこの種の小説に書いてあった、地元警察は、キャリア様をまつり上げて何事もなく東京に返せばいいのだ、という風に思っているのは、田舎警察の中でも警視クラスの人で、その他の人はキャリアのことなどなんとも思っていないだろう。 さてそれはともかく、本作は、いわゆる警備部の2つのセクションを中心に話は進む。 一つは公安。 一つは警備。 この二つは、田舎警察では一つのものなのだが、首都警察である警視庁では別物だ。 本作の中心は公安。 公安といっても、警視庁の名簿からも消されてしまっている、本作でいうところの、ウラ公安だ。 協力者工作で、男性警察官が女性を誑し込むことに成功したことから話は始まる。 運悪く本物の恋人に見られてしまったんだな、その協力者と一緒にいるとところを。 そのうえ、ラブホにしけこんでしまった。 ところが、本作ではこのウラ公安、さくら、という別名を持っていて、工作に失敗すると、簡単に首切りをするものらしい。 そしていつの間にか、依願退職の形をとらされてしまう。 中には命を失ったものもいる。 そういうもろもろの不満を抱えた警察官、元警察官らが集まって首相官邸を399分間占拠するという話。 実に素晴らしい文章力で、私は一気に読了してしまった。(2/22記)
2024.04.05
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