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カテゴリ: 音楽
ゴスペラッツの話である 。ゴスペラーズでもなければ、ラッツ&スターでもシャネルズの話でもない。昨夏行われた「SOUL POWER TOKYO SUMMIT」の様子を収録したライヴ・DVDを観た。このDVDを観たのは、元々シャネルズとラッツ&スターのファンであり、それ以前にR&B、それも テンプテーションズ をはじめとして、ブルーノーツ、モーメンツ、ドラマティックス、スタイリスティックス、フォー・トップスにオリジナルズ、といったグループものに目がない私であるから、この日本音楽史において歴史に残るグループの、それも“ 動く姿 ”を観てみたかったのがきっかけである。
 小さな話から始めよう。ゴスペラッツのライヴそのものは、物足りない。質が低いからではない。質を問うために、「もっともっと観ていたい」からである。メンバーについて言えば、まず 鈴木雅之氏 。やはり、ソロ活動が長過ぎた。もともと、強烈な歌唱力とリーダーシップ、そしてR&Bへの愛情、そしてカリスマのあるシンガーである。だからこそ、グループで歌うとき、その卓越したエネルギーが、グループと言うフォーマットをはみ出してしまうことがある。では、鈴木氏は、テンプスにおけるデイヴィッド・ラフィンかと言えば、歌のマナーとしてはまったくそうではない。 そもそも、鈴木氏は 、どちらかと言えば、ルーサー・ヴァンドロス、フレディ・ジャクソンを思わせる、 都会的なムードを持つスムース色の強い艶系のシンガー である(むしろ、ソウルフルという点では鈴木氏の方がルーサーやフレディよりも濃いくらいだ)。たまたま、氏の起点が、ドゥ・ワップであったこともあり、またシャネルズというグループの看板であったから、つい見落としてしまうのが、鈴木雅之氏は、やはり グループも率いることが出来る、ソロ・シンガー なのである。

 とすれば、脇が大事である。村上氏と酒井氏。やや声域が近い。持ち味は、よく聴けばそれぞれ違って個性的なことはすぐに分かるが、パッと聴くと近すぎる。こと、ゴスペラッツとして考えた時、実に近いのだ。随所でファルセットを聴かせる村上氏は、グループとして求められるワンポイントの技を見せた。酒井氏は、実はすでにして地声が素晴らしい。特に、高音域に入ったときの伸びは絶品だが、ゴスペラッツのレパートリーは、酒井氏には若干ハンデがあった。酒井氏は、中音での声幅が狭いからである。私は、ゴスペラーズに相当詳しい方ではないが、直感で酒井氏を同グループの 中間管理職 であり、 バランサー だと思っているので、さらに声の高い黒沢氏と絡むゴスペラーズに於いては、酒井氏は最強のユーティリティ・シンガーとなるだけに惜しい気がした。
 桑野氏は、デビュー当時から顔を黒く塗らないメンバー。そして、親父譲りのトランペットの腕は抜群だった(桑野氏をバラエティ・タレントとしてしか知らない人は不幸である)が、実は歌がとても巧い。のである。ラッツ再集結ライヴに立ち会った私は、同グループの名曲中の名曲のソロ・パートを桑野氏に預けた(集まったメンバーの数が減っているのだ。預けざるを得なかったのだが…)このライヴに疑問を抱いたが、見事杞憂に終わった。それは、桑野氏の歌唱力が素晴らしかったからである。
 肝心の本DVDをよく観て欲しい(いまDVDを観ると、その役回りは、テンプスにおけるリチャード・ストリート、もしくはデイヴィッド・シーっぽくもある)。本来、技巧派のゴスペラーズの二人に欠けているものを、桑野氏が持っていることに気づくはずだ。言うまでもなく、スウィングだ。フェイクでもアドリブでもない。スウィング感。桑野氏にはそれがある。ハーモニーを煎じ詰めて来たゴスペラーズと違い、桑野氏がスウィング感を持っているのは当然だ。彼は、トランぺッターだからである。スウィングできなければ、トランペットでは食べられない。桑野氏がどこかで、自身のご子息がトランペッターになりたいと言ったのに対して、「食えないからやめろ、と本気で答えた」とコメントしていたことを思い出す。桑野氏ほどの人が言うのだから、親心であろう。その後日談は知らない。
 ともかく、スウィングのいらないトランペットは戦場、それも近世以前の戦場においてのみである(近世以降の戦場には、ジャズの萌芽があったし、兵士の慰問にはジャズ・バンドが訪れていたではないか)。そして、私が少年時代より、鈴木氏のカリスマに痺れていながらも、それに抗って敬愛していた佐藤氏。素晴らしい。その素晴らしさは後述する。
 “動くゴスペラッツが観たい”。それが始まりである。後編では、スタートに戻って、今度は大きな話をしよう。それも、小さな話から始めるのではあるが。(つづく)


GOSPE☆RATS Live in SOUL POWER 2006/DVD





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Last updated  2007/01/27 11:45:54 PMコメント(0) | コメントを書く


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