温故知新

2009.06.07
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娘と私は…今、何かを取り戻しているのかもしれない。
娘と私が失ってきたもの…それを上手く説明するのは難しいのだけれど…。
あえて言葉にするならば、『就学前までの普通な人間関係』とでもいうのだろうか。
その中には、母と子の当たり前の関係、などというものももちろん入るのだが、
それだけではない。

たとえば、「人の物を取ってはいけない」は、理屈も何もない1歳児あたりから
同じような年ごろの子どもと保護者を間にして、繰り返し辛抱強く教えていくことで
自然と身についていく。
「かして」「いいよ」の関係も、本当は「いいよ」ではないのに、なんか「かして」って

より複雑な人間関係を習得していくのだろう。

が、その時期に信頼関係のない大人に強制されていたり、ましてや母親に虐待されて
いたような状態にあった娘のような子どもは、こういうことを心に刻めていない。
1歳児で心に刻めなかったことを、時期を逸してから習得させるためには、
もう、1歳児のような方法では無理なのだ。
「人の物をとってはだめよ」「かして、って言おうね」
と、言っても、1歳児と違って心に刻んではくれない。
頭で理解しようとする。
頭で理解したものは、理性がぶっとぶほどの魅力ある事を前にしてしまったら、
やっぱりやってしまうのだ。
でも、頭ではやってはいけない、と知っている。

が、そのときにはもう遅く、周囲がどうしたって非難する。
知っていることを非難されるわけだから、本人もなかなか素直になれない。
そこへ大人からも「人の物をとってはだめよ」などと、知らないでしょ、
ばりに言われてしまったら、もう、おしまいで。
事態は悪化の一途をたどっていく。


方法で学ばせてあげなければ、心に刻むことはできない。
これが、児童心理などの主流なのかどうか知らないが、
少なくても娘には、この方法ではないと無理だ。

人の物をとってはいけないのは何故なのか、を理屈で説明し、
実際に、自分の物が取られたらどんな気持ちがするか、疑似体験でもいいから経験させる、
それでようやく、心に刻むことができる。

以前、母親と子どもの遊びの場を提供し、相談にのりながら、虐待された子どもを見つけて
いた小児科医と話したことが思いだされる。
虐待によって軽度発達障害に陥ってしまう、と聞いたとき、
先天的ではなくて後天的になるのであれば、治療してあげることも可能なのではないか、
と私が質問したとき、その小児科医は即、私に言った。
「誰がそれをやるの?」
親以上にマンツーマンで子どもと対峙してくれる人間はいない、
彼らにはそういった親がいないのよ、と。

今になって、あの小児科医の言葉が大きく大きくのしかかる。

たかだか、たった1つ。
人の物を黙って手を出してはいけない、ただこれだけで、これだけの過程が必要なのだ。
彼女が築けていないものが、あと一体どれだけあるというのだ。
それも、前もって規制できるようなものではない。
一つ一つ、娘がやっちまって、それでようやく、膿を出していくのだ、
そのことで周囲の大人が信じることを止めてしまわないように気をつけながら。

つまり、何が言いたいのかと言えば、自家中毒になって、娘はまた変わったようだった、
という話がしたかったのだった。

私が今まで彼女に語っていた話
…といっても、就学前に感情をブチまけるように言っていた言葉ではなくて、
就学後、小学校で何かしでかす度に必死に理性的に訴えてきた話だけ…ということに、
奥の深さを感じるのだが…
話を戻して、就学後に彼女に語っていた話と、空腹体験がつながったようで、
食事に対して真剣になってきた。
食べながらも、
「ねーねー。きょうのごはんで、からだをうごかすエネルギーになるのはパスタだよね。」
と、積極的にとろうとしたり、
牛乳も言われなくても自分から飲もうとする。
その姿は…私にブチ切れられるから…と恐怖でやっているようには見えなくて。
食べ物と自分の身体がつながっていることを感じとったのかもしれない。

禍転じて福となす…と、言いきってしまうには、あまりにも危険な禍だったのだが、
それぐらい真剣に向き合わないと、今から娘との関係を取り戻せないのかもしれない。





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Last updated  2009.06.12 02:12:47
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