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2025.09.07
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カテゴリ: 切ない話
彼の名はA(仮名)

昭和の終わりに地方都市で生まれ、両親と妹の4人家族で育った。

成績は中の下、運動も普通。目立たず、いじめられるわけでもなく、ただ「存在感が薄い」少年だった。



高校を卒業後、大学受験には失敗。浪人もせず、フリーターをするわけでもなく、「まあそのうち」と言って自室にこもった。


最初は誰も本気にしていなかった。父親は「働け」と怒鳴り、母親は「就職活動しなさい」と泣き、妹は軽蔑した。



しかし彼は動かなかった。

理由は単純――外に出るのが怖かったのだ。



最初はゲームや漫画、深夜アニメで時間を潰す。


生活リズムは夜型に崩れ、朝日はカーテン越しにしか見なくなった。





同窓会の連絡が来ても無視。携帯電話の契約はいつの間にか切れ、友達とも疎遠になった。



20代の終わり、父親が病気で倒れた。

親戚は「Aを働かせろ」と言ったが、母は「この子は弱いから」と庇った。

その「庇い」が決定打となり、彼はますます外の世界から遠ざかった。



30代に入るとネット通販と母の買い物で生活が回る。

家計は父の年金と、母が内職でつなぐ。

Aは一切収入を得ないまま、食費も光熱費も当然のように消費し続けた。


「いつか俺だって」という言葉は、すでに口癖のようになっていたが、行動に移ることはなかった。



40代。

父は亡くなり、母は老け込んだ。

妹は結婚して家を出た。



母は「この子を残して死ねない」と言いながら、体を壊しながらも働き続けた。



50代。

母が亡くなった。

葬儀の日、親戚たちは冷たい目でAを見た。


「もう50にもなって働いたことがないのか」



だが彼は手続きすらできず、しばらく家で飢えに近い生活を送った。



やがて役所に事情が伝わり、ケースワーカーが訪れた。

生活保護を受け、最低限の暮らしは保障された。

しかし仕事の斡旋や就労支援はすべて拒否。

「俺には無理だ」と言って布団に潜るだけ。



60代、70代。

近所でも「変な家の人」として知られ、姿を見かけるのはゴミ出しの数分だけ。

人生の大半を閉め切った部屋で過ごし、カレンダーは埃をかぶったまま。

外の世界は常に「怖いもの」であり続けた。



そして80代。

誰に看取られることもなく、布団の上で静かに息を引き取った。

葬儀を出す親族もなく、自治体が簡易的に火葬を済ませた。



残された部屋には、古びたゲーム機と、色あせたアニメのポスター。

日記も手紙もなく、ただ「生涯ニート」という事実だけが彼の人生を語っていた。

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最終更新日  2025.09.17 15:40:17
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