2015年01月29日
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未知の分野で単騎世界へ乗り出す邦画の快挙
SPACE BATTLESHIP ヤマト

Space Battleship YAMATO


■ 監督 山崎貴
■ 出演 木村拓哉/ 黒木メイサ /柳葉敏郎/ 緒形直人

【再更新 完全新作レビュー】

- INTRO -


2010年の元旦 産経新聞 関連誌上で 第一面を飾ったのは
一億もの宣伝費を掛けたと言われる 元旦広告展開の一環で

SMAP木村拓哉扮するキービジュアルによる
SPACE BATTLESHIP ヤマトの 全面広告でした

この実写版ヤマトは極秘プロジェクトとして進行し
木村拓哉が主人公古代進を演じる他は この時点で何のアナウンスも無かった所が
邦画としては前例の無い徹底さで

特にデスラー役のキャスティングを巡っては 毎日の様にネットで話題に上がり

2009年12月12日『宇宙戦艦ヤマト復活編』公開を皮切りに
ヤマトイヤーと名打ったこの一大プロジェクトは ヤマトファンのみならず
否応なしに盛り上がって行くのでした


さて

実写化といえば 現在ハリウッド版宇宙戦艦ヤマト
の企画が進行しており

(95)『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー脚本賞を受賞し

(93)『パブリック・アクセス』(00)『X-メン』
ブライアン・シンガー監督作や

(08)『ワルキューレ』(14)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
トム・クルーズ主演作で脚本を担当し

(12)『アウトロー』(15)『ミッション・インポッシブル5』では監督を務めた
鬼才クリストファー・マッカリーが監督し

『ミッション・インポッシブル』シリーズ
『スタートレック イントゥー ザ ダークネス』を手がけた
スカイダンス・プロダクションズ が制作する事が決定しており

『スター・トレック・イントゥ・ダークネス』規模の制作が予想され
早くて2018年頃の公開を目指して進行中とのニュースが話題となっております

主人公も トム・クルーズ、ブラッド・ピット級のキャスティングが予想され

コレこそヤマトファンのみならず 洋画ファン必見の巨大プロジェクトとして
期待感が否応無しに盛り上がる

スター・ウォーズに次ぐ 個人的にも今年一番の話題と思います



只、これには手放しでは喜べない落とし穴があって・・・


実はこのハリウッド版、原題にはヤマトの三文字は無く
尚且つヤマトのアメリカ放送版『Star Blazers』では

戦艦の名前は「ヤマト」ではなく 「アルコ」だった事から
そもそも『宇宙戦艦ヤマト』では無くなる可能性があり


「戦艦が大和でなくミズーリ」「アイオワ」「アリゾナ」
果ては「エンタープライズ」と アメリカ仕様になると言う内容の
まことしやかな冗談ネタが拡がる他

そもそも 「あの」ヤマトのフォルムになるのかどうかも危惧される所で

更に、制作発表後も『AKIRA』『攻殻機動隊』などの様に
企画そのものがたらい回しになったり

最悪は 企画そのものが頓挫する可能性もあり


期待感と不安が入り混じった情報で ネットが錯綜しておりますが
ここは続報に期待したいと思います☆



という訳で、 特撮マンの経緯を持ち 初代アニメ世代の
『ALWAYS三丁目の夕日』『BALLAD名もなき恋のうた』
の 山崎貴 監督による

初代アニメ世代を唸らせるには 十分な仕上がりとなり
同時に 『宇宙戦艦ヤマト』の実写化に対して ファンによる物議の的となった

『SPACE BATTLESHIPヤマト』をご紹介します


-STORY-

時は2194年
謎の異性人ガミラスによる遊星爆弾の攻撃は地球に壊滅的な打撃を与え
人類は滅亡の危機に瀕していた

そこへ惑星イスカンダルからのメッセージが届き
偶然居合わせた古代進(木村拓也)は
地球最後の希望宇宙戦艦ヤマト乗組員に志望する



-解説-


■ 本作は邦画でも破格の制作費を導入し

地球を滅亡から救う為 地球の敵ガミラスの攻撃をかわしながら
前人未到の宇宙の航海に挑む
ヤマトのクルーの活躍を中心に描いており

ハリウッドに引けを取らない 渾身のVFX映像と
話題の主演俳優達の体当たりな演技が見所の

本格SFアクション映画で

歴史的大ヒットアニメ作品 『宇宙戦艦ヤマト』の実写化に相応しい
観る価値は十分ある作品に仕上がっております



【ガミラスの描写を廃した潔い構成】

アニメ版のドラマの大きな柱の一つとして描かれた
ガミラス 側の描写を一切排し

一時は誰が演じるのか話題になった デスラー総統役 は

ありがちな日本人大物俳優や
人気海外ドラマの一般的には知名度の低い俳優を起用する様な
無粋な配役になる事を避けて
物議を醸す事を承知の上で アノ様な形で描写し

アニメ版でのクライマックスとなる 七色星団の戦いなどの様な
知謀と戦術の限りを尽くす戦闘場面などの

松本零士作品に見られる マニアックなミリタリー系アクションとしての側面や

イスカンダルのスターシアと地球人とのロマンスを描いた
「宇宙戦艦ヤマト」を語る上で 重要な
愛とロマンと言った要素も カットして

イスカンダルへ向かうヤマトの描写のみに集中した構成

TVシリーズ全26話のダイジェスト作品になる事なく
SF性の高い映像化を目指した
世界を焦点に定め制作された作品に仕上がったと言えますし

十分に予算が与えられた 邦画の話題作にありがちな
描写の多様性と製作者達の多種多様な思い入れが交差して引き起こす

構造的破綻を避ける目的を重視したという点に置いても

只単にアニメを実写で再現した作品とは違った
ある種の潔ぎ良さを感じる
邦画の枠を越えた意欲作と言えるスケールを感じました


近年の大ヒットSFシリーズ「スター・トレック」や
SFTVシリーズ「バトルスター・ギャラクティカ」などの
ハリウッド作品の影響が随所に見られる画面構成や演出は

SFアクション映画ファンでアレば ニヤニヤしながら
愉しめる内容になっております



【邦画の脆弱性の問題】

しかし一方で、本作をを支える脚色と演出は
邦画作品全般の傾向である 特徴的な共通の脆弱さを持つという

問題を抱えた内容を持つ作品でもありました


■漫画が原作ゆえに 合理的に無理がある設定を指摘する意味は無いとして
集団的自衛権が問題になっているご時世ではありますが

それを考慮した論理で 映画作品を語る事は些か主旨がずれているので

あくまで映画の演出効果の是非を指摘する視点に留め
解説している点をご考慮頂きたいのですが

内容がSFとは言え  戦争 を描いている以上
最低でも乗組員は  軍人 に見えなければならない という 映画のセオリー

本作は満たしてはおりません


劇中の特殊部隊の隊員は仮にも選び抜かれた先鋭のはずが
動作が混沌として若いマフィアの集まりの様であったり

艦橋の士官達のやり取りは訓練を受けた 軍隊の士官 の動きと言うよりは
まるで 会社の社員 の様であったり と

近年国内でも中東の紛争事件が大きく報じられ
実際の戦闘の苛烈さを日々眼にしているこのご時世に

世界を目指す以上、この様なチグハグな演出で占められた作品を
自国に軍を持つ海外の観客が鑑賞した時の反応は

絵面を世界レベルへ持ち上げる事に躍起になるよりも
真っ先に考慮すべき懸案事項だったはずで

世界を目指しながら国内への考慮に終始した 制作側の認識不足を感じる
日本独特の根深い問題が今後の課題として残る印象を強く持ちました



【ジャパニメーションの弊害】


冒険アクション物には欠かせない要素の
主人公とヒロインのロマンスは極めてアニメ的で

ヒロインが歯を出せば愛らしいという主旨の演出は まだしも

人類存続を賭ける戦いに 明日をも知れない運命で挑む戦士達の物語に
相応しい 魂が震えるようなロマンス を描くのが

脚本の腕の見せ所 という事なのですが

既にコミックスやゲームではお馴染みとなった
世紀末な世界というポピュラーな世界観の設定の作品に

わざわざ既視感と親近感を作るフックの一環として
砕けた人柄という ありがちな人物設定を施し

漫画が原作の月9ドラマの範疇を越えない内容 となり

地球の滅亡という絶望的状況を打破する様な
狂気にも近い気概と生命力を持った人物達による
驚異に満ちた未曾有のドラマ展開は見られませんでした


絶滅の危機に貧した地球の場面も スター・トレックのボーグ艦内部の様な
既視感ある 衝撃度が不足した 未来世界の描写は まだ良いとしても

災害時の 整然とした日本人の行動が世界の称賛を得た
国民性があるからと言って

地球が滅亡する という
もはや整然さを保っていられる段階では無いという状況下で
何の暴動も略奪も起こらない

かと言って深い絶望感が占めている訳でも無い不自然な市民描写に

配給品をせしめようとする様な 信頼出来ない人物達と
同室を共にするという ちぐはぐした

プロットの掘り下げ方の不足 が目立った様に感じました


アクション映画という点においても 国民的アニメ作品の実写化という事で
アニメと実写の境界を揺れ動きながら熟考する余り

アクション映画に不可欠な、テンポある流れ を見失ったという典型

日本が制作する映画作品独特の傾向の多くが問題点として現れた
今後の課題が多い 作品でもある様に思いました



80年代をピークに 東宝特撮映画で黄金期を迎えた邦画のSFは
バブル経済の到来で 国民の関心が社会生活に向いた事で

森田芳光、伊丹十三作品の様な
日本ならではの様式を独自の着眼点で描いた作品に人気が集中し

直接生活に関係し無いSFはやがて支持を失い 世界に大きく差を付けられます

近年のSFアニメ実写化作品の リスペクトを感じ無い失敗作を見る限りでも
未知の分野にすらなり果てた感がありますが

映画の内容さながら単身世界の大海原へ乗り出し
前例の無いジャンルに挑んだ本作は
それだけで評価すべき作品だと思います


この作品においては 近年増えつつある傾向にあるも
邦画ではさして開拓されていない未知の分野であるSFに

企画当初からの様々な困難と問題を乗り越え、
企画達成まで果敢に挑んだ関係者諸氏に最大の敬意を表したいと思います



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最終更新日  2016年12月16日 10時27分48秒
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