ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2011.01.06
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カテゴリ: 国際経済
ユーロの憂鬱 (30)

ですから、ユーロ圏諸国やイギリスなどは、ECBやEUによる支援の前提として、ギリシアに大幅かつ大胆な財政赤字削減策の導入を要求しました。当然増税や年金支給年齢の引き上げ、公務員給与のカットに人員の削減なども含まれますから、ギリシア国民は強く反発します。

それが分る故に、ギリシア政府もあの手この手で抵抗したのですが、EU諸国の支援なしには、デフォルトが確実なのですから、最終的には従わざるを得なかったのです。しかし、これで問題が解決するわけではありません。

ギリシアに半年遅れて、昨年11月~12月にかけて再び問題になったアイルランドのケースが、良い見本なのです。既に指摘したことを繰り返すと、アイルランドはギリシアに先駆けてIMFやEUに支援を求め、要求された緊縮政策を忠実に守っていたのです。求められた処方箋の通りに経済を運営した結果、支援の成果が上がらずに、再び危機を迎えた姿がそこにあったのです。

即ち、経済が大きなダメージを受けているときに、財政赤字の削減を優先して増税や緊縮財政を実行すれば、当然国民は生活防衛のために、節約志向を強めて消費を縮小します。雇用と所得の落ち込みという二重の危機が、そこにはあるのです。企業もまた過剰生産を恐れて、設備投資を控えると同時に、過剰設備の廃棄を進めます。

この結果、増税にも関わらず、税収の落ち込みが大きいために、増税の効果は期待したほどには伸びないのです。日本の諺にある「虻蜂取らず」状態です。その上ギリシア政府は、受けた融資に対する利払いの義務を負います。その利子は市場金利を参考に決められますから。かなり高い利子を払わなければならないのです。

デフォルトの可能性を市場に指摘された国の国債は、信用を失いますから、相当高い金利を提供しないと、誰もリスクをとってくれません。さすがにIMFやECBもむき出しの高利を要求するのは気がひけたのか、市場金利よりは2ポイントほど下げたのですが、それでも5ポイント台です。

ギリシアは、EUの支援で借換えは出来ましたが、以前よりも高い金利の支払いに悩まされる
ことになったのです。支援で現時点での破綻は免れました。しかし、ギリシア経済の将来が、保障されたわけではないことに、注意が必要なのです。


                                続く





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最終更新日  2011.01.06 21:21:25
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