ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2011.01.07
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カテゴリ: 国際経済
ユーロの憂鬱 (31)

財政統合の問題に戻ります。この問題を突き詰めていくと、結局は1つの政府の問題に行き当たります。EUが1つの政府を持つことになれば、ギリシアやアイルランドの問題もEU政府の責任になりますから、夫々の財政赤字問題は、EUの統一財政上の赤字に転嫁されますから、ギリシア政府やアイルランド政府の悩みは、解消されることになります。

しかしながら、ここにはいくつもの問題があります。、まず財政上の火消しが必要な国は、ギリシアとアイルランドに留まらず、スペインやポルトガル、さらにはイタリアが控えていますし、バルト3国や東欧の国々も大きな火種を抱えています。これだけ大きな火消しをするだけの財政資金は、EUにはありません。つまり共倒れが必至なのです。

こうした現実を脇に置いたとしても、自国の税金からの持ち出しになるドイツやフランス、オランダらの国民は、自分の支払った税金が、他国のために使われることを受け入れるでしょうか。そんなことは御免だと大騒ぎになることは必定です。選挙の怖い政治家が、こうした国民の強い反発を無視して、政治統合や財政統合を推進することは考え難いですね。

そして最後に、財政負担から解放される国々はどうでしょうか。財政負担から解放される代償に、自国の財政自主権を放棄しなければならないとすると、唯々諾々としてこの契約に応じるでしょうか。それではあまりに犠牲が大きすぎると、あの手この手で抵抗することは、間違いないでしょう。

そうまでするくらいなら、EUやユーロという巨大ロボットのバーツであることをやめ、勝手気ままに振舞う道を選ぶ可能性の方が高そうです。永久に財政自主権を失うよりも、一時は辛くても、思い切ってデフォルトする道を選び、自国通貨を大幅に切り下げて、輸出主導で再建を図る。

南米や98年のアジア通貨危機に際してのアジア諸国の取った道です。こうしたせめぎあいが今も続いています。

なぜなら、EU政府の統合財政が誕生したとしても、その体制下で、本当に財政困難国の(例えばギリシアの)悩みは解決するのでしょうか。

ギリシア国民の納めた税金以上の額が、当初はギリシアに投入されるでしょうが、将来はどうなるか分らないのです。自分たちの納めた税金が、自分たちが納得のいくように使われているかどうか分らないのに、馴染みの薄いEU政府に税金を納める気になるでしょうか。


                                 続く






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最終更新日  2011.01.07 21:01:25
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