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これは、朝日の「どらく」に上林格が連載しているビートルズ・スペシャルの最新号からの抜粋です。この記事は、いつも面白いですが、今回は、このアルバムの核心部分だけ抜書きさせていただきました。
録音に先立って4人はジョージの自宅に集まり、インドで超越瞑想のキャンプに参加した際に書きためた27曲のデモ・テープをつくった。ところが、スタジオに移ると、ジョンはオノ・ヨーコを伴ってスタジオに現れ、常にヨーコが傍らにいるようになった。 スタジオでの音づくりの決定権は、マーティンとビートルズだけにあった。その不文律が乱されたことで、いやが上にもグループ内に緊張感が高まった。 最初に取り組んだのは「Revolution 1」。その長いテイクから抜き出した6分間のテープを元に、ジョンとヨーコはサウンド・コラージュの実験曲「Revolution 9」のベーシック・トラックを組み立てる。ほかの3人とマーティンが最後までアルバム収録に反対した曲だ。「テープ・ループ」作りのためジョンとヨーコがスタジオに籠もると、リンゴとジョージは米国に旅立ってしまい、ポールは1人で「Blackbird」を手がける。のっけから分裂のきざしをみせていた。 マーティンは、インドでつくった曲のなかにはリリース向きじゃない曲もあるとして2枚組の制作には反対した。だが、メンバーは自分勝手に曲をつくりたがった。同時に二つも三つもスタジオを使って録音が行われるようになり、音づくりの指揮官がすべての録音に立ち会えることは難しくなった。方向性の定まらないテイクの繰り返しや、メンバーやスタッフ間での辛辣なやり取りの応酬が生まれた。 コミカルな「Ob-La-Di,Ob-La-Da」は、ポールが理想とするジャマイカ風サウンドを追求するあまり何回もリメークやオーバーダビングを繰り返した。だが、曲が劇的に変化したわけでもなく、ほかの3人をうんざりさせた。この曲が完成するころ、険悪なスタジオの雰囲気に堪えかねた録音技術者ジェフ・エマリックが辞めた。 リンゴの自作曲「Don't Pass Me By」は1カ月も放置された。ジョージの自作曲のセッションも後回しにされた。辛抱強く待ってようやく順番が回ってきた「Not Guilty」は、100テイク以上録音したものの没にされる。 「Mother Nature's Son」はある日の夜、メンバーが帰った後にポールが1人で録音してしまった曲だ。ジョンは怒った。別の日の夜、ポールとマーティンがこの曲でブラス奏者と打ち合わせ中、リンゴとジョンがスタジオに入ってくると、その場の空気がピーンと張りつめた。
グループ内の緊張は「リンゴの脱退」で頂点に達した。ポールがリンゴのドラミングにケチを付けたことがきっかけだが、出番が来るまでスタジオの外で延々と待たされたり、知らぬ間に自分のドラム・パートを他人に録音されたりした彼には、怒るだけの十分な理由はあった。アルバムのオープニングを飾る「Back In The U.S.S.R.」と、続く「Dear Prudence」はリンゴ抜きの演奏となった。 それでも奇跡は起きた。気を取り直したリンゴが復帰すると、ジョージは「While My Guitar Gently Weeps」の録音のためにエリック・クラプトンを強引に口説いてスタジオに連れてきた。他人の前では行儀良く背筋を伸ばすファブ・フォー。「あれ以来、みんなまじめに仕事をするようになった」とジョージ。 シングル曲「Hey Jude」のプロモ・フィルムの撮影では、全員が上機嫌になった。「Birthday」を1日で仕上げたときは、録音の合間にポールの自宅に全員が押しかけてロックンロール映画「女はそれを我慢できない」を見た。「Why Don't We Do It In The Road」は、ポールがリンゴだけを使ってつくった。ジョンは勝手に録音したことは怒ったが、ポールの傑作のひとつだと褒めた。 アルバムでの最高傑作は、三つの曲をつなぎ合わせたジョンの「Happiness Is A Warm Gun」だろう。ビートルズらしい変拍子と転調が披露され、ジョン自身「僕のベスト作品」と発言した。ポールとジョージもアルバムのなかで一番のお気に入りだと報道された。解散後のポールの傑作「Band On The Run」は、間違いなく「Happiness……」を強く意識して出来た組曲だ。解散後も2人の磁力は引き合っていた。
それでも長い引用となってしまいました。たった一枚のアルバム製作ですが、ビートルズの真実が凝縮した瞬間を伝える貴重な文章です。
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