記憶の淵に沈みゆくもの

記憶の淵に沈みゆくもの

2007.06.14
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「今年の枇杷はなりがイマイチ。あんたたちの分は送ってあげられない」
とのこと。

柚木崎の実家には、妙にたくさんの果物の木がある。
柿は母が好きなので、種類もまちまち、全部で4本ある。
杏もあるし、梅もあるし、ゆすらうめもあるし、棗もイチゴもある。
それに枇杷。
以前は桃もあったのだが、ちょっとした食い違いにより根元から伐採されてしまい、
母が激怒したのを覚えている。

西日がよくあたる位置に柿の木一本と枇杷の木があるのだが、
この枇杷、実兄が越してきたばかりのころに食べた枇杷が美味しかったとのことで
種を植えたのが始まりで育ったのだという。
とにかくでかい。
木造二階建ての実家と、ほぼ同じ高さになってしまった。
当然のことながら手入れもできなければ、高いところの実は取れない。
それは柿の木も同じことなのだけれど。
所謂「高枝切りバサミ」を使って、届く限りを取るのである。
後は全部、野鳥におすそ分け、ということになるのだけれど。

いつも収穫(笑)の手伝いに行っているものの、
今回は片割れが出張続きで行きたくても行ける状態ではない。
それがわかっているからか、うちで一番背の低い母が一人で取れる限り取ったのだという。
しかも、この実家の枇杷。
手入れをしていないから種ばかり大きいのだけれど、
売っているものより格段に甘くて美味しいのだ。
大量に取れた年などは、近所にも片割れの実家にも、実兄のところにも送るのだけれど、
今年はどうがんばっても無理なのだという。
仕方がないだろう。
柚木崎が手伝ったところで、増える数はたかが知れている。
それに、もともとのなりが少ないのでは仕方がない。

「野鳥と大喧嘩しちゃったわよ」
電話口で母が笑いながら言っていた。
そうだろう。
毎年、柚木崎たちが手伝いに行った時だって、
ヒヨドリをはじめ、さまざまな野鳥が「取らないで! 奪わないで!」と言わんばかりに
あわただしく寄ってきては鳴いていたものだ。
母の場合はもしかしたら、それに対抗して喋っていたのかもしれない。
否、確実に喋っていただろう。
実家のセキセイインコに対するように。
「ちゃんと残しておいてあげるから! だから人間の食べる分もちょっと頂戴!」と。

なんかその姿が目に浮かぶようで、久しぶりに大笑いしてしまった。
全く、母という人種は面白い。
今月はいけそうにないけれど、あきらめてもらうしかないなぁ。





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Last updated  2007.06.15 20:15:39
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