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2022.09.16
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テーマ: 読書(8190)
本のタイトル・作者


地球、この複雑なる惑星に暮らすこと [ 養老 孟司 ]

本の目次・あらすじ

1 「役に立たない」を擁護する
2 虫と人間
3 旅する想像力
4 世界は思うよりずっと複雑だ
5 ひとりでに「なる」文化
6 問題山積、予想のつかないことばかり
7 ゼロから始める

引用


(略)
今は人生にその考えがなくなっちゃった。自分なりの完成した絵を一生描きつづけるっていう考え方がすっかりなくなってしまった。でも最後に本人という作品ができるんだと思えれば、最後のよれよれの状態も含めて、「ああ、なかなかいい一生だ」って思える。


感想

2022年238冊目
★★★


最後はヤマザキさんの息子のデルス君も登場する。

丁々発止のやり取りに、教養というのはこういうことを言うんだなと思う。
当意即妙な受け答えに現れるのは、その背後にある深く広い知識。
それは「情報を咀嚼し、自分の血肉としてきた」ということだろう。
形而上学的認知のもとで、ある事象は他の事象にも適用される。
類似点と相違点を認識することで、世界は繋がっていく。
ひとつはすべての一部であり、一部は世界のすべてでもある。

「バカの壁」のことが引き合いに出されていたけれど、今は、自分の想像の中にある、「自分のわかるもの」しか共感できない。
これ、

他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ [ ブレイディみかこ ]
フェイク ウソ、ニセに惑わされる人たちへ [ 中野信子 ]


養老さんは「わかりたくない」のだ、「わかってやるものか」だと言っている。
そういえば最近、「分かりやすくないほうが悪だ」という風潮もあるよなあ…。
あな、乏し。貧すれば鈍する。
知的好奇心は人間が持ちうる根源的欲求であろうに。
自分の知性くらい自分で守れ、ばかものよ。


日本語は「気持ち」に近い、感情的な言葉だという話は面白かった。
あちら側にある「出来事」と、こちら側にある「自分の気持ち」。
その気持ちと「言葉」が一緒に動く。感覚的であり主観的である。
対して欧米の言葉は、「出来事」と「言葉」が一緒になっており、「気持ち」とは切り離されている。客観的である。
なるほど。

日本で出版数が各国に比べ桁違いに多いのも、「考えていることを言語化してもらいたい」からなのだと養老先生は指摘する。
ヤマザキさんはその言葉を受けて続ける。
言語化というカロリーを消費することを日本人はしていない、怠惰である。
燃費の悪い生き方をしたくない、探求心の責任を負いたくない、知らないことを知って不安になりたくない、知っていることの中だけで平和に暮らしたい。

耳が痛い。
これもまた、「言葉」が「感情」とくっついているからだろうか。
日本語で言葉にするということは、自分の気持ちを表面化すること。
形のないものに形を与えること。
それは空気を読む社会において、多大なエネルギーを必要とする。
目に見えているものを、言葉にするのとはわけが違う。

無知と言うのは、心地がよいのだろうな。
その安寧にたゆたう。
走光性の虫みたいに。

大人の「勉強」大作戦 [ 日経WOMAN ]

で、勉強するとは「幸せを壊す」ことだという言葉があった。
「勉強とは貧しい見方が失われるという意味で喪失であり、自己破壊です。実は恐ろしく、勇気がいること。」

それでも平穏な「ここ」から出て行けるかどうか。
出て行く必要がないのだろうな、今の日本は。
内輪だけで通じる、内に閉じた社会。
けれどそれではもう、通用しない世界がそこまで来ていて。
その時に破壊され尽くして、残らないかもしれない。
私はその危惧を抱いてる。(だから英語を勉強している、というのもある。)

人間的に豊かであること、その土をよく耕すこと。
絶えず手を入れ、目を凝らすこと。

光を目指すこと。
盲目的にではなく。

これまでの関連レビュー

世間とズレちゃうのはしょうがない [ 伊集院光×養老孟司 ]
養老先生、病院へ行く [ 養老孟司×中川恵一 ]
ヒトの壁 [ 養老孟司 ]

生贄探し 暴走する脳 [ 中野信子×ヤマザキマリ ]
妄想美術館 [ 原田マハ×ヤマザキマリ ]
ムスコ物語 [ ヤマザキマリ ]
たちどまって考える [ ヤマザキマリ ]
ヤマザキマリの人生談義 [ ヤマザキマリ ]
壁とともに生きる わたしと「安部公房」 [ ヤマザキマリ ]




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最終更新日  2022.12.03 23:39:29
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