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2022.07.14
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



壁とともに生きる わたしと「安部公房」 (NHK出版新書 675 675) [ ヤマザキマリ ]

本の目次・あらすじ


第1章 「自由」の壁ー『砂の女』
第2章 「世間」の壁ー『壁』
第3章 「革命」の壁ー『飢餓同盟』
第4章 「生存」の壁ー『けものたちは故郷をめざす』
第5章 「他人」の壁ー『他人の顔』
第6章 「国家」の壁ー『方舟さくら丸』

引用


その人の想像力を形づくる土壌のようなものが、どんな成分の土でできているか。そこにどんな植物や作物が育つか。子供のうちから人間社会の容赦ない不条理さやひどさを目の当たりにしてきた人は、その土がよく耕されているので、いろいろなものが栽培できる。しかし現代の多くの子どもは、土地が痩せているどころか、土に触れさせてさえもらえない。これをしてはいけない、あんな人と付き合っちゃダメ、そんなもの読んじゃだめと無菌状態のような教育を受けている。それでは土のいらないエアープランツみたいなものしか栽培できないだろう。


感想


2022年176冊目
★★★

ヤマザキさんがこれまであちこちの媒体に書いて来られた安部公房にまつわる原稿をまとめた一冊。

好きというかあんたこれ。
なんかもう、研究者的なことになってるんですけども。

私は安部公房といえば、たしか友人に薦められて高校時代に「箱男」を読み、「いや私の好みではないな」と一作で読むのを止めた覚えがある。
ヤマザキさんの熱弁をもってしても(だからこそ)「私の好みではないな」と読む気が起きなかったのだけど(ごめん)、作品について詳しく紹介してくださっているので、「ほうほう、そういう話を書いていた人なのか」と興味深く読んだ。

安部公房が他の言語に多数訳されているというのも初めて知った。
そんなに海外でも有名で評価されていたのか。

まあ、私はおそらくこれからも安部公房を読まない気がするのだけれども(ほんまごめんやで)、合間合間のヤマザキさんの語りが楽しくて、一冊まるごと読み終え、ちょっと安部公房の作品観を覗けた気がする。
しかしヤマザキさんの語彙力と文章の巧みさよ。
漫画家やと思うてちょっと舐めてたわ。凄いなこの人。

ヤマザキさんの内容紹介で、私が読みたいと思ったのは『砂の女』と『方舟さくら丸』かな。
「つくりあげることに熱中して、出来上がったら即壊れる」と称される安部公房の作品のつくりも体感してみたい。


ヤマザキさんは村上春樹の洒落た言い回しやなんかと対比されていたけど、私は物語に「臭い」を感じたくないのだと思う。
フィクションはフィクションとして、その世界の中に留まっていてほしい。
無臭であってほしい。
あるいは馨しいもので。

それは水洗便所の普及とか病院での死亡が当たり前になったこととか、そういうものも含めた「臭い」なんだと思う。

それは引用部のヤマザキさんが言う土壌を持たない「エアープランツ」なんだろうか。

蛇足にすんごいどうでも良い話をすると、この本には安部公房が貧しい人を描き、本人もまた極貧の生活を送っていたこと、イタリアで同様に極貧生活を送っていたヤマザキさんが彼に共感したことが書かれているんだけど、そこでヤマザキさんが食べていたという「オリーブオイルに塩だけのパスタ」が美味しそうで作って食べました。
(これ、『ムスコ物語』でもたしかお話しされてましたね。)
おいしかったです!オリーブオイルって何でもおいしくしちゃうんだな。おそろしいこ。

これまでの関連レビュー


生贄探し 暴走する脳 [ 中野信子×ヤマザキマリ ]
妄想美術館 [ 原田マハ×ヤマザキマリ ]
養老先生、病院へ行く [ 養老孟司×中川恵一 ]
ムスコ物語 [ ヤマザキマリ ]
たちどまって考える [ ヤマザキマリ ]
ヤマザキマリの人生談義 [ ヤマザキマリ ]




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最終更新日  2022.12.03 23:54:31
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