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2022.07.13
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カテゴリ: 観照 & 探訪
本堂正面の石段 を降ります。
石段の傍に、 御詠歌を刻した歌碑 が建てられています。
み仏のめぐみもふかき般若台ももの願いをかなえたまわむ


十三重石宝塔 は、基壇の上に建立されていて、周囲が柵で囲まれています。
柵に瓦屋根が付けられています。正式な名称は知りません。
囲いの内側は夏コスモスが咲き誇り、柵の外側には紫陽花が咲いています。

石段を降りた後は左方向に歩み、時計回りに周囲を巡ってみました。

現在のこの十三重石宝塔は鎌倉時代の作
「観良上人が勧進し宋人伊行末、行吉らの手で建長5年(1253年)頃に再建された」 (資料1) と言います。塔高は五丈(14.2m)。
「塔身に膨らみをもたせ、初重笠石を大きくして安定感を見せる。大きな基壇は授戒式を行ったと推定される」 (資料1) とか。

鎌倉時代の十三重石塔でこの石塔と並ぶ代表的なものは、京都府宇治市、宇治川の塔の島に建立されている巨大な「 浮島十三重塔 」と、京都府相楽郡加茂町の「 岩船寺十三重塔 」があります。手許の書によると、広島県の「 光明坊十三重塔 (資料2)


本堂の前を東方向に進むと、突き当たりに「 笠塔婆 」があります。鎌倉時代の作です。
この笠塔婆を囲む柵は、十三重石宝塔と同じ形式です。

この笠塔婆は、「宋人石工伊行吉が弘長元年(1261年)に父伊行末の壱周忌にあたり、父母の供養のために建立。もと寺の南方、般若野と呼ぶ墓地の入り口にあったが廃仏毀釈で破壊され明治26年、境内に移転再建される。下部に264文字の銘文があり、東大寺再建に携わった宋人石工の事績が知られる貴重な史料」 (転記、資料1) だそうです。

能の演目『笠塔婆』の題材になったと言われています。 (資料1)
よく見ますと、壊され折れた石柱をつなぎ修復したことがうかがえます。正面は梵字で刻されています。

柵の傍にこの 案内板 が設置されています。

寺古りて野菊に立てる笠塔婆  素紅 (資料1)

境内の各所に歌碑や句碑が奉納されています。それらも随時ご紹介していきしょう。
見た印象として歌碑や句碑は近年に奉納されたものと受けとめました。
唐びとが月をろがみし笠塔婆 秋桜 
双び立つ花野寺の笠塔婆  日月子

余談です。江戸時代に出版された『大和名所図会』は、 般若野について 、「奈良坂より佐保川の石橋までをいふ。又般若路とのなづく。」と説明しています。 (資料3)

ネットのマピオンの地図で確認しますと、般若寺の所在地は般若寺町です。この北隣が奈良阪町。「奈良坂 南都北の入口をいふ。此町を奈良坂村ともなづく」と『大和名所図会』は説明していますので、奈良坂村が現在の奈良阪町になるのでしょう。
般若寺楼門前の奈良街道(京街道)を北上すると、道路の西側に奈良豆比古神社があり、その少し北で、奈良街道が県道754号線に合流します。その合流地点に「奈良阪」のバス停があります。
一方、楼門前の奈良街道を南に下って行くと、国道369号線との合流地点に至ります。そこは佐保川を横断する地点でもあります。地名でいえば今在家町。国道には「新石橋」と地図に記入されています。つまり、かつての般若野と呼ばれた地の広がりがイメージしやすくなります。

元に戻ります。

笠塔婆の南に 、西面する「 一切経蔵 」があります。 元版一切経を収納 する経蔵です。
戦国時代の兵火の折にも焼けずに残った建物です。
この経蔵には 本尊として十一面観音像 が祀られているそうです。 (資料1)

また、元弘の乱において、大塔宮護良親王がここ般若寺に潜伏していた折、この経蔵の唐櫃に隠れて危難を逃れたというエピソードが残されています。 (資料1,4)

経蔵のかなしきえにし露の堂   敏子 (資料1)

 経蔵前の通路を挟んで西側、十三重石宝塔との間に、 「薬師如来」の扁額を掲げた拝所 が設けてあります。


十三重石宝塔の軸部 には、仏像がレリーフされています。
ここには、 南都仏教(顕教)独特の四方四仏 が浮彫にされています。

              拝所のある 東方は薬師如来 です。


南方は釈迦如来 です。

西側に巡ります。 南西隅に は柵の内側に 石造相輪 が保存されています。
最初の石宝塔の残闕でしょうか。

西方は阿弥陀如来 です。


北方は弥勒如来 が浮彫りにされています。

序でに、 宝篋印塔 は様々なお寺で拝見します。その塔身に四仏がレリーフされているのを見かけます。
この場合は、 東方阿閦如来、南方宝生如来、西方阿弥陀如来、北方不空成就如来 を配し、 塔身の中央部を大日如来と見立てる ​金剛界五仏の形式​ が多いように思います。 (資料2)

この十三重石宝塔の傍にも歌碑がいくつかあります。目に止まったものをご紹介しましょう。
ちちろ虫十三塔をつつみ鳴く 一邑

般若寺は端ぢかき寺 仇の手を 逃れわびけむ皇子しおもほゆ 鷗外

うれしくも人と生まれて御仏の み名を称えて年を重ぬる  かをる

本堂前の参道の途中、西からの眺め

楼門側に歩み 少し離れた位置から眺める と、 東の彼方になだらかな山並み が広がっています。

秋の日の十三塔や日は西に  素十




      境内には石仏が花に囲まれるようにして点在しています
                   花々、歌碑、句碑も合わせて点描してみます。
釈迦如来石像

釈迦如来石像の傍に集まった石仏

もう一軀の釈迦如来石像


阿弥陀如来石像
地蔵菩薩石像 だと思います。


「霊石 まかばら石」 があります。 傍に説明文 が掲示されています。

「この石はいつの頃からか境内の片隅にあって、人の運気を上昇させる霊験があるといわれ、大切に守られてきました。
 <オン・マカバラ・ウン>の呪文を唱え、石のいただきを右回りに三周なでてください。
 名の由来は『光明真言』にあり、<オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン>を略して<オン・マカバラ・ウン>と言います。」 (説明文転記)


本堂の東側に 回り込むと、少し離れた東側に 寂れた感じの門 があります。
この門に目がとまったのは、「 秘仏白鳳阿弥陀如来 と刻された石標 が門の近くに立っていたからです。門は開いていましたので、中には入れましたが、その先は立入禁止でした。そのため、この石標の事実は未確認です。

この門の 門扉に掲示されていたのがこの境内図 です。
鎌倉時代、文永4年(1267)頃の般若寺の伽藍図 と記されています。
かつては、いわゆる七堂伽藍の大きなお寺だったことがわかります。

本堂の東側から本堂の背後、西側という順に境内を巡ってみました。

つづく

参照資料
1) 当日拝観受付でいただいたリーフレット「般若寺」
2)『図説 歴史散歩事典』 監修 井上光貞  山川出版社
3) ​ 大日本名所図会. 第1輯 第3編  ​ :「国立国会図書館デジタルコレクション」
4) ​ 護良親王 ​  :ウィキペディア

補遺
護良親王 ​  :「コトバンク」
十三重石塔 ​ :ウィキペディア
岩船寺十三重石塔 ​ :「石仏と石塔!」
光明坊十三重塔 ​  :「文化遺産オンライン」
宝篋印塔の変遷と刻經の内容 ​  :「備陽史探訪の会」
宝篋印塔 ​  :ウィキペディア
宝篋印塔(ほうきょういんとう) ​:「浄土宗 阿威山 大念寺」
胎蔵四仏 ​  :「コトバンク」
胎蔵界五仏 ​ :ウィキペディア
光明真言 ​  :ウィキペディア
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Last updated  2022.07.16 15:35:14
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