音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016年01月17日
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 偶然と言えばそれまでなのかもしれないけれど、なぜか1975年発表のアルバムには愛聴盤が多い。ブルース・スプリングスティーンの出世作 『明日なき暴走(Born To Run)』 もそうだし、エリック・クラプトンの 『安息の地を求めて(There’s One In Every Crowd)』 もそう。ピンク・フロイドの 『炎~あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)』 もこの年の発表だ。ちょっと変わったところでは、トム・ウェイツの初期作のうちで最も頻繁に聴く 『娼婦たちの晩餐~ライヴ(Nighthawks at the Diner)』 も、同じく1975年のアルバムである。

 さて、上記のトム・ウェイツ盤は、そのタイトルからも想像されるように、“夜にぴったりな一枚”なのだけれど、これと並んで、同じ1975年に発表された“夜盤”として、特別なお気に入りがもう一枚ある。それが、ニール・ヤング(Neil Young)の『今宵その夜(Tonight’s the Night)』というアルバムである。

 ニール自身が書き記しているように、このアルバムはダニー・ウィットンとブルース・ベリーに捧げられている。2人ともドラッグが原因で命を落としたニールの友人で、前者はともにレコーディングをしていたクレイジー・ホース( 参考過去記事 )のメンバー、後者はCSN&Y( 参考過去記事

 1973年の8月~9月に録音され、一度はお蔵入りになった後、1975年にリリースされた。過去の音源(5.「レッツ・ゴー・ダウンタウン」はダニー・ウィットンがギターを演奏する過去のライヴ・テイク)も含まれるが、基本的には2人の死を悼んで録音された演奏。それもテキーラを飲んで演奏不可能になる寸前の状態でレコーディングをしたという(ニールの声が所々でヨタっているのはそのためである)。それゆえに、どこかきれいな追悼盤という類いのものではない。オーバーダブをせずに仕上げられ、泥臭くリアルで心の叫びがダイレクトに伝わる、そんな演奏になっている。

 とりわけ印象が強いのは、表題曲の1.「今宵その夜(トゥナイツ・ザ・ナイト)」/12.「同・パートII」。さらには、6.「メロー・マイ・マインド」の悲痛な叫びがそのままレコーディングされたかのようなニールの鬼気迫る(かつヨタっている)ヴォーカルは聴き逃せない。セッション風そのままの2.「スピーキン・アウト」も聴きどころで、ニルス・ロフグレンのギターも冴えている。起伏という意味では前半(A面)だが、B面(アナログでは7.~12.)も抒情性が強い曲が比較的多く含まれていて、簡単に聞き流すことができない。

 セールス的に決して成功したアルバムではないが、音楽界を生き(そして死した)2人の演奏者、そして生き続けるニール以下のレコーディング・メンバーの生がダイレクトに伝わってくる。そうした点で、稀有で、ロック・ファンなら一度は聴いてみる価値のある作品だと思う。



[収録曲]

1. Tonight's the Night
2. Speakin' Out
3. World on a String
4. Borrowed Tune
5. Come on Baby Let's Go Downtown
6. Mellow My Mind
7. Roll Another Number (for the Road)

9. New Mama
10. Lookout Joe
11. Tired Eyes
12. Tonight's the Night—Part II

1975年リリース。






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Last updated  2016年01月17日 16時54分29秒 コメントを書く


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